• これがNEAL FRANCISだ。『SHIBUYA CLUB QUATTRO』がダンスホールに変貌した東京公演をレポート


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    ここからスターダムへのし上がっていく予感をさせるライヴだった。2025年4月24日(木)にSHIBUYA CLUB QUATTROでNEAL FRANCIS(ニール・フランシス)の単独公演が行われ、老舗ライヴハウスが彼の世界観に包まれたのだった。

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    この日、グレーのジャケットスタイルで登場したニール。自身初の単独ツアーの経由地として、フジロック’23以来となる来日を果たした。

    「私はニールです。ありがとうございます」と日本語で伝えてから、そっとイスについたシンガーソングライター/ピアニストは、“Problems”から徐々に空間を支配していく。

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    青白いライトに照らされながら、目をつぶって歌うニールの姿は、さながら貴公子のようだった。甘いマスクから発せられる柔らかな声と繊細なピアノタッチは、余裕すら感じさせる。渋谷のド真ん中に置かれた、この小さなライブハウスに集まった、国籍を問わない老若男女は、うっとりと彼のピアノさばきを見つめていた。

    そこから曲を重ねるごとに、上がっていくボルテージ。4曲目の“She‘s A Winner”ではロック調のアレンジとともに、原曲よりもアップテンポに演奏された。会場からは手拍子が巻き起こり、身体が自然と揺れる。ニールはここから一気に我々を引き込んでいくのだった。

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    ニールの掛け声ともに“Very Fine,Pts 1 & 2 ”が始まると、オーディエンスはじっとしていられない。グルーヴィーなニールのピアノは人を躍らせるのだ。バックのギター、ベース、ドラムもそれに呼応するように生き生きとプレイ。エネルギッシュでありながらも、どこか繊細な音が心地良いグルーヴを生み出し、ライヴ会場は大歓声に包まれた。

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    既にこの空間を自分のモノにしていたのだろう。7曲目の“Sentimental Garbage”でニールが見せた笑顔に、私はドキッとしてしまった。徐々にテンポアップしていくドラムに比例するように、ニールの金髪が勢いよく揺れた。「まだまだ躍らせてくれるのか」と両手を突き上げたオーディエンスの期待を見透かしていたかのように、盛り上がりは最高潮のまま“Changes,Pts 1 & 2 ”が届けられた。

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    跳ねるピアノプレイとニールの美声が会場を躍らせる。流し目でこちらを見ているニールは「これが俺だ」と言わんばかりにニヤリと笑い、さらにテンポを上げていく。緑から青へと移り変わった光の下で貴公子は「気分はどうだい?きょうは来てくれてありがとう」と呟いた。

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    ここから最新アルバム『RETURN TO ZERO』に収録されている2曲が続く。“Need You Again”の軽快なイントロに合わせて立ち上がったニールは、ジャケットを放り、スタンドマイクを抜き取った。この日はじめて見せる立ち姿は、どこか妖艶。ミラーボールが回りだし、ダンスフロアとなったSHIBUYA CLUB QUATTROで、胸元の空いたシャツを着たニールが腰をくねらせ、自らのダンスナンバーを表現した。

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    続く“Broken Glass”でもニール劇場は止まらない。再びピアノに手をかけたこの日の主役は高音を響かせて、憂鬱な東京の夜を吹っ飛ばす。私の前で踊っていた仕事帰りに訪れたサラリーマンはネクタイを緩めて、明日への英気を養っているように見えた。

    最後の“BNYLV”では機材トラブルにも見舞われたが、こんなこともあるさとすぐに対応。スタッフと協力して、再び自らの音を取り戻したニールが会場のボルテージを下げることはなかった。熱いプレイの最中にも関わらず、何度もこちらの様子を伺うニールはジャズミュージシャンのようでもある。

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    「この人は、本当にライヴが好きなんだ」と彼の姿を見ていると思うし、哀愁ただようメロディーがその場を包み込むと、公演が終わってしまう事実にもの悲しさを感じた。

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    その後アンコール曲の“Prometheus”と“150 More Times”を歌い切ったニールを拍手と歓声が包んだ。全13曲をほぼノンストップで歌い切り、胸に手を当てながらオーディエンスに感謝したニール。およそ1時間と限られたステージだったが、彼が何者かを表現するには十分すぎる時間だった。ライヴ後には、多くの観客が立ち話をしながら、ニールが残した世界観の残り香を味わい、彼がスターになっていく青写真を描き合った。

    Photo by リン(YLC Photography)
    Text by 浅野凜太郎

    【Neal Francis Japan Tour 2025】

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    Neal Francis『Return To Zero』

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