• フジロックのブッキング担当 スマッシュ高崎さんに直撃インタビュー!(前編)「フジロックのラインナップって、どうやって決めているのですか?」


    フジロッカーの皆さま、令和元年のフジロックまで残すところ2ヶ月を切りました! 太陽が照りつける日も雨の日も、頭の中は苗場とリンクして、ついついニヤけちゃいますね。

    毎年、多彩なアーティストが出演するフジロックですが、そのラインナップは一体どうやって決めているのか、ブッキングを担当されているスタッフのひとり、スマッシュの高崎亮さんにお話を伺ってきました! 

    フジロックで初来日するシーア、世界のトップDJマーティン・ギャリックスのブッキング経緯や、今年のステージ割についてなど、思った以上に赤裸々な!?話を聞くことができました。そして、フジロックに出るアーティストの見逃せなさを改めて痛感! フジロックに行くのを迷っている皆さま、どうしようかと考えている間にチケット売り切れという事態にならないよう、早めのご決断をよろしくお願いします!

    スマッシュ 高崎亮さん

    スマッシュ 高崎亮さん

    フジロックが多彩なラインナップになる理由

    ─ 高崎さんは時々ラジオ番組にもゲストとして出演されていますが、フジロックの広報も担当されているのでしょうか?

    そうですね。フジロックについて何か話をする際は、僕がやることが多いですね。レコード会社窓口と、ラジオ媒体などの窓口を担当している兼ね合いもあって。

    だから、ラジオ番組で「フジロックについて話してください」という出演依頼が入る場合は、僕が担当しています。昔は依頼が入ったら、会社の先輩に「どうですか?」ってお願いしていたんですよ。

    でも、先輩達がライブのツアーで不在にすることも少なくなくて。話す人がいないと依頼をお断りすることになってしまうのですが、せっかくフジロックのことを話す機会をいただいているのに、それはもったいないなと。だったら自分で話そう、と思ったのが始まりですね。

    最初は、話すのが得意ではなかったのですが、続けていたら、話すこと自体はもちろん、色んな段取りにも慣れてきたので、今ではフジロックに関して広報的な話をする時は、自分が担当するようになりました。

    Inter FMで毎週月曜~金曜に放送している「Ready Steady George!!」には、フジロックが近づくと出演回数も増えていって、毎回色々なネタを話していますね。

    ─ もっとフジロックの話を聞きたいのにもう終わりなの~!?っていつも思っています(笑)。では、さっそく今日の本題ついてお聞きしていきますが、フジロックのラインナップは、一体どうやって決めているのでしょうか?

    簡単に言うと、代表の日高をはじめ、うちの各ディレクターのおすすめアーティストを、バン! と、まとめたのがフジロックなんです。

    ─ なるほど、そういうことなんですね! ディレクターからお客さんへ、アーティストをプレゼンテーションするようなところもあるのですね。

    そういう部分もありますよね。

    フジロックに出るアーティストって、本当にジャンルの幅が広いじゃないですか。今年の第一弾ラインナップの発表をした時の話が、ちょうどわかりやすい例なのでお話します。

    発表後、お客さんが反応したアーティストがすごくバラバラだったんですよ。ケミカル・ブラザーズ(以下、ケミカル)、キュアー、トム・ヨークあたりは、洋楽ファンの人が盛り上がって。あとは、シーア、マーティン・ギャリックス(以下、マーティン)、ちょこっとアン・マリ―にも反応する若い層がいて。それから、デス・キャブ・フォー・キューティー、アメリカン・フットボール、チョンといったロックバンド系に反応する層がいたり。

    あとは、「ジャネール・モネイいきなり入ってるんだ」とか、「クルアンビン?え?」みたいな反応もあったり。レッチリ騒動もありましたね(笑)。

    とにかくお客さんの反応が様々で。これって、各ディレクターがいいと思うアーティストが集まった結果なんですよね。それがフジロックの良いところでもあると思っています。

    2019年5月現在のラインナップ

    2019年5月現在のラインナップ

    ─ フジロックの音楽の幅広さは、そういう理由なんですね。ちなみに、フジロックではステージごとにプロデューサーがいらっしゃいますが、ディレクターは、また別でいらっしゃるのでしょうか?

    基本的には、ディレクターがフジロックのステージプロデューサーも担当しています。僕の担当ステージは、深夜のレッド・マーキーですね。ただ、各ステージのブッキングは、会社のディレクターの意見を集約して進めていく形なので、ステージプロデューサーが全てを決めているわけではありません。

    ちなみに、フジロックのステージ数よりもディレクターの人数が多いので、普段、公演の仕事をやっているディレクターの中には、ステージプロデューサーをしていないスタッフもいますよ。ロック好きだったり、ヒップホップ好きだったり、ダンス好きだったりと、みんな好きな音楽が本当にバラバラなんです。

    スマッシュの中のクリエイティブマン!?

    ─ 高崎さんは、どういった音楽が好きなのですか?

    僕は、新人モノ全般ですね。ジャンルで言うなら、UKロック、EDMやダンス系、ですかね。ただ、僕は特定のジャンルというよりも、「ジャンルレスで耳に残るポップな音楽」が好きです。

    だから、一番うちの会社っぽくないですよ。「スマッシュの中のクリエイティブマンです」っていうとわかりやすいので、社内では自分でそう言っています(笑)。

    ジャンルうんぬんよりも、ポップで耳に残る音楽が好きなので、去年の出演アーティストを例にあげると、フィーバー333は、僕が推したアーティストです。ジャンルで分けたら僕じゃないんですけどね。音を聴いてすぐに「これはいい!」と思って、ぜひフジロックでお客さんに聞いて欲しいなと思って動きました。

    以前に出演してもらったエド・シーランとか、トゥエンティ・ワン・パイロッツも同じですね。音を聴いた時に、「耳に残るな、これはいいアーティストだな」と思って、そこから交渉してフジロックに出てもらうことになりました。

    THE FEVER 333 | FUJI ROCK FESTIVAL '18 | Photo by 古川 喜隆

    THE FEVER 333 | FUJI ROCK FESTIVAL ’18 | Photo by 古川 喜隆

    エド・シーランの良さを見抜いた高崎さんのセンス

    ─ エド・シーランといえば、今や日本でもドームでチケット完売するほどになり、すごい人気ですね。

    僕が担当した当時は、代官山ユニットで500人くらいだったんですけどね。

    ─ フジロックで初めてエド・シーランが出演した時は、確か2012年のグリーンステージ(以下、グリーン)でしたよね。

    僕、あの時のことすごく覚えてるんですよ。社内会議で「エド・シーランをグリーンで見せたいです!」「イギリスでも話題です!」という話をして、グリーンにしてもらったんです。

    ED SHEERAN | FUJI ROCK FESTIVAL '12 | Photo by 古川 喜隆

    ED SHEERAN | FUJI ROCK FESTIVAL ’12 | Photo by 古川 喜隆

    ─ 当時、エド・シーランはイギリスで既に人気だったということでしょうか。

    確か、ファーストアルバムが全英チャート1位になっていたはずなんですよね。

    2012年に初めてフジロックに出た時は、朝一でバック・ホーンが出て、その次がエド・シーランだったんですよ。その後がアウル・シティーで。自分が呼んだアーティストなのでステージも見に行って、すごくいいライブしてたんですよ。ただ、まだ日本での認知度がそこまでなかったんでしょうね。

    グリーンへ見に行った時、「なんでこんなにお客さん入ってないんだろう?」って思いました。まあ、入ってないといっても、いわゆる昼間の入ってない感じですけど。でも、次のアウル・シティーになったら人が増えたんですよね。

    正直、「なんてセンスがねーんだ!」と思いました(笑)。やっぱり、担当として悔しかったんですよ。自分で、このアーティストは「いい!」と思って出演交渉して、たくさんの人に見てもらいたくてグリーンにしてもらって。「あんなにいいライブなのになんで見ないの!?」って。みんな、アウル・シティーからでいいか、みたいな感じでした(笑)。

    ─ 金曜日の昼間なので、のんびり行こうっていう雰囲気は確かに少しあるかもしれないですね。それから、知っている・知らないで、見る・見ないを決めてしまいがちな場合もあったり。

    ですね。

    まだまだアウル・シティーの方が認知度あるんだなと思いました。だけど、エド・シーランもすごくいいアーティストなので、もっと前の方までたくさんお客さん来ていいのになって。でも、今の人気ぶりを見て、ちゃんと日本でも売れたし、自分は合っていたんだなと思っています。

    ブッキングが動きはじめる時期

    ─ フジロックのブッキングは、毎年どれくらいの時期から動き出しているのでしょうか?

    フジロックが終わって、8月~9月頃に、「来年はこれじゃない?」っていう話がなんとなく会社の中であるんです。でも、本格的に動き出すのは朝霧ジャムが終わったくらいからでしょうか。今年はこういう流れがあったから、来年はこうしよう、とか。

    ただ、ヘッドライナーに関しては、もっと早い時期から動いていることもありますし、そのあたりは年々早くなってきていますね。

    ライバルは、海外

    ─ ヘッドライナークラスのアーティストになると、他の海外フェスとの兼ね合いもあって、早く動かないとスケジュールが押さえられない、ということでしょうか?

    大きいアーティストは、年間スケジュールが出てきた時に、先に押さえるようにしないとダメですね。動きが遅くなると、他のフェスで決まってしまう可能性も大きいので。

    日本でフェスのラインナップが発表される時期になると、例えば、ネットで「サマーソニック(以下、サマソニ)に取られた!」という声があがったりすることがあるじゃないですか。そういう時、僕も最初は「サマソニに取られちゃった」という感覚だけでいたんですよ。

    でも、最近はそうじゃないですね。ここ数年、日本での洋楽マーケットが昔と比べて不況になってきたのかなという印象で。渋谷のタワーレコードでは洋楽コーナーが1つ上の階に移動したり、邦楽フェスは完売してもフジロックやサマソニが全日完売することって中々ないじゃないですか。

    だから今は、国内で、あっちに決まった、こっちに決まった、と気にしている場合ではなくて、まず日本に来てもらうには、海外フェスを強く意識して動かないといけないと思っています。もちろん、フジロックで呼びたいアーティストがサマソニに決まってしまったら悔しいですけど(笑)。

    それから、海外の動きとして、2016年からフジロックの裏でパノラマ・ミュージック・フェスティバルというのがニューヨークでやるようになって。コーチェラと同じ会社が主催しているフェスなんですけど。だから、ライバルは国内というより、世界になるんです。なので、海外のフェスに取られないように早めに動いていますね。

    ヘッドライナーは、こうして決まる

    ─ 誰をヘッドライナーにするか、というのは、どうやって決めているのでしょうか?

    レコード会社から「このアーティストがアルバム出るよ」とリリース情報が入ったり、海外のエージェントからの売り込みがあったりするのですが、色々と情報収集しながら決めていく感じですかね。候補が挙がってくる中で「じゃあ本当に来年呼ぶのか」とか、「もう少し他の動きも見てみよう」とか色々話し合いますよ。

    ─ ヘッドライナー候補を決めていく際に、もし社内で意見が割れることがあった場合は、最終的には日高さんがOKを出すか出さないか、ということになりますか?

    そうですね。「フジロック=日高」ですから。ヘッドライナーのジャッジは日高になります。

    ─ ヘッドライナー以外では、日高さんの判断なしでブッキングを進める部分もありますか?

    そうですね。日高が全部ジャッジするわけではないです。スタッフだけで決めて進めている部分も割と多いですよ。極端にフジロックに合わないアーティストをブッキングすることはないので。そこは、各ディレクター含めて、うちの会社の人間が分かっていることですね。

    「スマッシュで働いている」ということは、好きな音楽は違っても、呼びたいアーティストの大きな方向性は、ある程度は定まってくると思っています。例えば、アイドルの仕事をやりたい場合は他のプロモーターさんで働くと思うので。だから、ディレクターの意見を集約しつつ、各ステージプロデューサーの判断で決めているアーティストも多いですよ。

    ブッキングには、お客さんの声にも耳を傾ける

    ─ ちなみに、出演アーティストを決めていく際に「〇〇をフジロックに呼んで欲しい!」というお客さんの声を参考にすることはありますか?

    もちろん、ありますよ。

    例えばネットを見ていて、昔から出て欲しいと声があがっているけど、まだフジロックに出てないアーティストの中には、こちらも出したいと考えているアーティストもいるので。それで実際に動いて決まったケースもありますし。

    例えば、少し前の話になりますけど、ずっと「レディオヘッド」っていう声があったじゃないですか。こちらもそれは把握しているので、先方とタイミングや条件が合う時をみて、じゃあやろうか、ということで2012年にヘッドライナーで出てもらいました。

    RADIOHEAD | FUJI ROCK FESTIVAL '12 | Photo by 前田博史

    RADIOHEAD | FUJI ROCK FESTIVAL ’12 | Photo by 前田博史

    ─ なるほど、レディオヘッドが決まった時は、出す側としても「やっと決まった!」ということだったのですね。ブッキングは、まずは先にヘッドライナーから決めていく流れですか?

    そうですね。やっぱり3日間それぞれのヘッドライナーが定まらないと、その日がどういう流れになるのか見えてこない部分があるので一番最初に動きます。ヘッドライナーが決まると、その日の色がなんとなく決まっていくので、それに合わせてアーティスト、ステージを組んでいく感じですね。

    だから、朝霧ジャムが終わったくらいの全体会議で、来年のヘッドライナーはこれでいこう! という話をまず先にして、じゃあ、あたってみようか、と、まずはヘッドライナーの3組から動いていきますね。

    ─ ということは、ヘッドライナーの3組が決まる時期について、年が明けた頃には、だいたい固まっているイメージなのでしょうか?

    理想は、そうですね。順調に進んでいる時は、そのくらいに1組ないし、2組は決まっています。ここ数年の話にはなりますが。決まる時期は年々早くなっていると思います。

    5年前くらいは、1組決まるか決まらないかで、年をまたいでいることもありましたよ。今考えると結構ギリギリですよね。その当時は、そうは思っていなかったのですが。

    元旦に「今年もフジロックやります!」って発表したけど、実はまだヘッドライナーが1組も決まっていない、ということもありましたね(笑)。

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    世界的に認知度が上がっているフジロック

    ─ 去年ボブ・ディランが出演した影響や、フジロックが20年以上続いてきたことで、フジロックに出演したいという海外アーティストは増えていますか?

    そうですね。あくまで肌感覚でしかないですが、海外アーティストから認知はされてきていると感じています。一番わかりやすいのは、台湾、韓国、中国といったアジアや、オーストラリアから来るお客さんが増えてきていることですね。これは目に見えてフジロックの認知が上がっている証拠なので。

    逆に言うと、お客さんが知っているということは、アーティストはもちろん知っているということになるので。世界的に認知が広がっているんだなと。長く続けるって、そういうことなんだなと思います。ここからもっと世界へ広がっていけばいいなと。グラストンバリーやコーチェラって、何やっても完売じゃないですか。フジロックもそうなって欲しいですよね。

    それから、これはあくまで個人的な考えではあるのですが、人気の広がり方には、ある程度、指数関数的な法則があるような気がしていて。例えば、エド・シーランを例に挙げると、最初は代官山ユニットで500人から始まって、スタジオコーストで2,700人、次は武道館、そしてドーム、と駆け上がっていって。最後の武道館からドームにかけての動員数の伸びって、大きいじゃないですか。この例えでいくと、フジロックは、なんとなく武道館の前なのかな、という気がしているんですよ。あくまで僕の勝手な考えにはなりますけど。

    それから、フジロックの動員数に関わることで、ひとつ大きいなと思ったのは、去年のYouTubeでの配信です。まだ、「世界に発信!」と言えるほど世界に影響は出ていないかもしれませんが、去年の反応を見ていると「やっぱりフジロックに行きたい!」というお客さんが多かった印象です。フジロックへ行ったことがあるけど最近は行ってないという人に、もう一度来てもらえる大きなきっかけにはなったんじゃないかと思っています。

    出演アーティストは社内全員で話し合う

    ─ フジロックは各ディレクターが良いと思うアーティストを出しているということですが、最終的に「このアーティストでいきます」という話は、どうやってまとめているのでしょうか。

    ブッキングの大枠については、基本的に社内全員で話をします。ディレクターや各ステージ担当がみんな集まって会議で決めていきますね。

    先ほども話した通り、うちの会社って各ディレクターの好きな音楽が本当にバラバラなんですよ。別の言い方をすると、方向ぐちゃぐちゃ、みたいなところもあります(笑)。だから、「僕はコレがかっこいいと思います」って出しても、「いや、かっこ悪いでしょ」と言われたりすることもよくありますし(笑)。

    だから、出演アーティストを決める社内会議で、各自が出したいアーティストを挙げていって、「これじゃない?」「いや、違う」というやりとりを何度も繰り返していくんですよ。それで、みんなが「これならいいんじゃない?」って納得した上で決めていきますね。

    そこから、このアーティストはグリーン、これはホワイト、といったようにステージを割り振っていく感じですかね。

    「グリーンのセカンド 」か 「ホワイトのトリ」か、という選択

    JAMES BLAKE | FUJI ROCK FESTIVAL '16 | Photo by 古川喜隆

    JAMES BLAKE | FUJI ROCK FESTIVAL ’16 | Photo by 古川喜隆

    ─ ステージ割について、最初から「このアーティストは絶対ホワイトで!」といったように、ステージありきで決めたりすることはありますか?

    ケースバイケースですね。

    特に、フィールド・オブ・ヘブンは、ステージの個性がはっきりしているので「このアーティストはヘブンが合うよね」と決めていくケースも少なくないです。

    でも逆に、全体の流れを見た上で、最後の最後でステージを割り振る場合もありますよ。過去の例をあげると、メジャー・レイザーやLCDサウンドシステムは、グリーンのセカンド(ヘッドライナー前)でもいいし、ホワイトのトリでもいい。どっちかだよね、と話していて。

    だからステージは未定にしておいて、ヘッドライナーが正式に決定したところで全体を見てから、じゃあこのアーティストは、ホワイトのトリだね、と決めたように、ステージが流動的なアーティストもいますよ。流れですね。

    今年出演するアーティストのステージ割について少し話しますが、日曜日に出演するジェイムス・ブレイクについては、2016年に出たとき、既にグリーンのセカンドでやっているので「今年はどうする?」という話になって。流れを見てから決めようということで、今年はホワイトのトリになりました。

    金曜日のトム・ヨークは、「見たい人が特に多いだろうからグリーンのセカンドでもいいかな、でもホワイトでやるとカッコイイよね。どちらでも見せられるね。」という話をしていて、そしたらアーティスト側から「ホワイトでやりたい!」という話が来たんです。じゃあそうしましょう! という流れでホワイトのトリに決まりました。

    ステージ割を決める鍵「ステージプロダクション」

    ─ なるほど。では、グリーンのセカンドとホワイトのトリについては、どちらの枠でもいけるアーティストになることが多いのですね。

    そうですね。

    どちらの枠が上とか下というのはないので、先ほど話したように全体の流れ次第で決めることもあります。ただ、どっちにするかを決める基準も実はあるんです。アーティストのステージプロダクション(ステージの演出)ですね。

    グリーンの場合、ヘッドライナーのステージプロダクションが全てなんですよ。ステージ周りの動きとして。

    今年の場合は、金曜日のケミカルが終わった後、ステージをバラしたら、翌日のシーアのステージの仕込みを夜中にやるんです。そういう段取りがあるので、もしも翌日のヘッドライナー前のアーティスト(グリーンのセカンド)のステージプロダクションがすごい場合、ヘッドライナーの仕込みにどうしても支障が出てしまうところがあって。

    そういうわけで、ヘッドライナーの前に、仕込みが多くなるステージプロダクションのアーティストを持ってくることって、なかなか難しいんですよ。だから、ステージ割にはステージプロダクションの動きも関係してきますね。

    とはいえ、土曜日のシーア前のマーティン、すんごい満載なんですよ(笑)、ステージプロダクション。だからこれは異例ですね。

    ─ YouTubeでトゥモローランドのマーティンのステージ見ましたけど、なんか、すごかったです。もう、とにかくセットが豪華で。スケールが違う!!! って思いました。

    もう、なんかすごいんですよ(笑)。マーティンは。

    だから、マーティンに関してはステージの仕込みがイレギュラーな対応になりますね。金曜日より前に仕込むっていう話も耳に入ってきていたり。

    ─ なるほど。ステージの仕込みの段取りもきちんと踏まえた上で、ステージ割を考える必要があるんですね。

    そうですね。そういう部分も含めて、グリーンのセカンドなのか、ホワイトのトリなのかを決めていきます。

    例えば、もし金曜日のヘッドライナー前にトム・ヨークを持ってきた場合、ケミカルは色々仕込みます、トム・ヨークも色々仕込みます、ってなっちゃったら、グリーンがパンクしちゃうんで。そのバランスも大事ですね。なので、トム・ヨーク側から「ホワイトでやりたい」という要望があったのは、ステージの仕込みもスムーズに行くので結果的に良かったです。

    もちろん、ブッキングをしていく中で、このアーティストは、グリーンが合う・ホワイトが合う、という考えもありますよ。ただ、単純にそれだけでステージ割ができるわけではなく、ステージプロダクションのことも踏まえた上で行っています。

    ─ そんな事情があったとは。だからステージ割の発表がそんなに早くできないのですね。

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    シーアのライブ、今年はフジロックが独占!?

    ─ 続いて、土曜日のヘッドライナーであるシーアのブッキングに関してお聞きします。ケミカル、キュアーについては、日高さんのインタビューで逆オファーをもらった話をお聞きして、シーアについては「社内でどうしても出したい! と強いリクエストがあった」とのことですが、フジロックに出したい!という話はいつ頃からあったのでしょうか。

    実は、一番最初は去年のフジロックに出てもらいたくて動いたんですよ。でも、交渉した結果、実現には至らなくて。

    ─ そうだったんですね! グラミー賞に何度もノミネートされるシーアが初来日するにあたって、単独ではなく、フジロックのヘッドライナーとして来てくれるのは、フジロックのことをよく知ってくれているからなのでしょうか? 日本でも十分人気があって世界的に売れているアーティストが、初来日の公演をフジロックにするのはすごいなと思いまして。

    どうなんですかね。交渉している段階で、シーアがどれだけフジロックを知ってくれているかということまでは、わからないんですよ。

    ただ、実は、すごく前に彼女はフジロックに来ているんですよね。2004年にゼロ・セブンというアーティストが出演した際に、ボーカルのひとりとして出ていたと思うんです。だから、フジロックを知っていることは間違いないかと。

    実は、今回の交渉をしている時、エージェントからは最初「今年はシーア動かないから」って言われていて。「もしも動くなら、フジロックはエクスクルーシブになるから、それだけ価値があるんだよ」とは言われましたね。今のところ、シーアのオフィシャルサイトを見る限り、フジロックしか載ってないんですよ(※2019年5月現在)

    ─ えー! じゃあ、かなり貴重ですよね。本当に独占じゃないですか!

    そう。今年「シーアを見たい!」と思っても、世界中でフジロックでしか見ることができないですから。このまま追加のライブがなければ。本当に貴重だと思います。

    ─ なんかもう、今年のヘッドライナーすごいですね。ケミカルもキュアーも逆オファーで。シーアは、フジロック以外ライブの予定がないということは「フジロックなら、出たいです」とも受け取れるじゃないですか。真相はわかりませんが、明らかに特別ですよね。ちなみに、やっぱりフジロックでも顔は出さないんですかね、シーア。

    多分、そうなると思いますよ。

    シーアを今年ブッキングした理由

    ─ シーアを今年のヘッドライナーに選んだのは、去年の交渉で実現しなかったので再度チャレンジしたという流れなのでしょうか。

    単純にそういうことでもないですね。「2019年のヘッドライナーをどうしようか」という話になった時、キュアーとケミカル側から「出たい」という話が早めにあったんですよ。

    ─ 去年のフジロックが終わったあたりですか?

    そうですね。秋くらいには、もう話が来ていたと思います。

    去年のフジロックって、ケンドリック・ラマーとボブ・ディランが出て、新しい時代とオールドスクール、という新旧の見せ方があったじゃないですか。今の時代感を考えた時に、ケンドリック・ラマーをあのタイミングで見せるのって重要だと思うんですよ。僕は。

    KENDRICK LAMAR | FUJI ROCK FESTIVAL '18

    KENDRICK LAMAR | FUJI ROCK FESTIVAL ’18

    それで2019年のヘッドライナーにキュアーとケミカルが決まっているという状況で、この2つはオールドスクールですよね。これで、もし残り1枠のヘッドライナーに、例えばミューズです、って90年代や2000年代のアーティストを持ってくるよりは、新しいアーティストを見せる流れも欲しいなと。

    それでやっぱり、ここにシーアを出せたらいいなと思ったんです。ぶっちゃけ、社内でも賛否両論ありましたよ。「どうなの?」っていう意見もありつつ、でもやっぱり新しいフジロックというのを見せていきたいなと。

    ─ そういう考えがあったんですね。シーアが発表された時、確かに、サマソニじゃなくてフジロックなんだ! って思っちゃいました(笑)。ちなみに、社内で反対意見も出た中で、最終的にはOKが出たから動いたということですよね。

    そうですね。ディレクターの好みはそれぞれ違いますが、ブッキングは全員の意見を集約した上で動いています。だから、「個人的には反対だけど、まあ一回動いてみましょうか」という了承はもちろん得ていますよ。

    世界のトップDJもフジロックにラブコール

    ─ 「新しいフジロック」という視点で見ると、マーティンもそうですよね。

    実は、マーティンも僕が以前から推していたアーティストのひとりなんですよ。今年のラインナップを決めていく中で、「マーティンがフジロックに出たいと言っている」という話が出て。

    ─ フジロックのことを知ってくれているんですね! そして、なんとマーティンからの逆オファーだったとは。

    そうですね。僕は、EDCジャパン(以下、EDC)やウルトラジャパン(以下、ウルトラ)に1年目から行っていて、社内では一番EDMのリサーチをしているディレクターだと自分でも思っているので、別のディレクターから、「出たいという話があるけども、マーティンってどうなの?」って聞かれたんですよ。

    うちの会社、僕以外にEDMを好きな人がいないので。もともと僕は、マーティンが新人の時にレッド・マーキーの夜中に出て欲しいと思っていたんです。夜中のレッドのステージ担当でもあるので。

    実は、その時に一度動いたんですよ。でもオファーしたら、そんなギャラじゃ出れないと。もちろん、それだけじゃなくてスケジュールの兼ね合いもあったと思いますが。結局、その年は日本でウルトラに出ていましたね。ウルトラとEDCには2回出ていますよ。

    2016年にウルトラでヘッドライナー、2018年にEDCでヘッドライナーをやっていますね。ベルギーで開催する世界最大級のEDMのフェス「トゥモローランド」でも、ここ最近は、ずっとヘッドライナーですよ。

    だから、「マーティン、どうなの?」って社内で聞かれた時は、「フジロックに合う・合わない、という点では、そんなに合うとは言えないです。ただ、そこで合わないからといって無しにするのはちょっともったいないです。マーティンはEDM界の頂点で、DJ MAGというイギリスの雑誌でも3年連続1位(※)になったDJなので、見てもらう価値は十分あるアーティストです」と答えました。

    ※世界的権威のあるイギリスの雑誌「DJ MAG」が毎年行う「Top 100 DJs

    ウルトラもEDCも、彼を見たくて来ているお客さんが、ものすごく多いんですよ。フジロックに出てもらうにあたってアルバムの売れ行きをソニーさんに確認したら、ヘッドライナークラスのアーティストと同じくらい売れている、ということだったので、ちゃんと日本で聴いている人も多いことが確認できましたし。また、去年のフジロックでヘッドライナー前にスクリレックスが出演していたり、過去にもデッドマウスが出ていたことも大きかったですね。

    それに、フジロックに若い層を取り込みたいと考えているのに、EDMのマーケットを無視するのは得策ではないと僕は思っているんです。ただ、フジロックでいきなりヘッドライナーに持ってくるのは、行き過ぎかなとは思うので、グリーンのセカンドか、ホワイトのトリで話がまとまるのであれば、ぜひとも出す価値のあるアーティストですよ。という話を社内でして、じゃあやろうか、って動いた感じですね。

    SKRILLEX | FUJI ROCK FESTIVAL '18 | Photo by 粂井 健太

    SKRILLEX | FUJI ROCK FESTIVAL ’18 | Photo by 粂井 健太

    「トゥモローランド」の出演を見送るというマーティンの意気込み

    ─ マーティンから逆オファーということは、早い時期にフジロックへの出演が決まっていたのでしょうか。

    そうですね。あと、本人的にも2019年はフジロックでやることを早い段階で決めていたと思います。

    ここ最近、マーティンがヘッドライナーを務めるトゥモローランドって、フジロックの裏で毎年やっているのですが、2週連続であるんですよ。ロック・イン・ジャパンみたいに。今までは2週連続でトゥモローランドに出演していたのですが「今年は1週だけしか出ないよ」と、早い段階で本人が言っていて。だからトゥモローランドに来るお客さんは「えー!なんでなの!?」っていう反応をしていました。

    ─ 毎年2週とも出演していて、トゥモローランドには欠かせないアーティストが1週しか出演しないのは、相当異例なケースということですよね。

    トゥモローランドはEDMの世界最大級のフェスのひとつだし、マーティンはEDM界の頂点にいるアーティストですからね。それにマーティンはオランダ出身で、トゥモローランドは隣のベルギーでやるので、彼のホームのようなフェスでもあると思いますし。2週連続で出るのが当たり前のような感じですから。ロック・イン・ジャパンに毎年ヘッドライナーで出ます、みたいな。

    だから、2019年はフジロックに出ると決めていて、かなり前からスケジュールを空けてくれていたんだろうなと思っています。トゥモローランドって、何十万人も来る大規模のフェスですから、その分スケジュールも早く動いているはずですし。だから、その出演を1回分休んでまで、フジロックでやりたかったんだろうなと。いい話ですよね。

    ─ フジロックへの意気込みはもちろん、幅広い層のお客さんに聴いてもらいたい! というチャレンジ精神も伝わってきますね。フジロックはEDMのフェスではないので、ものすごく極端に言ってしまったらアウェイ感さえあるかもしれないじゃないですか。だから、鉄板とも言えるトゥモローランドの出演を1回休んでまで、フジロックに出たいと言ってもらえるのは嬉しいですね。

    そうですね。多分、今、フェスはヘッドライナーじゃなきゃ出ない! というくらい勢いのある旬のアーティストなので。それが、グリーンのセカンドでやってくれるっていう。すごいですよね。

    マーティンのステージセットにも期待!

    ─ 先ほども少しお伝えしましたが、トゥモローランド2018のマーティンのステージには、本当に圧倒されました(笑)。照明、レーザー、花火、なんじゃこりゃ~!っていう。フジロックでも期待しちゃっていいでしょうか。

    トゥモローランドと比較したらフジロックでは無理な部分はありますが(笑)。規模も仕込みも違うので。あちらはヘッドライナーで出演しているし。

    ただ、フジロックでやれる限りのセットは組んでくるはずなんです。フェスのフルセットで臨んでくると思うので、期待していいと思いますよ。そこで妥協することはないと思います。

    ─ 高崎さんは、新人アーティストの担当でもあり、EDMのリサーチもされているとのことなので、マーティンが出てきた時から、いち早くチェックされていたのでしょうか?

    「アニマルズ」という曲を聴いた時に、最初のフレーズがすごく耳に残ったんですよ。僕の中では、「これはいける!」と思って。それで、ぜひフジロックに! と思って動きました。ただ、先ほど話したように、深夜のレッドに出てもらおうと思って最初に交渉した時は、マーティンの勢いと、うちのギャラが追いついてなかったんですよ。フジロックとしては新人枠で用意したけど、相手はそんなギャラじゃ出れない、と。新人だけれども、人気、実力ともにズバ抜け過ぎていて。

    フジロックの新しい色を見せたい

    ─ 今日の話を聞いて、シーアもマーティンも、ものすごく楽しみになってきました!

    「ちょっと異色かな?」と思うアーティストでも、一回フジロックでやったら、「フジらしい」になると思っています。実際に見るまでは、なんかちょっと違和感というか、「あれ? これってフジなの?」っていうところはあるとは思いますが。

    ケミカル、キュアー、トム・ヨークを見たい層と、シーア、マーティンを見たい層って、多分10歳くらい違うんじゃないかと思っています。もちろん、「全部見たい!」という人もいると思いますが。

    土曜日にシーアとマーティンを入れることで、今までとは違うフジロックの新しい色を見せたいなと思います。

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    行ったことない人ほど、まずは一回体験して欲しい

    ─ 「新しい客層を取り込みたい」という考えがベースにあるということですよね。

    そうですね。

    僕が思っているのは、まずは一度フジロックに来てもらって、見てもらって、感じてもらって、それで、「あ、フジロックってこういうものなんだ」って、わかって欲しいんですよ。

    いつも、ラジオや雑誌などで話していることなんですけど。フジロックについての色々な情報ってネットで簡単に手に入るじゃないですか。でも、やっぱり実際に会場に足を運んでみないと、ヘッドライナーで「わーーー!」っと会場全体が湧くあの感覚、雨がものすごく降っていても、おかまいなしに盛り上がる感覚って、あの場にいないとわからないじゃないですか。肌感覚でしかないので。

    フジロックがどういうものか、それをわかってもらうには、実際に来てもらって、体験してもらうしかないんですよね。だから、来たことない人ほど、一回来てみてください、そして感じてください、と思っています。実際に行ってみたら、「いやー、面白くなかった」っていう人もいるかもしれない。でも中には、「また絶対に行こう!」ってフジロックを好きになってくれる人もいると思うんですよ。

    だからこそ、ライナップに新しい色を入れて、新しい層のお客さんにも来てもらいたい、という思いはありますよね。

    シーア、マーティンは、フジロックとしては異色かもしれないけど、本当にいいアーティストなので、ぜひとも苗場まで足を運んで見てもらいたいです!


    以上が、高崎さんインタビューの前編になります。

    シーアの件は本当に驚きました。最初にエージェントから「今年は動かない」という話があった上で、結果的にフジロック出演決定。代表曲のひとつ「シャンデリア」は、YouTubeで20億回以上も再生される最旬アーティストで、世界の他のフェスからも声がかかっていることが容易に想像できるシーアが、現時点で今年のライブがフジロックのみとは! 一体どんなステージを見せてくれるのか、もう本当に待ちきれません!

    そして、マーティン・ギャリックスからは、フジロックへの意気込みがものすごく感じられます。出演経緯が気になっていた皆さま、まさかの逆オファーでした! ウルトラジャパンや、EDCジャパンでヘッドライナー出演を果たし、次の日本でのステップとして、EDM以外のフェスにも出演したい、ということだけであれば、わざわざトゥモローランドの出演(2回のうち1回)を見送らずに実現することも可能なはず。

    シーアもマーティン・ギャリックスも、音楽プロデューサーとしても活躍する点を踏まえると、彼らがフジロックに出てくれるということは、もしかしたら、フジロックのこれまでの多彩なラインナップ実績や、有名、無名にかかわらず、いい音楽を届けるという一貫した姿勢に、音楽家として強く魅かれるものがあるのかもしれない。

    グラミー賞からノーベル文学賞まで数々の賞を受賞したボブ・ディランという大御所から、最年少(2016年当時20歳)で世界のトップDJに輝いたマーティン・ギャリックスまで、世代やジャンルを越えて世界の幅広いアーティストの心を掴んだことを考えると、高崎さんがインタビュー内で、フジロックの世界での人気について「武道館の前あたり」と話していた感覚が、少しわかるような気がしました。フジロックは、日本にいる私達が思う以上に、世界からの注目度が高まっていることは間違いないと言えるでしょう。

    それでは、インタビュー後編もお楽しみに!

    Interview & Text by Eriko Kondo
    Photo by 藤井大輔

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