片想いと振り返るフジロック2014
- 2014/09/18 ● Interview
今年のフジロックの2日目、木漏れ日射す昼下がりの木道亭に登場した片想い。この時間、この場所でまさかのアンコール、さらに片岡シン(ヴォーカル&三線)は木に登り、所属レーベルの社長は客席にダイブするという前代未聞のライヴで、会場を大いに沸かせてくれました。そんな彼らのSNSをチェックすると、フジロックをガッツリと満喫している写真が投稿されており、その様子がなんとも楽しげで・・・。それに加え、雨具の装備の万全ぶり、何アーティストもはしごする姿はまさにフジロッカーそのもの。そこで、片想いを代表して片岡さん、MC.sirafuさん(ヴォーカル&トランペット&ギター&スティールパン)、issyさん(ヴォーカル&ピアノ)のお三方に、アーティスト目線、そしてお客さん目線の両方でフジロックを語っていただきました。印象に残ったステージ、フェスごはん、そしてフジロックの魅力まで、片想いファンはもちろんのこと、フジロッカーのみなさんも一緒に振り返ってみましょう。
フジロック2度目の出演となった木道亭でのライヴ
人の心をかき乱すライヴをしたい
片岡 : とにかく人が来るか不安だったんです。リハをやっていたときにぱらぱらと人が通り過ぎていって・・・。2、3人は立ち止まってくれたのですが温情だろうなって。(ライヴハウスのように)お客さんが来る確証がないので、「来てくれーっ!」ってずっと思っていましたね。けれど、ライヴが始まる前には人がたくさん集まっていて「よかったー!」って。
――ホントに超満員でした。聞いた話によるとボードウォークへの入り口で入場規制がかかっていたそうです。この日のライヴはissyさんのコール&レスポンスから始まりましたよね。issy : あれも不安のかたまりでした(笑)。このままやっていいのかなって思ったけど、「やれと言われたらこの時間は俺のもの!どうなっても知らないよ!」と思ってやりました。
片岡 : コール&レスポンスはレーベルをあげて不安になっていました(笑)。始まった瞬間に(所属レーベル社長の)角張さんや(スタッフの)塁さんは、「あー失敗した~」と思ったらしいから。・・・まぁどちらかというと失敗だったよね(笑)。あだち麗三郎くん(ヴォーカル&ドラムス)は「あのコール&レスポンスのおかげでお客さんが前に詰めてくれたよね」と優しいフォローをしてましたよ。僕たちはライヴ前に大体何かをやるけど、大抵事故が起こる!(笑)フジのコール&レスポンスも事故だったけど、いいステージをやって、盛り上がって、最終的に大団円を迎えるってのがライヴの醍醐味・・・ですよね。僕たちはそれができないんですよ。だったら、人の心をかき乱してやれっていうのがあって。
――予想外のアンコールがあったのもそういった精神からきているのですね。一昨年の苗場食堂での出演は、グリーンステージでトリを務めたレディオヘッドの真裏の時間帯でしたが、あのときの会場の一体感がすごくて今でも強く印象に残っています。
片岡 : 僕たちのライヴがまだ始まる前、レディオヘッドを観るためにどんどん人がグリーンステージに向かっていなくなっていって。もうゴーストタウンみたいでしたよ(笑)。苗場食堂の座敷はもちろん、オアシス全体に人がいなくて・・・ゾンビの町みたいで。いつも人がわんさかいるところに誰もいないし、これはヤバイなと!でもいつもはしない円陣を組んでみたり、(笑)――結果どうでした?
片岡 : 楽しかったですよ(笑)!まぁ、片想いという存在がそういうことなのかなって・・・。片想いを象徴するステージだった感じがします。あえてレディオヘッドに行かない人たちが来るというか・・・。
MC.sirafu : 何度もレディオヘッド行かなくていいのかお客さんに確認してたよね(笑)
片岡 : だって、うちらだったらレディオヘッド行くなって思ってissy : あの時ceroの荒ピー(荒内佑)も僕らのステージにでてくれたんだけど、小さい声でぼそっと「レディオヘッドみたいなー」っていってたもん。
片岡 : そうね、「出てー!」ってお願いしたらホントに嫌がってたもん。「マジかー・・・」って(笑)。
――一昨年は苗場食堂、今年は木道亭と出演しましたが、他に出てみたいステージはありますか?
MC.sirafu : 昨年、YOUR SONG IS GOODがでたところってどこだっけ?・・・そうそうCRYSTAL PALACE TENT!外堀から攻めてみたいな。全然メインステージにたどりつかない(笑)。あとは一番奥のステージ・・・そう、オレンジコートに出てみたいですね。あの場所はラインナップも雰囲気がすごくいいなぁ。
片想いのフジロックの過ごし方
満場一致で感動したというBEGINの素晴らしさ
MC.sirafu : 2日目の僕たちの出演時間が早かったので前乗りをさせてもらって、1日目の夕方から会場をまわって。なおかつ、3日目のアウトキャストがどうしても観たかった。それで、どうせなら3日間参加しようという話になって、こういうことに(笑)。
issy : アウトキャストを観るために1時間ぐらい並んでたんですよ。
片岡 : アウトキャストの前に出演したケリスから、1番前を陣取ってました。彼女のことは知らなかったんですけど素晴らしかったですね。
――3日目だと雨が結構降ってて辛くなかったですか?
一同 : 寒かったですねぇー。
片岡 : 出演した一昨年は1回ぐらいしか雨が降らなくてすごく晴れてて熱かったんですよ。うちらがでるときは雨が降らないという神話があって(笑)。だから、フジが寒いっていうのはうわさでしか知らなかったので、3日目は面食らいました。あまりの寒さに長ズボンを履きに宿に帰りましたもん。
――今年は気温差が激しかったですよね。3日間でのベストアクトを挙げるとしたら。
片岡 : アウトキャストは出てくれるだけでもう100点なんですよね。観ることが出来ただけでOKな感じで。ライヴ自体にガツンときたのは・・・。一同 : BEGINかなぁ
MC.sirafu : そう3人ともBEGINなんじゃないかって言ってて。良いライヴばかりだったんだけど、大御所の芸というか、彼らのトークがフェスっていう形式に合わせているものではなく、長い事培われてきたトークの流れや空気を読んでいる力が、何万人の前でも変わらなく伝わってた。
片岡 : 僕とissyは特に彼らが生まれた石垣島に住んでいたことがあったので、沖縄のイントネーションが懐かしくてしょうがなかった。ハワイのダンサーの方も出てきたのですが、僕はダンスと音楽のコラボってすごく難しいと思っているんですよ。そういうバンドはいっぱいいるけれど、やればいいっていうもんでもないんですよね。けれどBEGINのステージは観ているだけでホロッときちゃって。ベースの伴瀬と2人で観ていたのですが、彼はBEGINをまったく通っていなかったのに「これは観ちゃうね~」って感動してた。しばらくしたら、後ろからissyとissyの嫁が来て、2人とも目を真っ赤にして号泣しながら歩いてきて(笑)。“涙そうそう”で。それがちょっと面白かったね。
issy : あれは前を座っていた人も泣いていた。何で泣くかわかんないけど泣くよね。
――いいご夫婦ですね。
MC.sirafu : あと憂歌団も良かったよね。マーク・リボーのバンド(ヤング・フィラデルフィアンズ)も。僕は事前にフジロックのアプリをスマホに落としてきて、自分がまわろうと思っているタイムテーブルをちゃんと作ってきたんですよ。絶対全部まわれなさそうな(笑)。でも、5つぐらい被っているところもあったんだけど、ちょいちょい観たので意外とまわれた。
片岡 : こういうのってこれまでのシラフからは考えられないんですよ。普段は絶対やらない!
MC.sirafu : 3日目のトリのアウトキャストは絶対に観たくて。でも、雨も降って過酷で、体力がもたないなっていうのは最初からわかってたから。だから今年は自分をハイにして楽しむしかないなって思って自分を覚醒させたので、全然疲れなかった。だからほぼ、自分が作成したタイムテーブルどおりに動けた。夜中にはパレスオブワンダーに遊びに行ってたし。
――パレスオブワンダーは、ルーキーステージがあったり、フジウジなどの見世物小屋、今年はプロレスがあったりといろいろな遊び方ができるエリアですが、どのように過ごしましたか。
MC.sirafu : あそこに行くと割と知り合いに会うんですよね。今年も吉田ヨウヘイくんとかでてたし、彼を観に来ている知り合いも結構いて社交場みたいな感じになってました。
フジロックのフェスごはんは良心的な価格
――fujirockers.orgではフェスごはん企画にも力をいれているのですが、フジロックでの飲食はどう感じましたか?片岡 : 3日いると飲んだり食べたりしなきゃダメですよね。すごくお金がなくなるなって思ったんだけど、販売価格は600円が基準になっているじゃないですか。カレーのプレート600円なんて東京でも食べれないよなって。ああいう場所っていくらでもぼったくることができるのに。安くてお客さんのことを考えていて良心的な価格だなと思いました。
――そのとおりですね。以前出店管理の方にインタビューを行ったのですが、儲けよりもフジロックを一番に考えてくれるかで出店する店を選んでいるとお聞きしました。印象に残っているお店はありますか?
片岡 : ステーキ丼を買ったけど、和牛で600円って都内でもなかなか食べられないですよね。
――おそらくオアシスの湯沢東映ホテルが出店しているステーキハウスあづまですね。
片岡 : えっとこんな白くて高い帽子を被った人が焼いていて、気高い感じの・・・(笑)
――やっぱりそうですね。
片岡 : あとはフィールド・オブ・ヘブンのラムチョップがおいしかったです。
――それはおそらくながおか屋ですね。フェスごはんランキングの10位にも入っていたんですよ。
MC.sirafu : フィールド・オブ・ヘブンの正面のクラフトビールのお店もおいしかったですよ。甘めでしたけど。
――ビールを専門で扱っていたところですよね。東京エールだと思います!
3人が考えるフジロックの魅力
――最後にフジロックの魅力はどういうところにあるかお一人ずつ聞かせていただけないでしょうか。
issy : 自然だと思います。空気も良くてあの環境で音楽が聴けるというのが良いですね。新幹線に乗って2時間ぐらいでいけてしまうところで体験できるところってなかなかないですよね。すごいアーティストのラインナップが揃っていて、同時になかなか観れないですよね。
MC.sirafu : マニアックですよね。フジのラインナップはオリジナリティーがすごくあるなと思いました。そのチョイスがワールド・ミュージックだなと。ファンファーレ・チォカリーアとか、国も遠いし人数も多いのによく呼んだよね。コンタクトをとるのも大変だろうし、それを考えると簡単にやれることではないし気合が感じられます。欧米のワールドミュージックフェスティヴァルとかって、ガチなトラディショナル感がありますよね。けれど、かっこいい音楽ってファンファーレ・チォカリーアにしても、トラッドなんだけど現在進行形の音楽として捉えた方が、全然踊れる音楽だし。そういったアーティストとBEGINだったりARCADE FIREしかりBASEMENT JAXXしかり、並列に見せているのはすごい見せ方だなと思いました。
片岡 : ほぼ彼がいってくれたのですが、フジロックというものが、大きすぎて、メジャーすぎて揶揄されることがあると思うんですよ。例えばファッションなんじゃないかって。けれど行ってみると全然違くて。子供の遊ぶスペースや、食べ物の値段だったり、お客さんのことをよく考えているなと思って。アーティストにしても、お客さんにしてもホスピタリティが充実しているので、行った人がみんな楽しめますよね。まだ2回しか来ていませんが、そういったところに感動しました。
開催間近となった片想い企画イヴェント“片想インダ温泉”
村のお祭りぐらいな感じでやりたい
――綱島温泉での自主企画〈片想インダ温泉 2014〉の開催が近づいてきています。綱島温泉では2度目のライヴとなりますが、この場所を選んだ理由を教えてください。
MC.sirafu : 今まで片想いは温泉で開催されるイベントにもちょいちょい出演したりしていて、で、宴会っぽい感じの会場って片想いらしさが手っ取り早く伝わるなぁ思っていて。年に1回ぐらいはこういう会場でやってみたいなと。
――昨年、ライヴをしてみていかがでしたか?
片岡 : 僕はずっと酔っ払っていましたね。ずっと呑んでいたくなる感じで。昼の縁側とかレトロな雰囲気がすごくいいですよね。当日は浴衣を着たのですが、メンバーの大ちゃんが着付けをしてくれるはずだったんです。けれどもみんな着せてたら時間がかかるじゃないですか。だから「男の浴衣なんていいよいいよ」なんて自分で着ていたら、綱島温泉の常連のおばあちゃんが「何やってるのよ!」なんてバッて部屋に来て、着付けてくれたり(笑)。
――綱島温泉に行ったことがある人ならきっとその光景が目に浮かぶと思います(笑)。今年の綱島温泉はどのようなライヴにしたいですか?
MC.sirafu : 日常の延長で楽しんでほしいと思って僕らは企画しているので、いい意味で気負いなくゆるっとやりたいですね。
片岡 : 村のお祭りぐらいな感じでね。
文 : 菊入加奈子
取材 : 菊入加奈子、千葉原宏美
インタビュー撮影 : 藤井大輔
ライブ撮影 : 古川喜隆、直田亨
■片想インダ温泉 2014 ライヴ情報
会場:綱島温泉 東京園
日付:2014年9月20日(土)
開場/開演:13:00 / 14:00
前売:3,500円 (SOLD OUT)
当日:4,000円
※若干枚数当日券の販売を予定しております。詳細は公演当日カクバリズムTwitterにてお知らせ致します。
出演:片想い / I♡A
DJ サイトウ”JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)
2014年9月9日リリース
「山の方」 BOOK +7′single
2000円(税込)/KAKU-062
< BOOK >
・根本敬 / 山田参助 / 高浜寛 / いましろたかし・・・オリジナル作品掲載
・坂口恭平 コラム収録
・グラビア、山へのアンケートページなど盛り沢山な内容を掲載。
< 7インチ >
・片想い
A面:山の方から来てくれればいいのに
B面:いとしいな
※限定生産商品になります。