• 『The World Festival Guide』発刊記念インタビュー。津田 昌太朗に迫る〈後編〉


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    フェスティバルに取り憑かれた男、津田昌太朗氏のインタビュー後編。前編では、どのようにフェスティバルに出会ったかを追った。後編では、フジロックの見本となったグラストンバリーで何を感じたのか、そして海外フェス行脚への道のりの話を聞く。また新刊『The World Festival Guide』の編集の裏側はどうだったのか。

    前編はこちら

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    グラストンバリーを体験して思うこと

    ─ グラストに初めて行ったとき、何か驚いたこととか、カルチャーショック的なことはありましたか?

    何もかもに驚いたんですけど、あらゆる世代がいるってことにまずびっくりして。本当に小さい子から家族連れもいるし、キレッキレの若者もいるし、おじいちゃん、おばあちゃんもいるし。マジで全世代いるな、みたいな。新聞読んだら、ロイヤル・ファミリーも来てますって書いてあって。これ日本で置き換えたら、皇族がフジロック来てるってことだよな、ウソだろ? みたいな(笑)。

    ─ たしかに(笑)

    グラストは、フェスの中にいろんな街がるみたいな感覚で、色も匂いも違うし、絵も違うし。確かにフジロックがとてつもなくでかくなったみたいな感じだった。フジロックって本当にグラストのいいところをギュッと縮図のようにしているから、そこに僕はまた感動して。あ、これ一番影響を受けたフジロックに近い形だ! って。あと、グラストはいろんなところに遊びというか余白があって、例えば巻頭で使っている写真って何気ないものなんですけど、これ僕がグラストで一番好きなパーク・ステージっていう端にあるステージの入り口の装飾なんです。入るときにはこういう花が白黒のオブジェなんですよ。これが帰るとき、つまり反対側からみたときにどうなってるかというと、巻末でその写真を使用しているのですが、カラーになっているんですよね。入ったときは、色が白黒に見えるけど、出るときには色がついて、鮮やかになっているっていう。フェスっていうのを体験したら、帰るときには何かを得て、違う考え方とか感覚を得てそれぞれ帰るみたいな。僕は毎年このステージに入るとき、本当に感動するんです。こういう細部こそフェスの魅力だなって。しかもこのオブジェにはそういう説明書きみたいなものってどこにもないんですよ。自分で気が付かせるっていう。フジロックもそういうのありますよね。誰にも言わないけど、実はこうだったみたいな。僕はフェスのこういうところが好きで、伝えたいんですよね。これが人によっては、ライブの場合もあるし、会場の装飾の場合もあるかもしれない。そういうことが凝縮されたのがフェスだと思っています。

    ©ai matsuura

    ©ai matsuura

    自身が運営するメディアの始まり

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    ─ Festival Life、Festival Junkieについて詳しく教えてください。

    Festival Lifeから話すと、これはブログメディアとして、もともとやっている人がいたんです。だからもともとは僕のメディアではないんですよ。

    ─ そうなんですね。

    そう。個人ブログみたいな。そこにみんなで投稿しようみたいなノリで。そこに僕も参加して、20人くらいで書いたりしていて。趣味サイトだから、取材申請とかも別に出さずにやっていて。

    ─ それっていつ頃から参加しているんですか?

    2010年くらいかな。

    ─ 日本のフェスを回るようになってからってこと?

    そうですね。そのとき日本のフェスは結構回っていて、観客目線としては詳しいっていう自負はあったんですよ。一個のフェスに行き続ける人は結構いるんですけど、当時はいろいろ行くって人は周りにはあまりいなかったんですよね。それでFestival Lifeに入ってみたら、案の定僕が一番フェスに行ってる。しばらくして立ち上げた人から「編集長やる?」って言われて(笑)。

    ─ おお(笑)

    当時僕はサラリーマンだったんですけど、完全に副業で「やりますよ!」ってなって。1円ももらってないんですけど。ただただ趣味でやっていて。それでしばらく編集長としてやっていたときに、取材申請とかちゃんとやって、メディアとしてやってきましょう、っていう方向性に持っていったんです。それでようやくフジロックとか主要フェスに取材として入れるようになってきたんですけど、僕が海外に行くことが決まったので、一度そこで辞めちゃったんですよ。それで、立ち上げた人に運営を戻しました。僕は僕で、イギリスでFestival Junkieっていうプロジェクトを立ち上げて、カメラマンとか動画撮れる人を集めて、それこそYouTuberみたいなことをやっていたんですよね。全部ゲリラ的に取材してFestival Junkieっていうサイトを立ち上げて情報更新していました。2年間で、5〜60個の海外フェスを取材して載せていましたね。

    ─ すごい行動力ですね。

    それで、2年後にお金が全くなくなって(笑)。ちょうどそのころに、富士電子瓦版っていうのを立ち上げるから手伝ってくれないか? って打診があって。フジロックの仕事ができるなら少し日本に戻ってもいいかなと思って、日本に帰ってきたんです。それと同時にFestival Lifeどうなってるんだろうと思って、立ち上げた人に連絡して会ったら、「あげるよ!」ってなって(笑)。そこから新たに仲間を集ってスタートさせた感じです。

    ─ それでFestival Life、Festival Junkieの両方を運営していくわけなんですね。Festival Junkieって今リニューアル中ですよね? Feslavitに名前を変えていますが、由来ってあるんですか?

    もともとプロジェクト名というか、イギリスに住んでいた頃の僕のあだ名がFestival Junkieだったので、 そのままサイト名にしていたんですが、他の国で同じ名称でメディアをやっている団体がいたので、名前を変えようと思って、思い浮かんだ名前がFeslavitでした。というのも、10代の頃からずーっと「FESTIVAL」という文化にハマっていて、どれだけ行っても、どの角度から見ても楽しい、おもしろいってことで、「tival」を逆から書いて、「lavit」。それで、「Feslavit」です。うさぎとはスペルが違いますけど、うさぎのようにピョンピョンいろんなフェスに行きたいみたいな意味もあります。

    ─ そうなんですね。 lavitの意味を調べたら、ラテン語で洗浄って出てきたので、そっちかと思いました(笑)

    全然意識してなかったですけど、たしかにフェスに行くと色々洗浄されるみたいなことはあるなぁ(笑)。

    ─ 立ち上げの目処はまだたってないんですか?

    本を出すことが決まってからウェブでの発信は止めてしまっていて、まだ立ち上がってないんですが、デザインはもうできていて。本とどう住み分けるかっていうのを考えているところです。この本でできなかったことをやりたいなって。実は僕、全部のフェスでインタビューとか大量に録ってるんですよ。まだどこにも公開してないんですが。

    ─ お客さんの声とか?

    うん、お客さんとか、会場を歩きながら話してるリポートとか。こういうのを載せられるサイトにしたいなって思っていて。Festival Lifeは仲間と一緒にメディアとしてきちんとやっていく方で、Feslavitはライフスタイルとして好きなことをやっていくような感じでやっていこうかなと思っています。

    ─ 国内がFESTIVAL LIFEで、海外がFeslavitっていうような感じ?

    そうですね。

    The World Festival Guideの裏話

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    ─ 本書について、紙で表現することについて、何か気にかけたことはありましたか?

    全ページカラーですね。絶対オールカラー。何故かと言うとフェスは色が大事だと思っていて。耳で楽しむのもフェスだけど、目で楽しむのもフェスだから。
    後ろのページは白黒でいいやとか、このフェスだけ大きく取り上げて、前半だけ美しければいいや、みたいなのは、絶対嫌で。フェスって帰るときまで楽しいじゃないですか。一番最後のページまで、お客さん=読者を楽しませるティップスを絶対入れるっていうことで、巻末の絵(前述)を入れたり、ひとつのフェスだと思ってこの本を作ろうっていうことを意識しました。全部を通して、どこで開いても楽しめるフェスみたいな本にしたいというのがありました。

    ─ この本を編集していく上で苦労したことはありましたか?

    写真が大変でしたね。仲間のカメラマンが撮影したもの以外はオフィシャルから借りたりしています。すべて確認を取って。

    ─ それは大変ですね。

    そうですね。中には返事返ってこないものとかもありましたし、空撮使いたいからこっち使って! とかって言ってくるところもあったり(笑)。あとは、誰もこんな本作った人がいないから、校正・校閲などの細かいところも自分もやらないといけなくて。

    ─ なるほど。

    カンマなのか点なのかとか。大文字なのか小文字なのかとか。全部自分で判断していくしかなかったんですよね。あとよくあるのは、例えば、デンマークのロスキレ・フェスティバルってあるんですけど、英語読みなら、ロスキルドなんですよ。でも会場だと、みんなロスキレって言っているから、ロスキレなのかなとか。日本人にとってどっちかいいかとかも考えながら。だから、僕がカタカナを作っているっていうのは結構ありますね。それが大変でした。

    ─ グラストンバリーかグランストンベリーかみたいな。

    そうそう。

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    ─ フェスに行ったことがある人はもちろん、ない人にもアプローチしているような印象を受けました。

    そうですね。フェス好きな人は、あわせてその街や旅も楽しんだ方が絶対視野が広がるから、音楽聞いて終わりってことじゃなくて、その余白を楽しむみたいな。僕はそういうところをフェスから学んだので、フェス好きの人は旅もしたほうがよいよっていう思いで構成を考えました。あと旅好きの人は、旅の中にワンデイとかのフェスを一個入れるだけで、それが旅のハイライトになるし、普通の旅行では経験できないことができると思います。その国のことが一番わかるのは、僕はフェスに行くことだと思っていて。一日そこで過ごすと分かるんですが、本当にいろんな人が来てるし、若い人から年配の人までいて、金持ちも貧乏もいる。家族連れもいるときもあれば、夜は下品なやつらに出会えたりもするし、一番リアルというか。観光でその国のことを知るのは結構難しいけど、フェス一個入れるだけで、本当によく見えるんですよね。嫌いなところも含めて。例えばロスキレで言うと、コペンハーゲンってとてもオシャレなイメージあるじゃないですか。街を歩くと実際オシャレな家具屋があったり、北欧雑貨があったりするんですよ。でもいざ、ロスキレに入ると、めっちゃビール飲むじゃん! とか、テントサイトマジきたねぇとか(笑)。

    ─ 一同(笑)

    そういうのがわかるんですよ(笑)。別にそれでその国が嫌いになるとかじゃなくて、こういう一面もあるんだ! って思うんですよ。そういう発見が楽しいんですよね。思ってたイメージと全然違かったけど、結果たくさん友達ができて帰国するみたいな。

    海外フェスとフジロック

    ─ 同じアーティストを海外で見るのと日本で見るのとでは、やっぱり違いますか。

    違いますね。場所が変わればどれも違います。例えば、フェスシーズンの始まりの4月、終わりの9月でも全然違うし。例えば、一昨年フジロックで見たGorillaz。翌年世界を回るんですけど、全然違うものに進化していきましたね。ツアーでいうと同じ名義なのに、全然違うっていう。Chance The Rapperもいろんなところで見たけど、地元シカゴで見たらやっぱり全然違った。観客のノリも全然違う。例えばケミカル・ブラザーズが今年フジロックに来ますよね。ケミカル・ブラザーズがヘッドライナーの大規模フェスって珍しいんですけど、それって悪い意味じゃなくて。そういうアーティストっていっぱいいると思っていて。逆に日本ではヘッドライナー取れないけど、違う街なら、違うフェスなら取れるとか。そういうのをいろんな場所で見るのが好きですね。

    ─ ザ・ミュージックとかもそうですね。

    そうですね。そういうのが海外でもたくさんあるんですよね。僕フジロックで出るアーティストを事前に世界で見るってことをやっていて。毎年1アーティスト決めるんですよ。BECKとかそれで一夏で7〜8公演見にいったんですけど、個人的にはフジロックが一番よかったですね。フジロックのBECKが一番饒舌だったんじゃないかなあ?(笑)。

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    フジロッカーにハマる海外フェス

    ─ フジロッカーにおすすめする海外フェスってずばり?

    やっぱりグラストンバリーですかね。モデルになっているっていうのもあるし。でもフジロック好きな人って、やっぱりでっかいステージが好きだと思うんですよね。アメリカで言うならボナルー・フェスティバル。キャンプして、いい音楽でジャンルレスで、広大なステージ。音響もすごいし、ステージもいっぱいあるし。ヨーロッパだと、ハンガリーでやっている、シゲット・フェスティバル。これは島を貸し切って行われるフェスなんですけど、これもテント張れて、広大。あとはさっき言ったデンマークのロスキレとか。この3つはフジロッカーにおすすめしたいです。ロスキレとかシゲットは、割と近くに宿もあるから、キャンプじゃないとしても泊まりやすいし、行きやすいっていうのもありますね。

    ─ 海外のフェスを経験しているからこそ思う、日本でこういうことやったら良いのに、みたいなのはありますか?

    フェスへの要望というわけではないかもしれないですが、もっと社会の実験の場所としてフェスが開かれた場所になればいいかなと思います。例えば今年のグラストって5Gが導入されて、大人数が集まる場所として通信会社と組んで色んな取り組みが行われるらしくて。他にも新しいサービスとか技術ができたらいち早くフェスで利用できるようになってることは海外では多いと思うんですよね。Uberができた頃に一気にフェスのオフィシャルパートナーとしてUberが台頭するみたいな。
    あとスマホの充電に対する良いシステムがあって。日本だと、スマホを充電できるスペースがあったりするフェスも多いんですが、それだと充電している間ずっと待ってなきゃいけない。そんな時間無駄じゃないですか。見たいアーティストもたくさんいるのに。いくつかの海外フェスで見かけたんですが、簡易充電器充電器持って行ったら新しいのに取り替えてくれるんですよ。一回買って、それを全部使ったら、また満タンのやつと変えてくれるという。

    ─ へぇ。リースってこと?

    そうそう。だから待たないし、並ばないし、時間が有意義に使える。これは本当に日本でも導入すればいいのにって思いますね。

    ─ フジロックに対してはありますか?

    このあいだまではもっと若い人が増えたらなあと思ってましたが、去年とか明らかに若い人が増えていたり、アジアからの人気もさらに高まっているのを感じるので、またさらに進化していってくれたらなと。

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    ─ 海外フェスの中で印象に残っていることはありますか?

    BETIVALっていうフェスでの話なんですけど、今は違うところでやっているんですが、僕が行ったときは島でやっていたんですよ。そこまで船で行くんですけど、昼に港に着いたら「もう夜まで船の予約いっぱいになっちゃったからまた明日来てね〜みたいな軽いノリで断られて。そもそもフェスなんだし、それを見越して増便してよって話で、日本だと苦情殺到みたいなシーンだと思うんですが、諦めて乗れない組でパーティーみたいなのが始まって(笑)。これっていろんなフェス会場でもあることなんですけど、入れないとか、チケット持っていないとかで、入り口でパーティー始まるって意外と多くて(笑)。日本だと入れないとかなるとすごい白けそうじゃないですか。もちろん文句行ったり、怒ってる人もいないわけではないんですが、誰かがスピーカーを持ってきて、DJを始めたら、踊りはじめるやつがいて、そしたら、今度ビールを持ってくるヤツが出てきたり。しまいにはそこでキャンプしはじめて、でかいスピーカーも出てきたんですよ。なんでこんなでかいのあるの? もともとここでやるつもりだったの? みたいな(笑)。もともとここでやるつもりだったの? みたいな(笑)。

    ─ 今後の展望、目標はありますか?

    全世界のフェスに行くことですね。本だと欧米中心にはなっているんですけど、南米とかアフリカとかたくさんフェスがあるので、攻めたいなと。最近フェスとお祭りが合体したようなのも増えてきているので、世界のお祭りみたいなものも見ていきたいなと思っています。日本のフェスもとても好きなので、地方にあるような小さいフェスとかも、できるだけ足を運んで自分の目で見たい。たくさん参加すると見えてくるものもあるんですよね。1個じゃわからないけど、10個いったらこういうのが流行っているとか、今の社会の課題とか問題をフェスが反映している部分がみえてきたりだとか。そういうものを追いかけて続けて、ラジオのパーソナリティーをやりたいです。

    ─ そこに繋がるんですね(笑)。

    2年ほど前にJ-WAVEでフェス番組をやらせてもらったのですが、またいつかやりたいですね。ラジオで話したり好きな音楽を流すってのが、小さい頃からの夢なんですよ。


    約2時間に及ぶインタビューはこうして終わった。経験してきたからこそ話せる内容とその説得力を以て、ぶっ通しでしゃべり続けた津田氏。このインタビューの翌日には、また海外フェスにいくために渡英が決まっていた。一歩踏み出せば、見たこともない景色が待っている。それを探しに彼は幾度と旅に出るのだ。このインタビューを読んで少しでも旅をしたいと思ったなら、今すぐにバックパックに荷物を詰めるべきだ。あなたのまだモノクロの部分がカラーになることは間違いない。

    (了)

    執筆:紙吉音吉
    撮影:粂井健太

    津田 昌太朗
    1986年兵庫県生まれ。大学卒業後、広告代理店に入社。「グラストンベリー」がきっかけで会社を辞めイギリスに移住し、海外フェスを横断する「Festival Junkie」プロジェクトを立ち上げる。現在は、日本国内の音楽フェス情報サイト「Festival Life」を運営しながら、雑誌連載やラジオ番組のパーソナリティーなど、フェスカルチャーをさまざまな角度から発信し続けている。ワタナベエンターテインメント所属。

    FESTIVAL LIFE https://www.festival-life.com/
    FESLAVIT https://feslavit.com/

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