• XLAND FESTIVALプロモーターインタビュー 野外を舞台に繰り広げる「クラブの感じ」


    フジロックやサマソニも終わり、一息つきながらも「まだまだ踊れるなあ」と思っている皆さま、夏休み最後の週末・9月1日のご予定はいかがでしょうか。今回は都心から近く、神奈川県の相模湖で開催されるXLAND FESTIVALのご紹介です。プロモーター・ヒトミさんからお話を伺いました。

    昨年FREAKS FESTIVALという名称で繰り広げられたこのフェスティバル。それが今年、XLAND FESTIVALと名を変えて再びパーティー・フリークの前に現れます。オリンピック公式イベントでヘッドライナーを務めたフレンドリーファイアーズや、ネオシューゲイザーの雄・ウルリッヒシュナウス、国内からもDJクラッシュやトクマルシューゴなど、国内フェスの中で音楽的好奇心をグイグイ刺激するこのフェス。会場隣接のキャンプリゾートでの朝食付宿泊プランや会場内BBQなど、ユニークなシステムも去年話題になりました。今回はそのプロモーターの声を通して、その全容と宿るスピリットの正体を探ります。

    ■XLAND FESTIVAL
    http://xland-festival.com/

    パーティーの舞台を野外に

    ―本日はよろしくおねがいします。ではまずヒトミさんご自身についてお伺いしますがこのフェスのほかにどういった活動をされていますでしょうか。

    フェス以外はクラブ系イベントやツアーのプロモーターがメインです。私は90年代初頭からDJやパーティーをしたり、青山でクラブもやっていました。なので20年ぐらい音楽やクラブシーンに関わっていますが、フェスティバルは去年からなのでまだ2年目ですね。

    ―クラブからフェスティバルにトライしようとしたきっかけはどういったところから?

    パーティーのバイブスを、昼間の野外で表現したいなって思ったのがきっかけですね。屋内の、特に夜のパーティーはずっとやってきたんですが、そのクラブの中でいろんなDJやライブ、VJがいたり、アート的な要素が凝縮された屋内のパーティーを外に出してみたいと思ったんです。

    あとは年齢的な意識の変化というか、自分も含めまわりの人たちも結婚したり子供ができたりっていう中で、朝までワイワイやるスタイルから「公園に行こう、アウトドアしよう」といった、環境の変化もあります。そういう流れの中で、クラブのクリエイティブな音楽や映像、バイブスを、昼間の野外で家族連れでも楽しめるようなイベントで表現したいなって。「最近クラブであまり見ないね」っていう人が、ちょっと1泊2日の小旅行みたいなノリで来れるようなイベントがあれば…って思ったのがきっかけです。

    ―クラブ感を維持しつつ、参加しやすい環境を用意したのがフェスということですね。

    そうですね。そういう意味でこの相模湖の会場は重要で、いろんなところをずっと見てようやく見つかったって場所なんです。ポイントとしてはまず「行くぞ!」って気負っちゃうような距離じゃないところ。相模湖は都内から1時間くらいで行けるし、車でも電車でもアクセスがいいんです。あと当日は、神奈中さんにご協力いただいて、最寄駅の相模湖駅から会場までのバスも増便されているので、電車を降りて待つことなくバスに乗ることができます。また、富士急さんにもサポートしていただき、フェス会場がある「さがみ湖リゾートプレジャーフォレスト」に車で来られる方や現地の宿泊施設「ハディントンベア・キャンプグラウンド」をご利用の方のために、無料の会場シャトルバスを出していただきます。

    そして施設面。いつもはそちらがメインになっているんですが、遊園地や関東最大級のバーベキュー場、キャンプリゾートなどがプレジャーフォレスト内にはあるんですけど、そういったものがフェス会場に隣接しているので、本番日の前後を活用していただければ、フェス以外にも色々と楽しめるんです。気軽な参加もできて、かつ1泊2泊でも過ごせるような場所、そういうところをかれこれ4〜5年ずっと探していてようやく見つけたんです。

    滞在や会場にも幅広い楽しみ方を

    ー昨年の写真だったと思うのですが、ログハウスって今年も使用できるんですか?

    使用できます。前乗りして金曜日の夜にBBQやキャンプを楽しんでから翌日朝イチで参加したり、終わったあとに一泊して、日曜日に遊園地や相模湖、近くの温泉を楽しむなど、いろんな楽しみ方ができることを想定しています。なので、会場隣接のキャンプリゾートの宿泊パックでは、XLANDのチケット付きはもちろん、遊園地のフリーパス付きなど様々なタイプを販売しています。キャンプリゾート自体も結構大きくて、コンパクトなトレーラーハウスから大きなログキャビン、眺望がすごくいい常設テントなど、大小含め10種類以上から選べるんですよ。あと、今年からこの宿泊パックを利用される方に限って、イベント会場から宿泊施設への、途中退場・再入場が可能になりました。なので、少し疲れたから宿泊施設に戻ってちょっと休憩、ていうこともできます。

    ―昨年の情報で見たのですが、朝食付きのプランが?

    あります。「素泊まりじゃなくて、朝食付きのコースでチケットを取ってよかった」って昨年すごく好評だったんですよ。なので今年は、朝食ビュッフェに、園内のワイルドクッキングガーデンやログハウスのテラスでも食べられるBBQセットを追加して、2食付きのプランを用意しました。ぜひ、XLANDに来る方は、そういった朝食やバーベキューなども楽しんでもらえればなと思っています(くわしくはこちら)。

    ―もともとフェスを始めようと思っていた時から、そういうエキストラな部分を考えていたのですか?

    そうですね。音楽+アルファ、っていうのはありました。音楽に何を付与できるか、もしくは付けられるポテンシャルがその場所にあるのか、という視点でも会場を探してきましたね。あと都市近郊だけど緑に囲まれた開放感のある場所、で音楽を聴けるってことにこだわりました。

    改名の理由と、より良くなった面

    ―フリークスからXLANDに名称を変更しましたが、その理由と今回の名称の意味は?

    きっかけは商標の問題からの変更です。呼び名は、「エックスランド」ですが「クロスランド」とかでもいいです。例えばエックスランドだったら、「X=未知」の大陸とか、ミスティークな感じの場所という意味があって、クロスランドだと「いろんなものが交差する」、世代や人種、国境を超越して交差する自由な国であったり、自然と音楽が交わる場所っていう意味を込めてます。そんなクロスとエックスをかけて、この名前をつけました。あと私やメンバーの世代が「ジェネレーションX」という、サブカルチャーな時代の人たちが多いので、そこからもとっています。あと「ランド」は、会場のある「さがみ湖リゾートプレジャーフォレスト」は以前、「相模湖ピクニックランド」という名前だったので、それもかけています。

    ―実際に去年クラブを野外に持ち出してみて、成功したと言えますか?

    昨年は…まだ(成功とは)言えないですね。クラブみたいに、場所から何から全て揃っているところでオーガナイズするパーティーと、何もないところに一から創るのでは全く違っていて、まだ私は野外のキャリアが浅いので、周りの熟練の人たちにアドバイスをいただいたり、いろいろ試行錯誤しながら良くしていっています。だから去年よりも今年の方がよいものができますし、回を追うごとによくなっていくと思っています。

    ―具体的に去年と比べて良くなった点とかは?

    まずはサウンド面の改良でしょうね。日本屈指のサウンドクルー「eastaudio SOUNDSYSTEM」に全ステージのサウンド・プロデュースをお願いしています。彼らのことは10年以上前から知っているのですが、音に対するこだわりや熱意が半端ないです。クラブで感じられるような音、音圧を野外でも十分に体感できると思います。

    あとスタッフ間のつながりです。去年から一緒にやっている人も多くて、イベントに対する意識であるとか、アイデアであるとか、いろんなものがさらに具体的になってきました。

    あとはトイレの数やキッズ&ファミリーゾーンというようなホスピタリティ面の強化ですね。昨年に引き続き、NPO法人Ubdobe(ウブドベ)さんにお願いしているのですが、親子で遊べる内容やリラクゼーションエリアなどの増設、ベビーカー置き場を今年は作ろう、とか、さらに家族連れのお客さんにも安心して楽しんでもらえるようになっています。

    アクセス面もさらに良くなると思います。車でも電車でも相模湖へのアクセスはすごくいいのですが、駅から会場への路線バスの本数を増やしたり、駐車場もイベント来場者用にさらに確保しているので、駐車券がなくなるような心配もないと思います。アクセスの良さはXLANDのポイントのひとつと言えるでしょうね。

    XLANDは家族連れのお客さんも多く、フジロックなどの本格的、機能的なアウトドアよりもファッション要素が強く、女性の方もたくさん来ていただいている印象です。距離的、場所的な気軽さがあるからだと思います。

    全体の流れを意識したラインナップ

    ―ラインナップが独特だと思うのですが、アーティストはどういう目線でセレクトしているのですか?

    クラブ出身なので、DJてきな目線で捉えているのかもしれません。フリークスを立ち上げたときの最初のヘッドライナーがDJハーヴィーだったのですが、私は彼のDJスタイル…ハウスもテクノもラテンもダブもロックも何でも魔法のようにミックスしてしまうところに、かなり影響を受けています。なのでそんなキャスティングっていうか、DJが一晩のロングセットをする中で、スタートから徐々にビルドアップしてピークを迎え、そしてクールダウンしながら朝はピースフルに、みたいな流れを自然な感覚としてもっているのかもしれません。

    ―いろいろいらっしゃるアーティストの中でピックアップすると誰ですか?

    基本的に全部ですが、プレジャーステージで一組あげるとすると、ヘッドライナーのフレンドリー・ファイアーズでしょうね。まずパフォーマンスがすばらしいっていうのと、わたしがクラブに通いはじめたころのようなアシッド感というか、セカンドサマーオブラブな感じというか、クラブの雰囲気があるバンドだと思うんです、まだ若いアーティストなのに。ちょうどロックとかダンスとかが入り交じってた時のにおいがする、80年代末から90年代はじめの頃の感じを持ち合わせたアーティストだと思っていて、このフェスのバランス感覚を象徴できるようなアーティストかなと思っています。

    あとDJでいうと、RUB N TUGっていう2人組のアーティストがいるんですけど、さっき言ったDJハーヴィーに近いプレイをするっていうか、すごくロック魂のあるDJっていうか、男気のあるDJをするデュオなんで、ぜひ聞いていただきたいですね。普段からクラブにっていう人も、ロックが好きな人にもどちらにも刺さるアーティストだと思います。

    ―ブッキングっていうのは、スタッフの皆さんで決めるのですか?個人的には昨年のウォッシュト・アウトのブッキングにはびっくりしました。昨年のフジロックよりも前、チルウェーブシーンの浸透前夜、5月というタイミングでのブッキングでしたね。

    個人的にぜひこのアーティストは呼びたいっていうのもありますし、スタッフや周りの友人にこのへんいいよね、なんて話しているうちに具合にアイデアとして出てきたりとか、もあります。ウォッシュトアウトは、当時クラブでもハウスのDJとかもかけていて、クラブ系の私たちがやるフェスの中でバンドとして海外から一組呼ぶのであればぜひ彼らを呼びたいなっていうのがあったんですね。

    フジロックに出るのは実は知らなくて、フリークスのすぐ後に何かの発表で見てびっくりしたんですけど、フジロックの後に、バンドの中心人物のアーネストがフリークスのTシャツを来てステージに立っているレポを見て、めちゃくちゃうれしかったです。フリークスは収益で言えば赤字だったんですね。それで初回にしてこれではやっていけないなっていう危機感があった。でもフリークスの何倍も大きな規模のフジロックで、あのTシャツを着てくれていた彼には本当に感激しました。出演者や周りのスタッフにサポートされたり、お客さんからも「すごく楽しかったですよ」と言っていただいたりして、「やっぱり、頑張ってやっていきたいな」と思うようになりました。

    そこにしかないものを、これからも続けていく

    ―これからXLANDをどうしていきたい、というようなイメージはありますか?

    一回一回を精一杯やっているので、あんまり何年後にこうしたいっていうのはないんですが、ひとつ言うなら、「大きくしていくのが目標ではない」ということでしょうか。自分を含めこのフェスにかかわる人たちで「これはこうしたい」「次はこうしたい」っていうこと考えながら、できる範囲でより良くしながら続けていくことが目標です。自分たちがやれる規模感を保って5年10年と、野外フェスとしての魅力やホスピタリティなどを向上させていくことに関しては、大きくしていければと思っています。

    ―ありがとうございました。それでは最後に、これからXLANDを体験していくかもしれない世代の人たちに伝えたいメッセージはありますか?

    今の若い人たちって、なかなか外に出かけなくなったのかなと感じています。まあ20年前は、例えばクラブに行かないとわからない情報とかコネクションがある時代だったていうのもあるんですけどね。ただ、何でもすぐに便利に手に入る環境の中で失ってしまうものもあると思うので、ぜひ外に出かけてそこにしかないものを感じてほしいと思います。

    XLANDはバンドセット中心のプレジャーステージ、そして森の空間でDJセット中心のフォレストステージがあるんですが、もうひとつ、ソーシャルクラブっていうステージエリアがあるんです。そこはいわゆる社交場という意味からつけたんですが、リアルにいろんな人に出会って、いろんな交流をしてほしいなっていう想いがあるんです。かつてクラブもそういう場所だったので、クラブになかなか来なくなった人も、フェスにきて久しぶりに交流したりだとか。若い人もちょっと出かけて、音楽を聞いたり感じたり、人と交わる空間であってほしいと思っています。(了)

    インタビューは以上です。現在前売りチケットは発売中で、バラエティー豊かな宿泊プランもお申し込み可能。夏休みをここで締めくくるのもいいかもしれません。相模湖でお会いしましょう!

    ■XLAND 2012
    http://xland-festival.com/

    2012年 9月1日(土)
    OPEN 9:00 START 10:00 CLOSE 20:00
    さがみ湖リゾートプレジャーフォレスト

    文:本人(@biftech)、丸山亮平
    写真:近澤幸司

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