• ブッキング担当者を直撃インタビュー!(後編)「フジロックに行ってみたら、僕みたいに人生が変わるかも」


    いよいよ今月末です! 今年のフジロックは、出演者の年齢幅が広いですね。10代の現役中学生から80代の大御所まで、まさに親子三世代。そして、まさか、タイムテーブル発表前に3日通し券まで売切れるとは。もしかすると、今年はフジロック史上初の全券種ソールドアウトになる可能性も!? 迷っている時間はなさそうなので、まだ買ってない方は残りのチケットが売り切れる前に確保を。

    今年で23回目の開催となりますが、「フジロックがなかったら今の自分はない」そんな風に、フジロックが自分の人生に多大な影響をもたらしたという人は少なくないと思いますが、スマッシュ高崎さんもその中のひとり。初めてのフジロックとなると、少しハードルが高いかもしれませんが、そこを超えた先には想像以上の楽しい世界が。迷っているなら思い切って飛び込んじゃいましょう!

    それでは、フジロックもサマソニも皆勤賞という高崎さんの熱い想いと共に、インタビュー後編も盛りだくさんな内容でお届けします!

    スマッシュ高崎さんインタビュー前編はこちら

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    始まりは、1997年、天神山のフジロック

    ─ これまでのお話を聞いて、高崎さんは「新しいお客さんにも来てもらいたい」という気持ちがとても強い印象を受けますが、何か理由があったりするのでしょうか?

    僕、1997年にフジロックが初めて開催された時、お客さんで行ってたんですよ。

    ─ 伝説の天神山、行かれたんですね! 羨ましいです…。初年度に参加できなかったのは人生の後悔のひとつなので。

    そうなんですよ。知っていると思いますが、台風が来てものすごい悪天候で、会場は泥でぐっちゃぐちゃでした。でも、レイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)もレッチリ(レッド・ホッド・チリ・ペッパーズ)も出るし、なんなんだ! この豪華過ぎるラインナップは! って大興奮でしたよ。

    ─ 1997年のフライヤーを見返すたびに、メンツの並びヤバいなって思います。

    フジロック初年度に参加した時は、大学4年生だったんです。卒業してサラリーマンになったんですけど、仕事がつまんなくて(笑)。そこで知り合いの先輩に「フジロックを開催している会社に繋いでくれ!」ってずっと話していたら、本当に繋いでもらえて。働きたいです、という話をしたところ、「東京は人が足りているので、大阪でバイトからだったらいいよ」ということで、スマッシュに入りました。

    ─ なんと、そんな経緯で入社されていたとは!

    僕は、フジロックに行って人生が変わった人間なんですよ。フジロックの話をすると、全員とは言いませんが「いつか行ってみたいんですよね」って言う人もけっこういて。

    ─ 「いつか行ってみたい」は、「フジロックあるある」ですよね(笑)。

    あるある、ですね(笑)。

    でも「いつか行きたい」と言っている人の多くは、多分行かないんじゃないかなと思うんです(笑)。あくまで僕の個人的な考えですよ。もちろん、そうじゃない人もいると思いますけど。

    たった3日間をフジロックで過ごすだけで
    残りの362日が違う世界に

    僕の場合は、97年に天神山のフジロックに行って、人生が変わったんですよ。だから、1年で365日ある中の、たった3日間を苗場で過ごしたら、残りの362日は、今までと違う世界が待っているかもしれない。もしかしたら残りの人生が変わるかもしれないよ、と思っていて。だから、「まずは行ってみようよ!」って言いたいんです。

    だって、ちょっとおかしいじゃないですか、フジロックの独特な雰囲気って(笑)。異空間ですよね。あれは他のフェスでは味わえないですよ。

    だから、フジロックに行ってみたら、僕みたいに何か人生が変わるかもしれない。音楽の聴き方が変わるかもしれないし、海外フェスにも行ってみようっていう気になるかもしれない。フジロックは、体験した人に何かしらの影響を与えることができる場だと思っていて。それくらいのものを作っているという自負はあるので。

    だからこそ、行ったことない人ほど、3日間頑張って来て欲しいんですよ。今まで来てくれている人には、今年もいいアーティストをブッキングするので来てください。まだ来たことない人には、こういうアーティストも入れるので、来てみませんか? と思っていて。その入口として、シーア、マーティン・ギャリックス(以下、マーティン)も入れたいな、というのが僕の個人的な意見です。

    もちろん、会社としても「みんな一度フジロックに来てみなよ」という思いは持っていますよ。

    高崎さん推しのアーティスト

    ─ シーア、マーティン以外で、今年のライナップの中で高崎さんが推しているアーティストは誰でしょうか?

    ジョナス・ブルー(7/26土曜日)とアン・マリ―(7/27金曜日)ですね。

    実は、ジョナス・ブルーは社内で大反対されたんですよ。ポップすぎるってことで。うちの会社は基本的にあまりEDMが好きじゃないのでジャッジが厳しいんですよ(笑)。

    ─ そうなんですね。マーティンが決まった流れで、EDMはOK!とスムーズにはいかないのですね。ジョナス・ブルーが受け入れられずらかった理由は何でしょうか?

    ジョナス・ブルーは、EDMの中でも特にポップなんですよ。それで、「これはどうなの?」という意見が大半でした。最終的にはOKになりましたが。今年はせっかくマーティンが決まったので、ジョナス・ブルーをマーティンと同じ日に入れたくて。

    ─ なるほど、土曜日はEDMの流れを作りたいということですね。

    はい。ジョナス・ブルーは、昨年、「ライズ」(Rise ft. Jack & Jack)っていう曲がめちゃくちゃかかったんですよ。もちろん、日本でも人気の高いアーティストです。

    ─ EDMに詳しくない私でも「ライズ」は知っていたので、かなり人気が高いということなんですよね。

    今の10代~20代くらいの世代って普通にEDMを聴くんですよね。例えば、洋楽でアリアナ・グランデを聴くような感覚で。

    マーティンが決まったので、これはジョナス・ブルーも絶対このタイミングで入れたいなと。「いいアーティストなので」と、なんとか説得しました。3月に単独公演をやったのですが、東京も大阪も完売だったんですよ。

    これ、最初に宣言しときますけど、ジョナス・ブルーは絶対にパンパンですよ。

    ─ 途中からちょっと見てみようと思ってレッド・マーキーに行っても、入場規制の可能性大ってことですね。

    それくらい入るはずです。マーティンのお客さんは、絶対にジョナス・ブルーも見ると思うので。この流れを作りたくて、今年ジョナス・ブルーをブッキングしました。

    ─ レッド・マーキーの入場規制と言えば、昔、初めてザ・ミュージックが出演した時、パンパンで途中からは入れなくて、めっちゃ後悔しました(笑)。
    それでは、もう一組の高崎さんが推しているアン・マリ―について聞かせてください。

    実は最初、自分ではなく、他のディレクターに売り込みが来たんですよ。その担当いわく「アン・マリ―は、僕あんまりーなのでお断りしようかなと思っています」と話していて。。。そこから、アン・マリ―についてブワーっと調べて「僕、やります」って手を挙げたんです。

    4月に初来日の単独公演をリキッドルームでやったのですが、チケット2日間とも即完だったんですよ。ライブも良かったので、ぜひともフジロックで見てもらいたいなと思って。

    何の根拠もないけど「これはいける!」

    ─ 最初からフジロック狙いではなく、単独公演の反応を見てフジロック出演というパターンもあるんですね。

    そうですね、いろんなパターンがありますよ。

    先ほども少しお話しましたが(インタビュー前編を参照)、フィーバー333は、一回聴いた時に「よし、これやろう!」と思って。おそらく当時、フィーバー333のことを日本では100人も知らないんじゃないかな、っていうくらいの早さだと思います。超ド新人アーティストなので。

    実は、昨年フィーバー333を知ったタイミングというのが、フジロックのアーティスト枠がほとんど埋まってた時期なんですよ。でもギリギリ空きがあって。そこに入れたい!と思って、「最近、ロックは不況気味ですがフィーバー333はいけると思います!」って会社を説得して入れてもらいました。

    せっかくフジロックに出演してもらうなら、会場で単独公演も発表できるように調整もして。当日ホワイト・ステージでライブが終わった後に、単独日程を発表したんですけど、まさかの3月っていう(笑)。フジロックの時に「単独公演、3月にやります」って言われても、ちょっと先過ぎて「は!?」という感じもあったと思うんですけど(笑)。でも、フジロックでライブ見てくれたお客さんをそのまま単独までひっぱれるように、新人アーティストを日本で広めたい! と思って組んだのがフィーバー333です。

    ─ 初来日でフジロックに出演して、本人たちの感想はどうでしたか?

    ホワイト・ステージでパンツ一丁になってましたよね(笑)。終わった後で楽屋へ行ったら、「すごく最高だったよ!!!」って、めちゃくちゃ喜んでいました。3月のツアーもあるし頑張ろうねって。

    音とMCが全然合わないバンドですけどね(笑)。ラウド系なのに、ライブ終わったらステージで「日本ありがとう!本当にうれしいよ」みたいな(笑)。むちゃくちゃいい人たちで、今年の3月にやったツアー中でも怒っているところは見なかったですね。

    あと、2015年に出たトゥエンティ・ワン・パイロッツもフィーバー333と似たような感じで決めましたね。この2つのアーティストには共通点があって、何の根拠もないですけど、僕の中で「これはイケる!」っていうのがあるんですよ。ちょっと言葉では説明できないですけど。

    だから、日本でまだ知られていない、超ド新人だけど入れ込みました。多分トゥエンティ・ワン・パイロッツ、アメリカ以外では日本が初めのライブだったんじゃないかと思うんですよ。間違ってたらごめんなさい。でもそれくらい先モノでフジロックに呼びました。

    実は、彼ら、今年のフジロックで動いたんですよ。交渉した結果、決まりませんでしたが。今年は、ロラパルーザとレディングでヘッドライナーなんです。まだ日本では、そこまで人気は出てないですが、これからも日本で育てていきたいなと思っているアーティストですね。

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    アンテナの張り方

    ─ エド・シーランをはじめ、高崎さんが目を付けたアーティストは、着実に人気が出ていきますね。ちなみに、普段どんな風にアンテナを張っているのでしょうか?

    色々ですかね。レコード会社や海外エージェント経由で知ったり、ビルボードチャートをチェックしたり。

    ─ 世界のチャートで一番気にしているのはビルボードですか?

    そうですね。指標にするのはビルボードですかね。例えば、スポティファイで気になるアーティストを聴いてみて、ビルボードチャート見て、アルバムとかの反応もあると、これはいけるんじゃないか、って。

    ─ なるほど。自分の感覚、プラス数字なんですね。

    僕はそうですね。各ディレクター、それぞれ考え方は様々ですが。僕の場合は、直感だけじゃなく、チャートなどの数字で理論づけしますね。それで総合的に見て、いけるかどうか判断しています。

    ただ、フィーバー333に関しては、新人すぎて数字の理論づけができなかったので、直感でしかなかったです(笑)。一番直感かもしれない。音に説得力があったので「やりたい!」って(笑)。

    今年の目玉アーティスト「ジャネール・モネイ」

    ─ 今年の出演者の中で、他に特に注目しているアーティストはいますか?

    ジャネール・モネイ(7/26金曜)、ケイトラナダ(7/26金曜)あたりでしょうか。

    まあ、ジャネール・モネイは言わずもがなですけど。海外では圧倒的に人気がありますが、まだ日本ではライブをしたことがなくて。フジロックで初来日になります。来日に合わせて、フジロック直前の7/24(水)に単独もあります

    ─ ジャネール・モネイも初来日になるのですね。

    そうなんです。正直、これは海外格差と言えますね。世界では既に売れていて実力のあるアーティストが日本に来てない、というのは。

    ジャネール・モネイは、ライブを見てもらった後、「わ!すごかった!」という声は、絶対にあがると思っているので見逃さないで欲しいです。当たり前ですが、大きいステージで映えるアーティストですし、グラミー賞にもノミネートされているので、説得力ありますよね。想像するだけですごいステージになると思いますよ。

    それから、個人的にプリンス好きとしては、ぜひ見なきゃ! と思っています。ジャネール・モネイは、今年のフジロックの目玉のひとつですね。新人アーティストではないですけど、初お披露目になるので日本では、新人みたいなものですから。

    「人気」の海外格差

    ─ アーティストの人気における日本との海外の格差について、それで交渉が難しくなる場合もあるのでしょうか? 例えば、世界ではもう人気・実力で認められているけど日本ではまだ知られてない場合でも、アーティスト側としては、メインステージ以外はNGだったり、早い時間帯はNGだったり、とか。

    そういった理由で出演交渉が難しい場合もあますが、アーティストのスタンスにもよりますね。

    過去に、よく出演OKしてもらえたなと思っているのは、2014年のアウトキャストですね。復活して、海外のフェスであればヘッドライナーが当たり前なのに、フジロックではメインステージではないホワイトに出てくれましたからね。あれは奇跡ですね。よくメインではないセカンドのステージでOKしてもらえたなと。

    それから、2017年のLCDサウンドシステムも。復活して、コーチェラではヘッドライナーでしたけど、フジロックはホワイトでしたからね。もちろん、アーティスト側にはそれで承諾してもらっています。一方で、「ヘッドライナー以外では出演しない」という条件の場合も、もちろんありますよ。

    海外格差のわかりやすい例をあげると、ドレイクも海外ではアリーナが当たり前だけど、じゃあ日本ではどうなんだろうか、と思っています。あとは、もしパール・ジャムを呼ぶ場合も、東京ドームくらいのギャラを払わないと難しいと思いますが、じゃあ東京ドームいっぱいまでお客さんが来てくれるかと言ったら、そこも難しそうな気がしますね。

    ─ なるほど! ジャネール・モネイについてもう少しお聞きしたいのですが、出演交渉は今回が初めてになるのでしょうか?

    はい、初めてになりますね。「日本で公演したい」という話が海外のエージェントからあって。それで社内で、フジロックにどうだろうと話し合って動きましたね。「日本でやりたい」ということで、なんとかフジロックに決まりました。

    ─ 他のフェスと交渉がかぶることは、よくある話なのでしょうか?

    まあ、海外アーティストが日本のフェスに出たいとなったら、だいたいフジロックかサマソニになりますからね(笑)。

    例えば、フジロックの時期は他の海外フェスに出るので、日本ではサマソニに出ます、とか。逆に、サマソニの時期はレディングに出るので、日本ではフジロックに出ます、というパターンもあるし。どのフェスに出るかというのは、スケジュールも含めて色々な条件があるので、単純にギャラだけの話ではないですね。クリエイティブマンの方とも、よく話をしますよ。

    例えば、同じアーティストをフジロックでもサマソニでも交渉していて、結果的にサマソニに決まった場合、個人的には「じゃあサマソニでゆっくり見よう」って思っています(笑)。逆にちゃんとステージを見れるからいいかって。それくらい気持ちの余裕を持ってやってないと疲れちゃうところも正直あるので(笑)。

    ─ クリエイティブマンの方と仲が良いんですね

    そうですね。ラジオ番組で一緒に出演したこともあるんですよ。僕がサマソニを紹介して、向こうがフジロックを紹介する、という企画を以前やったことがあって。自分の会社のフェスを紹介するのって当たり前じゃないですか。それを他のフェスをやっている会社の人が紹介すると説得力あると思うんです。

    ケイトラナダも要チェックアーティスト

    ─ 先ほど名前が出たケイトラナダの注目ポイントについて教えてください。

    これは会社の別担当がプッシュしていたアーティストなのですが、ケイトラナダは、キーパーソンですね。DJでありトラックメーカーです。確か、一度だけ来日していて、日本でどこまで知られているかわからないですけど、見ておいた方がいいと思います。まだ、みんな知らないらないかもしれないけど見逃さない方がいいアーティストです。

    高崎さんも驚いたエルレ・ガーデンの出演決定

    ─ 今年はエルレ・ガーデン(以下、エルレ)の出演も話題になりましたが、どんな経緯で決まったのでしょうか。

    えっと、実は僕も決まると思っていなくて驚きました。「え!出るんだ!」って。そこはお客さんと同じ感覚でしたね。

    個人的には、昨年の千葉マリンでのライブは、昨年限りのプロジェクトなんだろうなと思っていたんです。そしたらフジロックの日本人枠を決める社内会議で「エルレがフジロックに出たいって言ってるよ」という話が出て。「じゃあやりましょう!」って、すんなり決まりましたね。

    話題をさらった日本人アーティスト

    ─ それから、第3弾発表の時に相当バズって、今年の注目アーティストのひとりでもあると思うので、聞いておきたいのですが。

    平沢さん?

    ─ はい! そうです。

    実は、平沢進さんの核P-MODELのライブ、今うちでやってるんですよ。昨年の公演とか。お客さんも結構入ってくれていて、若い層のお客さんも多いんですよ。だから、「フジロック出演もありだね」という話は社内で出ていたんです。その流れがあって出演が決まりました。

    ─ そうだったんですね。それにしても、発表後の反響が本当にすごかったですね。ネットを見ていると、いまだに「出るんだ!」と驚く声を見かけます。

    本当にそうですね。あんなに反応があるのはすごいですよね。

    ─ あの時は、第3弾発表の当日だけじゃなくて週末まで平沢さん出演の余韻が続いてましたね。フジロックに来たことがない新しい層のお客さんが確実に増えそうですね。

    そうですね。「師匠のステージを観に行かなきゃ!」っていう声、多いですね。フジロックがどういうものなかのかを実際に体験してもらえるのはうれしいです。

    石野卓球のソロ出演

    ─ それから、電気グルーヴに関してもお聞きしたいと思います。キャンセル発表の後、すぐに第3弾発表で卓球さんのソロ出演が発表されましたが、こちらはどういう経緯だったのでしょうか?

    電気グルーヴがキャンセルになった後、それなら卓球さんに出てもらいたいという事で話をして決まりました。

    日高が先日のインタビュー記事でコメントを出したように、スマッシュのスタンスとしては、電気グルーヴがフジロックに出演してもらうことに何ら問題はありません。今回は結果的にキャンセルとなりましたが。

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    「お金になるからコレをやれ」は、全くない

    ─ フジロックのブッキングをしていく上での面白いところ、大変なところは何でしょうか?

    フジロックのブッキングに限ったことではありませんが、まず会社のスタンスとして、各ディレクターが、自分の好きなアーティストの公演をやっているんです。このアーティストを聴いてもらいたい、日本で見せたい、という思いで。

    だから、最初にお話した通り、社内に色々なベクトルがあるんです。ロック、ヒップホップ、ダンス、ジャムバンドなど。それぞれの担当が自分の好きなアーティストをやっている、そこがうちの会社のいいところです。お金になるからコレをやれ、というのは全くないですね。

    まずは、大前提としてそういう良いところがあります。

    その上で、フジロックの話をすると、バラバラなジャンルが好きなディレクター陣が、フジロックの時だけ、唯一「フジロックを成功させたい! いいアーティストをブッキングしたい!」という同じゴールをみんなで目指して向かっていくんですよ。

    各ディレクターが社内プレゼンで「このアーティストがいいです」という提案をしてフジロックを創り上げていくんです。だからこそ、色々なジャンルの良いアーティストを見せることができるんです。それが結果的にフジロックらしさにつながっていくところが面白いですね。

    フジロックという磁場によって、様々なジャンルのアーティストが集まってきて、その中で、どんな流れで見せるのが良いかを考えてパズルのように当てはめていく。そこをどう組み立てていくのか、っていう部分もフジロックのブッキングの醍醐味だと思っています。

    ─ なるほど。逆に難しいところはありますか?

    うちの良さならでは、の話にはなりますが。

    ディレクターの音楽の好みがそれぞれ全く違うので、自分がいいと思ったアーティストが、他のディレクターにも受け入れられる訳じゃないところですね。だから、「こんなの良くない」と言われたり、言ったりすることも少なくないですよ。賛否両論、いろいろな意見が出る中で最終的にまとめていく、というのが難しい部分ではありますね。

    フジロックは始業式と終業式

    ─ ちなみに、高崎さんが「このアーティストはいい!」と普段思ったら「フジロックに呼びたい」って直結するのでしょうか?

    しますね。いいと思うアーティストは、やっぱりフジロックで見せたいなって思います。

    うちの会社みんなそうだと思いますよ。いいと思うアーティストを見つけたら、フジロックで見てもらって、その反応を見て単独公演をやるという流れもありますし。見つけたタイミングでフジロックが終わっていたら、まずは先に単独公演をやることも。何度か来日させてきたアーティストだと、いつかフジロックのヘッドライナーにしたいな、という思いもありますね。

    基本、うちの会社はフジロック中心で動いているので、自然と考えもそこになるんでしょうね。言ってみたら始業式と終業式がフジロックです。それが1年のサイクルですね。サマソニに行った時でも、フジロックならこのアーティストをどのステージでどうやって見せようかなって考えたりしますよ。

    サマソニは「答え合わせ」

    ─ 高崎さんは、サマソニをどんなふうに意識されていますか?

    これは僕だけだと思いますが、「この新人がいい!」って自分で見つけるのが好きなんです。新人担当なので。フジロックは自分の見たいアーティストを全部見ることはできないですが、サマソニではタイムテーブルがかぶってない限り、全部見ることができるので。

    毎年サマソニへ足を運ぶ大きな理由は、自分の直観力を確認するためでもあるんです。もちろん、単純に好きなアーティストを見るという目的もありますよ。サマソニで、自分が公演をやりたいと思っているアーティストを見に行って、もしも思ってたよりお客さんが入ってなかったら、なぜなのか考えたり。やっぱりこのアーティストはお客さん入っているから、フジロックでもいける、と確認したり。実際の客層と予想していた客層が違っていることもあるので、現場を見ることは大切ですね。

    こんな感じで、サマソニは自分の中の答え合わせでもあるんです。こういう見方というのは、他の人とは視点が違うんじゃないかなと思っています。

    ─ めちゃめちゃチェックしていますね(笑)。フジロックとサマソニでは、お客さんの層が違う部分もあるかと思いますが、その点も踏まえて、気になるアーティストをサマソニで見た時に、思ったよりお客さんが入ってないけどフジロックならもうちょっと入るんじゃないか、と思うこともありますか?

    ありますよ。フェスって、いくつものステージで同時進行でライブしているので、お客さんが入るかどうかというのは、ステージ割やタイムテーブルによっても影響しますから。

    例えば、裏で強力なアーティストが組まれてお客さんを持っていかれている場合もあるので。かぶっていなければ、多分もっと入っていただろうなと思う時もありますよ。

    だからタイムテーブルを見て、この組み合わせはこっちに持っていった方がいいかも、いや、でも仕方ないよなあ、とか思ったりすることもあります。自分がもしもサマソニのスタッフだったら、と仮定して、ステージの組みを自分なりに考えたりすることもありますよ(笑)。

    ─ シミュレーションまでするんですね(笑)。海外のフェスにも仕事で行ったりすることはありますか?

    コーチェラは昨年行きましたね。あとは、まだ行ったことはないですが、マイアミのウルトラ・ミュージック・フェスティバルやイギリスのレディングは、ぜひ行ってみたいと思っています。ただ、日本で公演の仕事もあるので、なかなか頻繁に海外フェスへは行けないのですが。

    ちなみに、海外で見てフジロックでもやりたいなと思ったアーティストは、R.E.M.ですね。

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    日本を代表する音楽フェスティバルを開催する
    イベンターとして

    ─ フジロックは、毎年200組以上のアーティストが出ますが、「このアーティスト、何で呼ばないの?」というお客さんの声については、どう思われていますか?

    「このアーティスト、旬なのにどうして呼ばないの?」っていうアーティストは、もうだいたい交渉しているんですよ。お客さんが気になっているアーティストは、もちろん僕らもチェックしているので、基本、全部動いていると思ってもらって結構です。結果として着地してないだけで。

    だから、「そのアーティスト交渉しました。でもダメでした。」って思いながらネットを見ています(笑)。

    イベンターとして、それが商売なので。例えば、エド・シーランを今呼ぶのは簡単だけど、日本で売れる前に、これはいける!っ て、どこまで動けるかっていうところだと思います。人気が1~2割のところで先取りする目利きができるかどうかが、イベンターとしての勝負どころだと思うので。


    以上、高崎さんインタビュー後編でした!

    インタビュー前編・後編を通して、フジロックが唯一無二の存在であり続ける理由がわかったような気がします。本当に色々な思いが集約されてフジロックが創られていくのだなと強く感じました。

    初年度のフジロックにお客さんとして参加した高崎さんが、その後、主催する側で活躍されているというストーリーは、フジロックが、ひとりの人生を変えるパワーが詰まっているお祭りであることの証。筆者が初めてフジロックに参加したのは1999年。当時は学生で、名古屋からツアーバスに飛び乗って人生初の苗場へ。世の中に、こんなにも楽しい世界があるのか、と衝撃を受けました。その後、お客さんという立場からフジロックを伝える側に変わっていき、いつしかフジロック中心の生活が当たり前になるなんて、その時は思ってもいませんでした。

    フジロックの魅力というのは、実際に自分で体験してみないとわからない部分が大きく、伝える側としては、時にもどかしい部分も。ただ、あんな経験はあの空間でしか味わえないと思うので、少しでも興味を持っているなら、例え一人でも、まずは一度、足を運んでみてください!

    Interview & Text by Eriko Kondo
    Photo by 藤井大輔

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