2015年のフジロックはどんな内容に?日高正博社長に聞いた
- 2015/06/05 ● Interview
フジロックという場所がもたらしたもの
─日高さんはフジロックでアーティストが成長したり、何かのきっかけをつかんだりする場所にしたいという思いがある?
もちろんあるよ。だからいろんなステージを作って、まだブレイクしてないそのアーティストの雰囲気に合ったところに出てもらって。それで評判になって、大きくなっていってくれたらって。それはやっぱり俺らの務めに等しいよね。
─アーティストのオフィシャルサイトとかでプロフィールを見ると「○○年フジロック出演」みたいなことがトピックとして書いてあることが多く、アーティスト人生の中でもフジロック出演というのが大きな目標の1つみたいなものになっているんだなって感じます。
うん。以前俺の知り合いの子供がフジロックに初めて来てさ。当時15、16歳だったのかな、グリーンステージ周りに入って初めてステージとその前の風景を見ていたんだ。彼はそこから音楽を始めて、何年か経ってルーキーのステージに立ったんだって。そのお母さんから連絡きたんだけれども、「へー!」って思ったよね!そういうのを聞くと、やっぱりうれしいわな。
─フジロックが大なり小なり人の人生に影響を与えるような場になってきているんですね。
人生に影響を……ってのは大げさだよ(笑)。でも音楽はね…俺自身が十代の頃から音楽好きで、当時は思わなかったんだけど、今考えれば音楽が俺に大きな影響を与えていたってことはあって。音楽に関わったことが、自分のモノの考え方とか、今のこの会社をやっているというところとかも含めて、影響を与えた部分はあるね。音楽に触れるということは、その周りの人間にも触れるということと同じなんだよな。外国を旅していて、そこでミュージシャンに出会ったりすると、周りの人とも話すチャンスができる。それに音楽はその国の文化であり歴史だから、そこで自分のものの考え方が広がっていったりはしたよね。十代の頃からせまいところにいたら、今みたいな発想にはならなかっただろうね。そういうことがさ、違った自分のいい意味での転機になっていくと思うんだよな。
─お客さんがフジロックを通じて何かを学んだりする場所にはなっていますよね。
全員が全員じゃないけど、70年代〜80年代に洋楽を聴いていた人たちってけっこうインドア派というか部屋で一生懸命音楽を聴くタイプだったんだ。それであるときElvis Costelloから「すごいな、日本のオーディエンスは。音楽をよく聴いているもんな」って言われて。ほかの国で彼は、ビール飲んでギャーギャー騒ぐだけの「音楽聴いてんのか?」っていうような相手に、ライブをすることもあるから、日本に来て演奏するとお客さんが一生懸命聴いてくれるということに、感動させられるんだってさ。俺はそんなお客さんへ「もっと違う音楽や文化もあるんだよ」って、フェスティバルを通じて伝えたかったんだよな。観て、触れてもらいたかった。それがフジロックを始めた動機でもあるし。
─その結果として音楽以外のことも知ることができる空間が作られたと。
お客さんと話をすると、よく「初めてなんですけど、行くのにものすごい抵抗があった」ってよく言われるんだよ。暑いだの、雨降るだの、えらい歩くだの。「アウトドア派じゃないんで」って言う人に限って「また来ます!」とか言うんだよな(笑)。
─ははは(笑)。
俺は、もしお客さんとして行ったとしたら、やりたいことのひとつとして、何も見なかったってやつ。どっかの草っ原でビール飲んでひっくり返ってさ、で右か左か遠くからいろんな音楽が流れてて、それ聴いたら寝ちゃったとかさ。それで3日間経っちゃったとか、帰っちゃったとか。「一体何しにきたんだよ」っていう話なんだけどもね(笑)。それが俺の夢だね。だからタイムテーブル見てさ、「次何時何十分から、その次は何時何十分から…」とか大変だと思うんだよな。俺できないもん。フジロックの初期の頃は多かったよ。昔のあの交通事故の標語じゃないけど、「狭い日本そんなに急いで何処へ行く」ってやつ。
国内外のフェスの盛り上がりについて
─国内のフェスがどんどん増えてきています。日高さんはこの状況をどう考えていますか?
どんどんやったほうがいいよな! 実際ROCK IN JAPAN FESTIVALにせよ、気持ち的には応援している。渋谷陽一くん(ロッキング・オン代表取締役社長、ROCK IN JAPAN FESTIVALのオーガナイザー)とは何十年の友達だからっていうのもあるし、それに俺が知らないような日本のアーティストもたくさんいる。そういうところのマーケットを彼らはつかんでいるわけだから。北海道のRISING SUN ROCK FESTIVALだったりJOIN ALIVEももちろん応援しているし、1回目は北海道にも行っている。仙台のARABAKI ROCK FEST.もね。たくさんのフェスにたくさんのお客さんが行くようになれば、マーケットは確実に広がって、最終的には音楽のマーケットにいい効果を与えるわけだから。たくさんあることは問題じゃない。もちろんその中でいいフェスティバルを作ることは重要だね。
─海外フェスも同様に増えてきて、アーティストのブッキングが大変になったりはしませんか?
今はまだ売り込みのほうが多いからね。実際グリーンのヘッドライナー3組は全部向こうから話がきたからね。ここまで大きなバンドになると、ワールドツアーサイズで決めているんだよ。大体何年に1回レコード出して、どこに行ってあーしてこーしてっていうのをマネージメントが考えてるわけ。その中のポイントとして、フジロックが入っていることは間違いないよね、「今年は何日から何日までなの?」とか聞かれるし。こっちは条件が合えばやるっていう感じだよね。
─なるほど。
まあ日程が合わないとかはあるからね。特にフジロックは、同じ日程で韓国やオーストラリアでもフェスがあるから、そことのスケジュールを合わせもしなきゃいけない。例えば、土曜日にフジロックに出るアーティストは韓国もオーストラリアも行けなくなるし、金曜に韓国なら日曜には日本に入れるとかね。機材が多いから、金曜に韓国でライブをして、機材をトラックに詰め込んで、それでようやく飛行機に何十トンもの機材を乗っけて持ってくる。そのとき税関も通さなきゃ行けないし、日本に着いても成田から苗場まで来なきゃいけない。そうしたらどうしたって金曜やって日曜かその逆だよね。その辺のスケジュール合わせっていうのも必要なんだよ。だからお互い話し合っているしね。あっちから「今年は誰が出る?」って聞いてくるし(笑)。
─来年は20回目です。「〜周年!」とか好きじゃなさそうですが(笑)、念のためアニバーサリーに向けての意気込みなどあれば。
20回といえば……二十一回忌の前だね。なんかお寺でお経でもあげようか(笑)。まあそれは冗談として、別に俺は来年のことなんか考えちゃいないよ。どうしても海外のアーティストがメインだから、さっき言ったスケジュールなんかの事情もあるし。単純にお金払えば来るっていうようなヘッドライナークラスのバンドはいないし。だから、来年は来年だよ。
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取材:本人(@biftech)、三ツ石哲也、若林修平
インタビュー写真:藤井大輔
ライブ・会場風景写真:fujirockers.org