下北沢インディーファンクラブ主催者インタビュー ライブハウスで繰り広げる最高の日常
- 2013/06/19 ● Interview
今年も、あの祭りが始まろうとしています。下北沢という国内屈指のライブミュージックの街が、1日だけその楽しさを最大限に膨らませます。今年で4回目を迎えるライブサーキット「下北沢インディーファンクラブ」。開催を今週末に控え、どう動こうかとソワソワする気持ちに拍車をかけるべく、主催者インタビューをお届けします。
100組を超えるアーティスト、15を超える会場…数字にして驚きのボリュームが好奇心を刺激してくるインディーファンクラブ。今回お話を伺うのは、主催者のひとりである長崎貴将さん(右)と、2年目からスタッフ参加し、今年はブッキングを担当している仲原達彦さん(左)のおふたり。ともにライブハウスを”現場”とする彼らは、2013年のインディーファンクラブをどう捉え、どんな1日を作ろうとしているのか、お話を伺いました。(2011年にもうひとりの主催者、カクバリズム代表 角張渉さんのインタビューも行なっております。そちらも併せてどうぞ)
それではまず、自己紹介からお願いいたします。
長崎:長崎です。インディーファンクラブを角張くん(=カクバリズム 角張渉)と一緒に始めたんですが、普段はギャラクティックという、クールワイズメンやグッドラックヘイワ、T字路sのほか、ライセンスものなどCDを出すインディーレーベルをやっています。
仲原:今年のブッキングを担当している仲原です。僕はプチロックフェスティバルを日本大学芸術学部で4年くらいやって、去年はTOIROCK FES、今年からは渋谷のクラブWombでやっているイベント「月刊ウォンブ!」をオーガナイズしているのと、あとはユザーンや七尾旅人など、アーティストのお手伝いです。
下北沢のライブハウスという魅力
そもそもの開催のきっかけはどういったものだったのでしょうか。
長崎:僕が角張くんを誘ったんです。インディーファンクラブの会場でもあるTHREEが2010年にリニューアルオープンしてそのオープン記念でイベントをやってくれ」と言われて、どうせやるならTHREEだけじゃなくてここもあそこも巻き込んだほうが面白いね、YOUR SONG IS GOOD(以下ユアソン)なんかも呼んで…っていう話が続いて規模がどんどん大きくなっていったのがはじまりですね。
仲原:僕はスタッフとしては2回目からで、最初はお客さんとして参加しました。最初の年はcero観た以外で記憶があまりなくて…観られなかったのかな。
長崎:最初の年は会場なんかも入場規制すごくあったからね。もう本当にドタバタで、前売チケットが完売するって自分達も全く想定していなかったから、当日券を求めて200人くらいリストバンド引き換え所に押し寄せ大混乱だったので苦労しましたし、お客さんにも申し訳なかったなぁと。
11年にもうひとりの主催者である角張さんからもお伺いしましたが、初年は本当に大変だったようですね…。それが今年で4年目と続き、規模も大きくなっているわけですが、皆さんが思うインディーファンクラブの魅力っていうのは?
長崎:「下北沢のライブハウスでやる」、っていう新鮮さですね。インディーファンクラブは1000人キャパの大きな会場でやれる人たちも多く出演しています。それこそ毎年フジロックに出演している人たちも多い。でも、そんな中で出発点っていうのかな…ふと「シェルター楽しかったよね」とか、そういう話になることがあるんですよね。それは僕達のライブの思い出なんかも同じで、その規模での体験が、印象として強く残っているんです。だからそんな、一番生々しさが伝わる規模で今あえてやるっていうことが新鮮に思えた。
仲原:あとは無礼講感かな。前回、僕が担当した会場のひとつの風知空知で、事前に申し合わせてもいないのに「まだやってんじゃないかな」ってお客さんやアーティスト関係なく集まってきて、1時間2時間ずっとやっていた。お店の人も優しいから結構自由に延々とやらせてもらいって…そんな時間の感覚がまたいいんですよね(笑)。イベントの規模に反して、すべてにおいて距離の近さを感じます。
長崎:そう。ハコの人たちも僕らに対して「大変だけど頑張って」って言ってくれる。そこに甘えて出演者の情報すでに2週間遅れたりとかしてしまっているんだけど(苦笑)。
仲原:アーティストも1組つながればほとんど知り合いで、メンバーのカブりもすごい。そういうところはインディーファンクラブならではだと思います。タイムテーブルは新しいゲームのように組むの大変だけど(笑)。
自分たちのミックステープやCDラックのような「らしさ」がある
自分のバンドがいくつもある上に他のバンドにもサポートでとか、そのバンドの他のメンバーもほかにとかありますもんね。やっぱり組む側も大変…
仲原:ですね。ただ自分がやっているイベントよりインディーの方が冒険できます。タイムテーブルで「この人の前にこれを置いたら楽しいだろうな」って思ったのを組めるというか。大きなアーティストとまだライブ数回しかやったこと無いアーティストを並べられるのは楽しいし、ブッキング冥利につきます。毎年のチケットの売れ行きなんかもあって集客性よりも組み合わせの面白さとか、そういうところに軸を置ける。
長崎:なんていうか…ミックステープ作っている感覚に近い。たぶんインディーファンクラブはお客さんが一番評価してくれるとこってそこなんじゃないかなと思うんですよ、ボリュームもあるし。
仲原:アーティストから直接「こことカブらないように、見たいから」みたいなリクエストもくる。(笑)。
長崎:インディーファンクラブは儲かるわけでは全然ないから、協賛が入ってほしいってのはあるけど、じゃあそこを頑張るのかって言われるとそれも違う気がしていて。角張くんとよく話すんですけど、うちらはレーベルであってプロモーターではない、って。だから利益志向はインディーファンクラブにはないに等しい。
一度、入場規制とか各アーティストの演奏時間が30分くらいとかを振り返って「このままでいいのかな」って考えたんです。時間に余裕を持たせて出演バンド数を少なくして…とか。でも、あのボリュームだからこそ刺激されるものがあるんだろうなって、結局今の形のままにしました。
インディーファンクラブらしさ、っていうのはそういった部分に集約されているのかもしれませんね。そういえば、「下北沢インディーファンクラブ」という名前は、どういった経緯で決まったのでしょうか?
仲原:そもそもインディーファンクラブっていう名前がすごいですよね。別にフェスって名乗ってないし、ファンクラブって(笑)ちょっとダサいというかインディーって名乗っちゃうところにも…なんていうか直球すぎる感がある。
長崎:ティーンエイジファンクラブにちなんでっていうのはもちろんあるけど(笑)いや全然名前決まらなくて!当初、企画書作った時の仮タイトルが「世田谷インディー魂」だったんですよ?角張くんがイベントのフライヤーに使っていた言葉なんですけど。さすがにこれは分かりにくいし伝わりにくいってことでミーティングの時に候補15くらいダーッと並べてようやく決めた。
仲原:今、「インディー」の概念ってよく分からないじゃないですか。フジロックの大きなステージに出る規模も、それこそ動員数十人クラスも同じで。でもインディーファンクラブの「インディー」は不思議とわかるんですよね。僕のイベントのラインナップを「インディーファンクラブっぽい」って言われたことがあって、まあどちらも僕が好きなアーティストを呼ぶから当然なんですけど(笑)。でもたしかにこのラインナップには旬というか、間違いない感じが毎回あって、ここでいう「インディー」はすごくしっくりくる。
どんどん規模と幅を広げている「インディー」の祭典、最終的にこうしたいみたいな理想のイメージを持っていたりしますか?
仲原:こういうことを今以上にみんなやりたいと思って、もっと規模が広がっていく、ライブハウスやエリアに限らず広がっていくのを見てみたいですね。例えば出演者のひとつでどついたるねんってバンドがいるんですけれど、呼ばれてない2011年のインディーで駅前で勝手に物販やってたんですよ。それが去年はTHREEのトリだったし、今年も出演する。(注:その時の様子はこちら)。そんな現象が色々なところで起こったり、エリアが広がって電車で移動するような感じになったりして、その電車内でも演奏が…みたいなのはいいなあって思います。アイスランドのエアウェーブスっていうフェスがあるんですけど、そこでは街中、温泉なんかでもライブがやっていて、ビョークやシガーロスが狭いところでやっていたりするみたいで。そういうのいいですよね。
長崎:角張くんと「イベントとして独り歩きしてほしいなー」っていう話をよくしているんだけど、だんだんそういう方向になりつつある。はじめた当初は自分達の意思で、自分達の「こういうものにしたい」っていうイメージはあったんです。でも今はお客さんにそれをやってもらっているというか、あそこの楽しみ方をそれぞれが見つけてくれているっていうのがあるんですよね。入場規制がかかることなんかも見越して動いているっていうか、まあそれはいい意味でも悪い意味でも受け取られるけど、インディーファンクラブの理想、っていう答えはお客さんが示してくれているっていうのはあるんですよね。
あとは…自分達にとってライブ感を確認できる場所っていうイベントではありたいと思うんです。年取ってきたんで僕はよく思うんですけど(笑)、数百人キャパのライブハウスで感じてきたことを今あらためて確認できるというか、そういう感覚を振り返れるときがインディーファンクラブにはあるんで。
日常の最大化と、そこからの発見
他のフェスに行ったり、インディーファンクラブと比べてみてどうですか?
長崎:ひと通りは行ったことあるけれど…やっぱフジロックいいですよね。日高さんのレコード部屋ってこんな感じなのかなって、独特のあの感じがいい。フジロックに行っちゃったら他に行けなくても…ってくらいの特別感を感じる。
仲原:ですね。それで違いって言うと…まあ野外とライブハウスっていう違いと(笑)僕らはやっぱりライブハウスが好きっていうのがありますね。そこでの楽しさや青春があって、それを一番だって思う。それに野外だと、フェスをやっていないときの鳥や虫の鳴き声だけの状態、音楽が鳴っていない時が一番すごく美しいって思っちゃう時があるんですけど、ライブハウスは音が鳴っていないと全然おもしろくない。だから都会でフェスをやるっていうのはその既存の音楽の場所を使うっていうことに意義があるんですよね。
野外フェスには「非日常の」といった形容がされることがよくありますが、そういった意味でインディーファンクラブは…
仲原:超日常ですよ。お客さんもいつものライブハウスに行くのと同じ気持ちで良いし、格好も。
長崎:バンドマンにとって日常ですよ、ライブハウスは。バンド対バンド、それとお客さんの一番リアルな土俵だと思うんですよ、ライブハウスって。そしてそれを見られるのがインディーファンクラブだと思う。
仲原:そんなライブハウスの日常に、たまたまその日がインディーだっていう形で来ると楽しいんじゃないかな。色々なハコに、行ったことないところに足を運ぶ楽しさもあるだろうし。感じの違い、音の違いとかを感じる楽しみ方があると思う。
長崎:日常のなかでのインディーファンクラブだからこそ新鮮に見えたり、なにかを発見するっていうのが、やっている人とお客さん、ひょっとしたらライブハウスの人にもあるのかもしれないね。
下北沢という街と、そこで行われるインディーファンクラブについて一言。
長崎:下北沢はほんとに独特な街なんで飲食店も古着屋も沢山あります。ライブみてなくても楽しめるところが沢山あります。そんな下北沢が最高にざわつく日がインディーファンクラブだと思います。リストバンドしてるとちょっとしたサービスがあったりすこともあると思うんで。ほんとに楽しいイベントですから街をライブを冒険して欲しいですね。
仲原:Doramaとか当日リストバンドの人に10%オフとかしていましたね。実際に街を歩いて、ライブハウスもそうだけど、知らない場所に入ってみるのがいい楽しみ方でしょう。あとはどついたるねんがすごいぞ!と(笑)。いや宣伝とかじゃなくて、個人的にすごく観たい。
長崎:さっきのエピソード聞いちゃうとまさに「ミスターファンクラブ」だもんね。僕も観たいよ(笑)。
(了)
今週日曜日に開催が迫った下北沢インディーファンクラブ。タイムテーブルもいよいよ発表され、楽しくも悩ましいスケジュール決めがいよいよ…といったところですね!音楽の鳴り止まない下北沢の街で、みんな好き好きに会場を探検し、サイコーの「インディー」を見つけましょう。
Text : 本人(@biftech)
■下北沢インディーファンクラブ
公式ウェブサイト
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Twitter(ハッシュタグ #SIFC2013)
■INFO
2013年6月23日(日)
前売・当日券ともにSOLD OUT
■関連記事(2011年)
・街中フェス?「下北沢インディーファンクラブ」主催者・角張渉インタビュー前編
・カクバリズム的フジロック 角張渉インタビュー後編
・下北沢インディーファンクラブレポート