今まで、フジロッカーにとっての春の訪れは第1弾のアーティスト発表でしたが、今年はすでに4回目。小出しになればなるだけ楽しみが増えるというものです。今回は、フジロックならではのアーティストがちらほら。

やはり、まずはWILKO JOHNSONに触れなければならないでしょう。すい臓ガンに侵され、余命わずかと宣告されたことで、「Farewell Tour（サヨナラツアー）」を行ったウィルコでしたが、「元気すぎる」ことを不思議に思った外科医のファンがいたおかげで、彼の完全復活への道のりが開けました。結果として、投薬治療のいっさいを断って余命を精一杯楽しむことに費やしたウィルコの判断は、副作用もなく、最良の選択だったようです。2013年のグリーン・ステージ、クリスタル・パレスにおける「死を受け入れた男」のライヴは圧倒される熱で満たされていましたが、「死を乗り越えた男」のライヴはさらに熱いものとなりそうです。

クリスタル・パレスといえば、今回発表分では4月に初の単独のツアーが行われるKITTY, DAISY & LEWISが入ってきそうです。彼らは東京公演が即完売した、男女混合3兄弟姉妹のロックンロールバンドです。全員がマルチプレイヤーで、ヴィンテージ機材をメンバー間でとっかえひっかえ、ロックンロール、ロカビリー、カントリー、ジャイヴ、ジャンプ、リズム＆ブルーズ、はてはスカにカリプソなどなど、ありとあらゆるジャンルを演奏します。ステージ上に散らばる楽器たちを見るだけでも面白いはず。新作アルバム『Kitty, Daisy & Lewis The Third』のプロデュースは、「KD&Lのファン」と公言する、元ザ・クラッシュのミック・ジョーンズが行っています。

続いては、BLOODEST SAXOPHONE feat. JEWEL BROWNをご紹介しましょう。思い切り吹き上げるジャズのサックス奏者を「ホンカー」と言いますが、この呼称を知らしめたビッグ・ジェイ・マクニーリーのご指名で、彼自身の来日公演のサポートをつとめたのが日本屈指のジャンプ&ブルースバンド、ブラッデスト・サキソフォン、通称「ブラサキ」です。彼らが今回ゲストに迎えるのは、「サッチモ」ことルイ・アームストロングの楽団に在籍していたシンガー、ジュウェル・ブラウン。彼女はアメリカの黒人女性シンガーとして頂点におり、その歌声は必聴です。激しさも、色っぽさも、いなたさも持ったブラサキが、どのように彼女をサポートするのかも気になります。

ジャズ畑からはもうひと組、上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン＆サイモン・フィリップスが2012年以来の登場です。この年のフジロックで、ベストアクトとして挙げた人もいました。上原ひろみが鍵盤を叩くさま、熱量に比例してくるくると変わる表情、アンソニー、サイモンら技巧派メンバーとのかけ合いやせめぎ合いで生まれる展開の妙など、今年もまた、聴く者の中に爪あとを残すライヴを繰り広げてくれることでしょう。

シカゴ・ブルースの巨人、ハウリン・ウルフのトリビュート企画“LEGEND OF BLUES” A Tribute to Howlin’ Wolf featuring HENRY GRAY & EDDIE SHAWも決定。ハウリン・ウルフ・バンドに在籍していたサックス奏者のエディー・ショーと、キーボード奏者のヘンリー・グレイを迎えたセットは、ブルース好きにとってたまらない一夜となりそうです。ハウリン・ウルフの”レッド・ルースター”から名前をとった、ザ・ルースターズの面々も関わってくるかもしれません。

先日行われたイベント、「ホステス・クラブ・ウィークエンダー」において、トリに相応しいライヴを繰り広げた、グラスゴー出身のBELLE AND SEBASTIANが出演決定です。インディー・ポップを体現する彼らの出演は、2010年以来となる3度目。過去にはメンバーがプリンス内の施設で遊んでいたという目撃情報もありました。

他にも、クラブに変貌をとげる深夜のレッドに絡んできそうな、プロデューサー系DJの名前がちらほら届いております。今回発表されたアーティストは下記、全12組。今後の発表にも引き続き期待していてください。

BELLE AND SEBASTIAN　/ BLOODEST SAXOPHONE feat. JEWEL BROWN / FLUME / KITTY, DAISY & LEWIS / キュウソネコカミ / “LEGEND OF BLUES” A Tribute to Howlin’ Wolf featuring HENRY GRAY & EDDIE SHAW / MAX COOPER / RL GRIME / RUDIMENTAL / 上原ひろみ　ザ・トリオ・プロジェクト　feat.アンソニー・ジャクソン＆サイモン・フィリップス / WILKO JOHNSON / WIWEK

Photo By Taio Konishi
Text By 西野太生輝