• 第一条件は“フジロック愛”、フェスごはん出店管理本部の村田さんにインタビュー


    先日公開された「フェスごはんMAP」はご覧になりましたか?過去のレポートからもわかるように、フジロックのごはんクオリティの高さはお墨付き。その秘密を探るべく、出店する約100店舗もの飲食店をとりまとめる出店管理本部の村田宏昭さんにお話を伺ってきました。仕事内容から、フェスごはん出店への道、さらには出店裏話も…!?フジロックへの熱い想いがたっぷり詰まったインタビューとなっています。この三連休、フジロックの準備そっちのけで、何を食べようか妄想しながら過ごしたあなたはぜひお読みください!


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    ─ 村田さんはこれまでフジロックで、どのようなお仕事に関わってきたのですか?
    村田:1997年の初年度から携わっていて、宿泊施設の仕入れ交渉にスポンサー関連、あと不正入場対策(!?)みたいな仕事をしてきました。その後、2003年頃から現在担当している出店管理をしています。出店ってフジロックの中でもお客様が気にされる、大事なセクションなんですよね。僕はフジロックの中で大変なポジションに従事することが多いんですよ(笑)

    ─ 出店管理の仕事で大変なこととは?
    村田:フジロックには約100店舗もの飲食店が出店します。これらのお店の運営がうまくいくように管理するのですが、僕らはお店側に一番嫌われるタイプの人間なんですよね(笑)。例えば駐車している車のまわりに、ダンボールなどの荷物を置いたり、空いた生ビール樽を置くと、導線が狭くなるのでお店の方に注意します。一個ぐらいなら邪魔にならないかもしれないけれど、小さいことも積み重なると大きな問題になりますよね。僕たちはそれを見込んで考えなければいけないのです。お店の人は「広い場所なんだからそんな細かいこと言わなくても…」って思うでしょうね。けれども嫌われる人間がいないと、大きなフェスの出店管理ってなかなかできないと思っています。

    ─ 心を鬼にしないといけないときもありますよね。なくてはならない仕事だと思います。
    村田:あとは新規出店する店のフォローもしているのですが、まず、初出店の方だけの説明会を4月末に行います。お風呂や宿泊施設のこと、水周りのこと・・・フジロックに来たことがないお店の方もいるので、4時間ぐらいかけて大質問大会をやるんです。その後、5月の中旬に、ベテラン出店者も含めた全体説明会、そして5月末には初出店の方向けに苗場を下見する現地案内会を行います。このような機会を設けて、新規のお店の方がスムーズに出店できるようサポートしています。

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    ─ 初出店の方ならではのエピソードはありますか?
    村田:昨年の現地案内会の話なのですが、京都の出店者の方が越後湯沢駅から集合場所の苗場プリンスホテルまで、路線バスで向かおうと考えていたらしいんです。けれども、次のバスがくるのが2時間後…、それを待っていたら1時間半後の集合時間に間に合いません。そこで、その彼は何を思ったか、越後湯沢駅から苗場まで約25キロの道のりを走ってきたのです。無事に集合時間までにたどり着きましたが、途中長いトンネルがいくつもあって泣きそうになったらしいですよ。それから彼は僕らの間で“マラソンマン”ってあだ名がつきました(笑)。ちなみにそのお店は「カドヤ」さんなのですが、今年は場外エリアで立ち飲み屋をやります。

    ─ 立ち呑み屋がフジロックに登場するのは初めてですよね。これは楽しみです。

    フジロックに生野菜を使ったメニューが少ない理由

    ☆140711murata02─ フジロック当日はどのようなお仕事をされているのですか。
    村田:ライブはひとつも観ないで食べ歩きをしています。試食したものと同じクオリティーで提供されているか、金額が変更されてないか、量は適正か…なんていうのを見まわっています。フジロックエクスプレスのフェスごはんの記事も、情報が早いのでちょくちょくチェックしていますよ。

    ─ ありがとうございます! 今年はフェスごはん専用Twitterも用意したのでこちらもぜひフォローをお願いします。
    村田:あと、食品衛生の管理という重要な仕事もあるんです。食中毒が疑われる情報が入ったときは即座に販売を止めて、他のスタッフ数人と僕自身も食べてチェックします。それで数時間経過し、問題がないことを確認してから販売を再開します。

    ─ 提供してはいけないメニューはあるのでしょうか。
    村田:もちろんあります。新潟なのにありそうでないもの・・・そう海鮮丼とか。臨時食品営業許可の関係で火を通さないと提供できません。なまものはNGなので、フェスごはんのメニューは必然的に肉料理が多いんですよ。

    ─ 確かにサラダとかないですよね。フジロック期間中はどうしても野菜が不足していると感じてしまいます。
    村田:野菜に関して少し面白い話があって…。例えばきゅうり一本売るっていうのはアリなんです。なぜなら、形がそのままのきゅうりを渡すのは“物品販売”という扱いになるのですよ。だからきゅうり丸ごとは売っても構わない。ただし、きゅうりを半分に切るというのは、調理行為と見なされるのでNGなんです。出店する皆様にきっちり守ってもらうように指導するのも僕らの仕事なんですよ。

    ─ 氷水に浸されたまるごと野菜を見かけるのは、そういう事情からなのですね。話は変わりますが、以前、現地でお客さんにフェスごはんのアンケートをとっているのをみかけたことがあるのですが…。

    村田:はい、私どもから学生のボランティアさんに頼んで行っています。実は彼ら、フェスごはんの教育をちゃんと受けてからアンケートをとりにいっているんですよ。「どこのお店が良かったですか?」という質問に対して、お客様から店名で返答がくることはほぼないんです。そのために前夜祭と1日目は、どこのエリアにどんな店があるのか、どの店に何を売っているのかというのを、資料を見ながら頭に叩き込みます。その結果「オレンジコートのスペアリブ」とか「アヴァロンの焼きそば」なんて返答でも、店名を即答できるんですよ。今年もお客様にアンケートを行うので、もしお願いされるたら、快く協力してくれると嬉しいですね。

    第一条件はフジロックへの愛情、出店への道

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    ─ フジロックに出店する飲食店はどのように決めるのでしょうか?
    村田:だいたい1月の中旬から3月の末にかけてフジロックのオフィシャルホームページで一般公募を行っています。相当数の応募がくるのですが、第一次審査として書類選考を行います。既存店であれば昨年の売り上げや、アンケート結果・オルグのランキングも参考にします。そして、書類選考を通った新規店は、事務局のスタッフが手分けをして、実際の店舗まで試食に行きます。おそらく足を運んで審査しているのはフジロックだけではないでしょうか。そこでお店の方と面接も行い、その結果を踏まえて、毎年出店する店舗を決定します。

    ─ 店を選ぶにあたって、一番重要視していることはなんですか?
    村田:フジロックへの“愛”ですね。「どれだけ儲かるの?」とかお金のことばかり言う店は、あまり迎え入れたくないです。フジロックは独自路線が強いので、昨年辺りから出店者にフジロックを一番に考えてほしいとお願いしています。お客様にとって、「このフェスにもこの店出ているんだ〜」ってなると、食の面白みがなくなりますよね。それで基本的にフジロックのみに出店してほしいと、ハードルをあげたんです。僕たちは食べるものでお客様を喜ばせたいという熱意をもってやっています。「おいしい店が一番そろっているフェス」と言われることが、僕たちにとっての一番の賛辞ですね。

    ─ 通常店舗での運営と比べ、フジロックでの出店で難しいところはどこですか?
    村田:まずは水周りですね。店舗ひとつひとつに水道が通っていないので、共用のものをみんなで使っています。水を汲みに行くだけで30分並ばなくてはならないこともあるんですよ。麺類が少ないのは水場が不便だからなのです。

    ─ 茹でるときに大量のお湯が必要ですものね。
    村田:そう。今年はそれを解消するために、オアシスの水場のそばに麺類のお店を集めました。タイラーメン、焼そば、かすうどん、油そば・・・オアシスの一角にずらっと集まってますよ。

    ─ 先日フェスご飯座談会をやったのですが、そのときに新潟はへぎそばが有名なのに出店していないねって話になったんです。やはり水周りに問題が?
    村田:はい。冷たい麺を提供するにはテント内に個別水道がないと提供ができないんですよ。ただ今年はお店の方が知恵を絞って、保健所の方よりOKをいただいた調理法を考えてくれたので、冷たい麺を出す店舗が2店舗あります。

    ─ あと天候にも左右されやすいのではないでしょうか?
    村田:ええ、日向はものすごく暑いし、夕立があることも多い。夜は冷えることもあります。気候によってお客様が求めるメニューがガラッと変わってしまうんでよね。それに苗場は天気予報が外れることも多く、まったく読めないんですよね。だから一昨年のように晴れの日ばかりが続くと、飲料水がなくなりそうなことがあるんです。逆に雨の日が続くような年は、アイス類などの冷たいものを出すお店はあまり売れないんですね。予想できないことが平気でおこるところに、フジロックの出店の難しさがあると思います。

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    誰が3%を負担する?物価高と消費税の問題

    ─ 今年注目のお店は?
    村田:まずは場外のホットドッグ屋さん「SCHMATZ(シュマッツ)」。本場のドイツのソーセージを使っているそうなので期待してください。キャンプサイトの「ZARAME」というお店のドーナツがめちゃくちゃおいしいです。名古屋に工場をもっていて、デパートの松坂屋名古屋店でも販売しているお店ですよ。甘党の方の朝食代わりにもいいと思います。あとは、パレスに九州の小倉のとんこつラーメンの新店が出ます。朝ごはんにとんこつスープを使用した味噌汁も出す予定ですよ。とんこつラーメンも期待してください。

    ─ 出店管理の立場からお客さんにお願いしたいことはありますか?
    村田:みなさんと考えたいことがあります。今年の4月から消費税が8%にあがって、来年になったら10%になるかもしれないとう事態ですよね。けれども、フジロックのビール(600円)とペットボトル(200円)の値段は今年は据え置きなんです。酒屋さんからの卸値には8%の税率がかかっているので、今年の増税分は飲食店がが負担することになります。お客様にとってはもちろん安いほうが良いのですが、物価高も考えると飲食店に負担をかけたままで良いのでしょうか。そのせいでフジロックに出店していたおいしいお店が、出店を見送ってしまうかもしれません。長い目で見ると、こういうことが起きる可能性があるんです。僕はもうそろそろお客様にも負担してもらう時期がくるのではないかと思っていて…。それを理解していただけたらと思っています。でも、ビールの値段をあげるのが一番難しいんですよね。

    ─ オルグのTwitterでビールの値段は今年は変わらないことをアナウンスしたら、すぐに100件以上リツイートされました。やはりお客さんにとってすごく気になるところですよね。それでは最後に、今後の展望を聞かせていただけないでしょうか?

    ☆140711murata000村田:開催期間中はお客様、出店者、スタッフもあわせて、フジロックが大好きな人が10万人以上集まります。フジロックで困っている人がいたら手を差し伸べようって動きがありますが、一歩進んで家族のような感覚になるフェスティバルになったらいいなと思っています。東京では疎遠になっている人間関係を、苗場では情報共有をしてみんなで家族のように楽しむ、そういう空間になったら天国ですよね。自分のホーム「家」という感覚で、戻ってくるべき場所になったらいいですね。

     


    ○ことしのフェスごはん
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    文:菊入加奈子
    インタビュー写真:藤井大輔
    会場写真:岡村直昭/船橋岳大

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