• TAICOCLUB’13レポート 至福の音楽がそこにあった


    フェスティバルにも色々なものがあるようになってきた。そんな中で、雰囲気と音楽面においてタイコクラブは際立ったものとしてあり続ける。今年もエポックと、その真逆にある居心地の良さが共存したすばらしいフェスティバルとなった。

     

    中央道をしばらく進み、長野県にも入ればすっかり山道。ゲートを超え、なだらかにうねる道を行けば少しずつキックの音が響いてくる。道にはカラフルなフェスティバルファッションの人たちが増えてきて、山道の先に特設ステージが見えた、タイコクラブだ!

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    タイコクラブは土曜日の15時からその翌朝までのひとときを2つのステージとこだまの森全体に広がるキャンプエリアでの滞在を楽しむフェスティバル。オールナイトイベントという性質上ダンスミュージック主体に見られがちだが、バンドも一定数登場するなどジャンルにとらわれてはいない。タイコの特徴はアクトよりも居心地の面に注力されているような気がする。2つあるステージのうち、据え付けの野外音楽堂ステージではトップバッターのクボタタケシが邦楽寄りのグッドミュージックを選曲。テントを建て終えたアースカラーベースのカラフルなフェスティバルフリークたちがTHE BOOM「風になりたい」で横に揺れる様を見ながら、フェスティバル特有のいい景色に思わずニヤリとなる。

    _YK102822つのステージそれぞれの音が鳴り始めた16時過ぎ。特設ステージ後方に広がった平面のキャンプエリアはほとんどすべてテントで埋められていたので、山道をさらに進む。野外音楽堂の音が漏れ聞こえる林の中にテントを建てることにした。周りのテントの人たちはすでにもろもろのセッティングを終えてアウトドアチェアで車座を作って酒盛りを始めている。序盤であることはもちろん、ガツガツしないで過ごす上級者の空間という気がする。ということでテントとタープを広げたらまずは乾杯。

    心配されていた天気は、ほぼ毎年雨振らずの歴史をもつタイコならではの雰囲気。そろそろ夏が来るんだなというゴキゲンな日差しにテンションを上げてもらいつつ、山道を降りて特設ステージのROVOに。ちょうど自身の恒例イベント、通称「宇宙の日」での演奏を終えて一週間後の彼らということもあり、演奏はいくらかリラックスしている印象。と言いつつも後半になるにつれ少しずつアクセルがかかってきて、最後の「DDE」にはモッシュのような空間も。アスファルトの地面の踊りやすさを踏みしめて感じたステージだった。

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    続けてのサンボマスターは今年のラインナップにおける異色アクトのひとつ。登場するやいなや「オシャレなところを見せてやるよ!」という山口隆のMCは早くもオシャレのそれとは程遠かったりするが、そんな発言がアウェーになることはない。ディストーションギターと熱のあるボーカルもタイコでは受け入れられる。サンボと同じく主催者が異端を期待していたバリトンサックス奏者・Collin Stetsonがオルタナな空間を作り始めた。

    _YK10224もう一方の野外音楽堂ステージではPolarisが地面を揺らすような分厚いベースに乗せて森に音を響かせ、最後は10分超えの新曲で暮れなずむ音楽堂を幻想的なものに変えた。続くclammbonの頃には会場に人があふれるような状態。「DESIRE~情熱~」「ナイトクルージング」などのカバー曲では初見と思われるオーディエンスも感激ながらに音に染み入るといった満足の空間になっていく。Polarisから演奏を続けるミトは初めてだというタイコを「最高じゃん」とMCで話す。

    気づけば夜も深まり、アウトドア型フェスはリラックスして仲間とキャンプを楽しむかストイックに音に身を浸すかの選択肢の過ごし方になってきた。そんな“音楽探求派”にテキメンだったのがMachinedrum。蛍光灯のみの照明演出で音楽堂に鳴り響くのはジューク・ムーブメントの流れを汲むビートの乱打はまさに音を「浴びる」という感覚で、みな一心不乱に踊りを興じていた。そして特設ステージに身を移せばTychoによるビートとメロディの融け合いに高揚感は増すばかり。続く電気グルーヴは車いすに点滴というユーモラスな格好で登場し、そのまま表現豊かなテクノを披露。アップリフティングなアレンジの「シャングリラ」では満員の会場も一斉に手を上げた。

    日付が変わり、夜がいよいよ深まる。テントに灯された明かりや出店の華やかさをたよりに会場内を歩けば、タイコクラブの魅力が会場面にあるというのがいよいよ分かってくる。6月初旬に、会場一帯のフェスティバルピープルが夏の始まりを楽しんでいるという感覚が嬉しい。そして特設ステージでは芳醇な音楽性をClarkが披露し、Magdaがテクノの本流を突くという音楽面のバックアップももちろん絶やさない。続くJETSは、Jimmy Edgaとタッグを組むMachinedrumが先ほどのステージとは一味違うゴージャスなメロディーでひたすらアッパーな空間を作り上げていた。

    _YK10256Ricaldo Villalobosがミニマルな世界を、EYEがトライバルなグルーヴをそれぞれ卓上から届けて更けていった深夜。明けて朝8時のceroは贅沢なモーニングコールでオーディエンスの目を覚ます。はつらつとした雰囲気とセカンドアルバム「My Lost City」の表情豊かな音楽性とが交差するバンドサウンドで迎える朝は、おそらく国内ではタイコクラブだけのオリジナルな空間となるだろう。

    約20時間の中に多様な音楽とフェスティバルの魅力を詰め込んだタイコクラブ、そのラストを迎えたのは音楽堂ステージのNick The Record。テントを片付けたり、起き抜けの乾杯をしたり、いまだ踊り足りなくて嬌声を上げたりと皆それぞれのいとなみを過ごす間、音楽堂には至福のハウスミュージックがそのサウンドを絶やすことなくスピンされていた。片付けた荷物を置いて踊り納めをするなんていうシーンにも立ち会えたこの満足のひとときをもって、タイコクラブはフィナーレを迎えた。

     

    〜会場レポート〜

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    ライブを見る体力をつけるには栄養補給が必要!ということでTAICOCLUBのフェスごはんをチェック。2つのステージ近くにはそれぞれ飲食と雑貨を販売するテントが数店舗ずつ並んでいます。店舗数は飲食、雑貨ともに特設ステージ脇のエリアの方が多いです。ただし、ステージ間を行き来するのにそれほど時間がかからないので両方の様子を見に行くことはそれほど難しくなく、迷った時には考えられる余裕があるのが嬉しいところ。また、こだまの森の管理棟である建物内で販売もしているので、屋根のある空間でご飯を食べられるスペースもあり、といった具合です。価格は1食あたり600~800円ほどで、オールナイトイベントのため大抵の店舗が次の日の昼までノンストップ営業、朝方には割引をしているお店も多数ありました。

    雑貨販売ブースはフェス女子に人気の髪飾りからTシャツをはじめとしたアパレル系、木のおもちゃやキャンドル、楽器、防寒対策が足りなかった人にありがたいブランケットなどをとりあつかっていました。フェスで買えるアイテムの定番は揃っているといった感じですね。気合いで夜通し営業!なんてツワモノなお店もありましたが、こちらは飲食店とは違い必ずしも夜通し営業しているというものではないので欲しい物を見つけたら早めにゲットするのが良さそうです。

    今年から託児所を設けるなどして積極的にファミリー層を受け入れたTAICOCLUBですが、子供たちがアスレチックタイプの遊具で元気に遊びまわっている様子が見られました。2つのステージを結ぶ山道の途中にミニゴルフ場ができたということで、例年ステージ間の道のショートカットに使えていたという長いすべり台が使用できなくなっていたのは少し残念。ただすべり台の他にも大人が楽しめる遊具があったり、渓流釣りを楽しめる場所があったりと、音楽以外にも遊べる場所がたくさんあり、各々が自由にタイコクラブという空間を楽しんでいました。

     

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