TAICOCLUB主催者インタビュー後編 タイコ流フェスメディア論とそのチャレンジ
- 2013/05/18 ● Interview
お待たせしました。TAICOCLUB記事の後編です。前回は今年の取り組みに関してのお話が中心でしたが、今回はもっとコンセプトの部分に切り込みを入れます。タイコの「中の人」、こいのぼり株式会社安澤太郎さんのインタビューをどうぞ!
TAICOCLUBという「あえて」の選択肢を彩る
―そういえば、2年前のインタビューでももいろクローバーを呼ぼうとしていたというお話を聞きましたが、あれからえらい大きくなっちゃいましたね(笑)。
そうなんですよ。もう全然お話にならない規模に(笑)。その頃って普通に話をしながら「シークレットでもいっか」みたいなノリだったのが…。
―今やスタジアムクラス!当時と比べて今って、シーン全体の拡大も含めてアイドルがかなり色々な切り口や方向性に広がりはじめましたね。
そうですね。グループアイドルの中でも結構別れていますし。
―アイドルという選択肢すら自然になりつつある…そうなってくると呼ぶ側として「変化球の幅増えたなー」とか思います?
普段から違和感を与えそうなアーティストも僕らは意図して呼んだりしていたので、アイドルに関しても別にそれを特に毛嫌いせず「1枠入れちゃってもいいのかもね」って話はしていたんですよ。ただ…なかなか見極めが難しくて(笑)。そこまでアイドルのライブに行っているわけではないので、「これはよくてこれはダメ」とかそのジャッジがまだ掴めないんですよね。スベると多分すっごいスベるじゃないですか!(笑)それをちょっと怖いなぁと思いつつ、そんな目に遭うのもありっちゃありなのかなっていう感じはしていますが。
―チャレンジング!というか色々な幅のあるアーティストを呼びつつも、傍目から見ていると「タイコ色」っていうんですかね、ラインナップを見渡した時にそう感じるものが個人的にはあるんですけれども、それを聞いて安澤さんご自身どう思います?
なんとなく自分達でそういう風にもっていったんだとは思います。自然にごちゃまぜ感を出しつつ、トゲも盛り込むっていう。でも同時に「初めて来る人も楽しめるかな」という意識も忘れないようにしたい。そういったものが雰囲気につながっているのかもしれませんね。
―先ほど、国内でフェスの数は増えたけれど、スポットが増えた反面多様性みたいなものが薄まる傾向だというお話がありましたね。そうした現状におけるタイコの立ち位置みたいなものって何か考えていますか?
この6月1週って、結構フェス固まっているんですよ。頂もビッグビーチフェスティバルもあるし。でもそれぞれのフェスで人が増えているっていうし、それはそれですごくいいことですよね。フェスっていうか音楽に足を運ぶっていう状態としては。
その上でタイコは…うーん。フェスって、多分ベタでお客さん呼べるラインナップでやったほうが成功すると思います。でもそれは僕らとしてはやりづらいし、あんまりやりたくもない。よくわかんないまま来た人が「楽しかったな」って思える感覚を大事にしたいですね。
―仮に「タイコってどんなフェスですか?」て聞かれた時、安澤さんどう答えますか?
どういうフェスか…他のフェスほど気軽ではないと思うんです。歴史やカラーがはっきりしたものが選択肢としてある中で、あえてタイコに行くって結構セレクトしないとたどり着かない。TAICOCLUBはそんな「あえて来てくれるもの」として、個性を持った人たちが集まっているフェスだと思っています。
そして…まぁよくみんな呑む(笑)。いや、お酒飲んで音楽があると、基本的にあんまり知らない人でもよく喋れるっていう意味でね。垣根なく、来てる人同士がすごくコミュニケーションを取りやすい環境じゃないかと思うんです。そういうものを楽しめるのがTAICOCLUBかなあ。音楽に偏らず、それを媒介にしてみんなで遊べるものでありたい。呑みに、キャンプしに来ているっていう人もいるだろうし、ずっとTwitterやっている人もいるでしょう(笑)。
なにするかとか、そういうの勝手でいいと思うんです。ただのフェスティバルっていうか、お祭りでもいい。どう楽しむかっていうお祭りを提供できるよう、そこに添える音楽や仕組みを僕らはこれからも考えたい。
PRは「とりあえずやってみよう」
―TAICOCLUBのの面白いところで、PRの仕方、自己発信の姿勢にユニークさがあるなって個人的に思っています。あの第一弾発表とか。(右下スクリーンショット参照)
あの発表、ソースからいくと「ホッテントリーメーカー」ていうはてなブックマークとかタイトルを面白く作るサービスがあって、それ使ってみようかって。
一般的なブログ記事はタイトルやサムネイルでだいぶアクセス数が変わりますよね。そんな中フェスの発表って「第何弾発表」「バスツアー開始」とか、インフォメーションとして淡々としたものが一般的ですけど、それらを「記事」として考えると工夫が必要かなと思ったんです。
新着情報という記事を、読んでもらうこと第一に考えて出すのもいいだろう、というとこになって。 もちろん色々言われたりもしましたが(笑)それはそれとして、実害を被るとか誰かを非難するわけではないので色々やってみたいんですよ。トライアンドエラーでダメだったら次変えてやってみればいい、ていうものじゃないかと。結果として批判も「面白かった」という声もあり、今までの反響は過去2番目くらいの多さでしたね。かしこまって構えた姿勢よりもっとカジュアルな発信でもいいかなとは思うんですよね。
―エイプリルフールに「終了のお知らせ」とか心臓に悪いのはともかく(笑)タイコってほんとメディアとしてのフットワークが軽いなと。ソーシャルメディアに対しても例えばそのLINE公式アカウントとかGoogle+とか、新しい媒体にまず身を乗り出すイメージがありますね。
とにかく入ってきたものを出す、ていうのはたしかにそうですね。
僕らは広告を打っているわけではないので、そうじゃない方向でいかに色んな人に伝えるかっていうところと、あと単に試してみたい(笑)。これが大企業とかだと専門部隊とかがいて色々考えながらやっていくと思うんですけど、この規模でやっているので、面白そうなものはどんどん試せる。そこはフットワークを軽くしていこうと思うんです。
いつかインフォメーションをYouTubeで発表、なんていうのもアイディアとしてありました。最近の流れとして「中の人」がどういう人か、そこにあるストーリーとか、そういうのってどんどん大事になってきていると思うんです。なので、自分達も表に出て発信していくことでそれを実現するっていう。
―フェス当日だけじゃない部分もTAICOCLUBのひとつとして味わってもらうというイメージでしょうか。
ですね。6月の限られた時間しかやっていないフェスですから、それを次の6月までどう忘れさせないかってすごく重要で。最初に話した早めの開催発表っていうのもそうですし、なるべく早い段階で色々とコンタクトする要素を出していくことや、最後まで付き合わせることとかね。ただアナウンスして「さあチケットをお買い求めください」みたいな感じにはしたくない。
改めて「現場」の楽しさを感じている今
―新しい取り組みにどんどん進出されてる中で、動画中継とか「現場」から離れたところでの発信についてはどう思いますか?
やりたいんですけど、権利のところが日本だと難しいですね。Ustreamが流行りたての時に一度アーティストに話したことがあるんですけど、人によってはもう完全に「うちは無理」っていうお返事もあった。現状としてはある系統のアーティストで一切そういうのがダメで、かと思えば自分たちで開放し始めたところもあって…変わってきてはいるんでしょうけどね。
―2年前はそういった中継や自宅でっていうものに対して現場へ足を運ぶみたいなところも大切にしたい、せめぎ合いみたいなものがあるっておっしゃってたんですけども。そういうところに関して考えは変わりました?
そこに関しては逆に「やっぱ現場の楽しさってあるんだな!」って改めて思う感じになったかな。
今、世の中的にも「経験」がすごく価値を持ち始めている。単純な物欲の消化というより「どういう経験をして、面白くなれるか」っていう姿勢みたいなところに対価を払う人が増えていると思うんです。ライブに行く人が増え、CDとライブの売上がほぼ変わらなくなってきたっていうのもそういう理由なんじゃないんでしょうか。より簡単に音楽が聞けるようになった今、現場…というか行く楽しみっていうのが、より強くなってきたのかなって気がしますね。映像や中継で音楽を楽しむっていうものもいいんですが、やはり別物。
―それをTAICOCLUBをずっと続けていこうという意思表明と置き換えても?以前はいきなり辞めるかもしれないなんてことも言っていましたね(笑)。
そうですね。YouTubeで聴いてレコメンドをたどってとかじゃない聴かされ方、ライブならではの音ってあると思うし、経験を与えることができるという意味でも、(タイコを)その「場」としてはすごく続けていきたいなっていうのはありますね。自分がやるかどうかはわかんないですけども(笑)
(了)
インタビューは以上です。前回も書いたように、今年のTAICOCLUBは当日券を行いません。また、残り枚数も少ないそうなので取り逃がしの無いよう、チケットを無事ゲットして最高の6月を迎えましょう!
Text : 本人(@biftech)
■TAICOCLUB ’13
公式サイト
Facebook公式ページ
■INFO
2013年6月1日(土)、6月2日(日)
会場:長野県 木曽郡木祖村 こだまの森
出演:
cero
クラムボン
Clark
Clin Stetson
電気グルーヴ
DIAMOND VERSION+Atsuhiro Ito
EYヨ(BOREDOMS)
JETS(Jimmy Edgar+Travis Stewart a.k.a. machinedrum)
Kishi Bashi
クボタタケシ
Machinedrum
Magda
MOODMAN
Mark McGuire
NicK The Record
of Montreal
Polaris
Prefuse 73
Ricardo Villalobos
ROVO
サンボマスター
Steve Hauschildt
Tycho
XXYYXX
在日ファンク
Zip
料金:前売12,000円