• 【出演アーティスト紹介 8/20(金) 】ビッグネームやリアルな今のヒップホップ、話題の新鋭まで今見たいラインナップが揃った初日!


    第一弾ラインナップの発表から一週間。初の国内アーティストのみでの開催ですが、そこにもフジロックらしさが漂う組み合わせにニヤニヤしている人も多いはず。海外のリアルタイムのアーティストが見られないことは残念ですが、一時期、ガラパゴスなんて揶揄された状況を脱して、ロック、ヒップホップ、ネオソウルやジャズを混交したユニークなアーティストが続々登場。3週に分けて、現在発表されているアーティストの魅力や見どころを紹介していきます。今回は初日の8月20日。2年越しの夏休みが始まります!

    rad_and_mwam

    まずヘッドライナーが決定したRADWIMPS。「前前前世」しか知らないよという人、ちょっと待って。いわゆるサビで盛り上がるタイプの曲以外にもフロントマン野田洋次郎の社会や人間に対する諧謔を昇華したリリシストとしての独特なセンスが刺さる曲も多いんです。加えて、新曲「鋼の羽根」で聴けるような柔らかい音像の中に、《宇宙にぽつんと咲いている 静かな理由がほしかった》というパンチラインを打ち込める才能はやはり稀有。この曲のMVは可視光外の赤外線が写る特殊な撮影方法で“見えないだけで確実にそこにあるもの”を表現。哲学的な表現は歌詞に留まらず、総合芸術の域に達していることは昨年11月に開催したメジャーデビュー15周年を記念する360°ステージの演出でも証明。アーティスティックな演出にも期待したいところです。

    さて、昨年、苗場で主催フェスを敢行する予定だったMAN WITH A MISSION。ライブの入場SEにBad Religionの楽曲を用いていたりして、ルーツはメロディック・ハードコアなどにありつつ、ラウドロックやエレクトロをハイブリッド。しかもグッドメロディも作れる全方位なソングライティング力も魅力です。2014年には全米デビューも果たし、UK最大級の野外フェス『Reading and Leeds Festival』や『Download Festival』にも出演。4月28日から配信がスタートする新曲「Perfect Clarity」は1998年の長野オリンピックを題材にした映画の挿入歌で、スケール感やエモさを盛り上げる楽曲が聴けそうです。

    SUMMIT_A

    大晦日の『KEEP ON FUJI ROCKIN’ II』ではPUNPEEのステージにGAPPERがゲストで登場しましたが、本編ではSUMMITオールスターズが揃い踏み。レーベル発足10周年を迎えた今年。日本に暮らす個人の感覚、日常感を個々のラッパーのキャラや音楽性に落とし込んできた彼らが、今、例えばPUNPEEがスカートとのコラボ曲「ODDTAXI」で存在感を示しているのも納得。BIMの最新作『Boston Bag』が音楽アワード「Apple Vineger」で大賞を受賞していたり、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌シリーズに彼やKID FRESINOが参加しているのもSUMMIT界隈のポップシーンへの浸透っぷりを実感できます。音源での共演やフィーチャリングが生で体験できるのは、レーベルのイベントやツアー以外ではかなりレア!

    SUMMITオールスターズにも登場するKID FRESINOのバンドセットはヒップホップ・シーンの枠を超えた彼の新作『20, stop it.』を体現してくれそう。まぁメンバーがすごいです。ペトロールズの三浦淳悟(Ba)、今や日本で最も多忙を極めていそうな気鋭のドラマー石若駿(Dr)らの名前が並びます。メランコリーとイノセントな笑顔の両方を内包し、音楽的にはエッジの立った今のFRESINOの意図を才気煥発に演奏に変換できる面々。2021年ならではのアクトを期待する人にはぜひ。

    さらに初日は5lackのスロットがあるのも気になります。先日ドロップしたばかりの新作『title』が、この混沌とした時代で虎視淡々と事実を見つめ、日常を描くことがむしろストロングスタイルになることを証明したような心にくる作品だからなのです。トラックメイキングも深度を増している彼ですが、今作にはUSからChance the RapperやMac Millerらのプロデュースや、Ace Hashimoto名義での活動も行うBrandUn Deshayと、Kendrick LamarらTDEの初期作品からJ.Coleとのプロデュース経験を持つWillie B、日本からはBudaMunkが参加。もし本作が軸になるとしたら相当ドープな内容になるのでは。

    BAWDIES_THE_A

    ルーツライクなロックンロールを現代にアップデートし続けるTHE BAWDIES。最近ではTENDOUJIの新曲「CRAZY」でボーカルのROYがフィーチャリング・ボーカルを務めて話題ですが、彼の一発入魂のシャウトは音源からはみ出さんばかりの勢いと存在感。シンプルな4ピースの魅力、ギターリフの応酬、聴いたことがなくても勝手に体が揺れる、ある種人間のDNAに直接作用してしまうアンサンブルは今や世界でもレアなんでは?

    THE BAWDIESとのコラボも話題のTENDOUJI。昨年、念願の初出演を決め、感激していただけに延期はさぞ悲しかったと想像します。が!今年スライドしてようやくゲートを潜ります。20代後半に「やっぱバンドいいよね」とばかりに活動を本格化し、理屈抜きにコードがかき鳴らされると楽しくなってしまうギターポップの嘘のなさに期待しましょう。

    今や世界を見渡してもドレスコーズ=志磨遼平のような立ち姿で空気が変わるカリスマは存在するでしょうか。ロックンロール、パンク、ファンク、ジャズ、ジプシー音楽などジャンルに拘泥することの意味のなさを実際の作品で提示してきた彼。目下「成長するアルバム」と銘打った『バイエル(I.)』が配信中ですが、このアルバム、なんとピアノインストなんです。シーンきってのトリックスターが今年のフジロックで何を見せるのか。メジャーデビュー11年目の第二章、刮目せよ!

    メンバー個々の活動も盛んなOKAMOTO’S。10代から活動してきた彼らは2019年にすでにデビュー10周年を迎えるというキャリアを持つわけですが、オーセンティックなロックンロールやソウル、ファンクはもちろん、高いスキルと先見の明で、数年前にはすでに90年代的なアプローチも行っていました。そして今年に入ってリリースした新曲「M」はバンドサウンドに全く拘泥しないアブストラクトでドリーミー、しかしキメラ的な構造を持つ驚きのナンバー。今年のセットリストが読めないという意味で相当、興味深い!

    KanSano_A

    Chara+YUKIやJUJUなどプロデュース作品も枚挙にいとまなし。現在のポップスのサウンドを明らかに形成している一人といえるKan Sano。同時にリーダー作でも自身のパーソナリティーをますます打ち出してきており、エモーショナルで清潔なセクシーさを醸す作品性やライブが注目されています。日本人アーティストをフックアップすることが多いとはいえ、Tom Mischきっかけで出会ったリスナーもいることでしょう。クロスオーバー・ジャズ、ローファイビーツ、ネオソウルなど様々なジャンル、しかも内外のプレイリストにピックアップされているのもまさに今。

    テクニカルなのに小難しさはなく、むしろエンタメに昇華しているピアノトリオH ZETTRIO。目下、36ヶ月に渡り、シングルを毎月配信リリースしている彼ら。インストの豊かさ、自由さを今回も味あわせてくれるはず。結成34年という大ベテラン、LITTLE CREATURES。今でこそジャンルミックスは珍しくないですが、90年代からテクノ、ジャズ、民族音楽などを我流で消化していた彼らは、バンドブームの中で明らかな異物ではありました。最新アルバム『30』では削ぎ落としたアンサンブルと機知に富んだアレンジに唸ること必至。ベテランといえば、スピンオフ四人囃子feat.根本要&西山毅というラインナップに「?」が浮かんだ人もいるのでは。日本屈指のプログレッシブバンド四人囃子を敬愛するミュージシャンがプロフェッショナルな解釈でセッションするというもの。オリジナルをどう解釈するのか?にも注目です。

    teshima_vaundy

    昨年、スタジオジブリの作品が映画館にかかった際、『ゲド戦記』を鑑賞した人もいるのでは。その主題歌として不滅の名曲「テルーの唄」といえば手嶌葵。どこまでも透明で凛とした彼女の声はもはやそれそのものがアート。苗場の自然の中に響き渡る声は誰より似合うのかもしれません。

    どこまでもロマンチックで豊かなバンド・アンサンブルを聴かせるYogee New Waves。ハッピーかと思えば、センチメンタルに転じたり、彼らの楽曲にどっぷり浸かると一編の映画の中に入り込んだような、旅をしているような心地に。ネオアコースティックやインディーポップの系譜にありつつ、20年代の東京の生活者目線で奏でる無二のバンドです。

    初登場組でちょっと意表を突かれるのが、ラップとメロディーをシームレスに歌いこなし、ヒップホップからフォーキーなものまで彼のフィルターを通して聴こえてくるものは不思議とキャッチー、それがマルチアーティストでもあるVaundyの魅力でしょう。バズを起こした「不可幸力」はLAUVからオファーを受け、グローバルリミックスアルバムに参加し、海外のサイトでも話題に。また、すでに日本武道館公演も成功させているyonige。どこか世間を突き放した印象のある牛丸ありさ(Vo/Gt)の作る世界観が若いリスナーに止まらない支持を集めています。

    そして、2019年のROOKIE A GO-GOで勝ち抜いたのKOTORIが2年越しにメインステージにようやく登場。どこにでもありそうな若者の日常を丁寧に描くスタンスに共感が集まり、すでに野音のステージも踏んでいる実力派です。

    ジャンルも世代も層の厚い初日。気になっていた今のヒップホップや、ビッグネームを一日で一望できる貴重なラインナップと言えそうです。引き続き、来週は2日目のアーティストの見どころを紹介しますので、お楽しみに。

    text by 石角友香

    ■ 1日目出演アーティストの過去のライブレポート

    RADWIMPS (2017)
    MAN WITH A MISSION (2016)
    PUNPEE (2017)
    KID FRESINO (2019) ※
    5lack (2018)
    THE BAWDIES (2016)
    TENDOUJI (2019)
    OKAMOTO’S (2011)
    Kan Sano (2016) ※
    H ZETTRIO (2017)
    LITTLE CREATURES (2016) ※
    Yogee New Waves (2017)
    KOTORI (2019) ※
    ※フォトレポート

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