• 「フジロックを守りたい」その想いはどこからくるのだろう。下町バルながおか屋 編


    たくさんのガイドラインとルールの下で開催されたフジロックから約1ヶ月が経過しました。ニュースでは開催に対しての賛否両論が巻き起こりましたが、その影で「フジロックを守りたい」と動いていた人たちがいることを決して忘れてはいけません。今回も前回の記事に引き続き、今年のフジロックを影で支えた人たちに話をきいてきました。なぜ、みなさんはフジロックを守りたいと動いたのでしょうか?そして、その想いはどこからくるのでしょうか?

    フジロックで美味しいラムチョップを提供してくださっている「下町バルながおか屋」の代表・前川弘美さん(以下、敬称略)の話をお届けします。

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    そこにフジロックがあるなら行くしかない

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    ─ コロナ禍で行われた今年のフジロックを振り返って、率直な感想を聞かせて下さい。

    前川:「やっぱり行ってよかったな!」って思っています。生きていく希望が湧いて「よし!この先も何とかなるかも!」って思えたんですよね。フジロック前は(緊急事態宣言でお店の売上も)相当落ち込んで「このあと、どうなるんだろう」って…。今年のフジロックも本当にできるの?って直前まで思ってましたし。

    でも、普通だったらできないことをやり遂げましたよね…。そんな場に出店できて、みんなと一緒に気持ちを分かち合えたことがすごく良かったなって。「できないことをなんとかやる力」って大切だし。

    きっと主催者は「フェスがやりたい」とか「お金儲けしたい」ということではないと思っていて。それ以上の気持ちがあって開催していると思っているんですね。それが実現できたことにすごく勇気をもらうことができて、力になりました。

    2015年の様子

    2015年の様子

    ─ 今年は酒類の販売もありませんでした。売上に影響するはずです。それでも出店すると決めたのは、どうしてですか?

    前川:それはもう、そこにフジロックがあるなら行くしかないじゃないですか。それに、うちの店も赤字だろうけど、ほかもきっと赤字だろうし。きっと、それをわかったうえで皆さん出店に踏み切ったわけで。

    私は「出店することが応援だ」と思ったんです。今年で11年目なので、フジロックの開催回数からしたら、新参者なのかもしれない。それでも、(コロナ禍で開催するフジロックという)一番辛い時期に関われるっていうのが嬉しいと考えました。

    参加する人も意を決して来てくれるわけだから、おもてなしをしたいし。私たちの場合はラムチョップだけど、愛を持って提供したいな…。って考えたんです。

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    前川:毎年出店しているわけだから、(わたしたちも)フジロックの一部なのかな…。出店者はフジロックを作る小さな小さなパズルのピースの一つかも知れませんけど。ラムチョップに愛を込めて作り上げて、その1ピースをフジロックにはめ込みたかったんです。

    ─ 今年フジロックに行けなかったという方が、通販サイトで買われていたという話も耳にしました。

    前川:来られなかった人がラムチョップを通販で購入してくれたのも滅茶苦茶嬉しかった。例えば、グリーンステージを見ながらラムチョップを食べたという話を聞いたんだけど、わざわざオレンジ・カフェから運んだのかと思ったら、配信を見ながら通販のものを食べたとのことでした。それが本当にありがたくて感動でした。

    フジロックでラムチョップにかぶりつきたい

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    前川:2003年に(客として)フジロックに初めて行ったとき「ここでラムチョップにかぶりつきたい」って、急にふと思い浮かんだんですよ。しばらくその気持ちを忘れていたんですが、2009年に実店舗を出すときに(2003年)の気持ちを思い出してラムチョップのお店にしたんです。その一年後の2010年にフジロックでお店を出すことになりました。

    ─ 2003年にそんな気持ちにならなければ、フジロックにラムチョップはなかったかも知れません。

    前川:なかったです、今の店もなかったです。(実店舗は)リスク覚悟で始めたんですけど、残念ながらお店を始めた2009年の頃はウケなかった。食べる人が少なくて売り上げが良く無かった。それでも続けていられたのは、打たれ強いからかな(笑)。

    2017年の様子 | Photo by fujirockers.org

    2017年の様子 | Photo by fujirockers.org

    ─ フィールド・オヴ・ヘヴン (以下、ヘヴン)に毎年出店しているのはなぜですか?

    前川:ヘヴンのあの雰囲気が好きなんです。夜とか良いですよね。何より目の前にステージがあるんだもん。フジロックの空気感に包まれて贅沢な気持ちになれると思ったんです。それとヘヴンには素敵で格好いいお店が多いじゃないですか!あの中に入れたら最高!って思いました。

    ─ ヘヴンに行けば美味しいラムチョップが食べられると認識されるようになりましたね。

    前川:最初の頃はやっぱり反応が気になってしまい、お客さんに「美味しかったら振り向いて!」と叫んでいました(笑)。それで、振り向いてくれる人がいると超うれしくて、がんばろうー!って思いました。

    ─ お客さんに対しても愛を持って対応されているというのがよく伝わりました。その想いはどこから来ていると思いますか?

    前川:お客さんも含めてフジロックが好きだからです。だから、「来てくれてありがとう」という感謝の気持ちを持ってやっています。いつだったかな、フジロックが終わってからSNSを見たとき「一番(接客の)感じが良かったのは”ながおか屋さん”だった」という投稿があって、嬉しかったです。

    ─ 最後に読者へメッセージをお願いします。

    前川:参加したことでフジロックの一員になれたとお話ししてきましたが、色々な決断をした中で参加することをやめた方も多いと思います。それも素晴らしい選択だったと思います。そんなみなさんがいれば、フジロックは無くならないです。だからこそ、来年こそはフジロックでお会いしましょう。

    ─ 本日はありがとうございました。

    最後に

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    筆者はフジロック開催期間中にアヴァロンで舞茸料理を提供しているタナカクマキチ。さんにも伺い、今年のフジロックについて聞いてみました。そこでは「人が少なくて列もできていない状態で、売り上げも良くない。でも、それでも良いよ、ここに来れて嬉しい。フジロックに協力できているから」という声を聞くことができました。

    苦労をともに…。それでも「フジロックを守りたい」という想いはすべての出店者が思っていることなのかも知れません。

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    取材後にランチプレートを頂きました。実店舗にはフジロックのときには食べられない塩味のラムチョップやラムチョップを薄く伸ばして揚げたフライがありました。とても美味しかったので実店舗にも足を運んでみてくださいね。

    ■ 下町バルながおか屋
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    ■ タナカクマキチ。
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    文:Masaya Morita
    取材、写真、編集:アリモトシンヤ

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