• No Music, No Life


    Photo by 北村勇祐

    Photo by 北村勇祐

     No Music, No Life ── この言葉の通りだと思っています。私たちが生きていく上で、必要不可欠なものが音楽であり、それを核に私たちを包み込むものがフェスティヴァルという文化なのです。それは『不要不急』の対極にあるもの、といってもいいかもしれません。だからこそ、今年、フジロックが開催されること、そのために着々と準備が進んでいるという知らせを受けたとき、どれほど嬉しかったか… あらためて、ここで言葉を並べる必要もないと思います。

     コロナ禍での大規模イヴェント開催が計り知れない困難を伴うことは誰にでも理解できます。それは今年も昨年に引き続きキャンセルを余儀なくされたフェスティヴァルがひとつやふたつではなかったことからも想像できるでしょう。それを考えると、可能な限り感染リスクの少ない状態でのフェスティヴァル実現に向けて、主催者や現場で働くみなさん、そして、開催地苗場から湯沢町のみなさんが、多くの問題に向かい合いながら、様々な局面で苦渋の決断を迫られていることは充分察することができます。なにがどうあれ、まずは、開催に向けて尽力されているすべてのみなさんに感謝の意を表したいと思います。

     おそらく、多くのみなさんが理解していると思いますが、今年は特殊な状況の下でのフジロックとなります。主催者が日頃から参加する人たちをルールや規則で”がんじがらめ”にすることを避けてきたのは、ご存知だと思いますが、今年はそうはいきません。すでに発表されている『感染防止対策ガイドライン』を必ず確認して、当日に備えてください。文字通りの”がんじがらめ”です。むろん、主催者がそれを嬉々として決定したのではないのは明らかで、そうするしか他に選択肢がないからです。また、言うまでもなく、どれほど感染予防を徹底したところで、会場内外のみならず移動中に感染リスクが高まることは否定できません。ですから、重症化しやすいとされる基礎疾患を抱えている方はもちろん、リスクを避けたいと考えるのであれば、今年は諦めましょう。無理をしてはいけません。この騒ぎが収束するまで待つべきだと思います。

    この『感染防止対策ガイドライン』を読んでいると、「こんなのフジロックじゃない」と感じる人がいても不思議ではないと思っています。しかも、そう感じさせる要素は、その規制だけではないのです。コロナ禍の影響で、フジロックで最も「フェスティヴァルらしさ」を演出してくれているUKチームが今年は来日できません。ですから、例年、アナーキーな魅力に溢れた場を生み出していたパレス・オヴ・ワンダーも、同じような空気を演出していたカフェ・ドゥ・パリ周辺のほぼすべてが姿を消すものと想像しています。会場に到着すると目に入る、風にたなびく旗の数々に、グリーンからホワイトに続く道やボードウォークを演出するオブジェを作っているのも彼らです。その彼らが今年は日本にやってこられないのです。

    「下手すると、今年のフジロックはただの野外コンサートじゃん」と、そんな声も聞こえてきそうです。簡単に言ってしまえば、豊かな自然に囲まれた野外コンサート。大騒ぎをすることもできず、モッシュもダイヴもあり得ない。ただ、黙って音楽を聴いているだけ…までいえば、大げさかも知れませんが、それをフェスティヴァルと呼べるのか? そのなにが面白いのと、感じるようだったら、わざわざ苗場まで来る必要はありません。あなたがいつも「享受している」あるいは、「与えてもらっている」フジロックを期待できない可能性も多々あるので、来ない方が無難です。

     それでも、私たちフジロッカーは、当たり前のように、今年も苗場を目指します。その理由は単純明快です。なぜなら、苗場が、そして、フジロックという場が年に一度、必ず帰ってくる故郷のような存在になっているからです。いつもは遠く離れていても、ここに来れば、気心知れた友達や仲間に会うことができる。今回は2年ぶりかもしれないけど、そんな人たちに会いたいじゃないですか。それだけではなく、初めての人たちとだって、まるで昔から繋がっていたかのように接することができるのがフジロックという場なんです。そんな理由じゃダメですか?

     一方で、「フジロックは、まるで修行だからな」と年配のヴェテラン・フジロッカーが口にするような想像を絶する経験も楽しみです。なんて言えば、語弊があるのは承知の上です。2018年は台風の影響で雨風にやられて、テントが吹っ飛んでしまったなんてこともありました。また、その翌年のように地元がかつて体験したことがなかったほどの豪雨にやられて、ずぶ濡れでライヴを見たこともあります。それでも最終日に、試練を乗り越えたご褒美のように輝いていた空の下で、仲間たちとさんさんと降り注ぐ陽の光を浴びたときの感激や、ある種の達成感を忘れることはできないのです。

     さらに、苗場に向かう理由のひとつはフジロックが消えてなくなって欲しくないという想いを抱えているからです。フェスティヴァルと呼ばれるものが、ただ楽しいだけの野外コンサートで、他に取って代わる物があるのなら、どうでもいいかもしれません。でも、フジロッカーにとって、フジロックを他に置き換えることはできないのです。それは人生の一部と言っても過言ではありません。ここに来ることで、幸せを感じ、平和を感じ、生きていることの意味を感じます。この場が来年もあって欲しいから、その「生存」を支えるためにもここに来たい。それだけのことです。最悪の場合、来年はないかもしれないし、これまでもそう思ったことは幾度もありました。

     実際のところ、初っぱなの1997年がそれでした。台風に襲われて、2日目がキャンセルとなった、あの朝。まるで野戦病院のような様相を見せていた会場で、翌年もできると想像していた人はいなかったはずです。「これで主催者も終わりでしょ?」と囁かれ、「やっぱ日本じゃフェスティヴァルなんて無理」という見方が支配的でした。翌1998年に都内で開催された時も、「暑さのせいで人がバタバタ倒れている」という誤報がメディアを駆け巡っています。おそらく、20数年前の日本では「ロック・フェスティヴァルは危険」という偏見でもあったんでしょう。実は、それを救ったのが初めて苗場で開催された時に集まってきたお客さんでした。地元の方々が似たような恐怖を感じていたのに、「フェスティヴァルを続けてほしい」という思いを抱いた彼らが、今では伝説となった「ゴミひとつ落ちていない」奇跡のフジロックを作っています。しかも、彼らが泊まったホテルや民宿でも同じ光景が見られたとか。苗場のみなさんが街ぐるみでフジロックと共に生きていこうとするきっかけを生んだのは紛れもなく、あの伝説を作ったお客さんたち、フジロッカーだったのです。

     どこかで同じような思いを持って、今年は苗場を目指します。メディアは「無謀な大規模ロック・フェスティヴァル、クラスターの温床に」なんて見出しを用意して、手ぐすね引いて待って待っているのかもしれません。でも、感染拡大を抑えるために、スタッフとして会場に入る私たちは全員PCR検査を受け、陰性であることを証明しなければいけません。また、地元、湯沢町では開催前に関係従業員らにワクチン接種を実現し、街ぐるみでフジロックを支えようと動いてくれています。1年の空白を経て実現する今年のフジロックは、未来への希望であり、同時に、また越えなければいけない試練でもあるのです。

     そういった感染対策に加えて、UKチームの不在を補うために、毎年彼らを支えて協力している日本人スタッフも、ビデオ・チャットなどでロンドンと充分なコミュニケーションをとりながら、全精力を傾けて動いています。そのひとりが、毎年、Route17 Rock’n’Roll Orchestraを率いて、苗場音楽突撃隊の核でもあるドラマー、池畑潤二さん。おそらく、多くの人たちにとってステージに立つ彼の姿しか想像できないだろうけど、実は、毎回のようにボードウォークにやって来て、つなぎをどろどろにしながら働いている彼を知っています。また、毎年、UKチームのゴードンと一緒にゴンちゃんを産みだしている一人でもあります。その彼が前回のボードウォークから、制作作業に入っているのはすでに私たちがレポートした通り。毎年子供達を中心にゴンちゃんを楽しみにしている人たちを悲しませたくはないじゃないですか。

    真ん中で屈んでいるのが池畑さん

    真ん中で屈んでいるのが池畑さん

     今年は、フジロックを初体験する方々が半数を占めるという報せを受け取っています。そんなみなさんにくれぐれもお願いしたいのは、万善の準備をしてやってきてほしいということ。昼は灼熱地獄のように暑いかも知れないけど、夜になって雨なんて降ろうものなら、凍えるような寒さになるかもしれません。さらには、都会じゃお目にかかれない野ダニやヒルが草むらや会場内を流れる川の岸辺にいっぱい生息しています。たかだか虫だと思っているとしたら、泣きを見ます。噛まれたら、手や足が2倍ぐらいにもふくれあがって、身動きが取れなくなることもあるし、その跡が一生残ることだって否定できないのです。加えて、発熱して会場から放り出される可能性もあります。『感染防止対策ガイドライン』では、体温が37.5度を超えると、会場に入れないと告知されているのはご存知だと思います。

     毎年のようにやって来ているフジロッカーなら、これまで数々の修羅場を体験しているだろうから、大丈夫かもしれません。でも、例年と違って、時期がずれています。油断は禁物です。当方のスタッフが今年の開催と同時期に現場で実験的にキャンプした時の経験談をぜひチェックしてください。また、もし、知り合いや友人が今年初めてフジロックを目指しているようでしたら、ぜひぜひ伝えてください。どんな天候にも対応できる衣服の準備を怠らないことは絶対に必要です。また、肌の露出を極力避けてください。それに、いい香りのするものは身につけないこと。地元の方によると、それが虫を誘うんだそうです。苗場のマダニを侮ったら、泣きを見ることになりますから。

     そして、証明してみせましょう、コロナ禍でもこういったフェスティヴァルを開催できることを。のみならず、他ではけっして体験できない奇跡のような瞬間を共有できること、さらには、与えられたものを「享受する」だけではなく、それぞれがフェスティヴァルの一部となって、なにかを作り上げることの幸せを。その上で、期待するのです。来年は、コロナ禍も一段落して、昨年大将が約束してくれた「倍返し」どころか「三倍返し」のフジロックが開催されることを。

    *そんな期待を胸に抱いて今年、fujirockers.orgは特別なTシャツを作っています。ぜひチェックしてくださいね。なお、例年、前夜祭のレッド・マーキーで集まってきたみなさんに「おかえり!」と挨拶をして、「ただいま!」というレスをいただいて、記念撮影をしているんですが、今年は、前夜祭もないようですし、感染防止の観点から見ても不可能だと判断しています。ごめんなさい。でも、苗場にたどり着いたら、心の中で「ただいま!」と声をかけてください。きっと、どこかから「お帰り!」と言われているような気がしますから。みなさんと会えるのを楽しみにしています。

    Text by Koichi Hanafusa

    参考リンク:
    FUJI ROCK FESTIVAL ’21|感染防止対策ガイドライン
    FUJI ROCK FESTIVAL’21|STAGE / AREA MAP

    【FUJI ROCK FESTIVAL ’21】日高大将から「特別なフジロック」に向けてメッセージが到着!
    フジロックまであと48日!第66回ボードウォーク・キャンプ レポート(2021年7月3日)
    ゴンちゃんを探せ~エピソード0~「ゴンちゃんの石拾い」とは?苗場からゴンちゃん誕生の序章をレポート

    池畑潤二インタビュー 前編:池畑潤二はなぜフジロックを愛して止まないのか
    池畑潤二インタビュー 後編:ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRA結成秘話

    2020年のフジロック、8月の苗場ってどうなんですか? 気温調査編
    『キャンプよろず相談所』に聞いた、テント設営の注意点! | FUJIROCK EXPRESS ’18
    今年の注意点を『キャンプよろず相談所』に聞いて来た | FUJIROCK EXPRESS ’19

    オアシス(苗場食堂周辺)の状況 | FUJIROCK EXPRESS ’19
    3日目の会場状況。 | FUJIROCK EXPRESS ’19
    土砂降りの中でも音楽は揺るがない | FUJIROCK EXPRESS ’19

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