ROOKIE A GO-GO経験バンドに訊く「フジロックってなんだ?」Vol.1: told
- 2016/04/28 ● Interview
20回目の開催を機に、ROOKIE A GO-GO出演経験バンドに「自分にとってのフジロック」「フジロックが果たした役割」「これからのフジロック」etc.について訊くシリーズ企画。ゲートをくぐりグリーンステージ制覇に到ったバンドもいれば、去年のROOKIEに出たばかりのニューカマー、そして今は音楽活動とは別の道に進んだバンドも存在する。彼らの言葉を通して見えてくるフジロックの20年、そしてこれからとは?
1回目に登場してくれたのは、昨年のROOKIE A GO-GOに出演した、“純国産東京発オルタナティヴバンド”と評されるtold。バンドマンとリスナー両方の視点からフジロックについて話してくれたのだが、参加する皆さんと親しい視点に共感できるのではないだろうか。
─ まず去年のルーキー・ステージで印象に残ってることを詳しく聞きたいんですが。
有島コレスケ(Bs):自分たちが出たっていうよりも、3日間タダで行けたっていう(笑)。3日間通しで、みんなで行ったのは初めてで。
─ 通しで行ってみてどうでしたか?
山崎裕太(Gt):雨降らなかったからラクでしたね。僕はフジロックに行った時、雨降ったことない。
有島:俺は1回ある。
山崎:レディオ・ヘッドの年(2012年)、みんなで行ったんだよね。
鈴木歩積(Vo、Gt):ロストエイジとかエルヴィス・コステロとか出てましたね。3日目か。
有島:アット・ザ・ドライブインとか。
山崎:エクスプロージョン・イン・ザ・スカイとか。
有島:その年にみんなで、車で1日だけ行きましたね。
鈴木:なんかわかんないけど、夜中に出たらすげえ早く着いちゃって(笑)。
山崎:トラックターミナルみたいなとこに停めて1回寝たんですけど、駐車場から会場まで1時間ぐらい離れてるから、シャトルバスに乗って会場まで行って。
鈴木:駐車場の中で寝てたんですけど、その時点で結構疲れてて。
有島:あの年は、はしゃぎすぎた。
山崎:会場着いて、オアシスでしたっけ?フードコート、あそこの椅子に座って、みんな電池切れましたね(笑)。
─ 朝開場してすぐ入って?
山崎:ロストエイジを見たくて。
─ でもいいですね、20代になってそんなはしゃいで行けるって(笑)。
有島:割となんでもはしゃいでるんで。遠征の車の中でもはしゃいでるんで(笑)。
山崎:見るものすべて新しい、珍しいと。
有島:他のバンドの人が乗ると驚かれる。「こんな喋ってんの?」って言われる。
─ 今年20年目じゃないですか。始まった当初はみなさんまだちっちゃかったでしょ?
山崎:そうでもないんですよ(笑)。
有島:10歳とか。でも行く歳ではない(笑)。
─ いつ頃から意識に上ってきました?
山崎:中3ぐらい。J-WAVEとかでしきりに宣伝してて。マニックスのメンバーが失踪したぐらいが、僕はフジロックとかフェスの存在を知った頃、かなあ。
─ いつ頃意識に上りました?
赤羽進互(Dr):でも、俺すげえ遅くて、23の時、バイト先の先輩が行って、音楽が好きな人は行くんだなと。あんまりフェスとか言ったことなくて、その中で、去年出演したのがほぼ初めてで。
鈴木:僕はたぶん中学生ぐらいの時に、テレビで…テレビ大好きだったので(笑)、見てたらCMかWOWOWの無料放送かなんかで見て。で、お兄ちゃんが音楽好きだったんで、いろんな音楽番組録りためてて、その中にフジロックの映像も入ってたりして。
─ 参加するには、何がハードルが高かったですか?
山崎:休みを作るってことが結構、あれじゃないですかね?
有島:それは前提(笑)。”新潟、遠い”ってイメージ。
山崎:辛そう。宿泊かな、通して行く場合は。行くなら1日かな、みたいな。どの日行きたいか、みたいな。
─ ちなみに有島さんはいつ頃意識に上ってきました?
有島:洋楽メインじゃないですか、フジロック。洋楽聴き始めたのが遅くて、高校時代とか通ってなかったので存在は知ってましたけど、「行きてえ!」ってなったのはほんとここ5年ぐらいで。自分が色々知ってるアーティストが増えてきて「あ、こんなんも出てるんだ」ってなって行きたくなってきた感じですかね。でも、元祖的な存在じゃないですか、日本のフェスの。そういうことはずっと認識はしてます。高校の頃から。
山崎:だから外人が来ると思った、俺は(笑)。
─ ああ、フジロックがあるから外タレが来ると?(笑)
有島:フェスで一番偉いやつみたいなイメージはある、フジロックは。
山崎:で、意識し始めた頃は今ほどフェスがなかった。
有島:ロックインジャパンとサマソニとライジング、以上。
─ 出演した時の思い出はありますか?
山崎:外人に野次られた、というか「早くやれ」って言われて面白かった(笑)。
有島:でもウロウロできた、自由に。
─ 出演者としては?(笑)。
山崎:ははは。
有島:出演は30分、いつもと変わらないというか。でも雰囲気はフェスって感じがありましたけど。あと、あの場所はゲットー、お客さんも。
─ ゲートの中は終わってからですからね。
有島:結構、ダラダラして良かったっすね。
─ パレスの奥とかカオスだし。場外は酔っ払い多いですね。
鈴木:あの感じ、良かった。
有島:ライブハウスっぽい。
─ 去年の出演後、アルバム『KIERTOTIE』を作ったわけですよね。よくも悪しくも影響したことってありますか?
有島:アルバムの曲作り合宿も山の中で、アルバムのレコーディング自体も山の中で、でフジロックも山の中で。ひたすら山籠りしてたっていう(笑)。
─ 夏休みっぽいですね。
鈴木:夏休みっぽかったね(笑)。
有島:ま、影響はしてるとは思いますけどね。どこがどうっていうのはわかんないけど、多分都内のスタジオで作ってたら、ああいう感じにはなってなかったと思います。この一連の”山期”を経た音像な気はします、個人的に。結構、引き倒さない曲があったりするのは、その山にいた時の広い気持ちがそうさせた気もします(笑)。広大な自然の影響を受けてる気はします。
─ なるほど。フジロック20年の変化を語ってもらうのは無理だとしても、最近変わってきたなって印象はありますか?
鈴木:1個ステージなくなってたよね。オレンジコート。あれ去年から?
─ そうですね。
山崎:なんか自由空間みたいになってましたね、大道芸人がいたり。僕、あそこで「日刊SPA!」の取材受けて。夏フェス特集の取材。そしたらサムネイルに「なんと出演者!って(笑)。それは思い出です。
─ 日本にフジロックが根付いてきた感はありますか?
鈴木:根付いてきてるんじゃないですかね。
山崎:夏フェスしか行かない人がいるって噂を聞いたことがある。
鈴木:ライブハウスとか行かないけど、雰囲気を楽しみに行く。でもそれすごくいいと思いますけどね。要素が音楽だけじゃないから、ハードル下がるし。
山崎:木陰でずっと本読んでる人いるじゃないですか?あれなんか究極の楽しみ方というか「何やってんの?」と。しかも生演奏全然聴こえないところで。「寝ねえんだ?」って。いやいいなと。そこまで行くと根付いたんだな、その人にって感じは(笑)。
有島:ステージ間の移動で、だんだんこっちのが遠のいて、そっちのが聴こえてくる人力フェードインみたいな、いいですよね、あれ(笑)。
鈴木:俺、ノエル・ギャラガーのとき、FKAツイッグスとかぶってて、終わって、大きい方のステージにみんなダラダラ歩いてたら途中で「ドント・ルックバック・イン・アンガー」のピアノが聴こえてきて、ざわざわして(笑)、みんな走り出して。みんな歌いながら走って。
─ ありますね(笑)。好きなステージとかあります?
山崎:グリーンステージかなぁ。
鈴木:僕はレッドマーキーとか好きですけどね。テント空間。
有島:グリーンかなぁ。
山崎:割とすぐのとこに山がデーンとあるじゃないですか。後ろ振り返ると。あれいいな、それこそ山に囲まれて。
有島:それこそWOWOWとかでフジの映像流れてきたら、客席の方が写るやつ、クレーンで。あれが見たい。
山崎:あれが見たいんですよ、クレーンが動いてるフェスっぽさ。
有島:こう土煙がうわーっと。で、フジは音いいよね。
─ いくつかある日本のフェスの中でもフジってどういうイメージありますか?
鈴木:なんか硬派なイメージありますけどね。硬派っていうか閉鎖的じゃないけど、フジロックと他の夏フェスって感じはある。
有島:音楽にも詳しいし、アウトドアも強いみたいな人が行くイメージ。
山崎:知らなくても楽しめる。でも行く理由が音楽じゃないっていうにはチケット高いですからね。でも去年、お母さんを連れて行った人のブログが話題になったじゃないですか?すごい楽しそうで。なんかお手製の防寒着とか、クッション持って行ったりとか。
※編注:61歳の母親が、初めてフジロックに行った体験記 | M-ON! MUSIC
─ ああいうの読むと上の世代の人にも行ってほしくなるんですよね。じゃあこれまで見たアクトとか、これって苗場でしか経験できないよねとか。端から端まで歩いて死んだ、とか。
山崎:去年は毎日、一番奥まで行ってました。綱渡りみたいのできるじゃないですか?あれと太鼓を叩くの毎日やってたな。カフェドパリも行きました。1日目より2日目より3日目が汗臭くなっていく、タフな現場だなと思いながら(笑)。
有島:なんだろうな、アクトで言えば、ビョーク。あと、ライヴ中に天気が変わっていく感じとか、フジロック、山ならでは。曲とシンクロしたりするとちょっと神々しいものを感じたりしちゃったりして(笑)。
鈴木:風が吹くと音が変わる。
山崎:コステロ見てた時、雷がすごくて、ばちばちしてて、くるんじゃねえか?って話してたけど来なかった。
鈴木:去年、toe見た後、(山崎)号泣してたよね。
山崎:フー・ファイターズの時も号泣して。最初の音鳴った時、泣いてて、だから終始泣いてた(笑)。
有島:崩れ落ちた(笑)。
山崎:赤ん坊時代以来、一番泣いたんじゃないかっていう。
鈴木:1曲目終わった後の歓声、(山崎が)一番早かった(笑)。
有島:フー・ファイターズどんどん好きになるな。
鈴木:それこそあんまり外タレを見に行く機会ないけど、ライヴとCDはやっぱり違ってたりするから。
山崎:純粋にフェスは人がいっぱいいるじゃないですか?フェスのセットリストはそんだけ人がいるから、ベストアルバム的じゃないですか?それも面白い。各アルバムから3曲ずつ、とか。
鈴木:ヘッドライナーのバンドだけセット変えるじゃないですか?あれがいいですね(笑)。去年の花道も1日目だけでしたもんね。フー・ファイターズの。
山崎:モーターヘッドのギターの人がワウを花道に置いてて(笑)。スタスタスタ、ワウ、みたいな(笑)。
有島:ワウ(笑)。
─ フジロックが果たしてきた功績ってなんだと思います?
山崎:ロックフェスの礎、先駆者。
有島:「あそこに出たい」みたいな目標として、やっぱフジロック。夏フェスよりさらに上の感じはあるんで。やっぱフジロック出たいって目標になってるってことは。
山崎:バンドマンの甲子園(笑)。
─ これからも続いて行ってほしいですか?
有島:(笑)、結構凹みますよ、フジロックなくなったら。
鈴木:「日本で音楽の生演奏終わった」みたいな。
山崎:フジロック終わっちゃったら「フェスは根付かなかった」ってことになる。
鈴木:たぶん他のフェスやってる人も凹むよね。
有島:フジロックがあるから、他の邦楽系のフェスもできてるみたいなとこあるよね。
想像通り、ミュージシャン、リスナー両面から、フラットな視点で「フジロックのかけがえのなさ」を話してくれた4人。音楽好きになった頃にはすでにフジロックが存在していた世代ならではの感想でしょう。次回は昨年出演組からTempalayとWalkingsの対談を掲載予定。お楽しみに。
取材・文:石角友香
写真:MITCH IKEDA
●Information
初のワンマンライブ開催決定。
「KIERTOTIE Release (De)tour 2016 Final One Man Show」
2016.5.27 Fri @ 下北沢シェルター
詳細は公式サイトにて http://told.jp