ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.2: Tempalay × Walkings対談
- 2016/05/08 ● Interview
20回目の開催を機に、ROOKIE A GO-GO出演経験バンドに「自分にとってのフジロック」「フジロックが果たした役割」「これからのフジロック」etc.について訊くシリーズ企画。ゲートをくぐりグリーンステージ制覇に到ったバンドもいれば、去年のROOKIEに出たばかりのニューカマー、そして今は音楽活動とは別の道に進んだバンドも存在する。彼らの言葉を通して見えてくるフジロックの20年、そしてこれからとは?
二回目は、昨年のROOKIE A GO-GOに出演した2組の対談をお届けしよう。方や甘くサイケデリア溢れる脱力ポップが魅力で、今年1月にフル・アルバム『from JAPAN』をリリースしたTempalay。一方はイエロー・ブルース・エクスプロージョン!と叫びたくなる破格のR&Rを鳴らし、こちらも4月にフル・アルバム『穴』をリリースしたWalkings。タイプは違えど、実は仲のいい2バンドならではのクロストークになっているはず!
─ まず、去年出演してみてどうでしたか?
高梨貴志(Dr/Walkings):ドラムの高梨っていうんですけど、僕は出てないです。見にいってもない。今年から入ったんで(笑)。
─ (笑)。
高田風(Vo、Gt/Walkings):そもそもフジロックって一番出たかったフェスなんです。ロックをやってるんで。ロックフェスって色々いっぱいあるんですけど、全部ロックフェスじゃないと思ってて。フジロックにはヘッドライナーに初回からレッチリとかが来たじゃないですか?ま、サマソニも来るかもしれないけど(笑)、でもなんかちげえんだよな、フジロックは。そういうチョイスのに出れたんですごい嬉しかったですねぇ(笑)。
─ 出てみてどうでした?パレス界隈って独特ですけど。
風:サウンドチェックしてる時点で、飲み過ぎで最前で倒れてるやつとかいてて
竹内祐也(Ba/Tempalay):あ、俺か(笑)。すいませんでした!
風:しかも俺ら出番が一番最後で、夜中の3時だったんで。むちゃくちゃ酔っ払ってるやつしかいなくて。
吉田隼人(Ba/Walkings):酒投げてきた人いたよね。
風:(笑)。あれ楽しかったけどね。そういうとこもフジロックぽくていいなと思いながら楽しめました。
─ 酔っ払いしかいない感じだったんですか。
吉田:でもみんな自然と一体化してやりやすかったです。
風:盛り上がってた割には全然投票されなかった。それ酔っ払ってたからかな?(笑)聴いてたと思いたいですけど、投票するような冷静さはなかったんでしょうね、多分、て言うのが俺の予想です。
─ じゃTempalayの皆さんは?
小原綾斗(Vo、Gt/Tempalay):僕ら最初組んだ時にもう、最終目標がフジロックで、それしか目標がなかったんで。売れたいとかなかったんで。それがいきなり叶っちゃって、拍子抜けして目標を失った。それぐらい僕らの中では存在が大きなものだったんですけど、そこら辺から本気でバンドやろ、みたいな。
─ ルーキー出るって決まった段階では?
綾斗:抱き合ったよね。
竹内祐也(Ba/Tempalay):抱き合った(笑)。
綾斗:仲悪いんですけど、そん時だけは二人で飲みに行きました。アーティストに対する影響力がヤバイフェスってあんまないんじゃないですか?日本で。なんかウッドストックの次はフジロックみたいな(笑)。
風:グラストンベリーじゃないんだ?グラストンベリーを真似たのがフジロックでしょ。
綾斗:あ、そうなんや?(笑)。でもそういう雰囲気のものって日本にないじゃないですか。あれぐらいの規模で海外アーティスト、バーっと呼んで。
─ 藤本さんは?
藤本夏樹(Dr/Tempalay):決まった瞬間の電話に出れなくて。
祐也:家賃の滞納の電話と思ったらしくて(笑)。
吉田:それ全く同じエピソードなんだけど(笑)。
夏樹:で、またかかってきて、誰だ?と思ったらフジロックだったっていう(笑)。ホットスタッフからですね。
祐也:やっぱでもバンドが次に転がっていくみたいなきっかけにしてもらったのかなと思います。
─ 目標達成してしまいましたが。
祐也:もちろん、大きいステージ出たいですね。
─ ちなみに3日間参加したんですか?
祐也:5日間。前夜祭、で、終わった日も温泉とか行って(笑)、ゆっくりしました。それまでツアーとかもしてなかったんで、3人で行動するとかも。
綾斗:2日目から来るやつとかいるじゃないですか?俺らより少ないじゃないですか、日が。
祐也:その時点で勝ちですから、俺らが(笑)。
夏樹:僕はレコーディングしてたんですよ。
綾斗:してたしてた!その時にEPを出すタイミングやったんですよ。
夏樹:で、僕だけ部屋にこもってミックスしてて。苗場に行って、昼間は一人で戦ってましたね(笑)。
─ この2バンドは昔から仲良いという話を聞いたんですが。
綾斗:昔から仲良くて、フジロック決まった時にすぐ言って悔しがらせたかったから(笑)。
風:ははは。
綾斗:すぐ連絡して、案の定悔しがって気持ち良かった。
風:Tempalay1日早かったんだよね。
綾斗:風にしか連絡してなかった。
風:まず綾斗から聞いて、LINEで、もう寝れなかったですね。「あいつら調子いいな、くそ〜!」。だから余計に次の日、その吉田から次の日、LINEで「苗場スキー場からお誘いありました」。
綾斗:そのLINEおしゃれやなぁ(笑)。
風:「つまり、えーっ!?」「つまりそれってあれやん?」
吉田:「そういうことです」(笑)。
風:嬉しすぎて、俺、バンドの練習で外でかけてたんですけど、ずっと駅でウロウロしてました、嬉しすぎて。なんか全然決まる雰囲気なかったし、客もいなかったし。
綾斗:マジで売れたかと思いましたけどね、そんな甘くないって、これからルーキー出る人に言ってあげてください(笑)。来年には忘れられてるんで。
─ 現実的にはルーキー決まりましたって時が一番、話題になるというか。
綾斗:そうですね。結構その先のことを考えてやってなかった。「出れた、もうライブ思いっきりやる、最高!イエー!」ってやってました。なんか「フジロック出場」って書けるというか、まぁそれだけ。
風:俺ら「フジロック出場」プロフィール、それしかないもんな(笑)。
綾斗:でも僕らが売れたとして、もうルーキーには出れないわけじゃないですか。あそこのエリアって金払わなくても見れるじゃないですか?すげえ独特の空気感というか、あの感じは一回きりなんで。
風:面白かったよね、確かに。
綾斗:お客さんも特殊というか、新しいもの見つけたい人とか、たまたま飲んでるやつもいれば、金ないからそこだけ来るやつとか。
─ 確かにパレスは独特ですね。
綾斗:今メインステージ出てるやつでも経験できないこと、経験できたという意味では、得じゃないですか。だってこれから僕ら、出て行きたいし、フジロックのメインステージ。
─ すごい前向き(笑)。では、見たアクトでは誰が印象的でしたか?
吉田:あ、俺一個、去年、レーヴェン泣きました。もうずっと3日間、下痢で他のバンド見れなくて、MUSEが見れなくて、最後振り絞って、レーヴェン見に行ったんですけど、クソ楽しくて泣いちゃいました。バンドも泣いてんの(笑)。
祐也:MUSEめっちゃ良かった。めっちゃ笑った。ベース光ってて。持ち替えたと思ったら赤色が青色になっただけっていう(笑)。
綾斗:いややっぱりでかいとこが似合うバンドっていうか、世界レベルなんやなっていう、叩きつけられた感はありましたけどね。あそこ俺ら立つのは想像できんもん。ハッピー・マンデーズも良かった。
風:ceroも見たな。今年も出るん?めっちゃでるやん。
綾斗:フジロック行く時に多分目当てって5つぐらい?でも時間空いてたまたま見て良かったステージ、めっちゃあります。椎名林檎とかも日本にいても、ワンマンのチケット買っては行かないですからね。
─ この2バンドが仲良いのはみんな知らないかもしれないんで、お互いどう言うところを認めてるんですか?言い辛いかもしれませんが。
風:ここ(風と綾斗)が仲良かったんですよ。もともと、音楽好きなただの友達だったんですよ。
綾斗:で、僕がこいつ(風)に憧れてたんですよ。ギタリストとして。
風:で、俺は全然こいつのこと好きじゃなかったんですよ(笑)。
綾斗:曲とか聴かせてもボロクソ言われるみたいな。「ダッセーな」とか「このリフだけ微妙にカッコよく聴こえるな」とか。
─ Walkingsというか風さんのような感じはやろうと思ってやれる感じじゃないですよね。
風:俺なりにやろうと思ってやってますけどね。でも逆にTempalayを始めてからは急になんか進化した感じがする。最初聴かされた時は「どうせいつもと一緒だろ」と思ってたら、改めて聴いたらなんかいいなと思って。単純に曲が良くなったと思いました、綾斗の。
─ 同じようなことやっても仕方ないと?
綾斗:そうですね。風の真似みたいなことしてたんですけど、同じジャンルで戦っても意味ないなと思ってやめたというか。その時に自分の知ってる範囲で周りにいないことをやろうと思って、やったわけですけど、結局、そっちの方が性に合ってたという。
風:今では逆に俺がたまにコピってる、Tempalay。
綾斗:ははは。でも一個、ちょっとぐらいは影響与えてんのかな?と思ったことがあって。今回のアルバムに入ってる「風神とライジング」結構前からあるよな?
風:結構前からある。
綾斗:Walkingsになる前からあって、「この曲やべえ!」って言ってたんですよ、俺。風は「だせえ、これ嫌いなんだよな」とか言ってて、それを今回、アルバムに入れてきたから、全部俺のおかげかなと思って(笑)。
風:ははは!
─ 信頼してるバンドマンの友達の言うことは受け入れられるんですね。
風:確かに。
綾斗:的確に言ってくれるんで。
─ なぜ今回その曲を入れたんですか?
風:吉田がすごい好きだったんですね。
吉田:そう、風は結構多いんです。デモ作って、めちゃめちゃいいのに自分で却下するパターンが。あとは、貴志って、あまり余計なことを叩かないタイトなドラマーなのでこの曲にすごいプレイが合ってたんですよね。そうゆう理由もあって入れたんだよね。
綾斗:今回の俺らが出した「From JAPAN」ってアルバム、こいつ(風)に一番最初に聴かせたんですけど、「はは!売れねえな」って言われました。
風:そうだった?まあ、あん時居酒屋だったし。ケータイのシャカシャカ鳴っている音だったからじゃない?
─ 皆さんが感じる範囲で日本にフェスが根付いた実感ありますか?
風:地元に帰った時に、コンビニのおばちゃんに「俺、今度、フジロック出るんですよ」って言ったら「え、すごいじゃん」って言われたんですよ。だからそのおばちゃんがフジロックはなんかすげえってとこまでは多分行ってる。
綾斗:確かに。名前だけは知ってるけど「それ何?」っていう。
─ なるほどね。他にもサマソニやロックインジャパンやライジング、後、いろんなとこでやってるフェスがありますけど。
綾斗:なんかアーティストが憧れるフェスってあんまない、そういう意味でフジロックは売れてるやつでも全員出たいと思ってるらしいんですよ。でもなかなか出れない。ほんとに大人たちが毎回、営業行くんですけど、「え?あんたのとこが行くの?」っていう。やっぱりアーティストが認めてるフェスじゃないですか。認めてるというか、憧れる。
─ 去年は邦楽フェスで大物扱いのバンドが多めに出たけど、その辺はどうですか?
風:メジャーシーンというか、第一線までもっとカッケーものが出て欲しいですね。
綾斗:ていうか、こいつらが出れんのに俺らが出れないのかっていう葛藤はありますけどね。日本のメジャーシーンのやつらが。
─ じゃあ他の邦楽フェスで見れる人が出てもしょうがない?
綾斗:いや、いいんじゃないですか?
風:椎名林檎、初めて見た。カッコよかった、ポーズが特に。
綾斗:だからほんとはカッコいいんじゃね?ってところもあるんですよ。実際、ライブ見たら。
─ じゃあ当然、フジロックはずっと続いて欲しいですか?
風:もちろん、絶対続いて欲しいですね。
─ それは自分がバンドやってるから以外では?
風:自分がバンドやってるからです(笑)。
─ 明快ですね(笑)。
綾斗:今回、ファッションで来るやつは減りそう。
風:20周年感あるよね。めっちゃ行きたい、てか出たい。
綾斗:僕は今回、ロバート・グラスパーとカマシ・ワシントンが来るのが、新旧のジャズ対決。
─ もし出られるとしたらどんな流れで出たいですか?
風:レッドとかより外でやりたいよね。醍醐味だもんね。
吉田:奥のフィールド・オヴ・ヘヴンとかいいよね。
風:いずれ、でかいステージでジャック・ホワイトの並びでやりたいですね。あと、レッチリかな。王道好きなんです。
─ 例えば自分たちの世代でどんなことを覆していきたいとかありますか?
風:俺、世界基準の野望はあるんで。ハードルは高くしておきたいですね(笑)。
綾斗:俺らは多分、そんなんないですね。自分らで発信できる範囲で、おもろいことやりたいなと思ってて。今、俺らの世代がすげえ面白くなってってると思うから、クラブシーンとかにもどんどん入って行ってるし。そういうのがなかったと思うんですよ。そこまで巻き込むのは。そういうのが入ってきて、海外からも注目されてきてるんで、その中で、東京とかだけじゃないかもしれないけど、囲ってやるというか、遊びがないというか。そういうのに同じ方向で行っても同じレベルで計られちゃうから、違う面白いことを常にしようと、僕らは考えてます。イベントにしろ。
─ 自分ら主催のフェスをやりたいとか。
綾斗:結構、それ今回実現しそうで。
風:いつ出演依頼来んの?
綾斗:…。
─ 今、スルーしましたね(笑)。誰が出たら面白いですかね。
綾斗:ジミー・エドガー(デトロイトの20代前半の若きエレクトロ・リーダー)とか?(笑)コアなんだけど、向こうでは一個シーンできてるぐらいなんで、そういうのを俺らが教えてあげるぐらいのフェスとか面白くないですか?だから俺らが発信したものが一個のムーヴメントと捉えられるとかも面白いと思うし。表面的なものしか、今、流行ってないし、知らないんで、みんな。そういうところをぐっと掘ったものをパーティとして集まってもらって、聴いて、「ヤバイな!」と思ってくれたらいいんで。
風:俺らはまず目の前の目標としては5月21日のワンマンライブをむちゃくちゃ盛り上げたい。大きな目標としてはグラミー賞ロック部門を獲りたいです!
今年のラインナップはお互い好みのようで、飽くまで出演が目標でありつつ、お客としても行きたそうだった彼ら。海外の現状も知るこの2バンドのような存在が、今後のフジロック、そして日本のライブシーンに変革をもたらしてくれる気がする。第三弾は初の女性陣、オレスカバンドが登場してくれます。
第一弾:ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.1: told
取材・文:石角友香
写真:齋藤允宏
●Tempalayインフォメーション
2016.5.17「スペースシャワー列伝 第130巻〜桃源洞裡(とうげんどうり)の宴」 TSUTAYA O-nest w/never young beach、Rei、SANABAGUN.
2016.5.20「MAGMAそれは太陽のデジャヴュ リリースツアー東京編 supported by ETERNAL ROCK CITY. 下北沢シェルター w/愛はズボーン、deronderonderon、ドミコ
http://tempalay.com
●Walkingsインフォメーション
2016.5.21 渋谷Milkyway 《初ワンマン決定》「全時代ロック」単独公演
http://walkings.wix.com/walkings
●姉妹サイト、SMASHING MAG.では2バンドも出演した先日のSTYLE BAND TOKYOのライブレポートを掲載!
ウォーキングス (Walkings) @ 渋谷TSUTAYA O-nest 2016.04.23
http://www.smashingmag.com/jp/archives/57211
テンパレイ (Tempalay) @ 渋谷TSUTAYA O-nest 2016.04.23
http://www.smashingmag.com/jp/archives/57214