【FRF’22 Pickup vol.1】JACK WHITE
- 2022/04/16 ● Column
まさかジャック・ホワイトがヘッドライナーとしてフジロックに戻ってくるとは、正直全く想定していなかった。それは、彼がヘッドライナーにふさわしくないからではなく、ジャンルのダイバーシティがより色として表れてきている昨今のフジロックにおいて、「ザ・ロックンロール」な彼がヘッドライナーを飾ることが少し異質に感じられたからだ。しかし、フジロックの歴史を紐解いてみると、彼の存在がヘッドライナーに居ることの意味・意義がくっきりと浮かび上がってくる。それだけ、現代のロック業界における彼の存在感は唯一無二なのだ。
この記事では彼のことを改めて紐解いていこうと思う。彼のことを知っている人も知らない人も、ヘッドライナーを飾る彼の姿を楽しみにしてもらえると嬉しい。
彼の多岐に渡るワークスを理解しよう
ザ・ホワイト・ストライプスの解散後、ジャック・ホワイトは、ソロ、ザ・ラカンターズ(※1)、そしてザ・デッドウェザー(※2)の3つのバンド/ユニットで活動している。がしかし、洋楽リスナーの中で、この3つの違いをきちんと言える人は、彼らのファン以外そう多くないのではないだろうか?
ここのセクションでは、それぞれのワークを「(現時点における)ジャックらしいサウンド」と「前衛性」の2つを軸にしてチャートに当てはめて行きたいと思う。
これを見ると、いかにジャック(ソロ)がクリエイティブ面において突き抜けているかが分かるだろう。これまで、「ジャックらしいサウンド」と判断する基準はザ・ホワイト・ストライプスだった。しかし、今やその基準を大きく超えた位置にジャック(ソロ)は存在している。
そんなソロワークスの中でも、特にサード・アルバム『Boarding House Reach』の突き抜け度は凄まじく、ブルーズを軸にしながらも、ベクトルはあらゆる方向に大きく広げられていて、中にはプログレっぽい曲や、ジャズ・ファンクな曲、はたまたアフロ・ビートな曲もあったりで、新しいアプローチに溢れている。
“Ice Station Zebra”
ジャックのそういった前衛性は、パンデミックの中で更に研ぎ澄まされ、アウトプットへと反映されていった。そんな中から生まれたのが、最新作『Fear Of The Down』と7/22にリリース予定の次回作『Entering Heaven Alive』である。
(※1)ザ・ラカンターズ:ジャックの旧友でありシンガー・ソングライターでもあるブレンダン・ベンソン、グリーンホーンズ(アメリカのガレージ・ロックバンド)のジャック・ローレンス、パトリック・キーラー、ジャック・ホワイトによる4人組ロック・ユニット。
(※2)ザ・デッドウェザー:ザ・キルズのアリソン・モシャート、クイーンズ・オブ・ア・ストーン・エイジのディーン・フィエルタ、ザ・ラカンターズのジャック・ローレンス、ジャック・ホワイトによる4人組オルタナティブ・ロックバンド。
彼の全てを変えたパンデミックとその先にある「再生」
2枚の新作『Fear Of The Down』と『Entering Heaven Alive』は、「再生」をテーマに作られていて、あらゆる既成観念から自らを開放し、新しく自らを再構築するその過程で生まれた。当初は2枚組アルバムにするなんて話も出ていたが、「情報量が多すぎる」との理由で2枚に分けられた。それらは、ただ2枚に分けたわけではなく、それぞれに「土曜の夜」「日曜の朝」というコンセプトが設けられ制作された。
その辺は、新曲”Take Me Back”にわかりやすく表れている。『Fear Of The Down』バージョンからは恐怖を打ち破ろうとするエネルギーがあり、一方で『Entering Heaven Alive』バージョンには「どんな夜も必ず明ける」癒しの力がある。そんな視点から当日のライブを観るのもまた面白いかもしれない。
“Take Me Back” 『Fear Of The Down』ver.
“Take Me Back (Gently)” 『Entering Heaven Alive』ver.
ちなみに、ジャックのオフィシャルYouTubeチャンネルには、前者の”Take Me Back”のライブ版が公開されており、これを観ていると、まるで映像の先にあるグリーンステージが見えるようで、たまらなくハイな気分になる。
“Take Me Back (Live)”
フジロックでどちらのバージョンを演るのかはまだわからないが、間違いなくセットリストに影響してくるところでもあるので楽しみに待とう。
気になるセットリストは??
気になるセットリストは、ジャック曰く「ソロ曲はもちろん、ザ・ホワイト・ストライプスやザ・ラカンターズのカバー曲も含めて、合計100曲以上からピックアップして構成することになると思う。」とのこと。前回出演した2012年のフジロックでもカバー曲は演奏されていたので、あの時のセットリストを軸にして、2012年以降にリリースされたソロの新作を聴くのをオススメしたい。
参考までに直近で行われたライブのセットリストをプレイリスト化したのでこちらも是非!
text by 若林修平