• 搖滾台中的故事 ~台湾のロック・フェスに行きたいわん~


    *第二天*

     入場まちの長蛇の列にびびって開場する10時半をめざし、今日は悠遊カードを使ってMRTに乗って(片道40元だったかな)やってきたものの、昨日の喧騒はまるで嘘みたいに、オフィス街のどまんなかの日曜日の朝の森林公園は静まりかえって、黒いスタッフTシャツを着た人影がちらほら、ようやくゴミをひろいだしたりテントの白い幕を開けたりしていた。拍子ぬけして、周辺を散策してから、来る途中車窓から見えた国立歌劇院までまたMRTでもどる。雲みたいな奇抜な外観の建物で、台中の観光名所の1つ。1階のカフェで飲んだ烏龍茶が美味しくて、癒された。

    台中国家歌劇院

    台中国家歌劇院

     お昼にまた文心森林公園にもどり、まずは昨日のぞいてみたものの買いそびれたグッズを物販テントで購入。といっても公式TシャツやRookie A Go GoとWネームのタオルは昨晩の時点で完売していて、ペットボトル・ホルダーを2つお土産用に。スタッフの男の子に「日本から来た」と伝えると、即「フジロック!」。仲間が「フジロックにおいでよ」というと、首を横にふりながら「Too expensive」と苦笑い。それにはうなずくしかなかった。日本にいてもエクスペンシヴなのに!

     そしてようやく念願の!メインステージ「能量舞台」へ入場。この日最初のバンドというのに、8千人は収容できそうな野外アリーナの8~9割はもう観客で埋まっていて、後方に少し空席が見えるばかり。ステージ前のスタンディング・エリアでは、「溫蒂漫步 Wendy Wonder」という男女混成バンドの、シンセの上物がアイシングされたドーナツみたいなパワー・ポップにあわせて、熱心なファンが色とりどりのタオルをふり回しながら飛び跳ねている。フジロックやりんご音楽祭に出演した「大象體操 Elephant Gym」しかり、台湾のバンドは男女混成が多い印象。昨日の「怕胖團 Papun Band」も3ピースのベース奏者が女性だ。

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     朝見つけた近くの「餃子館」で、羊肉麺と水餃子の昼食をとったあと、また「能量舞台」へ。「JADE」というギターとドラムの2ピースがゴリゴリの骨太ブルース・ロックを鳴らせていたけれど、曇り空なのに頭上を直撃する日射しにたまらずに退散。仲間を残して、丘の上の木陰でまったりたたずむ。そこから「衝撃舞台」を見下ろすと、アイドル風の衣装を着た女の子がヴォーカルのバンドが、小さなステージ前につどった観客と微笑ましいやりとりを交わしている。昨日の「Rookie A Go Go ステージ」は、今日は広場にそよぐ木々にふさわしく「緑色舞台 Green Stage」に衣替えしていて、タイから来たDum.Rongの演奏でまた仲間と落ちあう。エスニックな要素はまったくなくて、キャッチーで内省的な王道の2000年代ロック。

     「能量舞台」にもどって、Rookie A Go Go勢で唯一『搖滾台中』のメインステージに見参する新東京。まったく予備知識もないまま初めて演奏を見たのだけれど、第一印象はジャコ・パストリアス meets シティ・ポップ。馬鹿テクの5弦ベースを前面に、都会的な洒落た曲とジャズ風の即興が入り組む。観客たちも積極的に、つたない日本語で歌詞を口ずさんでいたり、曲にあわせて手をふったり。セット転換中は、ステージ後方に吊り下げられたLEDスクリーンで、缶ビールやスナックのCMに交じって、フジロック・フェスティバルのプロモーション映像がくり返されている。

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     日頃の疲労も相まって限界だったので、仲間を残していちど宿に帰る。ぬるま湯がチョロチョロとでるシャワーを浴びて、1時間ほど仮眠してから、また会場にもどってきたときにはもうすっかり日も暮れ、日中の蒸し暑さも和らいで、ときおりここちよい夜風が吹きぬける。となると、やっぱりビール! 3缶セットでイラストの描かれた手さげ袋がついてくるのだけれど、昨日今日で4つおなじ袋がたまってしまった。芝生の丘の頂上にあるベンチに座る。「能量舞台」から漏れ轟く「TRASH」のLinkin Parkを思わせるエモい演奏にあわせて、今夜も大合唱がはじまる。昨日よりも芝生の上のレジャーシートや簡易テントが増えた気がする。さぁ、いよいよ最終日の大トリだ。

     やはり長蛇にのびた入場まちの列にならんだものの、この日はすんなりまえのバンドの観客と入れ替わって、あっけなく「能量舞台」に入場できた。観客同士の暗黙の了解なんだろうか、ステージ前方エリアが事前抽選制のロッキン・ジャパン系のフェスとは大きなちがい。「血肉果汁機ってどんなバンドなんでしょうね?」 合流した仲間が漢字表記を見てつぶやく。「Slipknotみたいな感じ?」 実際に登場したのはホラーな豚のマスクを被ったヴォーカルで、まさにSlipknot × マキシマム ザ ホルモンといったスクリーモなメタル。そこに台湾ルーツな要素も入っているのだろうか。演奏がはじまると、若い子たちが飛び跳ねるようにステージ前方やアリーナの通路に走っていっては、横ならびになって夢中でヘドバンにいそしんでいる。

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     初日から『搖滾台中』でいちばん印象的だったのは、観客の、とくに若い子たちが演奏に参加し、積極的に楽しんでいる姿。「青春を謳歌している」光景がごくごく自然に映える。いや、もう死語かもしれないけれど。それが、常識というか暗黙の了解もふくめてなんだろうか、観客、スタッフ問わず若者たちでしっかりオーガナイズされ、洗練されている。スタッフTシャツを着た若者たちが、有償か無償かはわからないけれど、入退場の誘導やゴミの分別をふくめ、いい大人が拡声機でがなりたてるような光景は目にしなかった。交通規制された森林公園に面した三方の通りに、数人の警官が立っていたくらい。一体感のあるほんとうにいいヴァイブスで、その場にいるだけでくつろげる。でも、なんだか懐かしくもある。フジロックがはじまった頃の雰囲気にちょっと似ている…気がする。

     

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