• フジロックから朝霧JAMへ、桑田研究会バンドやのっちの現在


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    2016年にフジロックのオレンジカフェに登場したサザンオールスターズのトリビュートバンドである桑田研究会バンドは、小さいステージだったけれども、非常に盛り上がり、ライヴ後の反響も大きかった。翌2017年は一日中トリビュートバンドが集まるステージとして、桑田研究会バンドは、その中心を担うまでになった。もちろんライヴは盛り上がった。

    フジロックでブレイクしたバンドとして順調に出演を重ねる……はずだったけど、リーダーでヴォーカルの「やのっち」こと矢野康弘さんが難病にかかってしまう。フジロッカーズorgでは、矢野さんの病状、バンドの現在を伺った。

    そして、今度の朝霧JAMに桑田研究会バンドは出演が決まった。カーニバルスターに出演するバンドは、どのようにライヴをおこなうのか、サザンの名曲を思いだしながら期待しよう。

    アメリカで本場のトリビュートを観た

    2011年にたまたま知り合いの紹介でスマッシュの人に会ったんです。フジロックのことは知っていましたが、フジロックはゴリゴリの洋楽ファンが来るイメージなんで、自分たちとは縁がないと思ったんです。そのスマッシュの方がオレンジカフェをやることになって、出ませんかという話になって、邦楽のトリビュートバンドだとディスられるんじゃないかと思ってたんですが、興味もあるし出られるならぜひ出たいと。

    2016年のフジロックにでるまえに、本場のトリビュートはどんなものかということでアメリカにいったんです。レッド・ツェッパゲインというレッド・ツェッペリンの完コピバンドのギタリストでジミー桜井さんという人がいるんですが――最近は、レッド・ツェッペリンのドラマーのジョン・ボーナムの息子、ジェイソン・ボーナムがやっているレッド・ツェッペリンのカヴァーバンドのギタリストになったんです――ジミーさんが日本に帰ってきたときに会って「トリビュートをカルチャーにしたい、産業にしたいと思ってるんです」という話をしたら、当時ジミーさんが所属されていたマネジメントがアメリカ西海岸のトリビュートバンドをまとめていて、その社長さんを紹介してくれたんです。ラスベガスでショーを観たり、社長さんに会って話を聞いたら、ゴルフリゾートみたいなところの大きな家に住んでいて「僕はトリビュート(のマネジメントの仕事)だけでここに住んでるよ」っていっててめっちゃ稼いでいるんです。

    アメリカでは、クラブやライヴハウスはお酒で儲けているので、よい演奏をしたらお客さんはどんどんお酒を飲むんです。お酒が売れるのは、オリジナルよりトリビュートバンドだと、その社長さんが悟ったんです。毎週末いろんな町でガンズ・アンド・ローゼスとかジャーニーの取り合いなんです。ラスベガスだったら一流のガンズ・アンド・ローゼスのカヴァーバンドがいくけど、そこから離れた小さな町では三流のガンズ・アンド・ローゼスがいくんです。

    緊張したフジロック2016

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    そして2016年にフジロックにでました。ディスられるのは覚悟して緊張したんですけど、めちゃめちゃ受け入れてくれたんです。たくさんSNSで「よかった」って書いてくれて、「楽しければなんでもいいじゃん」っていう素敵なお客さんだなと思いました。2017年は、僕たちの仲間のABBAやカーペンターズのトリビュートがでたり、まねだ聖子さんが出たりとオレンジカフェがトリビュートステージになって、お客さんもさらにウェルカムだったなあと。お客さんは音楽好きだし、音楽に詳しいし、オリジナルであれ、カヴァーであれ、とにかく楽しくしてくれる人がいいよっていう純粋な感じでした。あとでフジロッカーのお客さんに聞いたら「僕もずっと通っているけど、初期だったら認めなかった。でも年を取ってきて(トリビュートを)楽しめるようになった」っていってました。

    ■ フジロックに出演した桑田研究会バンドの盛り上がりがすごい!
    https://matome.naver.jp/odai/2146974315051510301

    ■ フジロック2016のレポート
    http://fujirockexpress.net/16/p_1154

    ■ フジロック2017のレポート
    http://fujirockexpress.net/17/p_1614

    ■ フジロック2017の様子

    2017年は体調が悪くなっていた

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    2016年は、夏はショーが続くので、静岡県の別の現場から当日苗場入りして、他のバンドを観るような余裕がなかったんです。2017年は、実は具合が悪くなって、ご飯も食べられないし、倒れるくらい疲れがあったんです。フジロックに合わせてなんとか体調を管理して、本番はアドレナリンが出たのでできました。今思えば、今抱えている大きな病気の前兆だったかもしれないんですけど。それでも盛り上がったし、雨でしたけどモッシュも起きたし楽しかったんですけど、東京帰ったらすごい熱が出て大変でした。

    光を失う

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    その年の11月に、いろんなステージが終わってようやくひと段落したんですが、ある朝起きたときどんと悪化してました。それまでもパソコン見るとクラクラしたので、パソコンの照度を一番落として暗くしていたんです。それが悪化したとき、部屋の電気点けると頭も痛いし動悸がしたんです。携帯電話が見られないし、見ると具合が悪くなる。お風呂の温度表示も見られないんです。

    それで最高に詳しいお医者さんに行こうと、2018年の1月にそのお医者さんのところに行ったんです。眼球使用困難症の中に中枢性羞明(ちゅうすうせいしゅうめい)というのがあって、目玉には問題ないけど、目玉がつながっている神経や、神経がつながっている脳の病気であるといわれました。羞明というのは「明るさが嫌だ、光が嫌だ」という意味で、僕のようにそれが原因で生活に支障が出る人は、日本には1000人いるかいないかの非常に珍しい病気ですね。その先生は何人も患者を診ていて治った人はみたことがない。

    終わった。俺の人生は終わった。こんな光が見られないということは、ステージライトは無理だし、楽屋の蛍光灯ですら辛い。本当の重度の人は太陽光もダメですが、僕は太陽光はまだマシなんです。太陽の下にいても大丈夫ですが、電気点くと無理なんです。倒れるくらい。

    桑田研究会バンドを続ける

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    それで桑田研究会バンドはお休みすることにしました。だけど日本のトリビュートバンドでフジロックにまででられて仕事として演奏できている人って本当に一握りなんです。もったいない。ここまでやるには相当努力したし、知恵も使ったし、需要も生んで生き残ってきた。桑田研究会バンドではサザンオールスターズの音楽を完璧に演奏して、そこに挟むMCはバラエティ要素を持たせる。どうやったら地方でのホテルショーや営業で求められるかを必死に考えたんです。これで終わらせたらもったいないと。桑田研究会バンドは僕のバンドであったけれども、実際コンテンツは、サザンオールスターズという素晴らしい音楽が生演奏で、しかも身近聴けるんだと、コンテンツ自体は僕じゃなくても成立するだろうと。

    歌の上手い人はたくさんいるんです。だけど、イベントや営業で幅広い世代のたくさんのお客さんがお酒を飲んで酔っ払っている中で、上手いこと気を利かせてお客さんをイジったりトークしたりするという2つを兼ね備えるのはめちゃめちゃ難しいんです。で、たまたま思いだしたのが知り合いの「いっせい君」というものまね芸人でした。まだ26歳くらいの若い子なんです。ライヴのときに挨拶に来てくれたことがあるんです。それを思いだして連絡を取ってもらって、僕が出られない間、やってくれないかっていったら「ぜひやらせてもらいます」いってくれて、去年の夏からいっせい君が桑田研究会バンドをやっていくことになったんです。彼はものまねショーをこなしてきたし、酔っ払ったお客さんへの喋りも完璧だし、サザンへの知識も愛もあるし、歌える。この人しかないだろう。それで1年やって彼の桑田研究会バンドも愛されているんです。「矢野さんいなくなってどうなっちゃったの?」という人にもすごく丁寧に「矢野さんが病気になったけど、僕が任されたので、矢野さんが復帰できるまでがんばります」と説明してくれます。

    僕は僕で音楽とどう関わっていこうかなと。今まではサザンを完コピすることにしか興味がなくて、自分が歌うのはサザンだけでいいと思っていたのですが、そういうわけにもいかない。光がダメでもサザンが歌えるでしょ? っていわれるんですけど、僕の中でのサザンのカヴァーはそうじゃないんですよね。やっぱりステージを走り回って照明をバチバチ当てて、お客さんたちを煽ってという派手なステージで、サザンを観ているのかなという気持ちにさせるまでがトリビュート。僕がただひとりで歌うのはトリビュートでなくて、サザンを歌っているおじさんなんです。

    朝霧JAMへ

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    音楽活動としては、あまり照明のない老人ホームを慰問して歌っています。美空ひばりさんや加山雄三さんを歌ったり、たまにカフェで桑田研究会バンドを観に来てくれたお客さんを集めて歌ったり、45歳にして初めてオリジナル曲を作り始めたんです。社会的な立場が弱くなると、障がいがある人がどうやって生きているのか、敏感になるんですね。そういう気持ちをオリジナルにして歌っています。

    そこへスマッシュの方から朝霧JAMはどうかと話がありました。朝霧JAMはキャンプ場だし、自然で人工の光がありませんから、という話を受けて、僕の体調が不安定なんで、いっせい君にやってもらうんですけど、体調次第では僕も久々に何曲か歌うのはどうですかと。今、それに向けてサザンを歌っています。しばらくサザンを歌ってなかったんで、サザンを歌うと僕の人生はサザンと共にあってサザンを歌うことに人生を賭けているっていうクレイジーな人生だったわけで、聴くと思いだすんです。あれを聴くとあのときああだったなとか、俺元気に歌ってたなとか、あのときめっちゃ練習したな、とか辛いんですね。まだ全然受け入れられてない。でも朝霧JAMにだしてもらえる、これはすごいことだから、今は練習したり準備をしているところです。当日いって暗くなる前に帰れるような時間帯を設定していただきました。

    僕の代わりにやってくれているいっせい君のサザン愛がすばらしいので、まずはそこを楽しんでもらいたいなと。僕のときみたいに一緒にシンガロングしてもらいたい。僕も久々に桑田研究会バンドで歌いたいので、行けるように頑張ります。応援してください。

    矢野康弘 Official Site
    https://yanocchi.com/

    桑田研究会バンド公式サイト
    http://www.kuwaken30.jp/

    やのっちのサザン愛、完コピに対しての考えなど、音楽的に掘り下げたお話は後日LIM PRESSにて掲載されます。

    文:イケダノブユキ、写真:森リョータ(インタビュー) & fujirockers.org(フジロック、朝霧JAM)


    朝霧JAM 2019 – It’s a beautiful day

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    2019年10月12日(土)〜13日(日)
    富士山麓 朝霧アリーナ · ふもとっぱら
    (静岡県富士宮市朝霧高原 周辺)

    https://asagirijam.jp/

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