話題沸騰!『ベンダ・ビリリ! 〜もう一つのキンシャサの奇跡〜』
7月 17th, 2010

カンヌ国際映画祭をはじめ、全世界で話題沸騰中の『ベンダ・ビリリ! 〜もう一つのキンシャサの奇跡〜』の試写会に行ってきました。公開は9月、翌10月には、待望の来日公演が控えており、北は東北、南は九州まで、全11公演が予定されています。”ベンダ・ビリリ”とは「外見を剥ぎとれ」という意味で、つまりは「内面(の精神)を見よ」となります。ここでは、『ベンダ・ビリリ!』の中に収められた、様々なキーワードをピックアップしてご紹介いたします。
【単車乗りなら、ジャケットでザワつく】
ジャケットに描かれているのはいかつい3輪の乗り物。それらが扇の陣形を組んでいて、バイク好きなら思わず、「ジャケ買い」しそうな香ばしさがあります。その不良っぽさを漂わせている車体は、彼らにとって、大切な「足」です。胸元まで伸びたフレームには、前輪を駆動させる手こぎのペダルが設けられていて、フロント・フォークが突き出た様子はまるで、「チョッパー」のよう。特に、中央に陣取る、ひときわ足回りがしっかりした車体には原動機までついています。さらに、愛車にまたがる妙齢の男たちの顔は、どこか誇らしげ…となれば、ブラック版の『イージー★ライダー』ではないけれど、どれがピーター・フォンダだ? デニス・ホッパーは? と勘ぐりたくなります。音はといえば、動物園で録音されたこともあって、動物の鳴き声が気持ちよく響いていて、ジェームス・ブラウンの影響を感じさせるファンキーな作風となってます。「サトンゲ」と呼ばれる新しい楽器が生み出す浮遊するメロディラインも独特。激しくもリラックスできる作品となっています。
【『ソウル・パワー』から続く複線】
アルバムに宿ったファンクの魂は、36年前にキンシャサ(コンゴ民主共和国の首都。当時はザイールの首都)で行われた、モハメド・アリ vs ジョージ・フォアマンのWBA・WBC世界ヘビー級タイトルマッチ(通称、「キンシャサの奇跡」)の「前夜祭」に起因します。サブタイトルに「もう一つのキンシャサの奇跡」とあるのは、そのためです。前夜祭の様子は『ソウル・パワー』に、世界戦は『ランブル・イン・ザ・ジャングル』として、それぞれ公開されています。特に、『ソウル・パワー』は、JBをメインとして、B.B.キング、ビル・ウィザース、ミリアム・マケバ、セリア・クルスらが登場し、そのパフォーマンスはどれをとっても圧巻の一言。ビリリのメンバーの中には、当時のライヴを経験した者がおり、ビリリの楽曲、”モナムール”では「ゲロッパ! セックス・マシーン!」というフレーズが、JBと同じ調子で歌われています。ただし、モナムール(私の愛しい人)というタイトルからして、JBの「立ち上がれ! セックス・マシーンのように」とブラックにハッパをかける意味ではなく、響きのままの意だと思われます。兎にも角にも、『ベンダ・ビリリ!』を見る前に、『ソウル・パワー』(※)を見ることをおすすめします。
※今年の富士映劇で公開が決定しています。
【ゼロ年代に生まれた楽器も登場】
誰でも音楽が作れる「テノリオン」や、ビョークのライヴ映像に映り込んだことで話題となった「リアクタブル」などは、ゼロ年代に生まれた楽器の中でも、群を抜いて有名です。どちらもテクノロジーを駆使していて、今の時代だからこそ生まれ得た楽器だといえますが、この映画の中では、極めてアナログな楽器が新たに発明されています。10代のロジェが脇にかかえる楽器は「サトンゲ」といい、彼自身のアイデアによってうまれた楽器です。空き缶にアーチ状にしならせた木をくくりつけて、ワイヤーを張った1弦のギター…となれば、ジャグバンドなどで用いられる、「ウォッシュ・タブ・ベース」(※こちらはタライを使用)に近いですね。その音は、浮遊し、時には泣いて、バンドに独特な色をつけています。
※余談ですが、2日目に登場するジョン・フォガティがかつて活動していたバンド、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)の『ウィリー・アンド・プア・ボーイズ』のジャケットにタブ・ベースが写っています。
【出来すぎなストーリー】
ストリートで集まって演奏する「車いすのストリート・ロッカー」たちは、自分たちが音楽で売れることを疑わず、レコーディングに向けて動き出します。のぼり調子からどん底へ、さらには数少ないヒントを元にメンバーを訪ねて歩く長旅などなど…これがノンフィクションというから、まさに、「事実は小説より奇なり」です。もちろん、秋口には本作品の公開を控え、さらには10月に日本ツアーが決まっていますので、挫折だけではない、「成功への道」もしっかりと描かれています。それでも、歯車が回り出した、たった数年の出来事を切り取った作品で、まだまだ未完の映像とも言えます。世界ツアーの映像や裏話などで構成されたラストは、綺麗にまとめることをあえて避けたかのよう。売れて気持ちが大きくなっている様子もおさめられていますし、なにより、そのツアーの延長で、私たちの国や街にもやって来るという期待感もくすぐられます。あとはライヴで、「この作品の続きを見ろ!」ということなのでしょう。
【コンゴのストリートの生を映し出した『ベンダ・ビリリ!』】
この映画は、コンゴ民主共和国を映し出したドキュメントとしても価値があります。『ソウル・パワー』は世紀の祝祭として華やかな側面が取り上げられていましたが、本作の舞台はストリート。ポリオを病み、半身不随となった者がお金をせびる様子だけでなく、子供が賭場を開帳している様子が映し出されています。また、暗いばかりではなく、両手を使い、這いずりまわってサッカーに興ずる映像も収められています。途中に、1年の空白があり、再びコンゴに舞い戻った時の映像は、監督の中でビリリの成功が確信に変わったことをほのめかしています。ザラザラした質感でまとめあげられた、サクセス・ストーリーは、見る者に衝撃を与えてくれました。
【車いすと言えば、ボード・ウォーク】
フジの地域密着の姿勢が現れているものが、ホワイト・ステージ後方から二手に延びるボード・ウォークです。バリアフリーの観点から見ても、車いすのメンバーが大半を占めるスタッフ・ベンダ・ビリリとリンクしてきます。今年の大将インタビューでは、『ソウル・パワー』を公開当時に見た、という発言も飛び出しておりますので、ビリリは、主催者サイドにとっても気になる存在でしょう。ビリリの日本盤を発表し、映画配給を行っているプロモーター、プランクトンが去年招聘したのが、モリアーティで、今年のフジに出演が決定しています。来年以降にビリリが出演するということも、あり得るかもしれませんね。
ベンダ・ビリリ!〜もう一つのキンシャサの奇跡(予告編)
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☆監督が来日!パーティーやります!!
7/28(wed) “PARTY BENDA BILILI ” with ルノー・バレ&フローラン・ドラテュライ
http://blog.goo.ne.jp/plankton-staff/e/4503f5ec95789e861a89d79026c9e163
9月公開「ベンダ・ビリリ!?もう一つのキンシャサの奇跡」の監督ルノー・バレ&フローラン・ドラテュライがフランスから来日。数日前にキンシャサから帰ったばかりのJICA飯村氏も交えて、ザックバランにトークとお酒を楽しみましょう。キンシャサの今を知るにはこの日しかない!飯村さん帰ってこれるのか?!
会場:渋谷 LAMAI(東京都渋谷区渋谷2-11-14 ステージ青山2F 050-5815-7074)
時間:7:00 open 8:30 監督来場
料金: ¥1,500 with 2drinks
出演:ルノー・バレ&フローラン・ドラテュライ / 飯村学(JICA)/ DJ:トンカラ兄弟
地図:http://www.hotpepper.jp/strJ000763459/map/#mapTop
*地図HPにあるクーポン券はこのパーティーでは使えません。
*会場は上映館シアター・イメージフォーラムのスグ近くです。
☆サラーム海上の「エキゾ夢紀行」─ ワールドビート2010来日アーティスト予習編
http://www.uplink.co.jp/factory/log/003618.php
□日時:7月24日(土)18:30開場/19:00開演
□料金:予約¥1,800(予約方法と詳細はココをご参照ください)
当日¥2,000(予約ともに1ドリンク付き)
■出演 :松山晋也(音楽評論家)
■聞き手:サラーム海上(よろずエキゾ風物ライター)
ワールドカップもあり世界的に注目を集めるアフリカ。 夏のエキゾ夢紀行は音楽評論家の松山晋也さんとともにアフリカ音楽を特集! 今秋に初来日公演とドキュメンタリー映画の上映が決まったコンゴ民主共和国のスタッフ・ベンダ・ビリリを中心に、『ワールドビート2010』で来日が決定している“砂漠のブルース”の仕掛人ジャステイン・アダムズ、ガンビアの一弦フィドル奏者ジュルデー・カマラ、更に“アフリカン・フォーク界の新しい宝石”と言われるブルキナファソのヴィクター・デメらの最新の貴重な映像を報告します!
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★詳細★
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