• OMOIDE IN MY HEAD


    ロックバンドが好きなら誰しも1度は耳にするであろう向井秀徳という名前。
    「NUMBER GIRL」「KIMONOS」「ZAZEN BOYS」数々の作品で多くの人に影響を与えてきた生ける伝説と言ってもいいかも知れない人物である。
    かくいう私も向井秀徳の音楽に何度も心震わせてきた一人だ。
    どんな形でも圧倒的な個性を放つ向井秀徳率いるZAZEN BOYS、中国のバンドRe-TROS(重塑雕像的权利)の2マンライブではどのような姿が見れるのか、FESの大舞台や画面の向こうで見る顔をキャパ700の空間で見れる貴重な機会に少しの緊張と大きなワクワクでこの日を迎えた。

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    2024/12/17 (火) 18時50分頃、UMEDA CLUB QUATTRO「ZAZEN BOYS × Re-TROS」ツーマンライブの開演直前。会場には独特な緊張感が漂い、日本語と中国語が入り混じるざわめきが聞こえる。大阪でこんな異文化が交わる夜が訪れるとは、一体どんな化学反応が起こるのかのか期待が高まる。

    【言葉の壁を超える音楽という力】

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    独特な緊張感の中、静寂を切り裂く一音目はRe-TROS。1曲目「Up Next」が始まると、張り詰めた静寂を切り裂くような演奏が会場を包み込んだ。ギター、シンセサイザー、フロアタムを次々と操り、手を替え品を替え自分たちの空間を表現するRe-TROSのライブに気がつけばお客さんも自然と揺れていく。ほとんどMCなしで駆け抜けるパフォーマンスは、見所の連続だ。

    「こんばんわ大阪〜」と日本語で挨拶した瞬間、観客から歓声が上がる。しかしその後は再び音の世界へ。重低音の響きが体に染み渡り、言葉を必要としない音楽の力を実感する。観客が自然と体を揺らし、異国のバンドの音楽に引き込まれる様子が印象的だった。10曲を駆け抜けたラスト、「NEXT ONE ZAZEN BOYS」と一言残し、拍手に包まれながらステージを後にした。

    Re-TROS Set list
    1.Up Next
    2.揺把
    3.Location
    4.Viva
    5.Monkey
    6.Pigs
    7.8+2+8
    8.Hailing
    9.ATM
    10.Celebration

    【Matsuri Studioからやって参りました。ZAZEN BOYS!】

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    Re-TROSの余韻が残る中、ZAZEN BOYSがゆっくりと登場。「Matsuri Studioからやって参りました。ZAZEN BOYS!」という向井秀徳の一声で、場内の期待感が一気に爆発する。空間をぶった斬る、鋭いサウンドでZAZEN BOYSのライブが始まった。1曲目「I Don’t Wanna Be With You」から始まったライブは、鋭いサウンドで一瞬にして会場を支配。ふらっとでてきて、挨拶もそこそこに。自然体のまま、たった一音鳴らせば、あっという間に引き込まれてしまう。例えば、手を替え品を替え会場を創り上げたRe-TROSが中国雑技団だとするならば、ZAZEN BOYSのライブは日本刀での真剣の斬り合いのようだ。安定したリズム隊が織り成すグルーヴに、雷鳴のように響くギターは、まるで居合い斬りのように一瞬で衝撃を刻み込む。脳天直撃、音が聞こえて、格好いいって思う前には脳みそが揺れているのである。初期衝動とか、初めて知る圧倒的なものに出会った感覚。そういった衝撃がビシビシ飛んでくる。メンバー達の気おわず普段通りって感じのテンション感なのもいい。ステージから檄を飛ばしてフロアを煽ってどこまでも声を飛ばすライブも大好物だが、ZAZEN BOYSのやることを淡々とやっている、そんな職人なライブが良い。音の海に自由に浮かんでいられるような気がする。「勝手に格好いいことしてるから、気付いたやつからついて来たらいい」そんな風に、自分たちの表現をどう受け取られるかなんて気にもしてなさそうな余裕が見ているこちらにも自由をくれる。続く「Himitsu Girl’s Top Secret」「安眠棒」「八方美人」といった楽曲で、ギアをあげていくZAZEN BOYS。5曲目「チャイコフスキーでよろしく」が終わり、ボルテージマックスのフロアへ向井秀徳が叫ぶ。

    「あなたに言いたいことがあるんだよ、よく耳かっぽじってきいてくれ!」「Matsuri Studioからやって参りました。ZAZEN BOYS!」

    観客の熱気が最高潮に達しカメラのレンズが曇りだす。ここから先は、何が起こっても最高に間違いない。そんな空気が出来上がっていた。「ブルーサンダー」「サンドペーパーざらざら」「ポテトサラダ」どの曲も聴き馴染みがあるのに、ライブでは全く新しい表情を見せるZAZEN BOYSの音楽に圧倒された。どの曲も歌詞への共感やフレーズの理解なんてできない、でも格好いい。脳みその考える部分を閉じて、感性が身体を揺らしたがっているだけ、なんとも美しいフロアの光景だった。ラストスパートに「永遠少女」「乱土」「胸焼けうどんの作り方」とアルバム「らんど」の流れに沿って曲が終わる時、心地いい耳鳴りと鳴り止まない拍手がえらく心地よい多幸感に包まれた。

    本編が終了すると、すぐさまアンコールが起こる。本編終わりの拍手が途切れることなくアンコールのリズムに変わっていく様で、伝説的な夜を目撃した実感を得る。再びステージに戻ったZAZEN BOYSは「asobi」を披露し、その歌詞「遊び足りない…」が観客全員の心情を代弁するかのようで、多くの観客がこの夜が終わるのを惜しむように踊り狂っていた。最後にはRe-TROSのメンバーもステージに上がり、挨拶を交わしてZAZEN BOYSを讃え、大歓声の中で感動的なフィナーレを迎えた。この夜、大阪で音楽が国境を超える瞬間を目撃した。

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    ZAZEN BOYS Set list
    1.I Don’t Wanna Be With You
    2.Himitsu Girl’s Top Secret
    3.安眠棒
    4.八方美人
    5.チャイコフスキーでよろしく
    6.ブルーサンダー
    7.サンドペーパーざらざら
    8.ポテトサラダ
    9.HENTAI TERMINATED
    10.HARD LIQUOR
    11.ブッカツ帰りのハイスクールボーイ
    12.YAKIIMO
    13.永遠少女
    14.乱土
    15.胸焼けうどんの作り方en.asobi

    ライブが終わり、会場を後にする観客の中には、日本語で「遊び足りない」と鼻歌を口ずさむ外国人の姿も。

    日本のZAZEN BOYSと中国のRe-TROS、2バンドが創る化学反応は音楽が言葉を超え、人々を繋げる瞬間を目の当たりにした夜だった。この特別な夜を共有できたことに、観客全員が音楽の持つ力を改めて感じたに違いない。

    芸術、文化、娯楽、生きがいーー人それぞれ音楽のカテゴライズはあるだろうが、そんなものは全部どうだって良くなってしまう。小難しいことは置いて、ただ感じたままに。そんな自由を感じるライブだった。

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    Photo & Text by エモトココロ

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