• 「夏の魔物」主催者インタビュー後編 目指すのは唯一無二のエンターテイメント


    長い年月の中で成長するのは人もフェスも同じ。「今年は」と意気込む主催者・成田大致さんの気合もそういったものの表れではないでしょうか。企画の規格外を体現するフェスティバル・夏の魔物。主催者インタビュー後編です。

    前編では成田さんの内外の変化にスポットを当てた内容となりましたが、今回は夏の魔物の中身のお話です。ロック一筋から「多様性」そして「意外性」をつかんだ青森のフェスティバルには、どんなコンセプトと主催者の気持ちが込められたものなのでしょうか。9月5日に行われたプレイベントも前売りがソールドアウトとなり、夏の魔物に対する高い期待が現れた形となっています。プロレスを軸とした謎の(?)エンターテイメント集団「DPG」を軸に据え、それを多様なジャンルのエンターテイメントが囲む今年の夏の魔物とは一体…?!

    安定したくないんですよ、俺は

    WYPX3198ー以前の夏の魔物って「若者が主催して」「青森で」っていう2つのトピックがまず出てくると思いますが、昨年あたりからそのトピックが「バラエティ豊か」とか変わってきましたね、話題も絶えないし。

    「こっちに届いてくる声もそうですね。今年はさらに色々と試される年かなと思います。自分も、フェスとしても。今年は生まれ変わったって何度も言い続けてるし。先日BRAHMANのTOSHI-LOWさんと対談したんですが『今年いいって声が聞こえたら来年出るよ』って言ってくれて。とにかく今年は成功させたいです」

    ー成功の基準は?集客面?

    「いや、数で言うといつも来てくれる2500人位の人たちで、それをどれぐらい楽しませられるかで考えています」

    ーちなみにその内訳ってわかりますか?ほとんど地元?

    「ぶっちゃけ300人くらいしかいないですよ、地元の人は。その数って、青森のハコでソールドアウトするような時のお客さんの数とだいたい同じで。毎年県外の人ばかりです」

    ーなるほど。ではそうしたお客さん達に対してどう楽しませていきましょう。夏の魔物といえばハプニング、何が起こるか分からない感じゃないかとは思いますが。

    「そうですね。フェスって今、想像の範囲内でしか起こらないじゃないですか。来年もある、いつでも行けるっていう安定感もそう。俺はそういうのより、何をもってしてでも行くっていう気にさせられるものを見せたいです。安定したくないんですよ、俺は」

    ーそれは見ていれば分かります(笑)。

    「でもアイドルとか今こんなに盛り上がっていて、当時ハードルが高かったものも今は大丈夫になるっていうのが、時代とともに変わってきましたね」

    ーウェルカムなんですよね。私もロックインジャパンで何組か見ましたが盛り上がっていました。

    「そうなってくると夏の魔物のプラスアルファはプロレスかなあ。夏の魔物よりプロレスLOVEがあるフェスはないでしょ、って(笑)。それで始めたのがDPGなんですよね。両国国技館でプロレス団体DDTの興行が決まった時、『なにかやろう』って社長の高木三四郎さんが言ってくれて。その時にDPGを考えたんです。いや、プロレスはずっと好きだったけれど、言い続けていればいつか叶うんだなと。DPGをホストバンドとし、ゆくゆくはくるりがやっている京都音楽博覧会、10-FEETの京都大作戦、ハイスタのAIR JAMみたいな流れにしていけたらなって思います。『DPGがある夏の魔物』にしたいんですよ。今年はオフィシャルYouTubeチャンネルも作り、事前に動画で夏の魔物までのストーリーもアップしています。ASAYANとかガチンコファイトクラブみたいに、過程を見せたくて。そのほうが感情移入できるじゃないですか。自分がやりたいものはなんだろうって思ったらこれ(DPG)だったんですよね。他のロックフェスではプロレスがにぎやかしの一幕っていう扱いになるだろうけど、夏の魔物はそこで主役のひとつをとらせます。今年は大仁田厚さんのデスマッチもありますし、唯一無二の誰にも追いつけないものになりたいと考えています」

    DPGアー写

    妥協せずに、とにかく愛と熱意を伝え続ける

    ー話題性は間違いなく高いですよね。川越シェフやビッグダディっていう強烈な名前がラインナップされたフェスとして既に話題は十分だと思います。

    「でもそこは本意じゃないんです。表面上のものばかりが取り上げられてしまう」

    ーコマーシャルな記号がたくさんありますから、しょうがないとは思います。

    「ただ東スポの一面にはなったのはビックリしましたね。ロックフェスが東スポの一面ってないじゃないですか。ダディは当日に何をするのか決めてなかったのですが、【夏の魔物でプロレスデビュー決定】と飛ばし記事が書かれていて。それで本人と話し合い、結局うちのフェスで試合をやる流れになりました(笑)。川越シェフはパフォーマンスと出店ですね。今年はシェフ以外にも(ゴールデンボンバーの)歌広場さんのイケメンフルーツパーラーの出店もあります。で、当日はそういういろんなジャンルの方を集めて、DPGエンターテイメントショウみたいなのを行う予定です。詳細はまだ言えないんですけど、色々盛り込みたいと思っています」

    ーすごいですね。力技にも程がある。

    proxy「ブッキングやそういった空間作りに関しては妥協せずに、とにかく愛と熱意を伝え続けていますね。例えば影山ヒロノブさんは08年からずっとオファーを出していて、今回念願叶い参加が決まりました。あと音楽面で言えば、映画『フラッシュバックメモリーズ』が公開されたタイミングということでGOMAさんが初出演します。ほかにも青森県出身であるフルカワミキさん、三上寛さん、人間椅子の揃い踏みや、中川翔子さんとオーケンさん、ROLLYさんのコラボ、エンケンさんと宮藤官九郎さんのスぺシャルバンドなど、より夏の魔物でしかありえない独自色を出そうと考えていて。とにかくライブが良い、プロフェッショナルな人が好きなんです。で、そういうアーティストを、俺はみんなプロレスラーにすごく近いと感じていて。ギターウルフのセイジさんとか最高のプロレスラーだと思っているし…言葉だと伝わらないかもしれないけど(笑)」

    ー最初に言っていた「熱気を感じるもの」って言い換えられるのかもしれませんね。

    「そして最後はしっかりとしたライブバンドで締めたいということでバンドTOMOVSKY。BiS・大仁田厚さんのデスマッチ・ロックバンドで考えていたんで。この三本立てのヘッドライナーが、今年の夏の魔物のフィニッシュ・ホールドだと思っています。夜の三部作」

    ーありがとうございます、今年の成功を楽しみにしています。では最後の質問に入ります。いくつかキーワードを言うので、それに対する成田さんのイメージを教えてください。まず、成田さんにとって「ロックンロール」とは?

    「いきなり難しいっすね(笑)。自分はロックンロールに対してもプロレスファン視点で考えてしまうところがあるからなあ…」

    ー過去には成田さん自身が目指していたものでもありましたね。

    「そういう意味では、『憧れ続けているけど自分とは一番遠いもの』ですかね」

    ーでは次に「アイドル」とは?

    「俺はアイドルが好き、っていうわけではなくあくまで熱気が好きなんですが、ライブを見るととにかく感動するんですよ。アイドルもプロレスも本気で、全力でやっているからこそ、伝わるものがあると思います」

    ーおお、2問中2問の回答が若干カブっていますが(笑)、成田さんにとって「プロレス」とは?

    「うわー、それはロックンロールとは何か以上に難しいです。『最高のエンターテイメント』!キングオブスポーツ!(笑)」

    ーでは最後「フェスティバル」とは?

    「その場に行かなきゃ体験できないもの、ですかね。もともとフジロックやライジングを目指して夏の魔物というフェスティバルを始めたんですが、俺がやりたかったのはフェスというよりお祭り…ジャンルをクロスオーバーさせるスーパーエンタメ大戦なんだなって思うようになったんですよ。でも日高さんの影響はすごく強いです。日高さんがフジロックのことを書いた『やるかフジロック』は何回も何回も読みましたし。だから、もはやロックフェスではないと思う人もいるかもしれないけれど、夏の魔物は今年から運営体制も生まれ変わり、ここでしか見れない・感じれない空間を作ろうと全力で頑張っています。来ないと物語は始まらないんで、ぜひ来てください!」(了)

    WYPX3215

     

    インタビューは以上です。「シン・ナツノマモノ」と題された今年の夏の魔物、青森県開催ということで移動方法は要検討ですが、アクセスに関しての詳細は公式ウェブサイトにいくつか方法が書かれていますのでチェックしてみてください。東京から車で行けば、帰りに彼らも取り上げている(?)『あまちゃん』の舞台、岩手県を観光できるかもしれませんね(私はそうする予定w)。それでは9月14日、青森で未曽有のエンターテイメントを味わっていきましょう!

    写真:小西泰央/文:本人(@biftech

    ■INFO
    青森ロックフェスティバル 夏の魔物 2013
    9月14日(土)7時開始
    青森県東津軽郡平内町夜越山スキー場

    ■東京からのアクセス(参考。詳細は公式ウェブサイトをご確認ください)
    ・7日間乗り放題1万円「JR北海道&東日本パス」を利用し、JRを乗り継いで行く
    ・夜行バスで金曜夜発→当日AM着+青森駅からシャトルバス
    ・JTBの弾丸ツアーパックで金曜夕方発土曜着、日曜午後帰宅

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