ENGLISH TEACHERが渋谷に降臨!彼らが持つカリスマ性の起点に迫る
- 2025/02/13 ● Report
2025年1月20日(月)、ENGLISH TEACHERの来日公演が渋谷・WWW Xにて開催された。多くの洋楽ファンが待ち望んだバンドの初パフォーマンスとのことで、平日にもかかわらずフロアは大盛況。円安の効果もあってか、海外からの客も多く見受けられた。開場中、イングランドからライブを見に来たという男性に話を伺うと「日本を観光したいという気持ちもあって来日したけど、主役は彼らさ!」と、会場限定で販売されたグッズTシャツ(英語教師と日本語でプリントされている)を見せながら朗々と語ってくれた。
笑顔でステージに登壇したメンバー。オープニングナンバーとして飛び出したのは“This Could Be Texas”。この曲は2024年にリリースされ、同年のMercury Prizeを受賞したことからも知られるアルバム『This Could Be Texas』のタイトル楽曲。美しいピアノの旋律とリリー・フォンテーン(Vo)の独唱でインディー・ロックのようなスタート。そこにチェロが加わり、ラストに向かうにつれてルイス・ホワイティング(Gt)、ダグラス・フロスト(Dr)、ニコラス・エデン(Ba)のハイレベルな演奏が次々に展開、荘厳な雰囲気に戻ったところで終わりを迎える。まるで一つのストーリーを見ているようだ。正直この時点で、筆者的に“ポスト・パンク”と捉えること自体が解釈違いなのではないかと感じたが、軸としてブレないのは、リリーの感情そのものを露わにする歌唱に加えられたスパイスだ。“I’m Not Crying, You’re Crying”で何度も繰り返されるワード「I’m not lonely」「I’m not crying」は、歌詞というよりは一人語りに近く、リリーの出身地であるランカシャー州・ペンドルをから旅立つことで気づいた故郷の社会・経済、政治的問題がダイレクトに伝わってくる。だが、当然ながらリリーにあるのは負の感情だけではない。“Mastermind Specialism”は愛するランカシャーの牧草地でリリーがハミングしているようだ。リズムとイントネーションが民謡に近いこともあり、どこか懐かしい気分となる。フジロックで同曲が披露されるようなことがあれば、草むらに寝転びながら目を閉じてゆったりと聴きたい。その時、筆者はきっと北海道の高原牧場を思い出しているだろう。
観客のボルテージに火が付いたのは“The World’s Biggest Paving Slab”。リリーのシャウト、ルイスの雷鳴のように響き渡るギター、ニコラスのうねるベース、ダグラスが巧みに操るダイナミクスコントロールが次々と観客を煽っていく。WWW Xは天井にミラーボールがあり、ロックのライブでは滅多に使われることがないだろうが、ヘドバンする客、腕を突き上げて踊り狂う客を見ていると、今この瞬間が使い時ではないか?と思うほどに熱狂していた。“R&B”にてリリーが「シブヤ!!!私はここに戻るわ!!!」と叫んだ時には今日一番の盛り上がりをみせた。アンコール“Albert Road”直前で投げキッスをしながら、少し恥ずかしそうな笑顔で客と会話しあう様子は、年相応のあどけない少女のようだった。
昨年、初アルバムをリリースしたばかりとは思えないバンドのカリスマ性と演奏技術は目を見張るものがある。是非また日本に戻ってきてほしい。そして、本編ラストに演奏された“R&B”の歌詞からも、リリーが自身の立ち位置を「混血の女性」として捉えていることが理解できる。だからこそ、世界各地からやってきたアーティストと純粋に音楽を愛する人々が繋がれる場として、フジロックが必要なのではないかと今回のENGLISH TEACHERを通して改めて感じた。
ENGLISH TEACHER Live in Tokyo 2025
2025年1月20日(月) 渋谷 WWW X
<セットリスト>
This Could Be Texas
I’m Not Crying, You’re Crying
Broken Biscuits
Mental Maths Albatross
A55
Mastermind Specialism You Blister My Paint Song About Love
The World’s Biggest Paving Slab Nearly Daffodils
R&B
(EN1)Albert Road
Text by YAMAZAKI YUIKA