• トークやプレゼンがライブと同じ熱量を持つフェスの意義とは?YEBISU MUSIC WEEKEND主催者インタビュー


    細野晴臣、OGRE YOU ASSHOLE、HAPPY、大森靖子にベルハー(BELLRING 少女ハート)という横にも奥にも広い・深いラインナップのライブはもとより、ジャーナリストの津田大介さんや音楽ブロガー・レジーさんらが登壇するトークにプレゼンまであるこのイベントの概要を知ったときの“痒いところに手が届く感”。
    音楽を手軽に手に入れたい・聴きたいと同時に好きなアーティストにはずっと作品を届けてほしいという気持ち、ありますよね。
    SNSを通じて自分の好きなアーティストや曲を発信するだけじゃ物足りないって人もいるかもです。もちろん、「なんかオモロそうなイベントだね」というカジュアルな気持ちの人が大多数かもしれませんが、なにか始まりそうな予感はムンムン。そこで、このイベントの実行委員の最年長である渡邉ケンさんと最年少の大山裕之さんに、開催の経緯や、このイベントのスタンスを伺ってきました。第6弾ラインナップも追加されたのでチェックもよろしく。(近日、タイムテーブルも発表)

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    —まず、「YEBISU MUSIC WEEKEND」開催の経緯を聞かせてください。

    大山「実は前身になってるイベントがあって、2012年2013年と開催してきた「YOAKE」っていうイベントなんですが、それをやってきたのが今回の主宰メンバーである渡邉ケンさんと永田純さんと飯田仁一郎さんで。「YOAKE」も「音楽シーンの現在を感じ、未来を考えるトーク&ライブ」と銘打ってたんですが、トークには人が集まるけど、ライブに人が入らないんです。で、逆に「ボロフェスタ」にトークを入れてもトークに人が来ない。でも両方聞いてくれた人は楽しいと言ってくれた。っていうので、ちゃんとライブもトークも楽しめるイベントをやりたいなと思って、4回目に大幅にリニューアルして、リスナーが楽しめるイベントにしようということで「YEBISU MUSIC WEEKEND」は始まってます」

    —「YOAKE」と「ボロフェスタ」両方のいい面を潰さずに?

    大山「そうですね。ライブとトークが同じモードで聞ける状態にしてるというところに、新しいフェスは行けるんじゃないか?そこは可能性を感じてるところで。だからイメージとしては「SXSW」や「THE BIG PARADE」とかではなく、「ニコニコ超会議」やコミケのあの感じですね」

    —なるほど。超会議はトークもいい意味でアカデミックな感じではないし。

    大山「トークもライブを食うぐらい面白いものにしてほしいんです。ちゃんと面白いものだったらお客さんも受け入れてくれると思うので」

    —イメージとしては「FREEDOMMUNE」の1回目みたいな感じもあるのかな?と。

    大山「ああ、そうです。ホントそんな感じです。今回、実は協賛企業のプレゼンも入るんですけど、音楽のイベントでパワーポイントでやってもつまんないし、誰も聞かないじゃないですか。そこもライブを食うぐらい面白いプレゼンをしてもらえれば、お客さんも楽しいと思うし。こういうイベントが成り立ってるのは実はそういうお金を出してくれてる人がいるからだっていうのもちゃんと伝えないといけないと思っていて」

    —なるほど。仕組みを知るという意味ではリスナーの中にもバンドをやってたり、音楽の仕事をしてないけど音楽について発信する人というのが、客層としてイメージできますね。

    大山「それはまったくそうで。今、別に音楽で食わなくても、音楽を作ってる人はいっぱいいいて、それこそSoundCloudやBandcampで配信してというのもあるし、レジーさんもそうですけど、本業は会社員で音楽ライターやってる人もいる。そういうふうに好きなものに関わる形があるっていうのは伝えたい部分ですね」

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    —面白そうなトークのお題が並んでるんですが、例えばこの「メジャー・レーベルの人vsインディーズ・レーベルの人」、この内容は決まってるんですか?

    大山「メジャーのほうは交渉中です。実は岩崎淳(FunLandRyCreation代表)さんって、もともとメジャー・レーベルにいて辞めて自分でレーベル作ったんですけど、元上司を呼べたら話がしやすいんじゃないかと思っていて。今、メジャーとインディーズの境目はなくなってると言いますけど、そもそもどう違うのか知ってる人はあまりいなくて。僕もよく分からないし。それを一度、リスナーに知ってほしいっていうのがあります」

    渡邉「アメリカの場合、今年のグラミー賞はインディーズレーベルが半分以上でしょ?でも、そのインディーズの定義をアメリカ的に言うと、日本だと全部がメジャーになっちゃうような扱われ方をしてる。それは今の日本の音楽業界にいる人の認識不足から起きている不幸なことだと思うから。そういうものがこの対談で出てくると面白いけど」

    —あとこの「精神科医が明かす、才能育成・マネジメント法」ってのはなんですか?

    渡邉「ミューズ(音楽院)の手島さんがその辺にフォーカスしてるんです。で、医学博士の本田(秀夫)先生が『自閉症スペクトラムー10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』という面白い本を書いてるんですが、日常的に付き合いづらい人間を「あの人はアーティストだからね」みたいに合理的に場を収めようとするじゃないですか?でもそこのモノの見方を改めると「アーティスト」と否定された人の面白さが出てくる。特異な才能を持った人への理解の仕方に目からウロコが…たぶんそういう話が聞けれるんじゃないですかね」

    —あと、真っ当な感じのだと「これからの音楽との出会い方(仮)」。まだ「仮」なんですね。

    大山「これはイケイケなタイトルに変えましょう(笑)」

    渡邉「この対談はスポティファイに関するトークなんですが、おそらく初めてこういう場に契約の方が出てくると思います。契約の部分などはほとんど知られていません。登壇する谷口さんはスポティファイに許諾を出す側の人ですから、幅広く、かつ多く深く引き出してくれるんじゃないかと。スポティファイはこれまで様々なところで登壇していますが、YEBISU MUSIK WEEKENDではちょっと違った切り口の話が聞けるとは思いますね」

    —リスナーなんだけど、同時に発信者でもある人が、もう一歩先に行くためのヒントがありそうなトークが多いですね。

    大山「「SXSW」的なものが日本になじまないのは、音楽とビジネスのバランスが悪いからだと思って。そこのあいだを埋める役割をしてくれるトークセッションになるかなと思います。結局、音楽産業ってリスナーのほうを向いてなくちゃいけないじゃないですか。でも今までのトークセッションはほとんど業界向けにやってたものなので、そこをリスナーが知ったら全体的に底上げされるんじゃないかな?と思うし、あと、アーティストも絶対知るべきだと思いますね」

    —自分が買うたとえば3,000円のCDの内訳を知る、みたいなことですね。そして出演者なんですが、ここも発信方法や売り方に自覚的なアーティストが多いんじゃないですかね。

    大山「まあtofubeatsさんはまさに象徴的かもしれないですね。今回もアルバム(『First Album』)リリース前にSound Cloudで全曲試聴してたでしょ?」

    —まずは試聴してみてくださいってスタンスですね。

    大山「それは僕らもやっていかなきゃいけないことで、トークの内容をオープンにしていく、今、配信をしようとしてるんです。全部はもちろんできないですけど、僕らもまず試聴してもらうっていうのを先頭に立ってやるべきだとは思ってますね」

    —大事ですよね。とはいえ、まあリスナーの立場としては無邪気にラインナップがヤバイ!っていうのはまずありまして。今年のフジロックに出演したアーティストもけっこう被ってますね。

    大山「そうですね。大森さんとかOGRE(YOU ASSHOLE)とか。でもまあ、僕ら世代(20代)だけじゃないと思いますけど、ブックオフがあってTSUTAYAがあって、でYouTubeがあってSoundCloudがあってってなったときに、あんまりジャンルとかミュージシャンの世代も関係なくて、全部フラットに並んでるんですよ。それをライブミュージックで再現できないかな?と思ってます。MoMAみたいに。あと、上原れなさんとSuaraさんはゲーソン系の人で、そこは逆に普段のフェスにはない意味かもしれないですね。そもそもロックフェスじゃないので。アティチュードはロックかもしれないですけど」

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    —たしかに。アーティスト登壇はないんですか?

    大山「もちろんあります。ライブの出演者の中ではtofubeatsさんとTHE NOVEMBERSのフロントマンの小林さん、「THE FUTURE TIMES」としてになりますがゴッチ(後藤正文)さん。アーティスト自身が話してくれることで、より聞きやすくイメージしやすいセッションになっていると思います」
    —なるほど。そしてチケットが3日間フリーパスで5,500円って破格じゃないですか。

    渡邉「ま、適正規模というか、これ以上の規模になるとたぶんイベンターさんの助けが要りますね。中間コスト、そういう部分をなるべく抑えることでこの価格が成り立ってるんです。僕はこのチームの中でいちばん俗物なので、「この価格で始めたらもう値上げできないじゃん」っていうのはあるけど(笑)、ただこれが成功して、協賛がつきやすくなるとか。ビジネスする人たちのイメージが可視化できるようになると共存しやすくなるんですね。で、大きな冠のような協賛はいらないですが、小口のものがいっぱいついて維持できるようになる、それが次のステップかな」

    —そのためのボランティアも募集していますが、具体的にはどんなことをやってもらおうと?

    渡邉「アーティストまわりもそうですけど、会場の装飾などから、事務局スタッフのアシスタントなど、事務方の分野もやってもらおうと思ってます。19日には説明会と交流会も行います」

    —お話を伺っていると空間自体が有機的というより、なんでもできるハコがいくつかあって、行くと何かがあり人が何かを生み出すイメージでしょうか?

    大山「そうですね。必ずどこかで何かやっているようにして。ガーデンホールもホールとロビーを分けて、かつルームでも何かやっている。外に出ないでその空間で何かヤバイことやってるっていう、この恵比寿っていう大人のおしゃな街と思われてるところで、実はこんなすごいことやってる!というのもウリのひとつかなと」

    —相当、面白いことになりそうですね。

    大山「コンセプトである「ライブ、トーク、プレゼンで音楽を楽しむ×知る×考えるエンタメフェス」、言いたいことはこれだけです。トークとプレゼンがライブと同じぐらいエンターテイメントしてるんだよ、どうですか?面白いでしょ?っていうことだけで、他にエモい道筋はあんまりなかったりします」

    —いや、それが新しいし、面白いんだと思います。今日はありがとうございました。

    取材・文:石角友香
    撮影:宮腰まみこ
    協力:森リョータ


    YEBISU MUSIC WEEKEND
    [WEB]http://musicweekend.jp/

    ●第6弾ラインナップ発表!
    新たにNao Yoshiokaの出演と5つのトークセッションが決定。

    2014年11月1日(土)東京都 STUDIO38

    トーク
    ・「音楽でできた人生をあゆむということ」
      出演:麻田浩(Tom’s Cabin代表 / SXSW Asia代表)/ 北中正和(音楽評論家)
    ・オトトイの学校 presents「Arts and Lawの、今勉強する、音楽の著作権!!!」

      出演:藤森純(Arts and Law弁護士)
聞き手:飯田仁一郎(オトトイの学校)
    ・「個性的すぎる才能とつきあう方法 ~精神科医が明かす、才能育成・マネジメント法~」

      出演:本田秀夫(医学博士)
聞き手:高階經啓(LENZ LLC.代表) / 手島将彦(ミューズ音楽院)
    

・「音楽で食わずに、音楽と生きる ~Wキャリアがもたらす世界~」

      出演:レジー(音楽ブロガー / “レジーのブログ”) / 白木裕也(引力レコーズ) / ウエムラケイ(シンガー)
聞き手:安西正史(パソナ ミュージックメイト リーダー)





    ※11月1日はトークセッションのみ。

    2014年11月2日(日)東京都 恵比寿ザ・ガーデンホール / 恵比寿ザ・ガーデンルーム / STUDIO38

    ライブ
    細野晴臣 / Soggy Cheerios / OGRE YOU ASSHOLE / THE NOVEMBERS / 黒木渚 /
    トクマルシューゴ / UNCHAIN / ゆるめるモ! / ミツメ / 森は生きている / BELLRING少女ハート /
    Babi(Special DSD Recording Live!!!) / 水曜日のカンパネラ / Yogee New Waves /
    NATURE DANGER GANG / コッテル / 杏窪彌
    トーク
    ・ THE FUTURE TIMES presents「今、どういった詩が必要とされているのか 」
      出演:後藤正文(THE FUTURE TIMES編集長 / ASIAN KUNG-FU GENERATION) / 和合亮一(詩人)
    ・「音楽を届ける新しいチームづくり ~THE NOVEMBERSのマーケティングのすべて~」
      出演:小林祐介(THE NOVEMBERS Vo&Gt / MERZ代表) / 高野修平(トライバルメディアハウス シニアプランナー/サブマネージャー) 聞き手:ジェイ・コウガミ(音楽ブロガー / “All Digital Music”)
    ・「日本も外国 世界を俯瞰して見えた、日本の音楽のこと」

      出演:レナード衛藤(和太鼓奏者)
聞き手:手島将彦(ミューズ音楽院)
    ・「音楽を支える、ちょっと変わった”裏方”たちの話し」

      出演:文原明臣(nana music Founder / CEO) / 原田卓(Peatix Inc. CEO) / 椎野秀聰(楽器設計者、ESP / VESTAX 創業者)
    ・「これからの音楽との出会い方(仮)」

      出演:野本晶 (スポティファイジャパン ライセンス&レーベル・リレーションズ ディレクター) / 孫龍活(スポティファイジャパン リーガル・カウンシル) / 谷口元 (東京谷口総研 代表取締役社長) ・「2.5D SESSION -音楽業界の商品とは-」
      出演:石井龍 (株式会社ニーテンゴディー プロジェクトマネージャー)、MMMatsumoto (MARQUEE編集長)、武瑠 (SuG vo)/
and more

    2014年11月3日(月・祝)東京都 恵比寿ザ・ガーデンホール / 恵比寿ザ・ガーデンルーム / STUDIO38

    ライブ
    ZAZEN BOYS / Controversial Spark / Suara / tofubeats / 大森靖子 /
    空気公団 / 或る感覚 / HAPPY / 吉澤嘉代子 / 上原れな / 吉田ヨウヘイgroup / Charisma.com /
    Awesome City Club / Nao Yoshioka(Special DSD Recording Live!!!)
    トーク
    ・「デジタル時代、ミュージシャンはどうやって生きていくのか?」

      出演:津田大介 / 西寺郷太(NONA REEVES) / 加藤貞顕


    ・オトトイの学校 presents「岡村詩野ライター講座 YMW特別編 ゲスト:田中宗一郎」

      出演:岡村詩野(音楽評論家) / 田中宗一郎(音楽評論家)
    

・「tofubeatsと音楽ライター/ブロガーが語る、ディグ術と隠れたJ-POPの名盤」
      出演:tofubeats / 近藤真弥(ライター) / 荻原梓(ライター)
    ・「メジャー・レーベルの人 vs インデ

・「メジャー・レーベルの人 vs インディーズ・レーベルの人」

      出演:岩本岳士(Littleize record代表) / 岩崎淳(FunLandRyCreation代表) / and more

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