• 「ホワイトステージ、脅威の音像の謎に迫る!」〜第1回 ㈱トライオーディオ代表 東雅明さん


    01_whitestage

    いきなりですが、皆さん、ホワイトステージって音響がいいなと感じたことはありませんか?轟音バンドもエレクトロもダンスアクトもパンクバンドetcも登場しますが、例えば2012年のジェイムス・ブレイクの息を飲むような静けさから、徐々に重低音でその場が膨張していくようなあの感じ…野外フェスであの体験!忘れがたい人も多いのでは?というわけで毎年、恍惚の音場を作り出すホワイトステージの達人たちにその謎を解明してもらうべく(たぶん)シリーズでお届けするこのインタビュー。第1弾は嵐の初年度からずっとフジロックに関わり続け、昨年は会場の14セクションを手がけた音響会社、トライオーディオ代表の東雅明さんに川崎の機材倉庫でお話を訊いてきました。

    音響でホワイト手前の渋滞を解消!?

    02_azuma01─ 今日はホワイトの音の良さの理由を探りに来ました。

    それはよく言われるね。フジに行ったオペレーターの子とかも「いろいろ聴いてきたけど、やっぱここ一番いいな」って言うんやけど、あれね、俺、サイズ感がええんやと思う。1万人ぐらいという想定はしてるみたいね。

    ─ 苗場の初年度にあの場所を見た時にどう思われました?

    そらグリーンの方がでかいし、「負けたな」と思ったけど(笑)、ラインナップ出た時に、「今年のホワイトすごいいいね」って言われたりとか、そういうのはあって我がことのように喜ぶわけですよ。で、フジの人らみんな面白いのはオレンジコートの人もヘブンの人も、それこそレッドマーキーの人も口を揃えて言うのは、自分とこのステージが一番面白いと思ってやってる。やっぱね、自分が担当してる仕事に対する愛着っていうのはすごい感じるから。あの仕事は関わってること、そこにいてることがすごい快感なのね、僕らからしたら。

    ─ ホワイトはバンドもDJやダンスミュージックもアコースティックな人も出るなという印象があります。

    うん。だから、タワレコとかHMVとか行って面出ししてるのがグリーンで(笑)、とりあえず聴かなあかんような試聴コーナーにあるのがホワイトで、みたいな感じ。ある意味、スマッシュという会社らしさが出てるのがホワイトなんかなと思います。ホワイトってたぶんキャスティングを知らんでも人は来ると思う。「絶対あそこで探したろ」みたいなの出てくる。シザー・シスターズなんかも何人かに聴いたけど「今年の目玉はシザーやったね」「まったくノーマークやったけど、あれ金メダルやったわ」みたいのあったからね。

    03_scissor_sisters─ ところでホワイトってエリアの周囲が森ですよね。

    とにかくあそこに行って「わ〜!」って音楽聴いて、ふっと周り見たら木しかないじゃないですか。あの環境はすごいですよ、やっぱ。

    ─ 音作りはやりにくくないんですか?

    いや、別に。それよりね、何年か前からね、俺、ホワイトですごい拘ってる場所があるんですよ、一箇所だけ。それがところ天国から道通って橋渡るでしょ?で、入ってボードウォークの入り口があって、それを超えたらパッ!とステージが見えるとこがあるんですよ。そこにええ音届けようと。そこ中心に音作ってる。

    ─ 最後尾で聴いてもいい音だということですね。

    うん。で、なんでかって言うたら、あそこ渋滞するんですよ。上り坂やし。で、坂上って、パッてステージ見えた時にちゃんと音が聴こえてたら早足になる。それが遠くで鳴ってるような音が聴こえると、歩くの遅くなるでしょ。だから俺ね、何年か前にスマッシュの人に「あそこの渋滞減らしますわ」って言ったの。

    04_function_one01

    ジェイムス・ブレイクのオペレーター、喜びの余り…

    ─ 2012年のジェイムス・ブレイクのステージの音響が良かったという声が圧倒的に多いんですが、その理由はなんなんでしょうか?

    2012年のジェイムス・ブレイクはこれ(写真の卓)で、ファンクションワンっていう紫色のスピーカーで良かったんですよ。それはジェイムス・ブレイクがイギリスで使ってるスピーカー。だから全然OKで。

    ─ ライブハウスで聴くぐらい一個一個の音が聴こえて。あれはやっぱり良かったんですか?

    良かったと思う。だってオペレーターが終わった後、すごい喜んでて。で、そのスピーカー作ったトニー・アンドリュースっていうのがいるんやけど、彼のこと散々、「もう、ヤツは最高!」って褒めちぎるから、「電話したるわ」って、「トニー、今オペレーターに替わるわ」って電話渡したら20分ぐらい喋っとったね。電話代返せ!と思ったもん(笑)。

    05_james_blake─ (笑)。東さんのナンバーワンは?

    苗場の初年度(’99年)のアンダーワールド。あれはねぇ、俺、たぶんあれ以上の音聴いたことないと思うぐらい音が気持ち良かったね。それはこれ(アナログ卓)。しかも、それ、オペレーター、ジョン・ニューシャムって人で、ファンクションワンの人間なんですよ。そのスピーカーのメーカーの人間で、この卓作る時に一緒に作ってたヤツなんですよ。ピンク・フロイドの”パルス・ツアー”開発の時に一緒にやってた。だからジョン・ニューシャムからしたら、全部自分の道具やねんね。で、アンダーワールド、自分でいつも回ってるバンドじゃないですか。ええ音出ないはずないねんけど、あの時、俺たちの中で言う苗場マジックもあって、とにかく良かった。ホワイトのというか、フジロックで見るバンドはすごいっすよ。苗場マジックがある。

    ─ 確かに。でも、同時に環境は変わりまくりますよね?雨は降るし、お客さんの入りでも音は変わるって聞くんですけど。

    ないっすね。雨降ろうがヤリ降ろうが見に行く時は見に行くぞみたいな人らばっかり来るじゃないですか、基本的に。なんかそれと、僕らも「ああ、雨ね」っていうぐらい。水がかからないようにカバーしたりとか、それぐらいで、それ以外はなんもしてないね。

    ─ 東さんが特にホワイトで印象に残ってるステージはやはりアンダーワールドですか?

    アンダーワールドとシザー・シスターズと、何年か前のモグワイ。もう溶けたでしょ?その空間に身体溶けたでしょ?僕はPA席におって、めっちゃええ場所におるからとにかくどこに行ったら身体戻ってくるかな?と思って探したぐらいで(笑)。もう、これすごいな!と思って。あの独特のトランス状態になるような。あれは、ただただすごいなと思った。

    06_mogwai─ モグワイぐらいの轟音になると、ちょっとしんどいだけの音になる時もありますもんね。

    あれはシステムによってはめっちゃしんどくなると思う。耳が痛くて。だけどたまたまそうでもなくてすごい良かった。あとは忘れられへんのは、パブリック・エネミーの復活の時、本番寸前にオペレーターが来て、卓の前来て。とりあえず「音作っといてくれ」って言われたから作っといて。1曲聴いたら、いきなりマイク持ってしゃべりだすワケ、その人が。「ダブリュダブリュダブリュ・ドット・パブリック・エネミー・ドット・コム」とか言って叫んで、その後、マイク置いて「後、よろしく」言うて、いなくなってしまった(笑)。で、しゃあないから俺いじってて、気付いたらそいつステージにおったからね。

    ─ PAはいないんですか?

    いや、そいつなんやけど舞台の上で「ダブリュダブリュ〜」とか言って叫んで(笑)。もうOKやと思ったんやろね。結局俺、一人でずっとやってたもん。

    ─ 任せてしまう人もいるんですね。

    これは 特別なケース。ま、メンバーというかMCで、何故かPA仕切ってて。で、オペをするっていうから「はいはーい」って言って待ってて、俺がミックスしてるの横で見てて、「ああ、OKOK」って言って。で、舞台におるねん(笑)。俺、卓いじってて「オペレーターどこ行ってん?」って聞いたら、「あそこで叫んでますよ」って(笑)。

    07_public_enemy─ (笑)。話は変わるんですけど、日本のバンドやアイドルやダンス系のイベントに行くとけっこうキツい音であることが多くて。まぁ個人差はあると思いますけど。

    ま、そうやろね。けっこう暴力的やったりするやろうし。

    ─ 大きかったらいいのか?というか。海外ではその辺はどうなんですか?

    あのね、海外、特にイギリスは野外でも音量制限あるの。だからグラストンバリーとか、たぶんスピーカーの前でも喋れるぐらい小さいのね。それはもう苦情に対する規制。で、ヨーロッパのどこかだと屋内ですら何デシベルって制限があって、それ超えたら警察が来る。そういう状況の中でオペをしてる人はやっぱ上手いね。大きい音出してかっこいい音出すのは簡単やけど、小さい音でかっこいい音出すのは難しいんやろうね、やっぱものすごい上手い。1回、俺、ロンドンのハイドパークでエルヴィス・プレスリーのトリビュート・イベントがあって見に行ってんね。スージー・クアトロとか出てきて、後ろにフルオーケストラがいてて。ただ、その音量制限があって、ロックな曲をちっちゃい音でやってるんやけど、ちゃんとダイナミクスがあってええ音してるの。

    ─ フジは基本的にどこのステージに行っても音が大きいだけみたいな感じはしないですよ。疲れないですよね、1日いても。

    それはね、あの環境もプラスしてると思う。たとえば真夏のジリジリ暑い中で大音量聴いて、耳で疲れて、今度気温で疲れてってなる。でも苗場って、時々雨降って冷やしてくれるし、何より夜中になったら吐く息白い時もあるじゃないですか。クールダウンさせてくれる部分と、耳だけはホットにさせてくれるじゃないですか。そのバランスがすごいいいんやと思う。俺、神がかってんなと思うときあるもん。

    08_azuma02─ 確かに謎の中毒性があります。キャンプサイトが見えてくると「今年も来たなー」ってアガるあの感じは何度来てもありますし(笑)。

    うんうん。何年か前、1回だけ倒れてね。オレンジコートのオールナイトフジ終わりで倒れて、下の越後湯沢の病院運ばれて、「じゃあ」って言われたの(笑)。で、点滴受けてひと通り検査も受けて「まぁゆっくりすればいいわ」って言われて、「どうやって戻ったらええの?」と。10何回来てるけど(笑)、初めてで、シャトルバス乗り場に行ったら、これ並んでるあいだにまた倒れるなと思って。で、しゃあないな、これはタクシー乗ろうと。で、待っててんけど、いつまで経ってもタクシー来ないし、一人ずつ乗ってたら無理やなと思ったから、「一人の人いてる?」って4人集めて乗って。あの時になんかこう、僕はただただじーっと乗っててんけど、やいやい騒ぎ出すんよ、初めて会った人らが。あれ聞いてたら面白いですね。まぁある意味、聖地になってきてるんやと思うし。

    NEXT PAGE:聴いたこともないバンドに来てほしい。そこで俺らが仕事するよ、と。

Fujirock Express
フジロック会場から最新レポートをお届け

フジロッカーズ・オルグ盤『フジロッカーズの歌』7インチアナログEP

フジロッカーズ・オルグ盤『フジロッカーズの歌』7インチアナログEP

bnr_recruit

bnr_recruit
PAGE TOP
301 Moved Permanently

301

Moved Permanently

The document has been permanently moved.