朝霧JAMの歴史
- 2022/09/30 ● Column, from fujirockers.org
朝霧JAMは2001年に始まった。大きな会場の変更もなく20年近く続いている1万人規模の音楽フェスティバルは日本では少ないのではないか。
晴れていれば富士山、遠くには駿河湾を望めることができる朝霧アリーナという国内屈指のロケーションのステージをメインステージにした朝霧JAMは、まずは何よりもこの場所が好き、という人を集めてきた。霧に包まれればそれはそれで雰囲気よいし、豪雨に見舞われる年があるのが辛いくらいで基本的には最高の場所でおこなわれるフェスなのだ。
朝霧JAMが始まるまで
話は1998年にさかのぼる。SMASHの日高社長(当時)による著者『やるかFUJI ROCK 1997-2003』によると、富士山麓・天神山スキー場でおこなわれた1回目のフジロックのあと引き続き天神山で開催をしようとするも断念。その後、愛車のジープを走らせ、フジロックができそうなところを探していた。そこで朝霧高原という魅力的なところでフェスができないか模索する。
しかし、地元との交渉が時間切れとなり、2回目は東京の豊洲でおこなわれた。豊洲のフジロックが終わって、その年の8月から11月にかけて朝霧へ頻繁に足を運び県会議員や地元の人たちとの交渉をおこなっていた。そのころ朝霧高原で日高社長は地元の人や静岡や山梨に住んでいるフジロッカーたちとキャンプしながら交流していたのもその一環なのだろう。地元の人たちと火を囲み酒を酌み交わして自身の構想を語った。
1回目の朝霧JAM
結局、3回目のフジロックは苗場でおこなわれるようになり、朝霧高原でフェスをやるというアイデアは2001年に1回目の朝霧JAMとして実現した。当初はフジロックのスピンオフみたいな位置付けで始まった。メインのステージとキャンプサイトに作られたDJブースのみ。レイアウトが結構違っていて駐車場はキャンプサイトBの林を抜けた先にあった。ライヴやDJがオールナイトでおこなわれていたけど、早朝に近くの牛舎で牛の出産があるからといって音がしばらく止まったことがあった。
1回目の出演者はザ・ディスコ・ビスケッツ、オゾマトリ、ギャラクティック、エイドリアン・シャーウッドなどの洋楽勢に東京スカパラダイスオーケストラやKEMURIなども出演。みんな様子見なのか人は少なく会場はガラガラで、Bサイトにテントを建てて寝泊まり飲食をおこない、Aサイトにタープを建ててライヴをまったりと観るという2ヶ所を拠点にすることもできた。
現在の形に落ち着くまで
ステージがメインの「レインボー・ステージ」とセカンドステージにあたる「ムーン・シャイン」になったのは2002年。ムーンシャインはまだオールナイトでDJがおこなわれていた。現在ムーンシャインとして使われている場所はこの年は駐車場だった。この年のレインボーステージには元ザ・クラッシュのジョー・ストラマーが出演。その年の12月に亡くなったので、貴重なステージとなった。
おそらく今の会場レイアウトになったのは2003年だと記憶している。オールナイトもそのころにはなくなっていった。また10月のスポーツの日あたりの連休でおこなわれるイメージがあるけど、会場を借りることができなかったため2002年と2003年は9月下旬におこなわれた。この年は天候が悪くステージが霧に包まれていた。天候が安定しない9月より、比較的安定している10月の開催に戻ることが望まれていた(後述するように10月でもいろいろあるわけだけど)。
レジェンドたちの出演
フジロックではおなじみの忌野清志郎も朝霧には2002年だけに出演した。2003年はニューヨーク・パンクを代表するバンドのひとつであるテレヴィジョン、フェラ・クティの右腕的存在で、のちにデーモン・アルバーンやレッド・ホット・チリペッパーズのフリーと組むトニー・アレン、レゲエ/ダブの重要プロデューサーであるマッド・プロフェッサーが出演。2004年はメキシコ系アメリカ人バンドの代表であるロス・ロボス、2005年にはケルティック・パンク(アイリッシュ・パンク)の代表的なバンドであるザ・ポーグス、2008年と2016年にジャマイカのスカのレジェンドザ・スカタライツ、2010年には名曲を多数生むソングライターにして、プロデューサーとして多くの名盤生みだしたトッド・ラングレン(しかし、このときは自身の曲はあまり演奏せずロバート・ジョンソンのブルースのカヴァーを中心に演奏していた)、2012年にはレゲエのレジェンドとしてドン・レッツ、さらにリー・ペリー、パブロックの名ギタリストであるウィルコ・ジョンソンはガンの闘病前と闘病後の2012年と2017年に出演している。2014年はレゲエのリズムセクションであるスライ&ロビー……とレジェンドの登場がある。
こんな人たちもでていた
のちに活躍する人たちがでていたというケースもある。2014年のフジロックでヘッドライナーを務めるジャック・ジョンソンは2003年に登場。2012年ホワイトステージでトリだったフランスのエレクトロデュオであるジャスティスは2006年ムーンシャインにでていた。今年のフジロックでフェイク・クリエーターズの一員として深夜のレッドマーキーを踊らせたDE DE MOUSEは2008年に出演している。ずっと真夜中でいいのにに参加しているOpen Reel Ensembleは2012年にムーンシャインで鮮烈なライヴをみせてくれた。2013年には当時強力にプッシュされたザ・ストライプスもフジロックに先立って出演している。2015年のムーンシャインに登場したSuchmosは2年後の朝霧JAMでヘッドライナー格となった。今年のフジロックにも出演したスネイル・メイルは2018年にでている。演奏はしなかったけどDJとして出演というのもあって、2003年にケミカル・ブラザース、2014年にジェイムス・ブレイクが1-800 ダイナソーの一員としてDJをおこなった。
・JACK JOHNSON | FUJIROCK EXPRESS ’14
・JUSTICE | FUJIROCK EXPRESS’12
・Fake Creators (LITE, DÉ DÉ MOUSE) | FUJIROCK EXPRESS ’22
・ずっと真夜中でいいのに。 | FUJIROCK EXPRESS ’22
・THE STRYPES | FUJIROCK EXPRESS ’14
・Suchmos | FUJIROCK EXPRESS ’18
・SNAIL MAIL | FUJIROCK EXPRESS ’22
先進的なアーティストも
どうしても「ジャム系、レイヴ系、アコースティック系」のイメージがある朝霧JAMも、2004年にはその年にUKナンバー1ヒットを放ったフェイスレスが出演していた。2007年はスタジオ音源を一切リリースしない即興エレクトロ・バンドのザ・ベイズ 、2011年には球体スクリーンの演出がすごかったDJシャドウなど非常に格好いいライヴをみせてくれた。
晴天・荒天・霧
フジロックのように屋根付きのステージもないので雨から逃げる場所がないのが朝霧JAMである。一方、晴れていれば最高に気持ちよいところだ。2005年は両日ともに晴れ、フロッギング・モリー、サウンド・トライブ・セクター・ナイン、ザ・ストリング・チーズ・インシデントが朝霧史に残るライヴをみせてくれた。
豪雨は2010年や2018年の1日目が記憶に残る。2010年は厳しい状況下でも繊細なステージだったスティーヴ・ナイーヴ、壮絶なライヴをおこなったマヌ・チャオ・ラ・ヴェンチュラと豪雨とセットになって覚えているライヴがある。
また、地名の由来である霧に包まれることもあり、2002年、2016年、2018年の2日目の朝などは視界もないくらいの霧のときがあった。
朝霧の転機
割と地味に始まった朝霧JAMも2004年ころからは出演者を発表しなくてもチケットが売り切れてしまうようになった。2005年が晴天だったこともあり人気は加速、キャンプサイトAキャンプサイトはもちろんキャンプサイトBの良条件のところ(ステージ近い、水場近い)の争奪戦も激しくなった。そのピークが2007年前後の数年間だったと思う。
2011年は前年の豪雨のトラウマか東日本大震災の影響か落ち着きはじめ、2014年ころには世代交代なのかギラギラしたキャンプサイト争奪戦も一部にとどまるようになった。ちょうどそのころ目立ちはじめたのがヘリノックス系の椅子である。軽量で座り心地もよいので今までの客席の光景を変えつつあった。しかし畳まずに歩く人たちが多く、ついにフジロックでは使用禁止となってしまった。ここ数年はアウトドアブームなので新しいキャンプ用品がでてきてその移り変わりを観察できるのも朝霧JAMである。
また、2017年にはライヴが始まる前の会場を野生の鹿が駆け抜けていったこともあった。近年は富士山麓で鹿が増えているようで、その年の帰りに駿河沼津スマートインターあたりでみかけたし、2015年には帰りの西湖あたりでみたこともあった。
朝霧のベスト
では朝霧JAMのベストってなんだろうと考えると、先述の2005年ザ・ストリング・チーズ・インシデントや2007年のザ・ベイズも挙がるし、近年だと2017年のベル&セバスチャン、2018年のジョン・バトラー・トリオ+も挙げられる。それとボアタムズ関連のバンドは何回かでていて、その度にすさまじいライヴをおこなう。2002年には7VO7 a.k.a. Boredoms、2006年にV∞REDOMS、2018年にはBOREDOMSとしてでている。豪雨の中で壮絶なライヴをおこなった2018年が記憶にも新しい。フジロックで常連のイメージあるROVOも2004年と2011年にすばらしいライヴをおこなっていた。
2019年は最高のメンツだったのに……
2019年は台風で中止になってしまったけど、発表されたアーティストは朝霧史上最高のメンツだと思った。特にホット・チップは中止が決まった瞬間にコンビニに駆け込んで単独公演のチケットを買い、そのライヴがすばらしかったので、朝霧でみられなくて残念な思いが倍増したのだった。
他にもバッドバッドノットグッドやアイルランドのベテラン、ホットハウス・フラワーズ、カナダのインディ・ポップであるメン・アイ・トラストや今年のフジロックにもでたコーネリアス、ハナレグミ、幾何学模様、折坂雄太も出演予定だった。そして、2016年、2017年のフジロックで局所的に盛り上げた桑田研究会バンドも楽しみであった。ホント残念でならない。そのうちBIMやジ・アレックスは今年の朝霧にでるので楽しみにしよう。
2020年、2021年はコロナ禍でおこなわれず
2020年、2021年はコロナ禍でおこなわれることはなかった。2021年に富士宮市にいったときにイベントカレンダーというポスターが貼ってあってそれには朝霧JAMが予定に入っていたのだった。どれくらい予定されていたのかわからないけど、開催するには多大な努力・労力が必要なんだろうなと感じたのだった。改めて今年は無事に開催されることを祈るばかりだ。
・朝霧JAM 関連記事はこちら
・朝霧JAM 2017 フォトギャラリー(Facebook)
・朝霧JAM 2016 フォトギャラリー(Facebook)
Text by イケダノブユキ
Photo by fujirockers.org
It’s a beautiful day〜Camp in ASAGIRI JAM’22
10月8日(土)9日(日)富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら
開場・キャンプ開始:10月8日(土)10:00〜
開演:10月8日(土)13:00〜 予定
終演:10月9日(日)20:00 予定
ASAGIRI JAM ’22 PLAYLIST on YouTube
https://youtube.com/playlist?list=PLepzPPdPeqbNyh53adC2QQeCBXflTsp5Z
ASAGIRI JAM ’22 PLAYLIST on Spotify
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<入場券情報>
9/13(火)12:00〜チケット一般発売開始!
新たに1日券の取り扱いもスタートします。
場内駐車券、及びふもとっぱらオートキャンプ駐車券は完売のため取り扱いはありません。
その他券種につきましても売り切れ次第販売終了となります。お求めはお早めに!
<受付期間>
9/13(火)12:00〜売り切れ次第販売終了
<受付券種>
・入場券(2日券)- ¥18,000 (お一人さま / 税込 )
※ こちらのチケットでキャンプも行なっていただけます。
※ 小学生以下のお子様は保護者同伴に限り入場無料です。
・入場券(1日券)- ¥12,000 (お一人さま / 税込 )
※ キャンプの利用はできません。
※ 小学生以下のお子様は保護者同伴に限り入場無料です。
※ ご購入いただける駐車券は場外駐車券のみとなります。
・ふもとっぱらパーク&キャンプ駐車券 (場外駐車場)- ¥8,000 (1台 / 税込 )
・場外駐車券 – ¥5,000 (1台 / 税込 )
※ 駐車券は、2名様分の入場券と併せてのみ購入可能です。
<受付>
・イープラス https://eplus.jp/asagiri/
・岩盤 https://ganban-asagiri.ocnk.net/
・チケットぴあ https://w.pia.jp/t/asagiri2022/
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<バスプラン>
各種バスプランの申し込みと合わせて入場券を同時に購入することができます。
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受付中〜9/30(金)17:00
コラボレーション https://www3.collaborationtours.com/asagiri/
詳細は必ず朝霧JAM オフィシャルサイトをご確認ください。
◆朝霧JAM オフィシャルサイト https://asagirijam.jp
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本日12:00〜10/7(金)18:00 日本時間
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◆朝霧JAM オフィシャルサイト https://asagirijam.jp