“地中海のビック・ウェーブ”BOOM PAMがフジに到来!中東音楽の伝道師・サラーム海上に直撃取材!(前編)
- 2014/07/21 ● Interview
遠く離れた中東の国・イスラエルから、地中海の荒波に乗ってピースフルなサーフ・ロックがやってきた!?
ザ・ベンチャーズばりのサーフ・ギターと中東民族音楽の絶妙な融合を体現するサーフ・ロック・バンド、BOOM PAM(ブーム・パム)がフジロックに登場する。今年、3rdアルバム『ALAKAZAM』と、彼らを含むイスラエルのアーティストを集めたコンピレーション・アルバム『Mediterranean Grooves And Raw Sounds』という2枚の日本盤をリリース。ロックを語る上で空白地帯のように情報の乏しい地域から、豊潤かつすこぶる元気でハッピーな音楽が上陸したことに、目が飛び出るほどの衝撃を受けた。新しくも懐かしいサウンドスケープ、現在・過去の音楽シーンを見渡す上で、刮目・必聴すべきバンドと断言せざるを得ない音だ。フジロックでの彼らのライヴを是非とも見逃してほしくない。
イスラエルによるガザへの空爆の緊迫した様子が連日報道されるなか、日本人には難しい中東情勢と馴染みの薄い文化・生活、ましてや音楽事情なんて想像がつかない。彼らの音楽性と現実のギャップにも驚かされる。今回、早い段階からBOOM PAMの魅力を発見し、中近東やインドなどの音楽や料理事情などに詳しい“よろずエキゾ風物ライター”サラーム海上(うながみ)氏にインタビューを敢行。BOOM PAMの背景、中東・東欧の音楽やフェス事情、さらには隠れたロック史にまで話が及んだ貴重なインタビューを前後編でお届けする。
すごくカッコいいサーフ・ロック・バンドだった
― サラーム海上(以下、サラーム)さんが不定期で働いているという渋谷のワールド・ミュージック専門店「エル・スール・レコーズ」で、店番をしながらお話を伺います(笑)。独特の雰囲気があるお店ですね。
サラーム: 僕が直接現地で買い付けてきたレアなCDやレコードもたくさんあります。毎週1回ほどですが、自分がお店に居るときはTwitterで「店番してるよ」ってつぶやきますので(笑)、ワールド・ミュージックに興味がある人は是非1度足を運んでみてほしいですね。
― さて、そんなワールド・ミュージックに精通したサラームさんが熱くプッシュしているイスラエルのサーフ・ロック・バンド、BOOM PAMがついにフジロック初登場です。前回の来日時と比べると、確実に温度感が上がってるなという感じがしていまして。
サラーム: そうですね。今年はCDも日本盤が2枚出ていますし、非常に嬉しいです。
― まず、サラームさんがBOOM PAMに出会ったきっかけというのは。
サラーム: ドイツに、シャンテルというバルカン・ビーツ(東欧ジプシー音楽+クラブ・ミュージック)のDJがいるんですけれども、2006年にそのシャンテルのレーベルからBOOM PAMの1stアルバムが出てて。タワーレコードの渋谷店で買ったんですが、地中海からきたイスラエルのサーフ・ギター・バンドでベースがチューバ(低音の大型金管楽器)だったりするし、これは面白いんじゃないかなとは思ったんですけど、聴いてみると何だか音が弱くて。ワールド・ミュージックのレコードって、ヨーロッパで録音しているのが多いからか、音が弱いのが多いんですよ。なので、そのアルバムを聴いた時点ではいまいちよく分からなかった。
翌年に久保田麻琴さん(古くは裸のラリーズや夕焼け楽団、細野晴臣とのHarry & Macとして、近年は宮古島の神歌や阿波踊りの録音なども手がけるプロデューサー)が、毎年ヨーロッパで行われているワールド・ミュージックの見本市「WOMEX」に行って、そこでBOOM PAMを観て「すごくカッコいいバンドを見つけたんだけど、サラーム知ってる!?」と連絡が来て、「知ってますよ。けど音源だとあまり良さが分からないんですよ」と返したら、「いや、ライブは凄いよ。サーフ・ギターで地中海の中東のメロディで、すっげえカッコいいよ」って。それが2007年か2008年くらいのことかな。その後、彼らのアルバムが2枚出てたんだけど、イスラエル盤でなかなか手に入らなかったんです。
Boom Pam “Malibu”
サラーム: そしたら、2012年の8月ぐらいに、僕の書いた「21世紀中東音楽ジャーナル」という本を読んだイスラエルの方から連絡が来て、「すごく面白かったんですけど、イスラエルの音楽のことについてほとんど触れられていないのが残念です」と言われたんです。確かに書いてないから「僕もイスラエルの音楽について触れたいんだけれど、1度しか行ったことないので書けませんでした」と答えて。
― 情報が少ないと(笑)。
サラーム: すると、「日本とイスラエルの国交60周年記念イベントにBOOM PAMというバンドを呼ぶんですけど、知ってますか?」と。それを久保田さんに電話で伝えたら「それ絶対観たいけれど、その日他の予定が入ってるよ」ということで、その1週間後に渋谷のサラヴァ東京を借りて、久保田さんが急遽ブッキングしたBOOM PAMのライヴをやることになったんですよ。ライヴのフライヤーも久保田さんがその週末のうちに作っちゃってて。それでその翌週、僕はそのイベントで彼らを観たんですけど、ライヴハウスではなかったので、機材もちゃんとしてなくて、それでもバンドとして佇まいがカッコ良かった。
その会場で売っていた彼らの3枚目のアルバム『ALAKAZAM』を買って聴いてみたら、ヨーロッパのプロデューサーに頼らず、彼らだけで作ったおかげで、ガレージっぽいラフな感じ、ローファイな感じがすごく良く出て、こんなイイバンドだったのか!とビックリしました。それで、翌週の久保田さん企画のライヴで見たら、もうすごくカッコいいサーフ・ロック・バンドだった。ライブの告知期間が1週間ぐらいしかなかったから、お客さんは80人くらいしか埋まらなかったんだけど、プロのベリー・ダンサーとかがいっぱい来て盛り上がったんです。
Boom Pam – Live @ Saravah, TOKYO
カリフォルニアみたいな港町にロケットが飛んでくる
サラーム: その3ヵ月後に、僕はイスラエルのエルサレムとテルアヴィヴで行われた音楽ショーケース・フェスティバルに行きました。そして、ついでに、BOOM PAMのVo&Gt・ウリ(Uri Brauner Kinrot)の家に行って取材させてもらったんです。地中海沿いの都市テルアヴィヴの南側にあるヤッフォ(またはジャッファ)という港町に彼らは住んでいて、そこはサーファーの町です。ウリの家の入口にもサーフ・ボードがあって、女の人が海岸沿いをタンクトップ姿でジョギングしてるんです。中東で女の人がタンクトップでジョギングって、なかなか珍しい光景なんですよ(笑)。イスタンブールですらなかなか見ない。テルアヴィヴはどういう街かというと、映画で観たアメリカの西海岸、カリフォルニアみたいに思えました。アメリカには行ったことはないのですが(笑)。でも、そこにロケットが飛んでくるようなところなんですけど(笑)。
― タンクトップとロケット・ミサイル(苦笑)。
サラーム: 「世界のパーティー・プレイス」というランキングの10位以内に、ゴアやグラストンベリーなどと並んでテルアヴィヴが入ってるんです。海があって、サーフィンできて…ゲイもすごく多いところで(笑)。そのうえ気候もいいから、冬でも野外パーティーできるようなところです。まぁ、危険ですけどね(苦笑)。2年前も、そして現在もガザとの戦争が行われていますし。僕は25年間中東に通い続けてきましたが、2012年10月にはベイルートで爆弾テロにも遭遇し、2011年1月にはエジプトの革命で催涙ガスを体験し、2013年6月にはイスタンブールの反政府運動でもガスマスクをするはめになりました。近年、中東はいつの間にか不安定な所になってしまいましたね。
Boom Pam “No Waves”
― BOOM PAMの音楽性とテルアヴィヴの気候から、すごく陽気で楽しそうなイメージに支配されそうになっていました…。僕らがイスラエルに対して抱いているイメージは、やはりパレスチナ問題やガザの空爆、戦争・紛争のイメージです。ミサイルが飛び交い、民間人がたくさん死んでいるだとか、そういう政情が極めて不安定な所から、ああいうピースフルでラフなサーフ・ミュージックがやってくるというのは想像だにしませんでした。
サラーム: それが音楽の不思議なところです。でも、アメリカのロックやソウルが最も輝いていた1960~70年代、アメリカ人はベトナム戦争をしていたんですよ。
― 受け取れるイメージは、すさまじくピースフルなのに、横では…
サラーム: ピースフルなのに、横では“ボーン”と。
― 平和と戦争の両極が、生活の中にあるということですね。
サラーム: そうですね。すごいことです。
― その状況は、どう感じていますか。
サラーム: もちろん、戦争はあってはならないし、とても残念です。でも、そういう場所にも注目すべき音楽が生まれているなら、それを聴くことで理解できることもあると思うんです。ベトナムを爆撃していた時代のアメリカの音楽を聴くのと同じです。
ギタリストが主役なのはメタルかサーフ・ロックだから(笑)
― でも、BOOM PAMにとって何故今サーフ・ロックなんでしょう?
サラーム: ウリの家で最初に見せられたのが、寺内タケシとバニーズの『レッツ・ゴー「運命」』っていうアルバムだったんです。1967年のレコード大賞で編曲賞を獲った曲が収録されているレコード盤を、彼が持っていて。ベートーヴェンの“運命”をエレキ・ギターでカバーしてる曲が入っているやつなんですけど、「学生のころにコレを聴いて、すごくビビったよ!日本人が西洋のクラシックを、しかもサーフ・ギターでやってるんだよ!」って(笑)。学生のときに寺内タケシに出会って、10年後ぐらいに日本人の僕にそのアルバムを見せて、彼の中で何か縁が一回りしたように感じたんじゃないかな。そういう感じがすごく伝わってきて。
ウリは、アメリカはもちろん日本や旧ソ連といった世界中のサーフ・ギターのレコード・コレクターでもあって。「なんでサーフ・ギターなの?」って訊いたら、「サーフ・ロックってギタリストなら1度は憧れるんだよ。メロディが主役の音楽だから。それに普通のロックだと、ヴォーカリストが主役だよ。ギタリストが主役なのはメタルかサーフ・ロックだから(笑)」って。彼は自宅で全部レコーディングしていて、エレキ・ギターも自分で作ってピックアップのコイルも自分で巻いているんですよ。
― 楽器方面から入った感じなんですね。
サラーム: そうみたいですね。それに、ウリの両親はウズベキスタンとチェコの人なの。イスラエルは70ヵ国以上の移民でできた国だから、移民のコミュニティによって全然違う音楽を聴いて育っていて。ただ、彼らがよく聴いてるのは大抵ギリシャ系の“ミズラヒム音楽”。ミズラヒム音楽っていうのは、1980年代まではテレビやラジオで放送禁止だったらしいんです。何故かというと、世界中から集まったイスラエル人たちを1つにするには、それぞれ別々のコミュニティの音楽ではなく、国で決めた音楽をキチンとプッシュした方がいいじゃないですか。
― 意識を統一するという意味ですね。
サラーム: それで、ミズラヒム音楽は長い間放送禁止音楽だったんですけど、庶民の間ではずっと好かれていて。1950~60年代にはアメリカのロックンロール、1960~70年代にはサーフ・ロック、それに地中海ギリシャの民謡やポップスとか、エジプトやトルコのポップスがあって、そういうのをエレキ・ギターでやってたりしてたんです。
― ロックの洗礼を受けつつ、自国とその周辺の音楽に親しんだ。そのあたりは、他の国と変わりませんね。
サラーム: だから、BOOM PAMは新しい音楽をやってるわけじゃなく、伝統的な音楽をずっとやってきたんです。実は、そういう人たちは彼ら以前にも中東にはたくさんいたんですよ。
― なるほど。
サラーム: サーフ・ロックで一番有名な曲って、ディック・デイルの“Misirlou”じゃないですか。「Misirlou」とは「エジプトの女性」という意味で、元々は地中海諸国で聴かれている民謡なんですよ。イスラエル人やエジプト人、トルコ人なら誰もが知ってる。ディック・デイルというアメリカの名前だけど、彼はレバノンとポーランド、東ヨーロッパと中東の血を引いています。だから、子供のころに聴いていた地中海の民謡の旋律をエレキ・ギターに置き換えたのでしょう。「トゥクトゥクトゥク…」っていうああいうギターの弾き方って、ウードという中東の弦楽器の奏法なんです。それをそのままエレキ・ギターに置き換えて、東地中海の旋律を弾いたら、アメリカのロックンロールを代表する曲になっちゃったという(笑)。
― そもそもロックンロールに中東の血筋があると。
サラーム: だから、アメリカのロックンロールって黒人・白人っていうだけじゃ図り切れない。肌の茶色い人たちの力がすごく大きいんですよ。サーフ・ロック自体も、黒人・白人だけじゃ見えてこないものがあって。ロックンロールの要素の1つであるポルカも東ヨーロッパの音楽だし。ザ・ビートルズの登場以降、黒い音楽、もしくは白い音楽と2分化していったんですけど、実はそうじゃなくて、その間にあるグレーゾーンというか茶色い肌のゾーンこそがすごくエキゾチシズムを出していると僕は思うんです。
― 面白い話です。僕らは、ロックンロールをアメリカから始まった黒い音楽・白い音楽だと単純な認識をしがちですけど、その源流には肌が白でも黒でもない中東や東欧の色、そこにもロックの源流があったと。今回、フジロック出演でBOOM PAMが知られていくことによって、またロックの歴史が再発見されるんじゃないかという気がしていて。
サラーム: そうですね。BOOM PAMは、いくつもそういう面白い曲をカヴァー・アルバムでやってたりするんで。なので、彼らは突然変異的に現れたわけではなく、実はずーっと昔からそういうことをやってる人たちはいたんですよ。
― そこはなかなか見えてこないところでした。
サラーム: うん、見えなかったところですね。例えば、イギリスの1980年代の2トーン・スカって何であんなにメロディが東ヨーロッパ的なのかというと、ザ・スペシャルズの中心メンバーだったテリー・ホールらが東ヨーロッパのユダヤ系移民だったから。肌は白いかもしれないけど、アングロサクソンではなかったんです。
― なるほど。語り尽くされてきたロックの源流が、BOOM PAMの登場によって見え方から改めて変わりそうですね。ある意味、これまで一般論として固定化されていたロックの歴史に、見えていなかった部分が実はあって、それが中東や東欧から始まった繋がりにその源流の1つを見た気がして。新しい音楽と出会った感覚とともに再発見したような驚きがあり、すごくエキサイティングです。
サラーム: そう、源流の1つとして。ザ・ビートルズとジェームス・ブラウン以降、白・黒とかそういうのが割としっかり分かれちゃったけれど。それ以前はもっと自由で、例えばラテンが流行ったりとか、シャンソンが流行ったりした時代があったわけで。でも、BOOM PAMの音楽に、日本の寺内タケシが絡んで出てくるとは(笑)。寺内タケシはやっぱり本当にすごいんだなと改めて思いましたね。だって、エレキ・ギターって昭和40年代には日本でもしばらく禁止されてたんですよ。
― 不良の音楽として、ということですよね。
サラーム: そう。確か栃木県足利市の教育委員会が禁止したんですよ(※1965年に通称「エレキ禁止令」が出された)。ブラジルでも、1960年代後半にエレキ・ギター禁止って動きがあって、それは多くの音楽家までが支援した。だから、音楽ってホント自由な時間が長いように見えるけど、40年前には何々は禁止!とか当たり前だったんですよね。
“イスラエルの寺内タケシ”もしくは“イスラエルのザ・ベンチャーズ”
― そういう音楽史的なことも含め、今回のBOOM PAM来日によるインパクトが、しかもフジロックの舞台にやってくるというところで非常に楽しみです。
サラーム: フジロック、ホント嬉しいですよね。
― 彼らの音楽が一見すごく新しいもので衝撃的に感じるけれど、実はずっと脈々と続いているものなんですね。
サラーム: 脈々とね。やっぱりエレキ・ギターっていうのは1950年代以降、全世界のユース・カルチャーだし。だから、BOOM PAMの一番新しいアルバム『MANARA AND SUMMER SINGLES』には昔の曲ばっかり、世界中のエレキ・ギターの名曲が入っていて。
Boom Pam Featuring Karolina “Black Dog”
― カヴァー曲になりますね。レッド・ツェッペリンを民族臭プンプンでいなたくカヴァーした“Black Dog”も話題です。では、イスラエルではBOOM PAMの存在感というのは大きいのでしょうか?
サラーム: BOOM PAMは彼らとして有名になる前に、ウリが元々バルカン・ビート・ボックスのギターをやっていたんですよ。だから、バルカン・ビート・ボックスの一部みたいな感じで、先にウリの名前が世に出たのかな。で、バルカン・ビート・ボックスを辞めて。
― BOOM PAMでブレイクと。
サラーム: イスラエルはものすごく小さい国だから、もちろんメジャーとアンダーグラウンドはあるけれど、日本ほどのその違いはないですね。
― 音楽的に新鮮なものというよりかは、当たり前のような感じなのですか。
サラーム: カロライナという女性のシンガー・ソングライターがいて、アルバムごとにプロデューサーによって音が変わるけど、元々はオーガニック・ソウルな感じの曲を作るんです。なので“イスラエルのUA”と僕は呼んでるんですけど(笑)。彼女のアルバムもBOOM PAMのウリがプロデュースしてて、それらの音楽が現地では“ネオ・ミズラヒム”という呼ばれ方をしているんですよ。
― ネオ・サイケとかニューゲイザーなどと同じ呼ばれ方ですね。過去の音楽ジャンルを今の技術で現代的に再解釈したような。しかも、BOOM PAMの音は今の時代にガチッとハマるような気がするというか、昨今の世界的なムーヴメントの中でも、彼らの音というのは大きな可能性がある気がしていて。
サラーム: 僕もそう思いますね。サーフ・ギター・ロックは世界中で、コロンビアとかペルーとかでも出てきてるんですよ。クンビアでサーフ・ロックとか、ペルーのチーチャ(南米ペルーで1970年代に生まれた混血音楽)でサーフ・ギターとか。だから、僕がNHK-FMでやらせてもらっているワールド・ミュージックの番組「音楽遊覧飛行 エキゾチッククルーズ」で、今の「世界のサーフ・ロック」特集をやれるかも。BOOM PAMも参加している、2010年に出たコンピレーション・アルバム『Mediterranean Grooves And Raw Sounds』を聴けば分かるんですけど、イスラエルにはファンク・バンドもすごく多いんです。たぶん15年くらい前にゴア系のトランスのシーンがすごく強かったから、その反動もあるんじゃないかな。でも、今ではトランスよりバンドものが流行っていて。
― 生音の方になってきているということですね。
サラーム: そう、生音のバンドもの。だから、このエル・スール・レコーズでもいくつか扱ってるんだけど、“イスラエルの在日ファンク”とか、“イスラエルのクレイジーケンバンド”みたいなものとか、そういうのがいっぱいいます(笑)。
― 先ほどからちょいちょい出てくるサラームさんの例え、すごくイメージが伝わりやすいですね(笑)。サラームさん流のキャッチ・フレーズでいくと、BOOM PAMは?
サラーム: なんて言えばいいんでしょうね…“イスラエルの寺内タケシ”もしくは“イスラエルのザ・ベンチャーズ”じゃないですか(笑)。
― 寺内タケシ!あはは!
サラーム: 『ギターを持った渡り鳥』(小林旭主演、1959年公開の映画)とかそんな感じじゃないですか。
フィールド・オブ・ヘブンでやってほしい
― フジロックに来るお客さんにも、すごくハマるバンドだと思うんですよ。今年は、ジャック・ジョンソンがヘッドライナーだったり。
サラーム: そうですよね。うん。
― 今、オーガニックというかプリミティヴというか、そういった音楽を求める流れを感じますし。お客さんのフィーリングも高くて、フジロック自体もBOOM PAMを非常に受け入れやすい環境があると思います。
サラーム: ただ、ちょっと出演のタイミングがね、あんまり良くないです!というか、26日の一番いい時間帯で、みんなグリーンかホワイトかレッドに行ってる時間なんですよ。しかも2回とも。
― あー、BOOM PAMが出るジプシー・アヴァロン、カフェ・ド・パリの2回とも…。
サラーム: それが残念です。
― かなり個人的ですけど、もう少し大きいところで、フィールド・オブ・ヘブンでも僕はいいかなと思いました。
サラーム: 僕もそう思う。フィールド・オブ・ヘブンでやってほしいですね。まぁ、今回は大きいステージに行かないで(笑)、お客さんにはBOOM PAMを観てもらいたいです。
(後編につづく)
● サラーム海上(さらーむ・うながみ)
1967年2月12日生まれ、群馬県高崎市出身。明治大学政経学部卒業。“よろずエキゾ風物ライター”として“伝統音楽とエレクトロニック音楽の出会い”をキーワードに、中近東やインドを定期的に旅しながら、現地の音楽シーンをフィールド・ワークし続けている。ラジオやクラブのDJ、中東料理研究、海外ツアー企画、WEBマガジン発行など、その活動は多岐にわたる。著書に「21世紀中東音楽ジャーナル」、「エキゾ音楽超特急 完全版」、「おいしい中東 オリエントグルメ旅」など多数。NHK-FM「音楽遊覧飛行 エイジアンクルーズ」のナビゲーターを務める。
オフィシャルWEBサイト:http://www.chez-salam.com/
Salam’s WEB Magazine「SOUQ」:http://www.chez-salam.com/souq01
Twitter:https://twitter.com/salamunagami
● BOOM PAM(ブーム・パム)
Uri Brauner Kinrot(Vo&Gt)、Yuval “Tuby” Zolotov(Tub)、Itamar “The Kid” Levi(Dr)からなる、イスラエルを代表するサーフ・ギター・ロック・トリオ。2003年にイスラエル・テルアヴィヴで結成。エレキ・ギター、チューバ、ドラムスというユニークな編成で、1960年代のアメリカのサーフ・ロックのテイストと中東の民族音楽を有機的にミックスしたような、新鮮なようでどこか懐かしいメロディが特徴。2014年2月に通算3枚目となるアルバム『Alakazam』の日本盤を、7月に懐メロのカヴァー曲と新曲を組み合わせた最新作『MANARA AND SUMMER SINGLES』をリリース。2012年に続いて2度目の来日では、『FUJI ROCK FESTIVAL ’14』出演を含めた日本ツアーを予定している。
WEBサイト:http://www.boompam.org/
取材・文:ノグチアキヒロ、青木大輔
写真:森リョータ(サラーム海上)
取材協力:EL SUR RECORDS(エル・スール・レコーズ)
・ホームページ:http://elsurrecords.com/
・Twitter:https://twitter.com/elsurrecords