君島大空 合奏形態 待ちに待った春と巡業
- 2025/04/15 ● Report
2025年3月21日(金)、 BEAT STATIONにて君島大空 合奏形態 夜会ツアー2025 “春を前にしての歓喜の実践” の福岡公演が開催された。合奏形態では過去最大規模となった今回のツアー。福岡公演は早々とソールド。地方のファンにとって待望のライヴの模様をお届けする。
拍手で出迎えられた君島大空 合奏形態。平日の金曜夜、様々な年代の人々が集まり、期待に満ちた目で4人を見つめている。青のライトが半円形で佇む4人のステージを静かに照らした。雨上がりの土から立ち昇るペトリコールの匂いやプリズムの光が具現化するような、美しいメロディと歌声とが融合した”火傷に雨”。「福岡BEAT STATION!君島大空 合奏形態です、よろしく!」と君島が発すると、2曲目の”笑止”へ。刻々と変化する変拍子を巧みにこなす石若 駿(Dr)のドラムアクトに目を奪われた。曲のアウトロで君島 大空(Vo/Gt)は、「最後まで楽しんでください!ありがとう!」と語りかけ、速弾きの技巧でフロアを沸かせた。そのままシームレスに”散瞳”へと移ると、新井 和輝(Ba)のベースがサウンドの基盤やアクセントを担う。歌詞にあるように、充満した花のような君島の歌声がしっとりと降りしきる。音源よりもややリズムを溜めたメロディが心地よく、また西田 修大(Gt/Cho)のエフェクターでの繊細な音作りが秀逸であった。
「楽しんで帰れそうですか皆さん!初めて福岡で、合奏形態でワンマンライブができます!」とMCを挟み、8曲目に”向こう髪”をソロでアクト。合奏形態だけでなくソロも堪能できるとは思わなかった観客が驚くなか、ギターの技巧への驚嘆がインパクトを塗り替えていく。春の海の汀を走るような軽快な指のステップをフレット上で展開し、君島にかかればギターも歌うことができるのだと感じた。観客はただただ、物語を紡ぐ指先と、透明で中性的な歌声に魅了されていた。メンバーが戻って来たあと、10曲目には”˖嵐₊˚ˑ༄”。薄いピンク色の照明がまさに春の嵐を表現しているかのよう。ダンスビートに近いシークエンスから音の複雑な洪水になだれ込むこの曲は、多種多様なエッセンスを含む君島大空 合奏形態を象徴するような一曲である。一陣の風のような歌声がほどけて終わると、11曲目に”crazy”。イントロでcrazyだと分かった観客が腕を上げ、この曲の演奏を待っていた様子が窺えた。君島のギターはもちろんのこと、西田のギター、新井のベース、石若のドラム、個々の演奏技術が非常に高く、バンドという合奏形態において足し算ではなく乗算で彼らの持つセンスが増幅しており、圧巻のパフォーマンスであった。
本編後半には15曲目に”遠視のコントラルト”。フロアでは両手を掲げる観客の姿が見られた。突き放すような強い歌声から、サビでは雲から梯子を下ろす光のようなあたたかい歌声に包まれ、石若の華麗なドラムソロの爆撃に歓喜の声があがった。演奏後のフロアでの拍手が長かったことが、あまりにも素晴らしい演奏だったことの証明だろう。直後のMCでは「今日来れて嬉しいです。早いもんで次で最後!」と君島が告げると、もっとやって!と、フロアからいくつもの声が飛び交う。「じゃあ万感の想いを込めてやろう」と西田が言い、君島は頷いて「これをするために来たんだというところもあるので」と、3月5日にデジタル配信が開始されたEPに収録されている”Lover”をアクト。君島の吐息の一つでさえも作品になるような始まりで、西田が宣言した通り4人の万感がこもった激情の演奏であった。
全16曲を聴き終えた観客には、傑作の映画を見終えたような満足感が漂っていたが、素晴らしいアクトにすぐさまアンコールが沸き起こる。アンコール1曲目には”都合”。掻きむしるように弾く西田のエモーショナルなギターと、笑い泣くように少しずつ表情を変える君島のギターと歌唱が合流することで観客の心を揺らす。演奏が終わると、「感無量ですわな!もっと来たい!もっと来ても来てくれますか?」と呼びかけた。アンコール2曲目には”花降る時の彼方”。彼らのプライベートでのセッションを垣間見ているような、音で遊ぶイントロ。間奏で、西田はギターのアームによってビブラートをかけ、観客の耳目を集めた。「ありがとう!」と4人がステージを去ると、ツアーファイナルでもない地方の一公演にも関わらず、感激した観客からのダブルアンコールを求める拍手が鳴りやまない。しばらくすると、「嬉しいです!」と再び4人が姿を現した。最後に演奏された曲は”沈む体は空に溢れて”。薄明かりと逆光に包まれ、それでも4人の感情が演奏を通してはっきりと伝わった。西田は抒情的かつ力強いアプローチのギターを鳴らし、アウトロでは新井のベースが太くうねる。石若のドラムが曲の奥行きを拡張し、彼らの音に乗せる君島の儚くも美しい歌声は、よりいっそう感情を滲ませながら観客に届けられた。「福岡の皆さん、ありがとうございました!またすぐ来れたらと思います!」と4人で挨拶し、観客に手を振った。客席からはありがとうと声が飛び交った。
君島大空 合奏形態は、フジロック2025の2日目、7月26日に登場予定である。過去最大規模の今回のツアーを経て、春を前にしての歓喜の実践を終えた彼らが、夏に想うこととは何であろうか。夜会ツアーは、4月17日にZepp Hanedaでのツアーファイナルを迎える。お近くの方はぜひ、君島大空 合奏形態の芸術、その表現に触れてほしい。
君島大空 合奏形態 Set list
1.火傷に雨
2.笑止
3.散瞳
4.銀色暁迷
5.19℃
6.Somebody’s Walkin’ In My House(Cover)
7.釘
8.向こう髪(ソロ)
9.迎
10.˖嵐₊˚ˑ༄
11.c r a z y
12.IRON CURTAIN
13.WEYK
14.No heavenly
15.遠視のコントラルト
16.Lover
en.
1.都合
2.花降る時の彼方
w en.
1.沈む体は空へ溢れて
Photo by suguta
Text by Ai Matsushita
君島大空 合奏形態 夜会ツアー 2025
『春を前にしての歓喜の実践』
<北海道>
日程:2025年3月9日(日)
会場:小樽GOLDSTONE
時間:開場 16:15 / 開演 17:00
料金:6,500円(+ドリンク代)
<福岡>
日程:2025年3月21日(金)
会場:福岡BEAT STATION
時間:開場 18:00 / 開演 19:00
料金:6,500円(+ドリンク代)
<大阪>
日程:2025年4月4日(金)
会場:大阪Zepp Namba
時間:開場 18:00 / 開演 19:00
料金:1F スタンディング 6,500円(+ドリンク代) 2F 指定席7,000円(+ドリンク代)
<愛知>
日程:2025年4月5日(土)
会場:名古屋Zepp Nagoya
時間:開場 17:00 / 開演 18:00
料金:1F スタンディング 6,500円(+ドリンク代) 2F 指定席7,000円(+ドリンク代)
<東京>
日程:2025年4月17日(木)
会場:東京Zepp Haneda
時間:開場 18:00 / 開演 19:00
料金:1F スタンディング 6,500円(+ドリンク代) 2F 指定席7,000円(+ドリンク代)
INFO & TICKETS
https://smash-jpn.com/live/?id=4389