• うちなーヴィレッジアーティスト紹介ー沖縄のアートシーンを画家としてギャラリーのオーナーとし活躍されているDENPAインタビュー


    これまで、NGO村にできる沖縄の方々によるうちなーヴィレッジに関して紹介して来ましたが、今回、ご紹介するのは先に紹介した紅型工房染千花の知花さんとコラボレーションする画家のDENPAです。DENPAさんは、抽象的な表現を突き詰め、私の印象では、ご本人が感じている・考えている事柄を、いかに少ない筆数で多くを表現できるか追求されている現代画家です。(DENPAさんの作品もウチナーバンドKACHIMBA feat. RITTO,仲宗根創のMVに出て来ます。)音楽でいうと、Free Jazzやインプロビゼーションの表現に近いかもしれません。また、沖縄の若いアーティスト達が表現する場所があった方が良いと、ギャラリーも経営されています。私がギャラリーにお邪魔した時には、若いアーティストが訪れていましたし、取材の前日までは若い写真家の展覧会を開催していたそうです。幼少期から画家への道、アートへの思いと、子供たちそして若いアーティストへの思い、そしてフジロックでの染千花の知花さんとのコラボレーションに関してお話を聞いて来ました。

    Photo by Masaya Morita

    Photo by Masaya Morita

    ─ 絵を描き始めたきっかけはなんでしょう?

    DENPA:もともと絵は好きで、毎日描いていたんです。でも、大人の人たちからは、幼少期から画家では食べていくのは無理だから、公務員になりなさいと言われていました。だから、琉球大学の教育学部まで進学しました。結果、教員の資格まで取ったんですけど、在学中は就職活動も教員採用試験も受けずに絵ばかり描いていました。あれが大学生活だったな、僕にとっての卒業研究だったと感じています。今描いている絵にも学生時代のお絵描きの面影はあると評価されたりしてー全然別個のものなんですけど、面白いですね。今こうやってアートの世界でやっていけているので、無事、足を踏み外すことができたというか、まっすぐのレールから逸れることができたことに安堵しています。

    DENPA:なんとなくそういうものを絵を描いて投げかけていきたいと思っています。

    絵のスタイルに関して

    DENPA:抽象画なんですけど、風景画のつもりで描いています。直線的なモチーフは、人間のテクノロジーの象徴として示しています。このような、直線的な構造物をピラミッドと呼んだりしています。それはピラミッドが文明を端的に説明していると思うからなんです。荒々しいストロークや手書きの字は人間の野性味や動物的な本能を意味しています。僕は文明=理性と野性味=本能を重ね合わせ、そして比較して表現したいと考えています。

    絵の説明をされるDENPAさん | Photo by Masaya Morita

    絵の説明をされるDENPAさん | Photo by Masaya Morita

    DENPA:最近は作風が変化しつつあって、ピラミッドと表現している直線的なものが変化して丸みを帯びたモチーフーストーンと呼んでいますーも描くようになりました。このようなモチーフは先ほどピラミッドと呼んだ直線的な構造物が、例えば波に洗われて丸くなったものを意味しています。どのようなことを表現したいかというと、ストーンはピラミッドが崩れたもの=文明の崩壊なんです。このストーンとピラミッドが人間の歴史を表していると考えていて、それは文明ができて、そして滅亡の繰り返しというか。昔から変わらない理性的だけど危ういものを表現しています。

    だけど、人間の持つ動物的な本能と呼べるものー直感や野性味と思えるものーは変わらずあって、理屈じゃないところで衝動はあると思っていて。先ほど言った直感的に書かれた線や文字は人間の持つ無垢な本能を表しています。だから、私の絵はその野性味と理性的なもののコントラストを表し、それらを問うようなものとして捉えています。

    でも、見ている人が僕の絵を理屈で理解したがるのも少し違和感があって。見ている人に自分が描いている絵の意味を押し付けたくなくて..。そうしてしまうと、先ほど言っていた大人たちが公務員になりなさいとか、考えを押し付けていたことと同じような気がしてしまって。

    ─ (笑)

    DENPA:だから、プロフィールの欄からコンセプトすら取り払って、むしろコンセプトはありませんとやってしまおうかなと思っています。だから、初めに絵の意味(答え)を求められることもあるんですけど、できれば感じたままに絵を楽しんで欲しいと思います。

    僕には3人子供がいて、4歳になる子供が絵を描くようになりました。お絵描きといった方が良いかもしれません。もちろん、とても雑な絵なんです。でもその絵を見ていてピンと来たことがあって、例えば、この子は何も意図せず絵を描いているんです。本能的に。それがとても動物的で面白いなと思って、理屈じゃないんだなって。不思議なのは4歳の子供の絵を大人たちは褒めるんですけど、自由で良いよねとかって。なのに、同じ絵を30歳の人が描きましたって言った瞬間に、その絵の意味を難しく考えるんですよね。でも、4歳の子は意味を考えて描いていないんです。だから、そういう4歳の子供が絵を通じて大人とコミュニケーションをとっているというのが、面白いなと。だから僕も同じように絵を通じてコミュニケーションをとっていきたいなと思っているんです。それは、言語が必要とされない世界のコミュニケーションじゃないかなって思うんです。音楽にも似たものを感じています。そう言った言葉で表現しないでアートいう視覚(ビジュアル)を通して、胸が熱くなる瞬間みたいなものを自分は実現したいなと思っています。

    今後は、お話ししたいわゆるコンセプトに近いもの(理性、野性味や本能などの表現)からも自由になって表現できたら良いと考えています。

    生き方がどうとかいう話をしたんですけど、生き方を問うという姿勢にも窮屈さを今は感じているんです。先ほどお話ししたように次のフェーズにいきたいなと考えています。例えば、過去のいろんな画家たちも写実の時期があったりモノクロの時代があったりするんですけど、表現がバージョンアップしていくことはあって、自分はその分岐点に今立っているのかもしれないですね。これからどういうものが出てくるのか自分でも楽しみですね。

    ギャラリー経営の楽しさ

    DENPA:ギャラリーをやっていて面白いのは、見に来た人が作品を眺めながらその世界観を掴もうとする現場に立ち会えるところです。近くで見ていて、人間が異なる人間を作品を通じて認め合う作業だと感じます。つまり、美術鑑賞は相手を理解する作業だと思うんです。それが素晴らしいと思うんです。

    アートというものは表現者の世界観や価値観に触れようとする作業が重要なので、作品への考え方をこちらで決めすぎる必要はないと思うんです。ギャラリーをやっている方からは、初めに展示会の趣旨を簡単に提示した方が良いと言われたんです。そうするとどんな人が来ても作品を理解できるからと。その時に自分がなぜアートをやっているか気が付いたんです。どういうことかというと、むしろこちらで説明してしまうよりも、展示会のアーティスト名と展示する作品だけで人を楽しませることが重要なんだなって。つまり少ないヒントで、作品を理解しようという作業を通じて、どれだけ心を動かせるかがいかに面白いポイントなのかということに気が付いたんです。

    博物館とかに行くと、歴史を説明してあって、“これはこういうものです”としてあります。ギャラリーで同じことをしてしまうと、見る側の自由な解釈の可能性を狭めてしまう気がしてしまうんです。だから、少ない情報でも展示品としてきちんと成立させることを、このギャラリーはやっていけば良いと気がついたんです。

    DENPAさんの作品 | Photo by Masaya Morita

    DENPAさんの作品 | Photo by Masaya Morita

    写真展が終わった後のギャラリー | Photo by Masaya Morita

    写真展が終わった後のギャラリー | Photo by Masaya Morita

    DENPA:それと、うちは細かいルールはなくて、子どもも自由に入れます。子供のうちから色々なアートに触れておくのは大事だと思っていて。ギャラリーを経営している先輩からは子供は入らないようにきちんとしないと!って言われたりするんですけど。もし、子供が作品を汚してしまったりしたら、最悪、僕が買い取りますし、お子さんがいらっしゃる場合はめちゃくちゃ監視の目を光らせています(笑)。子供のうちから色々なものに触れておくのは決して悪いことじゃないですし、興味を持てばそちらの方にも進んでいけると思うんです。

    フジロックとギャラリーの共通点

    ─ フジロックも子供を積極的に連れて行こうっていうのがあるんですよ。もちろん気をつけるべきことは多いのですが、親子で音楽に触れるというのは良いことですし、家族で同じことを楽しむのは大切なことですよね。

    DENPA:先程も言いましたけど、うちのギャラリーでも色々ルールを決めすぎないでやっています。これはフジロックにも通じるところがあると感じていて、きちんと状況を判断して対応すれば、親も子供もきちんと対応するし。自由に音楽を楽しんでいるけど、状況に応じて親も子供のやりたいことを諦めたり。むしろルール=教科書しか見ていない子供は可哀想で、もっと自由な大人を見せて感情を豊かにしてほしいです。

    ─ ルールに縛られるだけなのは、息苦しいですもんね。

    DENPA:息苦しい。会社員も解雇される時代で、これからもっとフリーランス化していく時代だと思うので、子供のうちから人生を楽しんでいく術を肌で覚えていかないと!と思います。あまりに沢山の人がルールを決めたがるので。

    ─ ルールって管理する側が何かあった時に言い訳するために使われたりしますからね。

    DENPA:そうなんです。ずる賢くなるために教育しているわけではないですからね。

    ─ DENPAさんの作品は、フジロックの会場にあると自然にマッチしそうですね。オファーがあった際に、会場でお子さんを連れて準備をされているところが、想像できました。

    DENPA:(笑)そう言ってもらえると嬉しいです。

    染千花の知花さんとのコラボレーションに関して

    DENPA:初めに紅型の説明をお聞きしたんですけど、作業がとても緻密で設計図をきちんと立てて進めていきますよね。私の絵は、紅型の作成過程とは対照的に感じた瞬間を絵にしていくところがあるので、一緒に作業できることは新鮮ですね。知花さんの緻密な紅型に私の筆が重なることは光栄ですし、刺激を受けます。一緒にやらせてもらえて光栄です。

    ─ 知花さんも同様のことを仰っていました。

    地元と子供達そして若者たちへの愛

    DENPA:このギャラリーのあるコザは今でこそ、少しづつ注目を集めるようになってきていますけど、もっとアートをこの地から発信していきたいですね。いま、この界隈で僕が面白いと感じたお店には、絵を描かせてもらったりしているんです。そして、DENPAのアートが見れるガイドマップを兼ねた、コザの今をまとめたシティガイドを配布できればと思っています。こういった活動を、場合によっては自治体とも協力してアートを使って街の発展に協力できないかと考えています。例えば、コザにある沖縄市の施設の壁に絵を描かせてもらったりできないかなとか。先ほどのお店の絵を描いたりすることなどは、今は私が本プロジェクトに限り無料でやっていますけど、ゆくゆくは若いアーティストの子達がお金をもらって絵を依頼されるような状況にできないかなと真剣に考えています。

    例えば、水道代、電気代、公共アート代みたいなくらいに身近で必要なものになれば良いのになと思います。身近にあって道ゆく人の目(視覚)を潤すものになれば良いのになと。つまり、極端に言えばアートを税金で賄うくらい、国が補助するくらい人々にとって必要不可欠なのものになれば良いと思います。そうしたら、娯楽がインフラになるし、そうじゃないと人々の心が荒む気がします。

    コザの街 | Photo by Masaya Morita

    コザの街 | Photo by Masaya Morita

    コザの街には絵が描かれていたりする(DENPAさんの作品ではありません) | Photo by Masaya Morita

    コザの街には絵が描かれていたりする(DENPAさんの作品ではありません) | Photo by Masaya Morita

    ─ 素晴らしいですね。私も芸術方面に積極的にお金を使うべきだと感じることは多いです。

    DENPA:多くの若いアーティストは、独特の感性で作品を作る人たちが多いと感じます。ですが、写真なり絵なりだけではなく、他にも仕事を持っていて。昨日までうちのギャラリーで展示会があったのですが、私自身、今まで開催してきた中でも素晴らしいと思えるものでした。演出や写真で表現されているものがじんわり沁みてくるような展覧会でした。用意した写真集も完売しました。アーティスト自身が他に仕事を持っているので、写真だけでやっていかないかなと思っているんです。ギャラリーをやりながら、若いアーティストの力になれれば良いなと考えています。

    展覧会での写真集を手に | Photo by Masaya Morita

    展覧会での写真集を手に | Photo by Masaya Morita

    DENPA: 私は自身の絵を描いたりすること、そしてギャラリーをすることで少しでもアートの世界に貢献できればと考えています。


    うちなーヴィレッジに関連したアーティストの方達に共通しているのは、沖縄にまつわる歴史や現状を考えたりした経緯や結果を表現をされていることです。DENPAさんも言われていたように、沖縄の子供たちは“公務員になりなさい”と言われることが多いそうです。その理由は沖縄の平均所得の少ない現状を反映しているのでしょう。しかしながら、DENPAさんは、幸運なことに理想とされる道=教員として安定的に働くーから踏み外せ(少し不安定かもしれないが、毎日が非常に楽しく充実している)アートの世界に入れたと話していました。そして、自由な表現の中にこそ他者との密なコミュニケーションが潜んでいて、自分のアートやギャラリーにその可能性を見つけています。彼の言葉からは、アートを通じて若者や子供に対する教育や将来にまで強い想いを感じることができました。話をお聞きした後、彼の作る先品が来年以降のフジロックにも展示されているーボードウォークや会場にひっそりと点在しているーことを想像し、彼の作品に気がついたフジロックの参加者がそれを眺めながら理解しようとしている姿を思い浮かべることができました。そして、彼が開催前に自ら作品を作成・準備している間、三人の子供達が近くで見ている。そんなことがあれば素晴らしいな、そう思いました。

    NGO村にあるうちなーヴィレッジではDENPAさんと染千花知花さんのコラボレーションTシャツを販売します。通販サイトでも購入できます!

    https://twitter.com/denpa_okinawa/status/1151345509333790721

    DENPA
    http://denpaeater.com
    1983年沖縄生まれ。街や都市の風景に人の心の動きやそれぞれの人生模様を投影し、抽象的に表現する。アートイベントのオーガナイジングやストリートアートをコンセプトにしたギャラリー兼ショップ”Stock Room Gallery” の主宰を務めるなど、一般社会へのアートの普及にも力を注いでいる。
    Brooklyn(NY)のOuchi Galleryでの個展開催、沖縄県伊計島周辺地域で毎年開催されているイチハナリアートプロジェクトへ参加、avex南青山の社屋内壁に幅10mの壁画を制作、沖縄銀行コマーシャル出演など、活動エリアを問わずインターナショナルな活動を見据えている。(ホームページより)

    Interview & Text by Masaya Morita

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