• 【日高代表 緊急インタビュー 後編】大将が20年目を振り返る&今年のヘッドライナー裏話


    スマッシュの日高正博代表より「ぜひ伝えたいことがある」との一報を受け実現した、フジロック2017大将インタビュー。後編は、今年のラインナップや、ちょっとした裏話、フェスの楽しみ方などなど、オルグから大将に聞いてみたいことを聞いてきました。

    インタビュー前編はこちら

    昨年が20周年だなんて、知らなかった

    ─ 昨年で20周年を迎え、何か心境に変化はありましたか?

    日高:今まで通りだよ。俺、昨年で20周年だなんて、知りもしなかったもん。スタッフから「20年ですよ」って言われるまで気づかなかった。自分の歳だって間違えるくらいなんだから。だけど、あまりにもスタッフが「20周年やらせてください」って言うから、20周年としてやることにしたんだよね。去年はレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ベックとか、1年目に出たバンドがいくつか出たじゃない?レッチリは「おーい、今年で20年目だってよ、やる?」ってメールしたら「やる」って帰ってきて、出演が決まった。ベックからは、20年目のお祝いメールがきたよ。実はそのときから、エイフェックス・ツインには出てもらいたかったんだよね。

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    ─ エイフェックス・ツインもまた、第1回の出演者ですもんね。昨年はオファーしたんですか?

    日高:声はかけた。スケジュール上の都合と、昨年は活動してなかったのかな。だから出られなかったんだ。彼といえば、すげえバカな話があるんだよ、今だったら言ってもいいと思うんだけどさ。97年(第1回)のセカンドステージ(※現在のホワイトステージ)のときはさ、リチャードが「段ボールでつくった箱から出てくる」って演出だったんだよ。でも、曲が始まったのに、20~30分は出てこなくてさ。あれ、実は出られなかったんだって(笑)。

    ─ え!(笑)。それは、台風がすごかったから?

    日高:いや、本人の手違いで、出られなくなっちゃったんだって(笑)。箱自体は会場で作って、出るタイミングも打ち合わせしていたのに、当日の演出はすごいなって。箱から出る前に曲が終わっちゃうよって思った(笑)。でも、あとで聞いたらあれは演出じゃなかったんだってさ。

    ─ ファンの間でも有名な「犬小屋事件」に、そんな裏側があったんですね。ほかのアーティストについては、どういった経緯で?

    日高:ビョークについては、もう20~30年の付き合いだから、なんとなく決まった。俺は、ザ・シュガー・キューブスのころにツアーマネージャーをやっていいたし、ずっといっしょにやっているからね。

    ─ 近年のビョークは、日本科学未来館でライヴをしたり、VRを駆使した展示などを行っていましたね。

    日高:あれは彼女がやりたいからやってるんだ。日本科学未来館については、俺が知らない間に、マネージャーとどっかいってさ、場所を見つけてきたんだよ。好意的な価格でやらせてもらったから、あの価格で済んだけど、会場ははっきりいって、めちゃくちゃ高い。うちの会社もビョーク側も取り分はないよ。でも、お金じゃないんだよ、あの人。彼女、アーティストだから。

    ─ 「歌手」以外の意味でも、アーティスト。

    日高:だから「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のように悲しい映画に出演したり、自分がやりたいことやる人なんだよ。彼女は音楽や映画を通じて、自分が表現したいことをしているんだ。絵を描ければ描いただろうし、本を書ければ書いただろう。アーティストなんだよ。マネージャーはいるけど、彼女は自分自身をマネージメントしているようなものだからね。

    BJORK | FUJI ROCK FESTIVAL'13 | Photo by Kenji Kubo

    BJORK | FUJI ROCK FESTIVAL’13 | Photo by Kenji Kubo

    ─ なるほど。では、今回もビョーク側から、表現したいことがあったと。

    日高:そう。でもそれは、ヘッド・ライナーは全部そうだよ。だから一個一個スクリーンが変わったりとか、演出があるわけだ。それと実は、ヘッド・ライナーの準備は前日から始まっているんだよ。機材や照明のチェックは、みんなが前夜祭で盆踊りをしているころにやってる。ミュージシャンは来ないけど、全てのテクニックを揃えて、一晩かけて仕込んでるよ。ある時さ、ずっと演奏している人がいて、誰だと思ったらザ・キュアーのロバート・スミスでさ。だいたい本人がやること自体、ありえないんだけど、何時間もやってたの。だから、グリーンに近寄って聴いているお客さんがいたよ。

    ラインアップの流れを楽しんでもらいたい

    ─ ゴリラズについても聞いていいですか。

    日高:ゴリラズは、ちょうどタイミングが合ったというのもあるけど、ラインアップの傾向から、いい流れになるアーティストだったんだよね。ラインアップってさ、違うタイプのミュージシャンがボコボコと発表されても面白くないんだよ。なんとなく俯瞰して見れば、流れになるなというメンツであったほうがいい。DJみたいに、「このあとはこれだろ!」っていう流れを考えるのが面白いんだよ。例えばエレクトリック系が多いから、別のジャンルを入れちゃおう、みたいな。その流れの面白さをお客さんに楽しんでもらって、さらにはミュージシャンにも楽しんでもらおうと。「自分たちの前にこんなバンドがでるなんて、意外!」「すごい、自分たちのあとにこんなバンドがでるんだ」って。

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    ─ 確かに、今年は特にミュージシャンの流れが面白い年だと思います。例えばRADWIMPS~The xx~ゴリラズや、YUKI~ロード~ビョーク~水曜日のカンパネラ。意識して作っているのですか?

    日高:組み方については、いろんなパターンがあるよ。ド頭から「この流れでいこう!」って組んで、うまくいくときもあるし、スケジュールの都合でうまく組めないときもあるし。あとね、俺とは違う面白いアイディアがうちの若いスタッフから出てくるから、人の意見、お客さんの意見も聞いたりすることもある。まあ、アイディアあってのことだから、びしっとは決まらないよね。だから本当にね、AからZまで決まることはありえない。

    ─ 意図しないところで、面白さを生むこともあるわけですね。

    日高:刺激を受けるっていちばん大事なことだよね。自分が一番正しいわけじゃない。ぼけーっとラジオ聴いてて、面白い組み合わせで流れてきて、「これあるな」っていうことも、あると思うし。

    フェスティバルは“遊び”が重要

    ─ 他にも、コーネリアスと小沢健二の間にLCDサウンドシステムが入ってるとか、すごく面白いですよね。絶対どれも観たいじゃないですか。

    日高:俺、いじわるだからね(笑)。まだ日本にフェスティバルがない時代は、お客さんから苦情が多かったんだよ、「なぜステージが2つあるのか、見たいのが見られない」と。今では当たり前だけど、当時のお客さんは理解できなかったんだよね。そういうとき、お客さんに言ってたから。「そういうもんだよ、世の中うまくいかないんだよ!」って(笑)。

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    ─ 見たいものをすべて見るだけが、フェスじゃないですよね。

    日高:これはよく話すんだけど、「通過しようとしていたステージから初めて聴く音楽に捕まっちゃって、自分の目当てのバンドが見られなかった」みたいなのが、俺の最高の夢なんだよね。あとは、3日間なーんにも見ないで過ごすこと。ビール飲みながら原っぱに寝っ転がって、ステージの音漏れが聴こえてきて、みんなはいろんな格好で楽しそうに歩いてる。それで、今日一日何も見なかった。そういうのもフェスティバル。別にお客さんに強要しているわけじゃないけど、そういう雰囲気にしていきたいと思ってる。

    DAY DREAMING | Photo by 紙吉音吉

    DAY DREAMING | Photo by 紙吉音吉

    ─ そんな過ごし方も最高ですね。たまたま通ったステージの曲がどれも良くて、目当てのバンドが見られなかったこと、あります。

    日高:これは、ジジイの独り言だと思ってきいてくれ。俺が思うに、日本はね、あまりにも生き方を決めすぎている。学校を出たら定年まで働いて、引退してって。まだ若いのに、「安定に過ごすにはいい会社に勤めて、いい会社に勤めるためにはいい大学を出て、いい大学に入るためには…」って意識しなくも、逆算して決めすぎている。ありもしない何十年先のことを、逆算しているんだよね。俺自体は高校も行ってないからさ。学校なんて行きたいとも思わなかったんだよね。だけどフェスティバル、つまり遊びのときは、そういう発想を捨ててくれないかな。フェスは、遊びが重要だと思ってる。「ああ、フジにいったらいつもと違う感覚になっちゃったな」「あれ見て、これ見てっていう計算ばっかりしている自分が嫌になっちゃったな」って。そう思ってくれるように、フェスをやっているんだ。

    ─ そんな体験をあとから自慢げに話せるような場所だと思います。話は戻りますが、コーネリアスと小沢健二、出演のいきさつについても教えていてだけませんか?

    日高:それは秘密。

    ─ え~!すでに、フジロッカーの間では妄想が繰り広げられていますよ。

    日高:お客さんの想像に任せるよ。

    本当はもうひとつステージがほしい

    ─ では会場についてお聞きします。オレンジ・コートがなくなって2年経ちますが、なにか変化はありましたか?

    日高:やっぱり、フィールド・オブ・ヘブンがお客さんでいっぱいいっぱいになっちゃうんだよね。今のヘブンは、独特のカラーというよりも、ジャズ&ワールドミュージックって感じになってる。ジャジーなものから、世界各国の音楽。

    Photo by 志賀崇伸

    Photo by 志賀崇伸

    ─ オレンジがなくなったぶんのミュージシャンを、ヘブンに移動させているわけですもんね。今年のヘブンにラインアップされているライ、くるりも、広い視野でみると、ひとつのワールドミュージックともいえますね。でも今までとは色が違うかなと思いました。

    日高:ちょっと混沌としてきた感じかな。でも、どうしてもそうなっちゃうんだよな。ステージは1つしかないから。もう一個ステージがほしいよね。そこが悔しいところだなあ。

    ─ 新しいステージの構想はあるんでしょうか?

    日高:いや、場所がないんだよ。オレンジにつくったら、意味がないし。あそこ、ほこりがひどいから、飲み物も飲めないよ。ミュージシャンもかわいそうなんだもん。よっぽど見たいアーティストがいれば別だけど、土地の状況がよくないから、お客さんはあそこまで行かないんだよね。そしたらお客さんにも申し訳ない、バンドにも申し訳ない。山、1個崩すか(笑)。

    ─ なかなか大胆な発想ですね。

    日高:ダイナマイトとかみんな持ってこないかな(笑)。

    ─ 「山を崩してステージをつくろう」っていうワークショップができそうですね(笑)。最後にもうひとつ、オレンジ・カフェについて、今後の展望を聞かせてください。

    日高:トリビュートやチンドン屋、なんでもありにしていこうと思っているよ。あと、パレス・オブ・ワンダーは、今年は地球儀の中を回るバイクが6台になるから、怖いよ~。一応、雨の日でもできるようにテントかけようと思っているから。タープみたいなものをね。夜中、暇だったらぜひ見にきてよ。

    Interview & Text by 梶原綾乃、若林修平
    Photo by Sora Mori


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