• にぎやかしバンド、Räfven(レーヴェン)のおさらい


    今のフジロックに欠かすことのできないレーベル、「アンクルオーウェン」。レーベルそのものは知らなくても、フジロックの会場内を少し歩けば、どこからやって来たのかわからないけれども賑やかで、やたらとクセのある音楽をやっているバンドと何回も遭遇してしまう、そんな経験があるのではないでしょうか。このレーベルが初めてフジロックに絡んだのは、今年、2回目の出演を果たすレーヴェンがやって来た年のことでした。

    001_0724_rafven_or_00013

    なんだこいつらは?

    レーヴェンが初めてフジロックに登場したのは2009年の前夜祭。祝祭ムードが充満したレッド・マーキーに、海のものとも山のものともわからないガチャガチャしたバンドが現れました。メンバーの多さや多種多様な楽器から賑やかなことは明らかでしたが、フタを開けてみたらば、想像をはるかに超えたライヴとなりました。

    開演と同時に旗が振られ、マンドリン弾きがドレッドを振りみだし、アコーディオン弾きは頭のてっぺんからもうもうと湯気を発していました。それだけでなく、ギタリストはサックスを肩車し、サーカス仕込みのフラフープが披露されるなど、ただの音楽体験に留まらないステージとなったのです。

    知名度ゼロから「フジロック歴代最高のCD売り上げ」を記録

    日本での知名度がほぼゼロだったレーヴェンは、とにかくスケジュールをライヴで埋めるというシンプルなやりかたで口コミを広げ、その年の「フジロック裏ベストアクト」としてその名を知らしめたばかりか、現地での物販CD歴代最高売上記録を塗りかえました。その記録は、5年経った今も破られてはいません。

    レーヴェンが突然フジロックに登場した理由

    002_0723_rafven_re_0003

    アンクルオーウェン代表、松井聡太の話によると、彼らはスマッシュUKのスタッフがたまたまグラストンバリーで目撃したことにより、フジロックへの出演へと繋がったそう。これがおそらくその年の映像で、どう見ても正規のステージではありませんが、いつでも、どこでも演奏するスタイルこそがレーヴェンの十八番。フジロック(というよりも、苗場全体)や東京、大阪など、彼らが降り立った土地では、公園やバーなどでのゲリラライヴを目撃した方もいるのではないでしょうか。

    断られ続けた国内盤のリリース

    003_0723_rafven_re_0016

    そもそも、彼らの日本デビューはフジロックありきのものでした。出演の前に、日本のレーベル探しから始まったそうですが、どこのレーベルも「お金にならない」と、ほぼ即答に近い形で断りを入れたといいます。最後に回ってきたのが、当時、「アイリッシュパンク専門レーベル」として船出したばかりだったアンクルオーウェンで、松井はふたつ返事で快諾。後に当時のことを振り返り、「願ってもない話で、運も良かった。とにかく面白そうだった」と語っています。

    どこに行っても演奏しているバンドがいてもいい

    004_0726_rafven_mo_0001

    フジロックにてお披露目されたアンクルオーウェン所属のアーティストはすべて、様々なステージに出ることを条件に、出演とリリースの話が進められます。大物アーティストがごろごろいるフジロックの中で、無名のアーティストにわざわざ時間を割くことは、あまり期待できません。ならば、通りすがりのフジロッカーを虜にすればいい。いつでも、どこでも演奏するスタイルとなったのは、そんな単純明快な理由にすぎませんが、通りすがりを巻きこんで大きな流れを生みだす力を持ったバンドが選ばれてきたことも事実です。

    しかしながら、このやりかたはバンドがタフでなければつとまりません。その代わりといってはなんですが、レーベルは、バンドを喜ばせるための特別なルールを定めました。それは、アルコールはすべてレーベル持ちの飲み放題にする、というもの。今まで出演したどのバンドも、レーベルのスタッフが驚くほどのアルコールを消費し、エネルギーへと変えていきました。

    フジロック2009年、レーヴェンのスケジュール公開

    rafven_schedule

    レーベル提供のスケジュールを元に、2009年のレーヴェンの動きがひと目でわかる画像(クリックで拡大)を作ってみました。「ピックアップ」とは、集合と移動に割いた時間を示します。かなり早い段階でバックステージに到着していますが、この待ち時間の間に、バンドはステージに立つ準備をし、食事をとり、様々なメディアの取材をこなしており、慌ただしいものでした。夜ともなればライヴの疲れも溜まっているはずなのですが、どのバンドも、出番が終わればパレス・オブ・ワンダーなど、眠らない場所へと繰りだしては朝まで遊んでいたのです。

    7/23(木)前夜祭:Red Marquee
    7/24(金)1日目:Orange Court / 苗場食堂
    7/25(土)2日目:Café de Paris / Gypsy Avalon
    7/26(日)3日目:木道亭 / Crystal Palace

    アンクルオーウェンというレーベル

    005_MG_8785

    アンクルオーウェンは、スウェーデンで結成されたレーヴェンをレーベルの一員とするまで、「アイリッシュパンク専門レーベル」を謳っていましたが、レーベル発足当初より掲げていたスローガンは、「May The FOLK Be With You」(フォルクローレと共にあらんことを)、アイルランドのみに当てはまるものではありませんでした。ハテ、どこかで聞いたような…? と思った方もいるでしょう。その実、スター・ウォーズの「ジェダイ」の言葉「May The Force Be With You」(フォースと共にあらんことを)をもじっています。なお、「アンクルオーウェン」という名前の由来もスター・ウォーズから。農場でルーク・スカイウォーカーを育てていた、オーウェン・ラーズからきています。結構マニアックですね。

    レーヴェンで右も左もわからないままに行ったステージ行脚が、そのまま「アンクルオーウェン」そのものの色となり、現在も続いています。このレーベルにとってのフジロックは、一年分のプロモーションを行う場となり、毎年同じやりかたで突き進んでいます。今までは、ムスタング、オンダ・バガ、スキニー・リスター、バーバレラス・バン・バンなど、知名度ゼロの状態から紹介してきましたが、今回はレーベル初の2周目。それなりに知名度のある状態からライヴが始まります。スウェーデン語の曲名なんて読めない、わからないという人ばかりでしょうが、それでも、「楽しいから!」なんて口コミが、レーヴェンの前に大勢の人を連れてきてくれることとなるはずです。

    アンクルオーウェンからは、レーヴェンをはじめとして、「にぎやかし」ばかりを集めたコンピレーションCD『FOLK ROCK』が発売されています。このシリーズで使用される楽器はのべ100種以上、フジロック出演アーティストの未発表音源なども入っています。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!


    【リンク】
    Räfven
    UNCLEOWEN


    Photo by Makiko Endo(1枚目、4枚目)/ Hiroshi Maeda(2枚目、3枚目)/ 府川展也(5枚目)
    Text by 西野太生輝

Fujirock Express
フジロック会場から最新レポートをお届け

フジロッカーズ・オルグ盤『フジロッカーズの歌』7インチアナログEP

フジロッカーズ・オルグ盤『フジロッカーズの歌』7インチアナログEP

bnr_recruit

bnr_recruit
PAGE TOP