まさにレジェンド、トッド・ラングレンを聴こう!
- 2015/07/16 ● from fujirockers.org
フジロック日曜日のホワイトステージに出演するトッド・ラングレンは、1960年代から音楽活動をはじめ、現在に至るまでコンスタントに作品を発表している。バンド、ソロ、プロデュースなど膨大な仕事量はロックのレジェンドとして崇めるのに十分なものである。
トッド・ラングレンについて書くとき、その業績の大きさに何から書いてよいのかわからない。それこそ分厚い本が一冊出せるくらいの人だから「長文注意!」の話ではない。
しかも、熱烈なファンも多く、うかつなことが書けない。ミュージシャンからの支持も絶大で、日本のミュージシャンたちが愛の溢れたトリビュートアルバム『トッドは真実のスーパースター』を作ってしまったくらいだ。
いろんな角度から話せる人なので、今回はグッと絞り込んで「とにかくよい曲を書いてた人」として、トッド・ラングレンを知らない人に対しての入門編としたい。前回2011年にフジロックに出演したときには、おおむねベスト選曲のライヴで非常にすばらしかったのだけど、この人の場合「いい曲」を作るだけでなく、ハードロック、プログレッシブロック、エレクトロニカなどのジャンルにも手を染めるという幅の広さがある。
ただし、今度のフジロックでこれから紹介する名曲たちが聴けるとは限らない。そのひねりも含めてトッド・ラングレンの魅力なのだ。その辺を了承していただくとして早速いってみよう!
■Can We Still Be Friends (キャン・ウィ・スティル・ビー・フレンズ)
名バラード。ロバート・パーマーによるカヴァーもすばらしい。フジロックでも披露されて、フィールド・オブ・ヘヴンをやさしい歌声で満たした。1978年『Hermit of Mink Hollow』に収録。
「(別れても)まだ友だちでいられるかい?」という切ない男女の歌なんだけど、トッドの男女関係といえば、エアロスミスのスティーブン・タイラーの娘を身ごもったべべ(ビビ)・ビュエルを向かい入れ、その子が生まれその後べべと別れても、実の娘のように育てたという話がある。トッドに育てられたその子が『アルマゲドン』や『ロード・オブ・ザ・リング』などに出演した女優のリヴ・タイラーである。ちなみに実の息子はプロ野球選手(メジャーではないっぽいけど)である。
■Love Is The Answer(ラヴ・イズ・ジ・アンサー)
トッドが属していたバンド、ユートピアとして発表されたアルバム『Oops! Wrong Planet』のラストを飾る、これも名バラード。筆者はちょっと長めの海外旅行に出て、帰りの飛行機が離陸したときに機内オーディオプログラムでこの曲が流れて感動し涙した思い出が。前回のフジロックでも当然演奏された。が、今回のフジで演奏されるとは限らない。
■It Wouldn’t Have Make Any Difference (イット・ウドゥント・ハヴ・メイク・エニー・ディファレンス)
名バラード。さっきからバラードばっかりじゃないかといわれそうだし、トッド・ラングレンはそれだけじゃないだろ、という声も聞こえそうだけど、トッドがこの方面でものすごい才能を発揮しているので、どうか許してください。1972年『Something / Anything?』収録。バラードといえば1971年に発表された『Runt. The Ballad of Todd Rundgren』は丸ごとバラードの名盤なんでこちらもチェック。
この曲は、前回のフジロックでボサノヴァ・ヴァージョンで披露された。トッド先生は、ひとりでアコースティック弾き語り、大人数でのビッグバンドで分厚いアレンジ、観客参加型のライヴなどいろんなアレンジをしてくるので油断ならない。
■I Saw the Light(アイ・ソー・ザ・ライト)
名曲。これも1972年『Something / Anything?』収録。この曲にはピチカート・ファイヴもオマージュをささげている。
2010年の朝霧ジャムは、基本ロバート・ジョンソンのカヴァーだったけど、この曲は演奏されたし、演奏中に、それまで雲に覆われててみえなかった富士山が姿を現した奇跡があった。
■Medley: I’m So Proud / Ooh Baby Baby / La La Means I Love You / Cool Jerk(メドレー:アイム・ソー・プラウド~ウー・ベイビー・ベイビー~ラ・ラは愛の言葉~クール・ジャーク)
これはトッドのオリジナルではないけど、1973年に発売された名盤『Wizard a True Star』に収められた、ソウル/R&Bのカヴァーメドレー。2011年のフジロックでも中盤で披露された。トッドのソウル/R&B愛が伝わり、のちにホール&オーツなどをプロデュースすることにつながっていく。トッドにはこうしたソウルミュージック愛、確信的にビートルズの盗作スレスレの曲でアルバム一枚作ったり、かと思えばビートルズやビーチボーイズなどの完全コピーをやってみせたり、さらにビートルズのメンバーであるリンゴ・スターのバンドに参加するなどの半端ないビートルズ愛、最近ではロバート・ジョンソンのカヴァーをやるブルース愛、最近のアルバムでYMOをカヴァーするテクノ愛、などなど愛に溢れた人なのだ。
■Hello It’s Me(ハロー・イッツ・ミー)
代表曲満載の、前回のフジロックでなぜか演奏されなかった曲。なお、この動画のトッド大先生のメイクも衣装もおかしいけど、そういう時代だったんです。許してください。
1972年『Something / Anything?』収録の名バラードで、映画『ヴァージン・スーサイズ』で、男の子たちが女の子たちへ電話をかけて、受話器越しにこの曲を聴かせるという場面が印象的だった。
というわけで、もしかしたら「この曲聞いたことある!」というのもあったかもしれない。そうならば、このレジェンドを観たほうがいい。当日、ホワイト・ステージに着いてみたら、聴こえてくるのがEDMであったとしても……。
写真:北村勇祐(Supported by Nikon)
文:イケダノブユキ