ついにロキシー・ミュージック、苗場に降臨! でもロキシーって何?

5月 8th, 2010

ついにロキシー・ミュージック、苗場に降臨! でもロキシーって何?

フジロックにロキシー・ミュージックが出る、ということで狂喜した人はどれくらいいるのだろうか。 自分もそのひとりでテンション上がりまくりだけど、出演の噂が上りはじめたころから「ロキシー・ミュージックって何?」っていう声があったのも事実。確かに若い人にはいまひとつピンとこないのだろう。

オリジナルアルバムが最後に出たのが1982年だからもう30年くらい経った。その後も、バンドの中心人物であるブライアン・フェリーのソロ活動はそれなりにおこなわれているし、日本ではCMにフェリーの曲がよく使われているし、キムタク主演のドラマ主題歌にもなっていたし(フェリー自身もカメオ出演もしていた)、ロキシー自体も再結成して2001年に来日しているのだけど、どうも若い人には浸透していないような気がする。

そこでロキシー・ミュージックについて書いてくれといわれたので、パソコンに向かうことにした。プロフィールやバンドヒストリーなどは、グーグルとかヤフーという便利な道具があるので、それを活用してもらうことにして、ここでは、後世に多大な影響を与えたバンドを観るチャンスである、ということを訴えたい。UKロックが好きな人なら観ておいて損はないと断言できる。

イギリス本国では人気あるのに日本ではいまひとつというアーティストはけっこういて、ロキシーもそのなかのひとつだろう。以前、ロンドンにいったときにコンビニで普通に曲がかかっていたり、ウェンブリースタジアムでおこなわれたイベントを観にいったら別会場であるジュネーブからの中継でスクリーンに登場したブライアン・フェリーに大歓声が上がりお客さんたちが踊りはじめた、というのをみて、本国ではこんなに人気あるんだと感激した。

【技術よりもセンス】

まずは、初期のロキシー・ミュージックを初めて聴いた人は、あまりの奇妙さに戸惑うだろう。率直にいえば、歌も演奏も下手なのだ。しかもそれを隠すことなく実験精神とセンスとキャラクターで人気を博した。今の耳で聴いても奇妙に思える音楽で、イギリスではデビューシングルもアルバムもトップ10入りしたのはすごいことだと思う。そうした「演奏下手でもアイディアがあればやっていける」というセンス重視の姿勢から、後のパンク/ニューウェーヴのバンドの先駆けとなった。

【ヴィジュアル系の先祖のひとつ】

70年代には、デヴィッド・ボウイと並んで絶大な影響力があった。ボウイやブライアン・フェリーの歌唱法や音作り、そして近未来的な感覚は、ニューロマンティック・ムーブメントのバンド、ウルトラヴォックスデュラン・デュランデヴィッド・シルヴィアンのJAPANに影響を与えている。そのニューロマンティックのバンドたちが日本のヴィジュアル系に影響を与えているわけだから、あのヴィジュアル系独特の発声をたどるとロキシーに至るのだ(もちろん化粧してロックをやるということも)。

【トム・ヨークも物まね】

ブライアン・フェリーの発声法といえば、レディオヘッドの、そしてアトムス・フォー・ピースとしてフジロック出演予定のトム・ヨークが、映画『ベルベット・ゴールドマイン』のサウンドトラックで、ロキシーの曲をカヴァーしている。トム・ヨークの他にバーナード・バトラーやジョニー・グリーンウッド(ブライアン・フェリーのソロにも参加している)、そしてロキシーのメンバーであるアンディ・マッケイなどが参加してヴィーナス・イン・ファーズというバンドを結成し、トム・ヨークは嬉々として”レイディトロン“など数曲を歌う。それはものまね王座決定戦に出てもおかしくないくらいの完全コピーぶりなのだ。

【ザ・スミスやべルセバも】

一方、自省的な文系青年ぽい歌詞が持つ世界は、ザ・スミスやべル&セバスチャンなどのギターロックのバンドにも影響を与えている。ロキシーのサポート・ベーシストが後にザ・スミスのプロデューサーになったり、ザ・スミスの”マネー・チェンジス・エヴリシング“にブライアン・フェリーが歌詞をつけて”ザ・ライトスタッフ“という曲になって、マー自身がギターを弾き、ブライアンのソロに収められたり、モリッシーがライヴで”ストリート・ライフ“をカヴァーしたりと、ロキシーとスミスは何かと関係がある。ジョニー・マーはクリブスでフジロックにでる予定だ。べル&セバスチャンは、”僕と少佐の関係(Me and The Major)“に「72年のロキシー・ミュージックのことも覚えている」という歌詞が登場する。ちなみに今年のフジロックに出るバンドでは、シザー・シスターズが”ドゥ・ザ・ストランド“をカヴァーしている。

もちろん、ロキシー初期に在籍していたブライアン・イーノの功績まで語ったら本が一冊でるくらいだし、日本とのつながりでいえば、1975年にサディスティック・ミカ・バンドがロキシーの全英ツアーでオープニングアクトを務めていたというのもあるけど、長くなるのでこの辺で。

【とりあえずベストを聴け!】

では、何を聴いたらよいのかということなのだけど、できれば1stアルバムから順番に聴いていってほしい。演奏は下手でもアイディアが詰まっている初期から、スタジオミュージシャンのおかげもあるけど、演奏が上手くなり洗練の極みに至るまでの過程を追体験することができる。自分はラストアルバムから遡って聴いたために、初期との違いに戸惑ったものだ。だけど、アルバム発売順に聴けば、音楽性の変化も納得がいくと思う。ただアルバムに入ってないシングルで頻繁に演奏される曲があるので、ベスト盤などで補う必要はある。

ベスト盤はロキシーの歴史を一通り網羅しているので確かに手軽だ。2001年のツアーもほぼベスト盤のような選曲だった。今回のライヴがどうなるかわからないけど、ロキシーの多彩な面を一枚にまとめているので、予習としてならよいと思う。動く映像を観たいという人にはDVDの『ライヴ・アット・アポロ 2001』がお勧め。ロキシーのライヴではお約束である”ヴァージニア・プレイン”の大合唱とか、アンコール時の「ロキシー!ロキシー!」という掛け声も収録されている。

ロキシーミュージックはイギリス人好みの味が強すぎて、特に初期から中期にかけては日本人の嗜好にはなかなか合わないかもしれない。T.レックスやデヴィッド・ボウイのようにロックンロール的なわかりやすい格好よさに欠けるかもしれない。だけど、一度魅力に気づけば何度でも聴きたくなる味わい深いバンドなのだ。夏の苗場でぜひ体験してほしい。

オフィシャル
http://www.bryanferry.com/

マイスペース
http://www.myspace.com/bryanferryofficial