Synchronicity主催者インタビュー 未来を繋げる至高の空間
- 2013/03/02 ● Interview
にわかに高まりつつある今年のフェスティバルへの誘惑。第一弾発表があったフジロックはもちろん、さまざまなフェスが皆さんを待ち構えています。今回はその2013年のフェスの先陣を切る都市型フェスのご紹介です。
3月9日に渋谷で開催されるシンクロニシティ、2拠点のライヴハウスを行き来自由なフェス会場に仕立て、今回も良質なグルーヴ、粒ぞろいのラインナップが発表されています。ROVO、渋さ知らズ、ザゼンボーイズ、グループイノウ…そんなアーティストを一同に介し、映像にライヴペインティング、そして運営を支えるグリーンエネルギーと、幅広いトータルコンセプトで都市の祭典を彩ります。その雰囲気を醸成するきっかけは、この方のアンテナによるものでしょう。主催者である麻生潤さんにお話を伺いました。
ーではまず、シンクロニシティ開催のきっかけからお伺いさせてください。
元々オレはライヴミュージックもクラブミュージックも両方好きだったんだけど、もったいないことに2005年当時はその2つが別々のものとして扱われているように感じていました。そこで、それを融合させたら新しい楽しさを生み出していけるのではって感じて始めました。「Creation For The Future」というテーマは、最高のワクワクと感動を作り出すことが次への、あしたへの希望になっていくという自分自身の人生のテーマでもあります。
初回は代官山ユニットとサルーン。ダチャンボとかドギースタイルとかイワキケンタロウが出て、当日はエレグラと開催日がカブってしまって、ダチャンボが出た時「エレグラへようこそ」って煽りがあったりしました(笑)。ただ1回目やったら疲れちゃって(笑)。オレは過去にバンドをやっていたんだけど、招かれる側だと気も使わないでやんちゃしてたんだけど(笑)、自分が迎える側だと大変で大変で。終わった後は「もう二度とやりたくない」とか思ったんだけど(笑)でもやっぱり生の魅力が好きなんだろうね。現実的に何かを伝える、リアルに体感してもらう…人に喜んでもらうことが好きだなという結論に至って07年にまた始めた。05年と同じユニットで、でも今度は上から下まで全部連結させてやったんだけど、チケットがソールドアウトしてるのにクラブノリでアーティストのディスカウントなんかで人が集まりすぎちゃってユニットの外に入場のものすごい列が(笑)。その頃のシンクロニシティはまだまだクラブの要素が強くて、今と比べものにならないくらいラフだったんだけどそんなラフさもみんな楽しんでくれてた。だけど問題も山積みだった。あれ今だったらツイッターとかで相当たたかれたんだろうなー。
—試行錯誤ですね(笑)。「よし今回うまくいった!」って実感するのはどんな時ですか?
やっぱり来てくれた人が心底喜んでくれてる時だね。終わった後メールもいただくし、今はツイッターで生の声も聞けるじゃない。そういう声に一番成功を感じる。
あとはアーティスト。彼らがその場、お客さんと化学反応的にすごくいいライヴをした時かな。前回のGOMAさんはものすごかった。彼と彼を迎えるお客さん、僕らの情熱、そして演奏。そんなすべてが呼応しあって相乗効果のグルーヴが生まれていく。すると会場がエネルギーで満ちあふれているというか、グルーヴっていうものが「見える」んだ。それぐらいのものに立ち会う時、本当に貴重な空間を作ってるなと思う。まさにシンクロニシティ、奇跡の瞬間だよね。人の想像力を超えていく。そういうのって忘れられない。かけがえのない空間を作っている、っていう実感があるね。
—過去にバンドをやっていたそうですが、その時とは違う感じですか?
本質的なところは一緒かもしれないけど違う。バンドは、自分が発するものに対してお客さんが反応するじゃない?よりダイレクトなやりとりというか。主催者だと一歩引いて空間全体を見ることになるし、細かなケアも必要になってくる。時に歯車の一部だったり、潤滑油だったり色んな形がある。それが自分にとって空間をつくるということ。また、チームで作り上げてきているから、感謝の気持ちってすごく大きい。チームのみんな、スタッフ、アーティスト、そしてお客さん。そんな空間って本当にかけがえないし、みんなに対する「ありがとう」が強い。
オーガナイザー、アーティスト、オーディエンスの相互作用、シンクロニシティ
—主催者である麻生さんと出演するアーティストとの関係はどういうものでしょう。 インタビューで麻生さんとアーティストが話しているのを読んだのですが、お互い高め合う関係というか、対等な目線でいるように感じて、いわゆる主催者とは違うなと、新鮮だなと思ったんです。
それ嬉しいですね。実際はいろんな距離感のアーティストがいますけど、個人的には同志だと思っている、勝手にだけど(笑)。自分で判断してブッキングするわけだから絶対に通じあえるものはあると思っているし。おこがましいかもしれないけれど一緒に空間を創っていける仲間だって感覚もある。だから足を運べる限りライブに足を運ぶしコミュニケーションを大切にします。渋さ知らズオーケストラとかは何度も出てもらっていて(リーダーの)不破さんはシンクロニシティを好きでいてくれているし、クロマニヨンは高め合う仲間だと思う。出てくれるアーティストがスペシャルな存在だと思ってくれているから、だからこそできるものがあると思う。
—そんなアーティストのセレクト基準は?
基準はない。良質な音楽って言いたいんだけどそれは主観で基準にならないしジャンルで分けている訳でもない、上手く説明できないんですよ。自分がいいと思ったものを、感覚的にっていう。以前はちゃんと言葉で説明したいなって思ってたんだけど、それはできないし必要ないなって思うようになった。
—感覚、センスですね。過去のラインナップを見てみると、ある程度の共通点はあるように感じていて、その中でも毎年、新機軸みたいなものも入っている。アンテナはどうやって磨かれてきたんですか?
現場に行って体感することかな。人って、自分の想像を超えるもの…写真とかデザインとかも含めて、そういうものに出会うといろんな感性が磨かれていくと思うんです。オレはずっとそういう風にしてきたし、いいものを見つける、そういうセンスに関してはすごく自分に自信を持っていて。それを常に求め続けてきたから磨かれてきたんだなって思いますね。
—いままでシンクロニシティに来ていたお客さんも意識しつつ、おっこんなアーティストいたんだ!? 新要素みたいなものを発見してほしい?
ほしいね、出演アーティストはみんな素晴らしいし、特にこれからのアーティストはもっと知られてほしい。リディメイツとかインダスアンドロックスあたりはまだそれほど知られていないけれど素晴らしいからぜひ観てほしい。まだ小箱でやるくらいだから。アーティストへのチャンスも作っていかないとね。これからの人達にも。特にリディメイツは「今」って感じがするよ。3年くらい前に観たときよりすげえ良くなってるし。
—今回のブッキングでいうと、奇妙礼太郎も異色だなっていう感じがするんですが。彼の歌はもちろん、場を作っていく感じはすごいですよね。
そうだね。たしかに異色かも。彼は歌聞いてぶっとばされたな。まさに奇妙色で染めるという。奇妙君はさらに一皮むけて、忌野清志郎とかみたいに日本でも歴史に残るアーティストになると思うし語り継がれていってほしい。
—シンクロニシティを通じてお客さんの感性が磨かれてほしいとも考えていますか?
そんな偉そうなことは言えないけど、いいものを吸収して持って帰ってもらいたいっていう意識はある。純粋にお客さんの想像を超える空間をつくりたいしそれを常に目指してるから。自分の想像を超える体験をするとどんどん感性が磨かれていく。そういうのっていわゆる成長に繋がっていくとオレは思う。
例えば、自分は中学の時にGOMAさんをいきなり聴いても(音楽的に)分かんなかったと思う。でも、今の自分の立場からすると、そんな中学生でも「いい!」って思える柔軟さのある空間をつくることがシンクロニシティでは大切だなってすごく思うようになってきた。
バンドからオーガナイザーへ移りゆく音楽体験
—ではここで、麻生さんがシンクロニシティという形に至るまでの話をお伺いします。はじめて現場、ライヴに足を運ばれたのはいつごろですか?
18歳に東京で、ですね。自分の生まれた街にはライヴハウスなんて一軒もなかったからね。
—出身はどちらですか?
大分の三重町っていう田舎町。そこにはアーティストがくるわけでもなく、音楽もみんなJ-POPしか聞かない。なんっにもないわけですよ(笑)。中高生の時に聴いた音楽で心に残っているのってビートルズとボブディランとブルーハーツぐらい。今でもそれぞれ大好きだけど、ブルーハーツは超好きで、実は僕の音楽のルーツ。クロマニヨンズにもオファーしてるもん、まだ実現していないんだけど。
—そして上京、バンドを始めます。
大学で、一番最初に誘われた音楽系のサークルに入ったの。それで最初にボーカルで、ブルーハーツのカヴァーをやった。そして20歳くらいで外で自分のオリジナルのバンドをはじめて、コードだけ覚えて曲を作ってた。聴く方も東京に来てから聴きあさったよ。1週間に10枚とかレコードにつぎ込んでどんどん音楽を広げていった。バイト代は生活費と音楽だけ。それは自分でも掘ったりサークルの仲間から教えてもらったりもして。ブルーハーツからパンク、クラッシュとかピストルズとかロンドンパンクとか聞いてすごいハマって60年代〜70年代のロックを聴いて、ニルヴァーナも全盛期だったから超聴いてたし大好きだった。オルタナティブとかミクスチャーとかグランジの時代だね。その後はレッチリ、そこからファンクやソウルなどのブラックミュージックの方向にいった。本当音楽しかなかったね。P-FUNKのジョージ・クリントンは憧れだった。
—しばらくバンド時代があって、そこから今シンクロニシティを運営しているクリエイターチーム-kikyu-ができ、バンドから次のフェーズに向かっていくそうですね。
2000年にくらいに遡るんですが、やっていたバンドが解散したんです。その後もう一度バンドを、とも思ったんですが解散したバンドの魅力は強くて、前と同じようなものがつくれないと思った。
なら、他のことやれないかなって考えたんです。で、デザインとか写真も好きだったから今度はそういうクリエイターのチームを作りたいと思い、一ヶ月くらい海外を旅した後、2002年に立ち上げました。
そのチームでレジスタンスというイベントをはじめました。メッセージ性が強く、音楽や表現もエッジが効いていました。でも、もともと楽しいのも好きだったから、レジスタンスとは違った新しいことをやりたいと思ったんです。そしてシンクロニシティが始まった。
—麻生さん自身のフェス体験は?もし他のフェスのいいところなんかもあれば教えて下さい。
フジロックは始まって3年くらい行ったかな。あとライジングへ8年前に友達がバーで出店していて、ライヴやってほしいっていわれて行ったよ。ライジングは地元のつながりが素敵だなーと思うし、あのゆるさはすごく好きだね。今もちょくちょく行くけれど5000人くらいまでのものが多い。それくらいの規模ってコンセプトが伝わりやすくて魅力的なものが多い。
—フェス=野外・キャンプみたいなイメージの人多いと思うんですけど、シンクロニシティは東京のライヴハウスでやるイベント、でしょうか。それともフェスティバル、ですか?巷では「都市型フェス」と呼ばれていたりもしますね。
どう捉えられてもいいとは思うけど、「フェス」ってとらえてもらったほうがバラエティ豊かでしっくりくる。いろんなものの混在した様子なんかがね。「都市型フェス」は当初自分では言ってなかったんだけどどこかで書かれて「あ、都市型ってぴったりだな」と思って自分たちでもそう言うようになった。都市、東京って新しいものがいっぱい集まってくるでしょ。オレも大分出身だからいろんな思いを抱えて東京に来た。そのエネルギーたるやハンパないし。都市ってひりひりした感じ、いい意味でのエネルギーってあると思う、密度の濃さっていうか。
—完成形のイメージは自分の中でありますか?
シンクロニシティの完成系のイメージは音楽中心の万博なんですよね。だからまだ完成形ではないし、どんどん進化したい。また、最終的なオレの夢は、日本のカルチャーを海外に出すことだったりするんだけど、そのためにもまずは日本人アーティストの素晴らしさをもっともっと感じてほしいし届けたい。
シンクロニシティの「Creation For The FUTURE」——未来について
—私は今、日本ってもう来年どうなっているのか分からないような先が読めない時代に突入していると思っていて、そう考えている人って少なくないと思うんです。現在において、麻生さんはフェスティバルっていうもののありかたをどんなふうに考えてますか?
シンクロニシティに関していえば、未来=希望。未来に対してなにかを創造していくこと、そしてその中心にあるのはやはり最高のワクワクと感動なんですよ。だからそういう場を作っていくこと、それが根本的なところとして常にあります。その感覚的なものに加えて、頭で理解できるものとして、導入しているグリーン電力やトークセッションなんかがある。それらを通じて僕らの未来がどうなるかっていうのを具体的に感じられたら最高に面白いんじゃないかなって思っています。
—グリーン電力…自然エネルギーを使い始めたのは、シンクロニシティとして未来を考えた時にっていうのがあったんですか?
未来に対して持続可能であるか。子ども達に美しいものや感動できるもの、希望をのこしていくことってめちゃくちゃ大切だと思うんだよね。それを考えた時、自然エネルギーを使うっていうのはひとつの手段としてベターだと思ったんだよね。
例えば今話題になっている原子力、いまは必要かもしれないけどぜんぜん持続可能じゃないし、埋めて隠してって、きれいなことじゃないじゃん。そんな負の遺産を残したくない。自然から感動を得ることってかけがえがないし、未来を考えた時にそういうものをきちんと感じることのできる世の中を作っていかないといけないと思う。グリーン電力はベストではないかもしれないけれど、手段のひとつとしてはありかなと。現状を知ってもらうきっかけにもなるしね。また行き過ぎた「電気を使わない!」という考え方はちょっと違うかなと思っていて、それよりシンクロニシティは「どう新しいものを生み出していくか?」にトライし続けていきたい。人が成長していくためには常に新しいものを生み出していかなくちゃいけないと思うんです。
—ありがとうございます。では最後に、フェスにこれから行こうとしている人々に何かメッセージを
オープンになって、思う存分楽しんでほしい。あと、みんなよくタイムテーブル見て予定とか作るけど、あえてその逆をやって、知らないアーティストにも触れてほしいですね。シンクロニシティは全アーティストいいっていう自信あるから、そんなトライもして新しい体験をしてもらえたら嬉しいです。それだけの価値のある空間を作ります!
(了)
以上でインタビューは終了です。間もなく開催となるシンクロニシティ、そのクロスカルチャーによる最高の空間をぜひ体験しましょう。チケットは現在プレイガイドおよび渋谷Plugと一部のディスクユニオンで販売中です!
Text : 本人(@biftech)
■公式
Webサイト
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■info
【開催日時】
2013/3/9(土) 開場15:00~閉演22:00
【開催地】
Shibuya O-EAST, duo MUSIC EXCHANGE
(二会場連結開催, 往来自由)
【チケット】
前売チケット :4800円
当日チケット :5500円
【出演アーティスト】
LIVE
ROVO / 渋さ知らズオーケストラ / ZAZEN BOYS / group_inou
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 / COMEBACK MY DAUGHTERS
Nabowa / rega / JABBERLOOP / ATOM ON SPHERE / RIDDIMATES
Indus&Rocks / Fragment / SOUND OUT
DJ
Ko Umehara(-kikyu-)
VJ
矢吹和彦(-kikyu-) / eetee
Livepainting
Gravityfree
【主催】
EARTHTONE Inc.
【企画・制作】
-kikyu-