ゴンちゃんを探せ~エピソード0~「ゴンちゃんの石拾い」とは?苗場からゴンちゃん誕生の序章をレポート
- 2021/07/14 ● Report
7月3〜4日、苗場フジロックの森にてボードウォークキャンプが開催された。2年ぶりのフジロックの開催を信じて、お客さんや関係者、地元の自治体の方々みんなでボードウォーク補修作業をしてきたのは、前回のレポートでもお伝えした通りで、苗場の地が前を見据えて進んでいるのを目の当たりにして、希望を膨らませてきたのであった。
そんなボードウォークキャンプ参加者に、主催であるフジロックの森プロジェクトからメールが届いていたのは、一日目7/3の午前中。到着が遅れていた取材陣は移動中の車の中でそれを確認することとなった。
「ゴンちゃんの石拾い」とは…?
『明日、7/4フジロックのマスコットでおなじみ”ゴンちゃん”の石拾いを実施します。あなたの選んだ石がゴンちゃんになるチャンス!』
メールの内容は上記の通りだったのだが、長らくボードウォークに参加してきたスタッフですら、この作業の案内は聞いたことがないという。自分たちでゴンちゃんの原石が拾える…ってコト!?と、期待に胸が膨らむと同時に筆者の脳裏にはこんなことがよぎった。
「ん?ゴンちゃんって拾った石って言っていいやつ?苗場の川に生息する石の妖精ってことじゃなくていいんだっけ…?」
こんなファンタジーな戸惑いを感じながらも、翌日我々はところ天国に向かった…!
我々は、一昨年の8月にもこの川に「大雨で流されたゴンちゃん」を探索しに来ていたことがある。その際に発見されたのは、川のイチ石に戻ろうとしているゴンちゃんであったが、今回はその川から生まれる前のゴンちゃんと出会おうとしている。ゴンちゃん誕生の序章である。
そして、「ゴンちゃんは石の妖精ってことじゃなくていいの?」という謎のファンタジー戸惑いがよぎったりしたが、実際のところゴードンのインタビューにもあるように、ゴンちゃんはゴードン氏が作り出すアート作品であって妖精ではなかった。(すみません。)
例年は、彼らアートチームのメンバー5人ほどでこの「ゴンちゃんの石拾い」を行っているとのこと。今年は、この世情の影響で本来のメンバーで作業を行うことが難しいため、キャンプ参加者に楽しんでもらいながら手を借りられれば、という背景があるとのことだ。アートチームの方に話を聞いてみると「ゴードン直々にみなさんの手を借りたいとメッセージを受けているので、よろしくお願いします。」とのことだった。
意外なほど難しいゴンちゃん原石探し。ゴンちゃんに適した石とは?
作業に入る前にアートチームの方から説明があった、ゴンちゃんに適した石の条件は下記の通りだった。
・下の画像でお姉さんが掲げている程度の大きさのものがベスト。
・面があり、自立するものが好ましい。よって丸っこいものはあまり求めていない。
・絵の具の色が乗りやすいため、白っぽいものが好ましい。
・表面感はツルツルしたものがいい。
・向き合ってみてゴンちゃんの顔が浮かぶもの!
「持ってきて見せてくれれば私がジャッジします!」と担当のお姉さん。
毎年家にお連れしたいと切望しても未だ叶わない愛しいゴンちゃん。もし、今年自分が拾った石で作られたゴンちゃんを連れて帰ることが出来たならなんてロマンチック!と興奮しながら、早速河原に降り立った。
しかし、始めてみるとこれが意外と難しい。条件ピッタリ!と思っても埋まってしまっていて拾えないものもあるし、これはいい!と意気揚々と拾い上げても、周りからそれは黒すぎるんじゃない?と言われてしまったり…。
そして、石だけに当然重い。理想とされている漬物石サイズは特に重い。はしゃぎながら頑張る子供たちを横目に、肩で息をしながら必死になる大人たちの姿が目立つようになる。
そんなこんなで苦戦しながら20~30分ほど経った頃、リーダーの方から指令が入った。
「小さい石が多く集まっているので、この後はこのサイズ(前の写真で掲げているくらい)のものを集中的にお願いします!今100個くらいなので、残り131個、全部で231個必要なのでお願いしまーす!」
231個の謎
231個。えらく半端な数だな…。そういえば、毎年どれほどの数のゴンちゃんが川に放たれているのかは気にしたことがなかったが、年によって変動があるという。ここ数年は400~500個近くだったと聞いたが、それに比べると231個は少ない気がするけどどうしてだろう?数はどうやって決めているのか、雑談まじりにフジロックの森関係者の方に話を聞いたところ、「毎年、池畑さんの草野球の打率で決まるんだよ。」と返ってきた。
”池畑さん”とは毎年フジロックに出演しているROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAのリーダーとしてもおなじみ、ルースターズのドラマーとして知られる池畑潤二さんのこと。ボードウォークキャンプにも度々参加されている池畑さんが、演者としてだけでなく、フジロックととても深い関わりがあることは以前のインタビューでもお伝えした通りである。
だけど、池畑さんの打率でゴンちゃんの数が決まるなんて、これはもしかしてちょっとした苗場ジョークなの?と疑心を抱いていた。が、後々フジロックエキスプレスからこちらの過去記事を発見。打率説、ゴードン氏が言っているということはオフィシャル情報ってことで良さそうだ。ということは、池畑さんの直近の打率が2割3分1厘ということになるということで。
(池畑さん、来年はもっと打ってくれたらうれしいです…ゴンちゃんほしい…)
ゴンちゃんお持ち帰りを夢見ているみなさんは、これからの池畑さんのバッティングに期待して応援してほしい。
231個収集完了。段々と愛らしく見えてくる原石たち。
そして、開始から1時間ほどで、無事231個(体)のゴンちゃんの原石が集まって作業が終了。段々とこの原石たちにも愛着が湧いて、色や表情が目に浮かんでくる。自分が探し出したあの子、フジロックでまた会えるといいなあ。
この後は、アートチーム主導で、洗浄、色付け、そして目入れなどのペイントが行われるそうだ。
今年のようなイレギュラーな状況だからこそ体験できた「ボードウォークキャンプ参加者によるゴンちゃん石拾い」だったわけだが、こんな風に、一筋縄にはいかない今だからこそ得られるスペシャルなことが、きっとたくさん苗場で待っているんじゃないかと思う。そのときまで、あと1ヶ月ちょっとだ。
Text by 東いずみ
Photo by おみそ、Fujirockers org