• 野外フェス=野外コンサートではない


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    6月末にイギリスで開催された、世界最大級のフェスティバル『Glastonbury Festival 2024』(以下、グラスト)に、フジロッカーズ・オルグの取材チームで参加してきました。今回は取材チームに同行したDJで鍼灸師のNozomu Kitazawaさんから、グラストで感じた「野外フェス=野外コンサートではない」という思いを寄稿いただきました。まさにフジロックの魅力ともつながるものなので、フジロッカーのみなさんもぜひ読んでみてください!Nozomuさんは金曜日の13時からブルー・ギャラクシーに出演するので、そちらもチェックを!

    「野外フェス」という言葉は、音楽好きにはすっかり浸透しているように感じる。趣旨の異なる様々なジャンルの催しが、フェスティバルの名を冠し日本中に溢れている。コロナ禍を乗り越え、今まで通りに開催されていることに頭が下がる。

    ただ、その期間の影響はいまだに尾を引いているように思う。運営側(母体側)の方針もあるのだろう。筆者も長年野外フェスには参加しているが、以前感じた感動、高揚感が年々薄れている気がしてならない。

    フェスティバル、日本語なら当然「祭り」だ。幼いころ、近所の夏祭りが好きだった。夜遊べることのワクワク感、大音量で流れる音頭やお囃子、色鮮やかな夜店の数々、クラスの女の子達の浴衣姿、そして花火。好きだった理由は、それらすべてが普段の生活から少し離れた「非日常」という感覚があったからかもしれない。

    祭りには「非日常」が必要だ。野外で音楽を浴びるだけなら、フェスではなく「野外コンサート」と言えるのではないか?

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    グラストンベリー・フェスティバル(以下グラスト)に参加した。熱心な音楽好きなら誰もが知る、世界最大の祭りである。個人的に2度目の参加となる。

    グラストの目玉といえば「豪華なラインナップ」だろう。昨年ならELTON JOHN、今年もCOLDPLAYをはじめ、レジェンドからニューカマーまでが一堂に集結し、観客を熱狂させる。

    気になるアーティストをチェックすることはフェスの純粋な楽しみだが、グラストにおいて観たいアーティストを網羅するのは不可能に近い。なぜなら、東京ドーム95個分の広さと言われる会場を練り歩くことは、かなりの時間と体力を要する。さらには、約30万人の観客によるステージ間の渋滞、タイムテーブルのバッティングもあるだろう。

    ただ実際フェスティバルに参加すると、事前にチェックしていたラインナップなど、正直どうでも良くなってしまう。特別な想い入れがあるアーティストはさておき、この「徹底的に作り込まれた世界最大の祭り」において、チェックしたアーティストを観るだけで終わるのはあまりに勿体ない。

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    ディテールにこだわったアトラクション、大道芸、サーカス、ギター工房やダンス教室など多様なワーク・ショップがフェスを盛り上げる。仮に音楽を取り除いても「完璧な祭り」としてグラストは成立している。五感すべてを使って祭りを浴びる、それこそがフェス本来の味わい方であるように思う。

    何の気なしに会場を散策することで、予想外のアクトやハプニングにも出会える。たとえば、West Holtsステージの通りがかりに観た「HEILUNG」というグループ。ステージではシャーマンの儀式が行われており、そのために音が鳴っているような体験に度肝を抜かれた。

    このステージはブッキングの感度がとくに高く、昨年なら韓国の新星「ADG7」が登場しており、素晴らしいパフォーマンスで観客を魅了した。今年は大手メディアが取り上げない「パレスチナ問題」に関しても、度々メッセージを発信していた。

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    フジロックで最初に祭りを感じるのは前夜祭。これから始まる期待感、直前までわからない出演ラインナップ、苗場音頭の盆踊り、そして打ち上げ花火。文字通りの祭りは何度味わってもワクワクする。

    本編では、夜のパレス・オブ・ワンダー。だから去年の復活はとても嬉しかった。ノー・パレス、ノー・フジと言っても過言ではなく「無くてはならない場所」のひとつだ。深夜には、日高大将がサプライズ登場。「もっと観たいよなー」と煽り、先のライヴを延長させるハプニングに、観客のボルテージは最高潮に達した。急遽決まった?と思しき「Don’s Cafe」における苗場音楽突撃隊のライヴも強烈だった。

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    今年ならブルー・ギャラクシーの復活が嬉しい。筆者も初日にDJとして参加させていただく。オープン・テントのDJブースがあることが、フェスティバルの集客に直結することはまず無いだろう。少なくとも予算のかかる話だ。ただ鳴っている音に足を止めたり、音漏れが高揚感の一部になったり、音場があることで仲間と集まることができる。それらは祭りを構成する要素の一部として、とても重要であるように思う。レコードに少しでも興味があるなら、ブルー・ギャラクシーは強烈な体験ができる場所であることを断言しておく。

    フジロックは会場こそ苗場という自然豊かな場所だが、自然の中に町があり、人々の生活がある。場所が都心部ではないだけで極めて日常だ。野外フェスが祭りであるためには「徹底した演出による非日常」が必要である。

    日頃できない体験、刺激、出会い、その場の空気感を味わうために、数万人の来場者は大金を払い、休みをとり、時間をかけてこの場所に集まっている。仮にそれがただのブッキングありきの野外コンサートになってしまうなら、わざわざお金と時間をかけて、自然豊かな場所に出向く必要があるだろうか?エアコンの効いた室内で配信を観る選択肢は、健康上のリスクもなく快適でいい。

    しかし祭りは実際に体験してなんぼである。配信はただのコンサートを観るためのものだ。

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    グラストは「徹底した祭り」の最高峰だ。デザインチーム「dezeen」による光や火を放つ巨大DJブース「ARCADIA」(写真は昨年までの蜘蛛、今年からはトンボのモチーフ、顔の中心にDJブースがある)、ヴィンテージ・カーをデコレーションし、惜しみなく積み上げたジョー・ラッシュ作品「カー・ヘンジ」(元ネタはストーン・ヘンジ)、同所には、火炎放射器を積んだ移動式カー・ステージがあり、昨年に続きアフリカのグループ「FULU MIZIKI」が演奏を披露した。

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    どう頭を絞ればこのような発想が生まれるのか?考えが及ばない時点から、非日常に一歩迷い込んでいるように感じる。もちろん予算上、法律上、日本国内で同じことを行うのは、物理的に不可能であることは十分に承知している。だからこそグラストには一度は足を運んで欲しいと思う。

    日本のフェスは、とても藻掻いているように感じる。集客に一番直結するブッキングという要素は、フェスというビジネスにおいて最重要視されることはもちろん間違っていない。だが、客寄せのブッキング偏り過ぎてないか?フェスの要素は次第に薄れ、ただの野外コンサートになっていないだろうか?生き残るために手段は選べないのかもしれないが、正直なところ「そこまでして」という言葉も喉元まで出ている。

    祭りという体験を提供するのであれば、もっと「遊び」の要素が必要だ。集客に直接関係なく、さらに予算がかかるとなれば、運営側からすれば「遊び=無駄」である。ただそれら沢山の無駄が、唯一無二の非日常を作り出し、観客を興奮させてきたことを知っている。

    往年のファンなら、ラインナップに関わらず、毎年参加している方も少なくない。なぜなら強烈な祭りの洗礼を受けてきたから。フェスを心から愛し、応援し、そして心配しているから。

    ただ足を運ぶたびに、大切な何かが次々と仕分けされている気がしてならない。往年のファンは、それらをとても敏感に感じている。運営側(母体側)は、彼らが愛想を尽かしたときのことを、少しでも考えているのだろうか?

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    グラスト同様のフェスやディレクションを、日本で行うことはまず出来ない。ただパッと見える華やかな部分を真似しなくても、日本ならではのやり方で祭りを作り上げたらいいのではないか?

    過去にグラストの主催者、エミリー・イーヴィスがフジロックを訪ねた際、会場がクリーンであることに感動し、グラストのゴミ問題を改善させたと聞く。何かについて考えることや、取り組むことも、フェスを構成する重要な要素だ。フジロックは間違いなく世界で一番クリーンなフェスである。運営側はもちろん、そこに協力する観客も誇っていい部分だと思う。

    円安の影響も拍車をかける。何をするにもお金がかかり、頭の痛い話ではある。ただそこは、既にあるもの、これまで培って来たことを再構築し、視点を変えるだけでも、新たな価値観や感動を提供できるように思う。いかにインパクトを与え、楽しんでもらえるか?限りある条件の中で、観客の目線に立った提案が出てくることを待ち望んでいる。

    いま、祭りの質が問われている。またここに来たい、このフェスのために力になりたいと人々に思わせることはできているのか?感動のあまり叫びたくなるような、祭り体験がふたたび味わえることを、いちファンとして願っている。

    Text and Photo by Nozomu Kitazawa

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