感じること、祈ること、みんなでつくるということ。PYRAMID GARDEN -Beyond the Festival-レポート
- 2025/07/23 ● REPORT
夜を超えてさらに深まっていくピラミッド・ガーデン

YOGA(by Tacco)
2日目は6時くらいに自然と目が覚める。RealizeYourOwnのみなさんに缶ビールを分けていただいて目覚めの一杯のテーブルを囲んだり、パレスを手がけるUKチームのジェイソンたちとコーヒーを飲みながらぼんやりしていると、越後湯沢出身のインストラクターTaccoによるヨガの時間がはじまった。思いのほかスパルタでがんがん進むので、何度か水を飲んで休憩を挟みながら参加。それでも綺麗な姿勢でちゃんと着いていく人が多いことにも驚いたが、頭を降った先に広大に広がった山々やドラゴンドラが見える、この環境のヨガはとっても格別だ。
みんながこぞっておすすめしていた川の水浴びにもいってみよう。聞いたところによると雪解け水が流れているそうで、長時間いるには向かないが、数秒浴びただけでシャワーを浴びたくらいの感じに。体拭きシートで済ました翌朝の気分を見事にリフレッシュしてくれた。残念ながらフジロック期間は入れない場所だそうだが、知らなかった素敵な体験はまだまだ色々ある。サウナは残念ながら行くタイミングを逃してしまったが、体験した取材スタッフによると、香りつきの水でセルフでロウリュウをしたりもできて、川のせせらぎを感じながらリクライニングシートでくつろいでとてもスッキリしたそうだ。

Michael Kaneko
さて、ヨガと水浴びでいい感じにリフレッシュした身体に、Michael Kanekoの包み込むような弾き語りがよく馴染む。朝方は日差しがそれほどしんどくもなく、前方エリアに設置されたくつろげる椅子に寝そべって、木々のざわめきを感じながら日光浴のように音に身を任せるのもまた至福の体験。大自然の恩恵に改めて気づかされる(とはいえ昼から午後にかけての日差しは結構強いので、フジロックに行く人は対策をオススメ)。同じように寝そべっている人でも、うっとりした顔でくつろいでる人や手足でリズムをとる人など、その過ごし方は様々だ。Michael Kanekoはフジロックでもbrkfstblendとして金曜日の苗場食堂に出演するので、ぜひチェックしてみてほしい。

DJ TEZ
2日目は初日にできなかったワークショップからいくつかピックアップしてまわった。DJ TEZのブライトな色調のサウンドを背中に聞きながら、新潟市から出店したCLUNK FURNITUREの溶接ワークショップに顔を出す。ダースベイダーのような防護マスクをつけて、中学校の技術の時間のはんだ付けの要領で、ピラミッド型の上部3辺を溶接。何度も失敗してあまり上手くはできなかったのでムラがあるが、それもなんだか味がある。お話を聞くと、溶接工につきまとういわゆる3Kのイメージを、おしゃれなイメージにしたいとのことで、仕事に誇りを持ちながらオルタナティブを模索する姿勢にも感銘を受けた。
RealizeYourOwnやCLUNK FURNITUREの方々には本当によくしてもらったので、次はまた胎内市や新潟市にも行ってみたいし、多分会場中のそこかしこでいくつもの交流があって、こんな気持ちがたくさん生まれているはずだ。

HARIBOW
ダブルダッチパフォーマンスチームのHARIBOWは、思わず歓声があがる白熱のダブルダッチとダンスを披露。音ハメがバッチリ決まってエキサイティングなパフォーマンスに興奮し、そのまま急遽決まったというダブルダッチ体験に参加。
みんな最初は失敗したりするものの徐々にコツを掴み、それぞれ自分なりの動きを織り交ぜながらのダブルダッチに、周囲の人々も巻き込んで大歓声。僕は運動神経にはまったく自信がないが、そこそこいい感じに飛べた気がするのは、HARIBOWがうまく回してくれたからか声援があったからか。いずれにせよ楽しい時間だった。

優河
一夜を過ごしてどんどん一体感や共有感が増してくるのもキャンプインフェス特有のいいところ。2日目のお昼を過ぎた頃にはどんどん気分もほどけてきて、お互い打ち解けたような気持ちを話さなくても感じる、いい具合の空気感。これもまた、みんなでつくるということだろう。だからこそ感覚もひらかれてきて、優河の安らぎに満ちた弾き語りにも様々なことが胸に浮かんでくる。この日行われた参院選に触れながら、後方でシャボン玉と戯れる子ども達を見つめ、「子ども達を戦争に行かせたくない」と語る優河。今日ここで安心して過ごしていられること。焚き火の香りが心地いいと思えること。そんなことに想いを馳せながら、彼女の演奏を噛み締めていた。
そこからは少し時間が空いたので、今回絶対やりたかった釣りに行ってみよう。自分でニジマスを釣ってさばいて焼いて食べるというこの体験。僕はかなり苦戦したが、普段子ども達に釣りを教えるイベントをしてるというRealizeYourOwnの方の助けも借りつつ、なんとか釣りあげることができた。慣れていないと生きている魚をさばくというのはかなり残酷な行為にも感じられてためらってしまうが、この体験がフェスティバルでできるのはかけがえのないことだろう。
釣り堀では、仕事の都合もあってさっき来たというFestival Lifeの津田昌太朗氏とご家族にも遭遇。フジロックには家族で行ったことはないそうで、今回はその前段階としての意図もあるという。これもこのフェスティバルの可能性の一つだし、数時間の滞在だっただろうが、それだけでも一家にとって大きな体験になったことだろう。また、津田氏は僕のような取材で来ている人とフジロック1週間前にここで会えること自体が貴重で、それが10人、100人となった時の意義の大きさについても話していた。

KIMONOS
ニジマスを気にかけつつ取材チームの面々で交代で火を見ながら、最後のライブとなるKIMONOSのステージに顔を出す。向井秀徳のギターが唸ったかと思えばLEO今井のミニマルなビートが絡み合って、ふとブルージィな哀愁を漂わせたりもする変幻自在な音像。前方でもリクライニングシートでくつろぐ人と踊りながら熱狂する人が混在しているのが印象的で、白根賢一のドラムが合流するとその混迷はさらに深まっていく。アンコールではプリンスの“Purple Rain”を披露し、心地いい余韻を残しながら二人はステージを後にした。
15時終演。かなり早くも感じるし、まだまだいたかった気持ちはある。でも完全燃焼とかではなくある程度余力と渇望感を残したまま終えるゆとりは、このフェスティバルの在り方としてはとてもしっくりくる。
そして、ここからはじまっていく
ここまですべてのステージでライブ前に登場し、想いを語ってきたキャンドル・ジュン。そんな彼が言った「お前が戦争は終わるわけがないって想像してるから、戦争が続いてるんだよ」という言葉に僕は胸が痛くなった。昨日見た夜空のLOVEとPEACEがやけに響いたのは、きっとそういうことだろう。キャンドル・ジュンは本気で戦争を終わらせようとしてるから。そして月命日に必ず現地に訪れるという、福島や能登の被災地支援などの様々な活動を通して、その想いを行動で示そうとしているから。じゃあ僕は?そんなことを考える。
こんなに主催者が全編にわたって想いを語るフェスティバルというのもはじめての体験で、中には面食らった人もいるのかもしれない。でもここまで徹底してつくりあげる姿勢は僕にはむしろ清々しく感じられたし、ここに集ったみんなも2日間を通してひたむきな彼の姿勢と行動に触れてきたことだけは確かで、少なからず感じることはあったのではないかと思う。そんな彼が一番最後に「みんな自慢してください。みんながつくったPYRAMID GARDEN -Beyond the Festival-です」と締め括ったのは胸にくるものがあった。
-Beyond the Festival-はシンプルに考えればフジロックの範囲を超えてというニュアンスだろうが、このフェスティバルで体験したことを日常に持ち帰って行動に移すことを考えたい。そんな活力を得た2日間だったし、それは居合わせたみんなのおかげだと素直に感じている。翌日には『WEDDING PARTY Beyond the life』というピラミッド・ガーデンで行われた結婚式に飛び入り参加。この詳細は他の機会に譲ることとするが、この催しもまたこれからの様々な可能性を感じさせる素晴らしいものだった。そう、ピラミッド・ガーデンが描く未来はもうはじまっている。次はぜひあなた自身で確かめてもらいたい。
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本当にたくさんのことがあったPYRAMID GARDEN -Beyond the Festival-で、紹介できなかったことはまだまだある。Facebookページでは2名のフォトグラファーのフォトギャラリーにて2日間の様子を紹介。みんながつくっているいい雰囲気を、少しでも感じてもらえたら幸いです。
PYRAMID GARDEN -Beyond the Festival- | Fujirockers
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.1337739101252056&type=3
text by Hitoshi Abe
photo by 安江正実、HARA MASAMI(HAMA)