ごはんを制す者はフジロックを制す!ワールドレストランのコーディネーター、ソロモンにインタビュー!!
- 2015/07/17 ● Interview
恒例のごはんマップが発表になりましたが、みなさんチェックはお済みでしょうか?今回は、1997年のフジロック初回からワールドレストランのコーディネーターとして、またエチオピア料理”クイーンシーバ”の店長としての顔を持つソロモンにインタビューをしました。2012年には、バディ・ガイを楽しみだと語ってくれた彼でしたが、オレンジコートのない今年のフジロックをどう感じているのでしょうか?またキャンプエリアの導線追加によって、テントからレッドマーキー方面へのアクセスが便利になるようです。そこで、今年は少し夜ふかししてワールドレストランに遊びに行ってみませんか?豊富な種類のごはんやドリンクメニューはもちろんですが、それ以外にもお楽しみが控えているようです。開催当日はどんなことがフジロッカーを待っているのでしょうか?最後まで要チェックです!
オレンジコート移動案!?
―「今年はオレンジコートがなくなる。」と日高大将のインタビューでは衝撃の発表がありましたが、第1回目のフジロックから関わってきてどのように受け止めていますか?(オレンジコートは以下、オレンジ)
寂しいね。フジロックの中でも、あそこは大人っぽいステージ。だから、アフリカの伝統的なミュージシャン達やブルース、ジャズとか、カルチャーのある音楽を意識していたと思うんですよ。流行の音楽が分からなくても、そこに行けばサプライズもあるし、発見にもなる。そういう目的もあったと思う。結果としてその通りになったんじゃないかな。他のメインステージのアーティストの方が有名なのに、(オレンジに出ているアーティストは)市場が弱くてもお客さんが沢山集まってくる。例えば、一昨年のバセク・クヤーテ&ンゴーニ・バ(マリの伝統弦楽器奏者)とかムラトゥ・アスタトゥケ(エチオピアのジャズバンド)とか…あとはバディ・ガイも出ましたね。そこがすごい。フジロックの歴史の中でも残るんじゃないかな、って俺は思う。
―入口からかなり遠いですよね。位置についてはどう感じていましたか?
うん。結構歩くから年配の人たちは辛いかもしれない……。それでも行くんだけどね。
―オレンジ目当てでフジロックに行く人もいるでしょうね。
やっぱりアーティストがいいから。もうちょっと手前にあったらいいのになぁ。レッドマーキーと交換とか!(笑)。
―それはまた斬新なアイデアですね!
音もぶつからないと思う。レッドマーキーは、結構若者向けで大きなボリュームでライブをやるし、オレンジだって位置的にはその方がぴったりじゃん!って思う。私の希望は、オレンジをレッドマーキーと交換!!!
―確かにオアシスが近くなれば、ごはんも食べながら楽しめるし、オレンジ好きにとっては最高ですよね。来年以降に期待しましょう。
帰ってしまったらもったいない!夜が楽しいワールドレストラン
―オアシスやほかのお店とは違ったワールドレストランの魅力とは?
まずは、お客さんにフェスを楽しんでもらわないと。ちゃんとレストランのレベルのごはんやドリンクを出す。それからプラス、人間性かな。商売ばかりじゃなくて友達として、フジロックの仲間として、フェスの雰囲気が出るようにスタッフたちに頑張ってもらってる。スタッフには大変なお願いをしてるのはわかっているんだけど。
―ワールドレストランは、ごはんが食べられるだけじゃない。楽しいフェスティバルの体験を目指しているのですね。
今年もDJブースをやるよ。毎年やっているJim vinyl nasiumでは、ジム・ウェストを中心に、パエリアのお店(初出店のPaella&Sangria)の人たちや色々なDJやミュージシャンにパフォーマンスしてもらうんだ。
―Paella&Sangriaの人たちはどんな音楽をやるんですか?
スパニッシュ音楽だね。ギターとか上手いよ。夜中の0時くらいから、ジムのDJとバーをやるからみんな遊びに来て!
―深夜までめいっぱい遊べるのはパレス・オブ・ワンダーだけじゃないんですね。タイムテーブルはあるのでしょうか?
ワールドレストランに来れば、その辺に書いてあるよ(笑)。いつの間にか情報が広がっていて、好きな人は集まってくる。ワールドレストランは雰囲気がのんびりしているし、待ち合わせの場所にもおすすめだよ。
※Jim vinyl nasiumの詳細は開催中に確かめてみてください!
―あの中だったら人が探しやすいですよね。初めて来た人には、わかりやすい場所ではありますね。
そう。うちがポストマンになってる。特に外国から来る人たち。最近は、台湾やシンガポールからも結構来ているよ。アジアでは、フジロックがもっとも有名な音楽フェスだから。「去年もここで待ち合わせしました!」って人もがまた来てくれるんだ。
野外フェスならではのトラブルも!?
―今年オレンジからBig Cakeワールドレストランに戻ってきますね。(※数年前までbig cakeはワールドレストランに出店してました。)
最初、Big Cakeはワールドレストランに出店してたんだ。オレンジコートがスタートした翌年(2004年)に移ったの。その年はクイーンシーバもオレンジに出店したんだけど、成功するかどうかなんて想像できなかったな。他には、チャイニーズラーメンのお店とか本当に数件だけ。でも、お客さんがすごくたくさん来てくれてね。忘れられないのはある時、急に空が真っ黒になって、みんなが「雨だー!!!」って言うんだよね。でも、じーっと見たら虫だったの。
―えー!!虫の雨ですか。
虫がステージの光に集まって来て、真っ暗になってしまって。スタッフも逃げちゃって大変だった(笑)。
―ごはんを売れる状態じゃないですね
虫をはけさせるには電源を切らなきゃいけないから、店の営業を一旦ストップしてね。それでも、お客さんがずっと並んで待っててくれたの!大行列で凄かったよ。もう一回並び直すのもさすがに大変だよね。
何度も足を運びたくなるほど、気になるメニューが豊富!
―今年初めて来る人もたくさんいると思います。ワールドレストランのおすすめはなんでしょうか?
いろんなチョイスができますよ。フィッシュアンドチップスを食べるならイギリスのレストランの1066。ごはん系だったら、Paella&Sangriaのパエリア。他には、クレープとか甘いもの食べたくなったらガレット屋。あと肉系ね。今回はブラジル料理のChickenman Brazillianだね。オーガニックワインや淹れたてのコーヒーを出すル・ヴァン・ナチュールもあるよ。さっき話題にでたけど、アボカドカクテルとベジタブルカレーが人気のBig Cake。エチオピア料理のうち(クイーンシーバ)は、ほかのお店ができないメニューを定番にプラスにして出さないとダメなんだ。だからうちのメニューは「やってけんのか!??」っていうくらい多いよ。
―どんなものがありますか?
エチオピア料理は、クイーンプレートというカレー。パン系のお店が少ないけど、バーガーがあるよ。外国人は好きだからね。サンドイッチも。常連さんが多いから飽きないようにしてる。
―飲み物のメニューも多いですよね。
やっぱり、お酒の好きなみんなが来てくれるからね。ビール、ワイン、カクテル…って、いろいろ選んでもらえるように。「これもください!」、「あれはないの?」って聞かれることが多くて。
―そうやってリクエストに応えているうちにドリンクメニューが増えたんですね。
そう。「これもいれてよ!」って(笑)。売れなかったから次の年には静かに抜いちゃうメニューもあったけど、そういうのに限って次の年に「あのドリンクはもうないんですか?」って聞かれるんだよね…。
―お客さんの記憶に残るくらいおいしかったんでしょうね。
うん。でも、そういう時は忘れて!忘れて!って言ってる(笑)。ただいろんなチョイスができて楽しめるようにと意識しているよ。普段、うちのレストラン(中目黒にある実店舗)ではメニュー以外のものは出せないけど、フジロックでは出せるから。
―新しいメニューはありますか?
ないね。いつも出してるものがないとお客さんに怒られちゃうから、定番は抜けないんですよ。減らしたいんだけど、なかなか減らせないの。
―嬉しい悩みですよね。やっぱり苗場に来たら食べたくなる味ってありますし。
そう。だから「みんな全部食べてね!残しちゃだめだ!」って(笑)。でも去年は思っていた通りに売り切ることができたんだ。凄いよね。
また帰ってきたくなる場所
―最後に、フジロックは今年から少しずつ変化があるような予感がするのですが、ワールドレストランは今後どうなっていくと思いますか?
「新発売」ものが好きな人がいたり、いつも新しいものを探究する人ってフジロッカーや音楽好きにもいて、面白いと思うんだよね。でも俺はそこに乗れないかな。みんなが思い出に残るものを出さないと。フジロックが「毎年新しいものが出てはなくなる場所」になったら嫌だし。使い捨てみたいな文化は良くないと思うから。おいしいものがいつもの場所にあるってわかれば安心して来てもらえるからね。
―安心感ですか。それがフジロックに毎年行きたくなる魅力のひとつなのかもしれませんね。
観光地や有名なところに行ったら、「あれが食べたいな!」ってなるよね。それと一緒!フェスはそういう風にならないとね。例えば、今年もフィッシュアンドチップスがあるんだけど「去年も食べたよ!おいしかったんだ!」って思い出が残っていると、「あのメニューあった!今年もフジロック来たな~!」って思えるでしょ。すべて新しく変えてしまったら、わからなくなってしまうよね。フジロックは、いろんな人の繋がりや思い出でできているからね。
取材協力:クイーンシーバ
文 : あたそ
写真 : 藤井大輔