• 20年間 苗場食堂の裏からフジロッカーズを支える人 久保田さんインタビュー


    フジロック20回目の開催を終えた苗場。現在、大学生の合宿で賑わっており、数週間前にフジロックが行われていたとは信じられない風景が広がっています。そんな苗場でフジロック中は苗場食堂で働いている苗場観光協会の久保田さんに今年の苗場食堂、フジロックについて聞いてきました。フジロック・エキスプレスで取材した、お客さんの声も直接伝えました。開催中の苗場食堂の裏側の写真と合わせて御覧ください。

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    ─ まずはフジロックお疲れさまでした。

    久保田:お疲れさまでした、どうもありがとうございます。

    ─ 今年のフジロックを振り返ってみて、いかがでしたか?

    久保田:フジロックというよりも私は苗場食堂と自宅を行き来しているだけなんですよ。今年は苗場食堂のメニューを大幅に削ったんですよね。手が足りないっていうか、なんだろう、品数が多いとアルバイトの人たちが分からなくなることも多くて。なので今年はごはんとお味噌汁と漬物、それだけにしたんですよね。

    ─ きりざい、とろろもありましたよね。

    久保田:きりざいの評判がとても良くて。土曜日の途中でなくなっちゃったんです。オフィシャル・ツアーでやってくる人たちの朝食を苗場食堂で出すことになっていて、その人たちが日曜日に食べられないというのはやってはいけないことなので残しておいて。本当に申し訳ないんですけど、来てくださったお客さんに「(きりざいは)ここまでです」と言わなくてはならなくて。「えー!40分も並んだのにマジかよ!」って。「いつ来たら食べられるんですか?」って言われたり…。暑い中並んでくださった方たちに申し訳ない気持ちですね。

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    ─ 用意した量が少なかったということではありませんよね。

    久保田:うん、今年はどうしてだろう?きりざい飯が人気で。去年よりもたくさん用意してたんですよ。「今年は万全だ!」と思っていたんですけどね。

    ─ 日曜日の深夜に撮影が終って、やっと苗場食堂に行ける!って向かったんですけど既に閉店していて(笑)。

    久保田:本当に(売れる量が)読めないんです。これだけは。みなさんにたくさん食べてほしかったんですけど。じゃあ来年はどれくらい増やしたらいいんだろう?って… 他にも美味しいものはたくさんあるのにね。売る人がビックリするくらい今年は出たんですよ。

    ─ やっぱりフジロッカーは苗場に帰ってきたら、まず苗場食堂なんでしょうね。

    久保田:ありがたいですね。ただのごはんとお味噌汁と漬物だっていうのに。「ワンコインでお腹いっぱいにしてやってくれ!」という日高さんの思いをずっとずっとやっているんですけど。絶対に切らさないように!という気持ちで。きっとボードウォーク・キャンプで会う人たちも並んでくださっていると思うのですが、裏はドタバタで会えなくて。

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    ─ きりざい飯はとろろ飯の次に人気なのかな、と思っていたのですが。

    久保田:今年は入れ替わっちゃったんです。きりざい飯の方が人気でしたね。不思議ですね。

    ─ 苗場できりざい飯を食べられなかった人の為に、レシピを教えて頂いてもいいですか?

    久保田:まず納豆を用意して。野沢菜、たくあんを刻んでゴマとかつお節と一緒に合えればできますよ。たくあんが無かったら大根をスライスしてもいいですし。そこに出汁醤油をかけてもらえれば。本当に簡単で美味しくできるので、苗場を思い出しながら作って食べてみて下さい。

    ─ ありがとうございます。前回、梅沢さんにインタビューしたときに「苗場食堂のトレイが持っていかれるんだよ(笑)」と話していたのですが、今年はどうでしたか?

    久保田:そうそうそう(笑)。持って行かれるんです(笑)。でも今年は不思議なことに閉店して、その翌日の朝になるとトレイが店の前に積んであって(笑)。きっと誰かが集めて持ってきてくれたんだと思います。前はね、苗場食堂ってステッカーをトレイに貼っていたから記念に持って帰ったのかなぁ?って。あれが記念になるのか、わからないんですけどね(笑)。

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    ─ ここ(観光協会)に来たら、ステッカーくらいもらえますもんね(笑)。

    久保田:そうそう。きっとトレイを持って帰った人たちは、自宅で自分の御膳にしているのかなぁ?って。なんか可愛いですね(笑)。マナーのことで言えばそんなに悪くないのかなって。あんなに雨が降ったのに捨てていく人もいなかったし。一人の人が(ゴミを)置いていくと「そこに捨てていんだ」ってなるから、気付いたら直ぐに綺麗して。そんなことをしている人もいましたね。

    ─ 雨といえば土曜日は大変でしたね。何か影響はありましたか?

    久保田:苗場食堂の中はそんなに影響はなかったんですけど、外でお米を研いでいた人たちから「テントが飛んじゃう!」って。英夫さん(梅沢さん)とか男性陣が行ってなんとかしていましたね。それで「(風が酷いので)深夜0時で閉店しよう」という話もあったんですけど、まだ苗場食堂を楽しみにしている人たちがいるし、売るものはあるのだからやりましょう、と。お客さんも温かいお味噌汁を美味しそうに食べていましたね。閉店しないで良かったなと思いながら見ていました。雨風の影響はそれくらいかな。

    ─ 最初にメニューを削ったと聞きましたが、タケマヨ(たけのこマヨネーズ)も無くなっていましたよね。

    久保田:うん、今まで(フジロックの為に)山たけのこを取ってくれていた人たちが高齢になってリタイアしたというのが理由ですね。山たけのこは藪の中に生えているものだから、危ないんですよね。ちょっとしか取れなかったのに売って、直ぐに売り切れるなら最初から無いほうがいいのかなって。

    ─ 毎年、苗場で山菜・筍ウィークをやっているじゃないですか?そこにフジロッカーを巻き込んで、山たけのこツアーを組んでみたら面白そうですよね。自分たちが取った山たけのこが苗場食堂で使われるという、お礼に苗場食堂の食事券を渡すとか(笑)。

    久保田:いいですねぇ(笑)。

    05

    ─ でも、いろいろなことが積み重なって「来年こうしよう」ってなるんですよね。

    久保田:そうそう、ああだこうだ言いながらやってますよ。翌年には「去年どうだったっけ?」って忘れちゃってるんですけどね(笑)。よく20年もこんなことやっているなぁって。

    ─ (笑)。今年は何かライヴを観ることができましたか?

    久保田:全っ然!私はもう苗場食堂に付きっ切りだから。朝11時頃から夜中2時頃までね。(師田)冨士男さんは「話の種にボブ・ディランが見たい」って15分だけ仕事を抜けて行ってきたんですけど、戻ってきたら「(アレンジが凄すぎて)よくわかんなかったな、どっかの爺さんが歌ってるって感じだな」って(笑)。

    ─ 冨士男さんらしいですね(笑)。そういえば、今年のフジロック・エキスプレスフジロック開催20回目となった苗場にメッセージをもらうという企画をしていたんですよ。メッセージを読みますね。

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    (全て読みましたが、一部抜粋)

    ・もしフジロックが苗場じゃなかったら新潟をこんなに好きになることは無かったし、新潟の友達が出来て旅行することもなかった。苗場で良かった!
    ・20年後もお願いします!死ぬまで来ます。
    ・ ぜひ50周年、いや俺らが死ぬまでずっとやってください!
    ・今では苗場が第二の故郷と思っています!ライブみた瞬間や苗場についた瞬間涙が出そうになります!フジロックがなければ、なんのために生きたらいいのか…これからもよろしくお願いします!
    ・苗場20thおめでとう!進化し続けてくれてありがとう。お客さんの動線など毎年変化があるフジロック。お客さんが大変だなと思うところにいつも気づいてくれて本当に感謝しています!

    久保田:本当に嬉しい。へぇー、みんな本当に苗場のことを好きになってくれているんだ。でも、この先20年、50年なんて私は生きていないなぁ(笑)。

    ─ ちょっと!久保田さん!

    久保田:でも、みんな一年に一回、ここに来るためにお金を貯めて、お休みをとってくれているんだもんね… ありがたいことですよね。

    ─ 最後にフジロッカーズにメッセージをお願いします。

    久保田:来年もみなさんが苗場に来て、笑顔を見せてくれるのを私も楽しみにしています。多分、都会の方は苗場にきて、(地方の人が)田舎に帰るってこういう気持ちなんだなって感じているんじゃないでしょうか?一年に一度、ここにくれば知り合いに会える。そんな場所なんですよね。嬉しいなぁ。

    ─ 本日はありがとうございました。

    最後に

    フジロック20回目の開催を迎えた苗場。苗場食堂という空間の中でフジロックを見続けている久保田さんは本当に温かく、一生懸命フジロッカーをもてなしています。苗場食堂に関わっているスタッフは大勢いますが、もちろんみなさん同じ気持ちでしょう。台風の中でも「みんなに温かいものを食べさせたい」という言葉に愛を感じ、大量に仕込んでも売り切れてしまう、その理由と人気のワケがわかったような気がしました。久保田さんはフジロック中は裏方でみなさんと直接お話することができないそうですが「こういう人が苗場食堂を支えている」と思い出しながら来年並んでみてくださいね。

     

    次ページ:苗場食堂で撮った裏側の写真全てお見せします。

     

    取材・写真・インタビュー・文:アリモトシンヤ

     

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