• 結成10周年、浅草ジンタインタビュー


    結成10周年を迎えて、いっそう円熟味を増している浅草ジンタ。フジロックには2009年より1年おきに出演しています。国内外のフェスへの参加のみならず、「笑点」など、様々な舞台で、「浅草」の今を伝えている彼らにインタビューを行いました。

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    浅草を伝え、浅草に勝負を挑むバンド

    ―「浅草ジンタ」をご自身ではどう捉えていますか?

    和尚:「浅草ジンタ」は、「ローカル」でありながら、「グローバル」な活動を目指してます。今は、「グローカル」っていう便利な言葉があるんですけど。僕らの音は、土地ならではの音をパンクやロックに昇華した「ミクスチャー」のひとつとして捉えてますね。浅草のど真ん中で活動しているのは、実際に拠点にすることが、「ローカル」な部分でリアリティを持たせられると考えていたからですし。リアリティは大事だと思っています。

    ―「ジンタ」という消滅した名称と、「浅草」の地名を冠することには相当な覚悟があったんじゃないですか?

    和尚:これも、「ローカル」という部分に繋がってくるんです。今でこそ浅草にはライヴハウス(浅草クラウッド)があるんですけど、拠点を移した頃はまだ存在していなくて。そうすると、どうしても路上での演奏になるんですよ。そんな状況を見ていた三遊亭小遊三師匠が、「おまえらは『ジンタ』だ」と言い切ってくれたことが命名のきっかけですね。「浅草」の名前は、言ってしまえば、浅草そのものに勝負を挑む感じですね(笑)。
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    ※ジンタ…大正時代に付けられた「市中音楽隊」の呼称、愛称。

    ―これから、「『浅草』を背負って立つ」という表明ですね。「啖呵(たんか)」のようなものでしょうか。

    和尚:そうですね。でも、(小遊三)師匠や先輩がたには、「『浅草』の名前は押し上げてくれる部分もあるけれど、引っぱられる部分もある」とは言われました。受ける印象が限定されてしまう、ということですね。

    ※啖呵(たんか)…相手に向かって言う威勢のいい言葉。

    ―結果として限定されることなく、小遊三師匠をはじめとした落語界との関係も深まり、後々に、「笑点」への出演に繋がります。「笑点」は、お客さんの年齢層など、今まで経験してきた環境とはまったく違う世界だと思いますが、どのようなものだったんですか?

    和尚:まず、舞台転換が半端なく早いですね。3分くらいでバーッと変えちゃって、「ハイ、どうぞ!」といった形で始まるんですよ。もちろんお客さんもいつもとはまったく違いましたし、人生最大の「アウェイ」な感じはありましたけど、それ自体を楽しむ感じで演奏できました。とても緊張しましたけどね。

    海外遠征で得たもの

    ―2007年から実際に「グローバル」、世界へと飛び出しました。まずは「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」からのアメリカツアーですが、そこでどんなことを意識されましたか?

    和尚:僕らの楽器や服装だけをとって見れば、日本らしさはあまりないんですよ。海外であっても、それほど珍しいものではないんです。海外では、着物を身につけて演奏するとか、いかにもな形で日本をアピールすれば、それなりの評価は得られると思うんですよ。でも、僕らの場合は、メロディだったり、ビートの刻みかただったり、音で「日本人」を表現しているんです。

    ―確かに、言われてみれば珍しくない編成ですね。SXSWからはじまったアメリカツアーの中で感じたこと、印象深かったことはありますか?

    和尚:ライヴハウスの環境そのものが日本とまったく違いましたね。海外は大きなステージでもスピーカーが2つしかなかったり、日本ではありえない状況なんですが、それぞれが当たり前のように、柔軟に対応しながらライヴを創っている。バンドとしての大きな経験になったんじゃないかなと思いますね。

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    ―ロンドンでは、「Gaz’s Rockin’ Blues(ギャズズ・ロッキン・ブルーズ)」に出演されました。歴史あるイベントですから、いろいろと感じたこと、学んだことがあったのではないでしょうか。

    和尚:あのイベントに出演させてもらったことは、僕の音楽人生の上で最も大きな出来事だと思っています。まず、ギャズ(・メイオール)自らが「もぎり」をやったり、飾り付けをしていたり、30年くらい同じ場所に立って、同じことをやってきているんです。ギャズは認められている人だけれども、一方で、現場で何度も音楽に関する厳しい状況を乗り越えてきたんだろうなって。だからこそ未だに、「原点」を持ち続けているのかな、とも思います。

    ※もぎり…チケットを確認して受け取る受付業務。主にチケットをちぎって半券にすること。ドリンクチケットに引き換えたりもする。

    ―昔からギャズを知る人は、口を揃えて、「変わっていない」とおっしゃいますね。

    和尚:ギャズの振る舞いは、僕らの芯にある、「ローカル」な部分に通じるものだと思っています。浅草で活動する時にはギャズのことを意識するし、僕らも、今やっていることをこれからも続けていかなければならないと感じています。バンドのメンバーは、立ち位置や個性を活かして、それぞれが外に、「グローバル」に広げてくれている。ギャズの周りにも外へと広げてくれる人がいるし、僕らがやっていることとギャズのやっていることは近いのかな、とも思います。

    ―同じくイギリスですが、「Glastonbury Festival(グラストンバリー・フェスティバル)」を経験したことも、大きいのではないでしょうか。出演してみて、どのような印象を受けましたか?

    和尚:グラストに出演できたことは、ものすごく素晴らしいことだと思うんですよ。規模だけじゃなくて、内容が日本のフェスの数十倍じゃないですか。僕らがびっくりする環境の中で、向こうで見る人たちをびっくりさせられるライヴをやらなきゃいけないという想いがありましたし、今までに経験したことのないほどの張り合いや高揚感があって。それに、イギリスっていうのは、ただ盛り上がるっていう感じではなくて、どこかで厳しい目を持っている。様々な面でとてもいい経験をしたと思いますし、勉強になったと思います。

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