• 【FRF’22 Pickup vol.5】HALSEYを現在見るべき理由


    HALSEY (Photo courtesy of SMASH)

    HALSEY (Photo courtesy of SMASH)

    2020年5月に開催予定だった来日公演が新型コロナウイルス感染症による国内外の状況を考慮し中止になった。その時やるはずだった会場は東京ガーデンシアター(でかい!)。あの広い空間をホールジーが掌握する姿を体験できると楽しみにしていたのだが、こればっかりは仕方ない。

    あれから約2年が経ち、まさかホールジーがフジロックのヘッドライナーのポジションで観られるとは──正直予想すらしていなかった。ただ、今年はアメリカのガバナーズボールやファイヤーフライ・フェスティバルではヘッドライナーを務めるし、イギリスのレディング&リーズ・フェスティバルではセカンド・ヘッドラインのポジション担うほどの認知度と実力を誇っているので、今回のヘッドライナー抜擢は「当然」と言っても過言ではない。言ってみれば、2019年のシーアのようなポジションと考えればヘッドライナーのイメージは湧きやすいと思う。

    とはいえ、日本での知名度はまだまだであることは否めないし、今回初めてホールジーのことを知った人も沢山いると思うので、今回はそんな人向けに彼女のパーソナリティと魅力的な楽曲たちについて紹介していきたいと思う。

    アクティビストとしてのホールジー

    まず彼女を語る上で「多様な価値観を尊重する心」はどうしても欠かせない。あらゆる差別が残り続けるこの現代において、彼女はあらゆる差別に素直な言葉を語りかけている。彼女自身バイセクシャルであることを公言しており、LGBTQ+コミュニティや性差別・性暴力被害者をサポートしたり、近年はBlack Lives Matterの抗議デモにも参加。2020年にコスモポリタンで行われたBLMの抗議デモの際には自ら怪我人の手当を行った。

    彼女はかつてファッション誌『VOGUE』のインタビューでLGBTQ+に関してこう語っている。

    「流動性を許さないなんて、この社会が如何に多様なジェンダーを受容することに消極的かという証拠です。男は強くあるべき、というようなトキシック・マスキュリニティ(有害な男性性)の問題は、個人に多大な影響を与えるし、男性が女性のように振る舞うことを否定する考えには、本当に心が痛みます。」

    このように、現代に存在するあらゆる差別に対し彼女は多様性の尊重を訴え続けており、それは最新アルバム『If I Can’t Have Love, I Want Power』にも表れている。本作は3度の流産など苦難を乗り越え“母”となった彼女の立場だからこそ語ることができる、性別や人種などの大きな括りから深掘った多様性を示した作品だ。(ちなみに本作のプロデュースはナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーとアッティカス・ロスが務めている。)

    “客演の女王”の多彩なアーティストとのコラボレーション

    次に彼女の楽曲について紹介していきたいと思う。彼女の名前を一般層にまで轟かせたのは、多彩なアーティストとのコラボレーション作品だ。2016年にリリースされたザ・チェインスモーカーズとの“Closer feat. Halsey”は、当時アデルやドレイクを抑え、米ビルボードチャート12週連続1位という快挙を打ち立てた。

    The Chainsmokers “Closer feat. Halsey”

    他にもジャスティン・ビーバーとの“The Feeling”や、BTSとの“Boy With Luv”、さらにはベニー・ブランコとカリードとの“Eastside”、ポスト・マローンやフューチャーとの“Die For Me feat. Future, Halsey”など、シンプルなポップスというジャンルを超え、あらゆるジャンルとクロスオーバーしていく姿勢は彼女の作品における基本姿勢と言っても過言ではないだろう。その基本姿勢は彼女のバックボーンにある。

    いちエレクトロ・ポップ・ミュージシャンに括られない理由

    世界の音楽マーケットにおいて主流である「〇〇(ジャンル名)を軸にしたポップ・ミュージック」。この流れの中に彼女も居るわけだが、そんな一言では括れないものが彼女の楽曲にはある。それは、彼女のパーソナリティから生まれた音楽的個性もそうだし、生まれ育った環境も大きく関連している。

    ホールジーは幼い頃から様々な音楽に触れてきた。父親からはノトーリアス・B.I.G.や2パックなどのヒップホップ、ブラック・ミュージックを、母親からはザ・キュアーやニルヴァーナなどの幅広いロック・ミュージックを聴かされて育った。

    そんなバックボーンが彼女の楽曲における多様性に表れている。例えば、エレポップソングな“Colors”や、スタジアムロック感のある“3am”、はたまたノイズで歪みまくったギターが響くエモ・トラップな“Nightmare”と、とにかくレンジが広い。こう行ったバラエティに富んだ楽曲は、ステージ空間にドラマティックさと深みをもたらしている。

    “Colors”

    “3am”

    “Nightmare”

    彼女の楽曲の特徴はそれだけではない。ライブではアーティスティックな演出が光る“Graveyard”(個人的イチオシ曲!)、マシュメロとコラボしたポップソング“Be Kind”、ロックにヒップホップ、カントリーなどを吸収したエレクトロ・ポップ“Without Me”と見せ場が尽きないのだ。このように、バラエティに富んだ彼女の楽曲たちは、ステージ上で蝶のように舞い、その軌道に彼女の人生を垣間見るような残像・余韻を映し出す。

    “Graveyard (Live)”

    “Be Kind”

    “Without Me (Live)”

    最新モードにアップデートされるであろうセットリスト

    先週、約1年ぶりの新曲“So Good”がすったもんだありつつようやくリリースされた。この曲が次の新作に向けてのリード・トラックなのかは現時点では不明だが、間違いなく今回のライブのセットリストにも組み込まれてくるだろう。その辺も踏まえた上で勝手にセットリストを予想してみた。

    “So Good”

    ホールジーのステージには、かつてフジロックでヘッドライナーを飾ってきたビョークシーアもそうだったように、単に「女性ヘッドライナー」という見方だけでは括れない多様な体験がきっと待ってるはずだ。その唯一無二のステージを見逃さないで欲しい。

     

    text by 若林修平

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