• フジロック 苗場20th特別インタビュー「フジロックと苗場を繋ぐ人」師田輝彦さん編


    地元だからこそ、公式サイトが発信できないことを伝えたい。

    Photo by Masahiro Saito

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    ─ フジロックの情報を発信している苗場金六ツイッターの話を聞きたいんですけど、あれはいつ頃から始めたのですか?

    師田さん:2011年にアカウントを作って、フジロックの情報を書き始めたのが2012年ですね。観光協会で広報部門を担当することになって、お客さんがどういった情報を必要としているのか?とアンテナを張って探していた時に、例えば地元の人がわかりきっていることでも、初めて来る人はわからないことだらけなので、どういった情報を発信したら喜んでくれるのかな?と。ただ、観光協会公式で発信すると、余計なことが書けないし、波風が立ったらまずい。でも個人で発信するには自分で責任が取れるので良いじゃないですか。それが始まりです。色々情報を発信していくうちにDM(ダイレクト・メッセージ)も増えてきて。多い日だと30件くらい来るんです。

    ─ 多いですね。DMの内容はフジロックに関することばかりですか?

    師田さん:そうですね。例えば駐車場の事情だったり、宿の事情だったり。あとは、現地で滞在する時にどうしたら良いですかって。それで、協会だけでわかる範囲とわからない範囲もあって。例えば、「このチケットでどのくらいの期間入場できますか?」って質問は僕らにはわからなくて、運営側(SMASH側)の話なので。逆に運営側もこちらのことはやたらめったらに発信できなくて。例えば(運営側が)苗場の地元でやっている駐車場に関する情報は発信できないですよね。「公式の駐車場は売り切れたので、地元の駐車場を3日間使ってください」とか書けないところがあると思います。おそらくお客さんが知りたい情報ってその辺りの情報なんです。苗場の協会側からも運営側からも発信が届かないあたりの情報を発信できたらと。

    ─ 公式も民間の駐車場を使ってください、とは書きませんからね。

    師田さん:どんな空き状況なのかって情報とか、実際に運営に関することは自分にわかる範囲(何時に開いて、何時に閉まるなど)は答えるんですけど。それ以外の部分はベテランの方が代わりに教えてあげたりとか。例えば、キャンプの方にしても、車中泊の人も、日帰りの人も、現地の情報は必要ですよね。やらなきゃいけないとかではなくて、楽しいんですよね。少しでも助けになればなとか、喜んでくれたらなとか。

    ─ 本当に皆さん助かっていると思います。多いとDMが30件くらい来るということですけど、その中で面白かったDMはありましたか?

    師田さん:「夜飲みに行きませんか?」って誘われたことがありますね。

    ─ ははは(笑)。

    Photo by アリモトシンヤ

    Photo by アリモトシンヤ

    師田さん:きっと、ゆっくり話を聞いてみたいということだったと思うんですけど。「夜、お時間ありますか?仲間と一緒に飲むんですけど一杯どうですか?」って。嬉しいんですけど、フジロック期間中はさすがに無理です(笑)。

    ─ 多い質問はありますか?

    師田さん:多いのは「駐車場って何時くらいから混み始めますか?」という質問。大体混雑がわかるようになるのが、アーティストのラインナップと日割りが4月に発表されたときのSNSの反応。何曜日に人が多いぞ、来るぞ、何時頃が混む…とか。去年も色々な発表があった後に、予測を立てて、混雑の予測表を作ったんです。これが結構な確率で当たっていたんです。去年は土曜日が混んだんですけど、確か小沢健二の影響で。Mステ(朝日放送・ミュージックステーション)でオザケンが「フジロックで会いましょう」って言ったんですよね。あの瞬間から、もうタイムラインが大騒ぎで。元オリーブ少女って呼ばれる人たちも一斉に騒ぎ始めて「フジロックってなんだ?どこでやんの?」、「チケット取りました」、「どこに泊まったら良いの?」って情報がたくさん出てきたところで「もうこれは混むな」と。さらに、次の発表でコーネリアスの名前が入って来たときに「もしかしたらフリッパーズ(・ギター)再結成の流れもあるんじゃないか?」って。その次の日くらいから電話が鳴り始めて。去年の4月26日くらいだったかな「(部屋は)空いてますか?」って。「ごめんなさい、もう一杯なんですよ」って。

    ─ すごかったんですね。

    師田さん:逆に情報が届かない方たちもいて…。土曜日の午後、街の中が駐車場難民だらけになってしまって国道沿いが渋滞ですごかったんですよね。「とりあえず車で行ったらどこかに停められるだろう」って、一瞬にしてあちこちの駐車場がパンク状態になってしまった。その時間帯に全然関係ない用事でファイルを持って場外を歩いていたら、車が止まって「駐車場空いてますか?」って聞かれて、そしたら、その後続車も「あの人、駐車場係じゃない?」という感じで停まり始めて(笑)。バーっと列になってしまって「ごめんなさい、僕全然駐車場と関係ありません、案内所まで行ってください」って。それで「どこなら空いていますか?」って聞かれて「空いている駐車場は国道沿いで誘導をしているので探してください、最悪湯沢の方まで行ってシャトルバスに乗ってくるしかない」と答えたり。その時、まだまだ情報が届いていないんだな、もっと色々な方向から発信していかないと、とリアルに感じたんです。これって自分の中の反省点じゃないんですけど、こういう情報を発信できるのって地元だけで「来たって駐車場なんてないよ」って言い方は絶対にしてはいけない、一事が万事のリゾート地なんで。

    苗場浅貝地区 | Photo by アリモトシンヤ

    苗場浅貝地区 | Photo by アリモトシンヤ

    師田さん:毎日生活している場所であれば、1回あったことってその日の嫌なことで終わるんですけど、1年に1回しか来ない観光地で言われたことは、その場所のイメージになってしまうんですよね。苗場は「ああいうことを言われる場所」ってなってしまうんです。少しでも不便が起きないように考えて発信してこうとツイッターを始めたら思いの外、皆さんに見ていただいているようで。ありがとうございます。

    フジロックが苗場で続く要因とは

    FUJI ROCK FESTIVAL公式サイトより

    FUJI ROCK FESTIVAL公式サイトより

    ─ 師田さんは観光協会、苗場食堂、ボードウォーク、そしてフジロックの森プロジェクトへと深く関わるようになられたんですが、近年、ゴミが増えたというネガティブな声を聞くこともあります、どう思われますか?

    師田さん:ゴミが増えたという記事を見ますけど「逆に、これだけしかいないんだ」って思うんです。イベントの仕事をやっていたんですけど、4,000人しかいないイベントでもフジロックで見るゴミよりも何倍もゴミが落ちていることもあるんです。それが、1日で10倍の4万人も人が入っているのにゴミがこれしかないのはすごいなって。誰かが拾って歩いている訳ではないのに。ま、夜になればボランティアの方とか集めていると思うんですけど。最初の1〜2年目くらいまではゴミが多かったんですよね。食器とかのレギュレーションとかなかったじゃないですか。カップラーメンとかも売っていたし、瓶の販売もあったんですよね。ダメなものってなかったんです。それが環境を重視して行く中で、食器をリサイクルできる食器に変わったとか、箸も間伐材を使ったものになったりして、地球に優しいんじゃないですけど、サステナビリティー(持続性)を重視した方向性になって、エコって部分が根付いたんですよね。去年は天気の影響もあったと思うんですよ。多くは見えていたと思うんですけど、でもやっぱりこれだけの人が来ているのに、これだけのゴミしか出ないんだった感じることの方が強く感じます。

    Photo by Masahiro Saito

    Photo by Masahiro Saito

    ─ それでも、今年フジロックの公式サイトにはマナー向上キャンペーンと書かれています。SNSでもゴミのことを書かれている人がいるってことは、それだけ意識が高まってきたということなのかな、と感じます。

    師田さん: やっぱりそうなんですよね。人のゴミが気になるっていうことは、ゴミを意識しているわけで。それは意識が高い人が増えたっていうことなんだって思いました。一度提案したことがあったんですよ。何年か前、出店説明会の際に苗場食堂のスタッフとして行ったことがあったんですよ。苗場食堂にいても多い質問なんですけど「ゴミ箱どこですか?」って。ゴミを捨てる人ってゴミ箱の場所がわからなくて捨ててしまったりするがあるのかなって。例えば、ゴミ箱のところに目印になる大きな旗を立てるとかやっていただくと、ゴミといえばあの旗となるから、よりゴミ箱が見つけやすくなるのではないかと。個人的には思うんですよね。

    ─ 良いアイデアだと思います。

    師田さん:出店者さんからもそういった話を聞くことが多いんですよね。お客さんから「ゴミどうしたら良いですか、ゴミはどこに捨てれば良いですか?」って。それを踏まえると、もっとわかりやすい目印があれば良いかなって思うんです。空いてる時は見えるんですけど、人が多くなってくると分かりにくくなる。慣れている人は、(ゴミ捨て場はここだ、と)わかるんですけど、初めて来た人はゴミ箱を探せないのかなって、ちょっと思いましたね。それでも、あれだけの人があれだけ分別してくれているので、素直にすごいなと、「エコ」っていう意識が高い人たちがあれだけ集まるっていうことに、毎年感動しながら見ています。

    ─ 会場のことも含めて、苗場の皆さんに大変なことはありましたか?と尋ねると「大変だとは思わない、フジロック自体が好きだから大変だとは感じていないよ」とおっしゃる方が多いですよね。

    師田さん:何が大変かとか、何が疲れるかとか正直なくて。自分の中でも楽しみなところが多いので。たくさんの人が来てくれるっていうのと、色々な人が喜んでくれるっていうのが嬉しいですね。飛び抜けて嬉しいのは、苗場に帰って来たっていってくれる人が多いんですよ。第二の故郷的な感じで。「ただいま!」って。そうするとこちらも「おかえり!」って。たくさんの人が来てくれて、喜んでもらえれば嬉しいなと思います。

    ─ 地元でイベントとして成り立って続くのはそこなんでしょうね。

    師田さん:続く一番の要因っていうのは、地元の人が歓迎をしているっていうのがあって、つまり、SMASHさんのやりたい方向性と、地元のやりたい方向性が噛み合っているのかなって思います。これが例えば、主催者側が「こういった感じでやりたい」それに対して「地元としてはそれでは困る」という衝突があったらうまくいかなかったと思うんです。それに対して、地元としても賛同して「うちも準備しますよ!」と、その結果うまくいったんだと思うんです。

    ─ 日高さんとしては、地元の方ありきっていうか、そこを活かしてやるフジロックって感じですよね。

    師田さん:そうですね。「うちはうちのやり方があるからやらせろ!」って感じではなくて。「こういうものをやりたい」、「こういう形はどうだろう」と。うちの妻がフジロックを手伝い始めた頃は、ただ忙しいだけで好きではなかったんです。「このよく分からない忙しさは何なんだ!」って。以前は、フジロックの前は憂鬱になっていたようなんです。3年目くらいから変わって「もうすぐだね、ワクワクするね」って。さらに、来てくれる人も良い人たちが多くて、心地の良い忙しさだなって。苗場の人たちにはそれが浸透していて。

    Glastonbury Festival 2017 | Photo by Masahiro Saito

    Glastonbury Festival 2017 | Photo by Masahiro Saito

    ─ 忙しいと思うのですが、楽しみにしていることはありますか?

    師田さん:今年の目標としては、1回くらい頭から最後までステージを観たいなっていうのがあって。20年くらいほぼ会場にいるのに、まともにステージひとつも観ていないんですよ。今年は観たいなって思っています。

    ─ 今年はグラストンバリーからアンフェアグラウンドがやってきますね。

    師田さん:そうですね、あそこは一番奥だから…でも、あれは今年しか見れないでしょ?ぜひ、チャンスがあれば観に行ってみようって思っています。

    ─ 最後に読者や今年初めて行こうと考えているお客さんにメッセージをお願いします。

    師田さん:今年で苗場開催20周年迎えますが、今まで来ていただいた方も、今年初めて来られる方も、節目の年なので、帰りの体力がなくても良いぞっていうくらい、思いっきり楽しんでいってください。私たち地元民も皆さんが苗場に帰って来られることを楽しみにしています。あと3ヶ月ちょっと(*インタビューは4月に行いました)なので、あっという間だと思います。また、会える日を楽しみにしていますので、一緒に盛り上がりましょう!

    ─ 本日はどうもありがとうございました。


    さて、いかかでしたしょうか?師田さんのインタビューでは、よく耳にするゴミ問題にも触れ、現地の声をストレートに伝えてくれました。そしてフジロッカーに対して、家族のような温かさを感じることができました。「フジロックが里帰り」と言う人が多いのも頷けますね。また、インタビューにも出てきた苗場金六のツイッターでは、最新の苗場の情報だけではなく、宿のシェア情報やボードウォークなどの進み具合なども見ることができるので、是非チェックしてみてください。

    【関連リンク】
    ・苗場金六Twitter(@naebakinroku
    フジロック 苗場20th特別インタビュー「フジロックと苗場を繋ぐ人」師田冨士男さん編

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