ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.3: オレスカバンド
- 2016/05/30 ● Interview
20回目の開催を機に、ROOKIE A GO-GO出演経験バンドに「自分にとってのフジロック」「フジロックが果たした役割」「これからのフジロック」etcについて訊くシリーズ企画。ゲートをくぐりグリーンステージ制覇に到ったバンドもいれば、去年のROOKIEに出たばかりのニューカマー、そして今は音楽活動とは別の道に進んだバンドも存在する。彼らの言葉を通して見えてくるフジロックの20年、そしてこれからとは?
三回目は、ちょうど今から10年前、当時まだ高校生で史上最年少出演かつ最多動員を記録したオレスカバンドにインタビュー。なんと初のフェス出演がフジロックで、その後「WARPED TOUR ‘08」を日本人としては初の46都市全公演出演を果たし、日本国内の主要フェスにも多数出演してきた彼女たち。日本とアメリカのフェス文化の違いも知るメンバーならではのフジロック観を訊いてみた。
[過去記事はこちら]
• ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.1: told
• ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.2: Tempalay × Walkings対談
─ まずルーキーに出演した時の思い出を訊かせてください。
SAKI(Trumpet):オレスカが初めて出たフェスがフジロックなんですよ。「フェスに出たいね」みたいな話はしてたんですけど、フェス経験もなく、どういうものなのかっていうのも分かっていない中で決まったのがフジロックで。大人の人たちは「フジロック決まったよー!」みたいな感じで騒いでたんですけど、うちらは「あ、フジロック、山登るんだ?」みたいな感じで(笑)。でも出てみたらめちゃめちゃ楽しくて。何よりも大人の人たちがガキンチョの私らを見て、すごい歓声を上げてくれるのに驚いて、すごく楽しかったのを覚えてますね。
─ 当時、高校生ですよね?
tae(Dr):高校三年生ですね。デビューする一週間前ぐらいやったと思います。
─ 高校生にとってはフジロックもだし、場外のエリアってより酔っ払いだらけでびっくりしたのでは?
tae:リコ・ロドリゲスさんとその頃ライヴさせてもらったり、CDもご一緒にする機会があって。リコさんもその年、たまたまフジロック出るってなってて、クリスタル・パレスで深夜にライヴするのを見に行ったんですけど、すごい独特じゃないですか?あの雰囲気って。大人の音楽の楽しみ方みたいなのを初めて見たっていう記憶があります。
─ ライヴ自体はどうでした?10代の女の子が出てるっていう珍しさもあったと思いますけど。
iCas(Vo/Gt):メンバー全員、すっごい興奮してて、モチベーションもすごく高かったんです。結局うちらが出た時、今までのルーキーの動員記録塗り替えたみたいな話も聞いて、さらにモチベーション上がったんですけど、高校生なんで、とにかく「やったんぞ!舐めんな!」みたいな気持ちでやってたのは覚えてます。あっという間に終わったって感じでしたね。
SAKI:悪ノリしてたよな?
iCas:してた、してた。
HAYAMI(Trombone):鈴木亜美の曲やったりな。
iCas:結構盛り上がったよな?
SAKI:みんなで「Be Together」歌って。
HAYAMI:今考えたらフジロックで「Be Together」やるやつおらんやろな(笑)。
SAKI:高校生の発想なんですよ。
iCas:空気読めてない。
─ どんな反応や声を聞きましたか?
HAYAMI:フジロック入りして、インタビュー受けさせてもらったんですよ。で、まぁフェス自体初めてやし、夜のライヴ初めてやし、フジロックは歴史あると思ってるし、濃いファン層を持ってるフェスじゃないですか?で、そこのルーキーに出るっていうので、インタビューしてくれた方が多分、子供達だからルーキー・ア・ゴー・ゴーがどういうものかもわかれへんし、お客さんが5人とかのライヴも結構、いっぱいあるじゃないですか?その時のライヴの流れというか、人の入りがあんまり読めないステージではあるんで、心配してくれて、「あんまり人は入る場所じゃないよ」って前もって言ってくれてたんですよ。で、うちらも「あー、そうなんや」と。で、「結構寝てる人とかもおるし独特の空気やけど楽しんでね」って言われてたんですよ。それで「ああ、そうかぁ」と思ってて、メンタル強く持たなあかんなみたいな感じでいたら、実際にはみんなが言う通り多分1000人ぐらいいたんです。それでその後の記事でその方は「僕はとんでもないことを彼女たちに言ってしまった」みたいなことを書いてくれて。行ってみたら超満員で、ルーキー・ア・ゴー・ゴーでこんなに人入ってんの見たことなかったと言われて。後で映像見たら、うちらプロレスラーばりの、すごい沸点なんですよね。で、なんかお客さんもそれに対して付いてきてくれてたのか、すごい盛り上がって。
SAKI:未だに「フジロックで見たよ」って人が一番多いんですよ。
iCas:後々になって遠巻きに見てたよという人たちに会うよな。
*オレスカバンドに謝らなくっちゃ | FUJIROCK EXPRESS’06
─ その年以降もある種のイメージになってるのかもしれないですね。2006年はフジロック自体も楽しめましたか?
SAKI:めっちゃ見に行きましたよ、みんなで計画立てて。私、マッドネス見たんですよ。初めてダイヴを経験したんですけど、お客さんはいろんな国から来てるじゃないですか?それで見てる間にすごい仲良くなるんですよ。それでアメリカの方が「おまえダイヴするか!?」みたいな感じですごい煽ってくれて「よし、行ってみる!」みたいな感じで、初めてダイヴを経験して、イエーっ!てなってすっごい楽しかったのを覚えてますね。
─ 出演もしてダイバー・デビューもして(笑)。
SAKI:興奮しすぎて腸が痙攣して救急車で運ばれて。でもすっごい楽しくて「レッチリ見に行きたいのに!」って言いながら救急車で運ばれました。
iCas:しかも出番の前の日で「どうすんの?」みたいな感じで。
─ 波乱すぎますねえ。
SAKI:ははは。
─ それ以降、観客として参加したことはあるんですか?
iCas:一回、メンバーで遊びに行きました。スペシャルズが出てたんで、どうしても見たくて行ったんですよ。それまで関係者として普通にいい環境で見れてたのがお客さんで行くと、それはそれですごい楽しかったんですけど、やっぱりお金もかかるし準備も必要だし、ハードルが高いフェスなんやなっていうのを実感しましたね。
SAKI:でもその用意するのが楽しくて。寝袋買ったりとか。
─ テントにしたんですか?
SAKI:テントにしたんですよ。で、お風呂だけはシャワーとか大浴場とかで。
tae:めっちゃ楽しかったですよ。
HAYAMI:キャンプ場でいきなりゴッチさんが弾き語り始めたりして、みんなわーって集まって来たり。
iCas:アーティストの人がステージ以外でもライヴをやってるとか、Charaが渋さ知らズに参加してきたりとか、フジロックならではっていうのを経験しましたね。出てた時は他のいろんなフェスも知らなかったんで、フジロックがなぜこんなに支持されてるのかが分かってなかったんですけど、自分たちが自腹で見に行った時に、「あ、こういうフェスやったんや」と。アーティストの人がステージの高さとか関係なく、いろんなとこで自分の表現をやってるみたいなところが、やっぱり他のフェスと全然違うんやなと思いましたね。
─ オレスカバンドはフジロックを満喫してますね。
iCas:満喫してますね(笑)。
SAKI:フジロックのために自分らでTシャツとかも作って。自分らで着るためとプロモーションのために。
tae:で、それをリコさんが着てライヴしてくれて(笑)。
─ 2006年の出演以降、アメリカでツアーをしたりしてるじゃないですか。そういう現場の方がよりタフだと思うんですが、両方経験してみていかがですか?
iCas:WARPEDとかはアーティストに対して真逆みたいなところあるっていうか、日本はホスピタリティが充実してるけど、やっぱり海外は「勝手に来いよ」みたいな。この時間にこられへんかったら今日のライヴ出させへんからなみたいな、厳しい感じ。
─ それはビッグバンドでも?
iCas:そう。メインステージのヘッドライナーが、言うたら調子乗って、「俺ら遅刻していいから」ってやったらヘッドライナーから下ろされるんですよ。
SAKI:他のステージからヘッドライナー狙うっていうのもあったり。
iCas:「あいつらやらかしたで」みたいなのも。
SAKI:「今日はここのステージ出れるけど、出ますか?」みたいな。
iCas:いきなりチャンスが来たり。報告を逐一、運営の人にするから。
SAKI:下克上な感じ(笑)、ありますね。
iCas:で、全然、ラインナップに入ってないバンドが入場する前のお客さんに対して、ストリートでライヴしてて、勝手にルーキーしてるみたいな(笑)。で、そこで人気が広まったら「おまえらこのステージ出ろ」ってなるし。
Tomi(Bs):アメリカにパラモアってバンドがいるんですけど、それがやっぱり有名で、外でやりだして、次の年はちっちゃいステージになって、サブのステージになって、メインのステージになったっていう。パラモアがWARPEDツアーで全部やったから「パラモアみたいになる」って言って、みんなやってるんです。
─ それはアメリカのビジネスの厳しさも感じますね。
SAKI:チャンスは自分で掴めっていう。WARPEDツアーの時って、自分たちで宣伝しないとライヴに来てくれないっていう感じやったんで、ずっとやってたんですよ。で、帰ってきた年に日本のフェスが一個あって、その時に看板持って歩いていいですか?って聞いたんですよ、日本のフェスでも。で、WARPEDで慣れてるから「え、いいやん?」みたいな感じで「やっていいですか?」って聞いたら「ダメ」って言われて。「え?自分たちのライヴに来て欲しいのになんで練り歩いて「来てください」って言ったらあかんねやろう?」って違和感があって。
tae:未だに思うよな。来て欲しいのになんで自分で宣伝したらあかんのか。
─ たしかに。あと、日本にもいっぱいフェスあるじゃないですか?そこでフジロックと違うムードを感じたりしますか?
iCas:全然違いますね。
HAYAMI:フジロックは外タレが多いから、海外のフェスに似てる。
iCas:似てるし、前、そのスペシャルズ出てた時は井上陽水も出てて、それも違和感ないっていうのがすごいよなっていうのは感じましたね。海外のバンドも日本のバンドも交互にステージやって、時には日本のバンドがヘッドライナーをやったりとか、あのごちゃ混ぜ感が、「本来そうやんな」というか普段音楽聴いてるとそうやんなって思うんですよ。
─ 本当にそうですね。ところでステージで好きなところとかありますか?
SAKI:うち、フィールド・オヴ・ヘブン、あそこで見たcutman-boocheが最高やった。
tae:ウリョンさんが泣いてたやつ?
iCas:「ここに出るの夢やってん」って、飲みながら泣いてた(笑)。
tae:スペシャルズの時はそれぞれの場所で泣いてましたね。
SAKI:泣きながら踊ってましたね、いろんな感情が混ざって。
tae:うち、マッドネスのライヴでリコさんがバン!って登場してきた時に、なんかすごい日本のラスタマンが号泣してるのを、「こんな感覚になるんかな?」と思って見てて。
iCas:みんな「リコー!」とか叫んでて。
─ 普段なら会わないような人や自分より年上のファンの人も当然いるのは分かってるんだけど、実際目にするとグッときますよね。
SAKI:うんうん、なんかねぇ。来るものがありますよね。
─ フジロックを楽しんでるオレスカバンドから、これから行こうとしてる人に「こういう風に楽しんだらいいよ」っていうアドバイスはありますか?
SAKI:ホテルよりもテントお勧めしたいですね。
SAKI:「楽しそうな音、鳴ってるな」っていう。一番会場に近いですからね。
tae:そう、朝起きた瞬間に音が鳴ってるっていう、「ああ、フジロック来てる〜!」みたいな。あとは雨かどうかもすぐ分かるし、晴れた時の嬉しさもあるし。
─ ところでカップルで行ってる人は見たいもの見れてるんですかね?どう見えます?
SAKI:でもそこで「違うの見てくるわ」って言ってるカップルが素敵ですね(笑)。長く続く秘訣。
─ 見てたら女の子が連れて行かれてるだけ、みたいな光景に時々出会うんで。
一同:あー(残念そう)。
SAKI:でも彼氏が好きで付いて行くんでしょ?だったら頑張らなあかんな。
Tomi:それで好きなバンドを知るきっかけになったら全然いいんじゃないですかね。
SAKI:フジロックって全バンド知ってるというよりも、「どっから出てきた?このバンド」みたいな新しいバンドを知る感じがあるんで、それも楽しみの一つやと思いますね。
iCas:好きなバンドじゃなくても楽しめる空間みたいなのはすごいある気がしますね、カップルでも。
SAKI:一人でうろうろしてても楽しめるもんな?
HAYAMI:気楽やもんな。
SAKI:自由やな。都合いいところだけ、誰かとおれればいいよね。あと、子供連れて行ってる人とか、子供がすごいいい経験してるな、うちもそんな経験したかった!とか思って。
─ 今年から中学生以下無料なんですよ。
一同:ええっ?羨ましい!
SAKI:それは絶対行くべき。
HAYAMI:かっこいいノリ方してる人とか真似して踊って欲しいし、大人も積極的に「こうやって楽しめるんやで」って教えてあげられる感じになってくれたらいいですよね。
SAKI:めっちゃいいなぁ。「中学生の時にレッチリ見てるから」ってことですよね?(笑)、めっちゃいい〜。
iCas:子供も結構タフになりそう。
─ オレスカの皆さんはルーキーで出演した後の10年ですごくいろんなものを吸収したわけで。これはいろんなバンドの人に訊いてるんですけど、フジロックなくなっ
たらどう思います?
SAKI:ほんまに音楽好きな人が行くイメージなんで、なくなってしまったら日本の音楽好きたちの場所が失われる気がするんで、絶対にやって欲しい。
─ そしてみんなが出たいと思える場所でもある?
iCas:そうですね。10年前、多分うちらフジロック史上最悪にフジロックを大事に思ってないまま出ちゃったので、すごさを分かってないまま。結構「あそこに向かって頑張るぞ」って言ってるバンドマンがすごいいっぱいおるけど、そう思う前に出てしまったから、今、余計にそう思うんですよね。フジロック、やっぱメイン出てみたいよなぁ、って。
フジロック出演後にアメリカでのハードなツアーを経験し、その違いも含めてフジロックのすごさや楽しさを認識したオレスカバンドの発言は、強力なリアリティに溢れていました。ちなみにWARPED TOURの下克上感は日本ではなかなかないもの。オーディエンスの支持で勝ち上がっていくバンドも見てみたい気が! では、次回もお楽しみに。
取材・文:石角友香
写真:MITCH IKEDA
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詳細は公式サイトで。
http://www.oreskaband.com/