• 東京のど真ん中で、まぎれもなく苗場。キックオフイベント『Smash Go Round FUJI ROCK NIGHTS』の様子をレポート


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    仕事にも精が出ない、水曜の夜。山手線飛び乗る。目指すは渋谷。

    そんな歌が脳内に流れ出しそうな、あと数日でゴールデンウィークに突入する週の半ば。フジロックに向けたキックオフイベント「Smash Go Round FUJI ROCK NIGHTS」が4月23日渋谷クラブクアトロで開催された。ライブのみならず、フリーエリアで楽しめるポイントもさまざまあり、フジロック感を先取りできるというイベントだ。

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    苗場で25回目の開催というメモリアルな今年のフジロックがおよそ3ヶ月後に迫ってるとは言え、そういえば100DAYS TO GOという文言を数日前にSNSで見た気がするな…くらいのテンションで、まだフジロックに向けてスイッチが入っていないのが正直なところではある。バタバタと仕事を切り上げた足でクアトロのエレベーターに乗ると、居合わせた2人組が「betcover!!のライブ、見たかったんだよね。好きな人大学にいなくてさー(だから一緒に来てくれて嬉しいというニュアンス。)」なんて話しているのが聞こえてきていた。

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    4階の会場に入ると、広くはないながらもピラミッドガーデンで見るようなフラッグ飾りがあったりして、”らしい”雰囲気だ。

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    壁には過去の名ライブたちの写真が展示されている。黙々と写真の展示を見る会社帰りであろうスーツ姿の同志たちが目に付いて、仕事切り上げられてよかったね!と心の中で賛辞を贈ったり。みんな急いで来たのであろう。ここにあのフジロックおじさんがいてもまったく違和感はないだろうな。

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    展示を見つつ中に進んでいくと待ち受けているのは、あのおなじみのごはん。そう、苗場食堂のとろろめしだ。

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    実物よりもかなり小さいカップでの提供だったが、ライブを見る前、小腹満たしにかっこむのにちょうどいいサイズ。

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    ベンチにちょこんと腰かけてとろろめしをすする人たちの姿を見たとき、少しフジロックの扉が開いた気がした。さらに進むと今年のオフィシャルグッズが販売されていて、「先行販売」の文字に思わずニヤリとしてしまう。このTシャツかわいいなだのなんだの物色しているうちに少しずつ高揚している自分がいる。

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    そして現地でオフィシャル出店もしている、いいちこの「一番おいしい割合」なお茶割り”いい茶こ”を片手にいよいよライブフロアに飛び込む。(コレ、飲み進めるごとにお茶パックから味がどんどん増して、焼酎のおかわりが欲しくなるいい飲み物です。)

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    まずは3日目に初出演が決定しているbetcover!!の登場だ。満員のフロアはフロントマン柳瀬二郎が表情を崩さずつむんでいく独特な日本詞ボーカルを乗せた爆音につつまれていった。色っぽくなまめかしく、衝動的でヒリヒリした、ギター、ベース、ピアノ、サックス、ドラムの編成による演奏に身を任せていると、もはやレッドマーキーにいるかのように錯覚したりする。

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    苗場でもやっぱりレッドマーキーが合いそうか。けどホワイトの朝イチ、目覚ましがてらにブっとばされるのもアリだなとか、そのときを想像しながら見るのもまた楽しい。目立ったMCもないまま大歓声の中終え、苗場でのライブにつなぐ余韻を残した。

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    ライブの合間にまた4階フロアをのぞいてみると、フリーエリアにだけ遊びに来たようなお客さんもちらほら見受けられた。とろろめしだけ食べにきてさっと帰ると宣言していた友人もいたし、平日ど真ん中の渋谷でちょっとだけフジロックのにおいをかぎにやって来た人も少なくなかったようだ。

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    清志郎、ジョーストラマー、チバユウスケ。思い出深いライブ写真にうつるヒーローたちの姿に心を奪われつつ、じっくり時間をかけて堪能したかったのは過去のオフィシャルパンフレットの展示である。

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    2019年まで販売されていた冊子のパンフレット、筆者も思い入れのある年には購入していたので懐かしい。少なくとも20年分近いこの書物たちを見るだけでもフジロックに浸れる濃密な時間になったことだろう。これはまたどこかの機会でゆっくり出会いたい。

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    フリーエリアで思い思いに過ごす人たちを横目に、そろそろオリジナルラヴのライブが始まるから戻らないとと思いつつ、モニターに流される昨年のアフタームービーについ見入ってしまう。すぐにSEE YOU IN 2024 の文字で終わってしまったので頭からもう一度見る。そして全部見入る。たくさんの名ライブシーン、懐かしいあの森の景色、おなじみのごはん、いつものハイネケン、そして楽しそうな人、人、人。

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    そうだ、夏が来る。あの場所にまた戻れるんだ!自分の中に備わったフジロックの細胞が完全に動きはじめた。そうともなれば、グリーンステージとホワイトステージの間を駆け抜けるその瞬間のようにライブフロアに急いで向かう。

    フロアに入ればすでに田島貴男のビッグショーが始まっていた。ギターとストンプボックスと身ひとつ、その圧倒的な歌声とグルーヴで序盤からあっという間に会場を飲み込んでいる。この日は彼の58歳の誕生日。革ジャンとウェットに固めたヘアのいつも通りのスタイルではあるが、いつ見たその姿よりもさらにパワーを増しているようで迫力がすごい。

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    そんな彼のパフォーマンスは生音を浴びることの理屈無しの楽しさを、否応なく呼び起こしてくれる。待ってましたのあの曲で永く甘くうっとりしたり、ソウル満開なシャウトにハンドクラップで応えながら「フジロック行きてえええ」と叫びたくなった。

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    この日はごくごくシンプルな音で田島節を見せつけられたが、苗場では1日目にOrijinal Love Jazz Trioとして、オルガンとドラムを引き連れたジャズトリオ編成での出演が決まっている。これはぜひ気持ちいい風の吹き抜ける午後、フィールドオブヘブンあたりで堪能したい。

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    振り返ると、このイベントはライブを見るという目的以外にも、ご飯を食べたりお酒を飲んだり、グッズを買ったり展示を見たり、ぼーっと映像を眺めたり友人と談笑したり、思い思いの過ごし方があった。

    これはまさにフェスティバルならではの時間であり、小さい小さいフジロックが東京のど真ん中にあった。わたしたちの愛してやまないあの空間が。

    「betcover‼ハマりそう!」とか、「田島さんの歌とんでもねえな!」とか話しながら、ホクホクした幸せそうな表情を浮かべて帰っていくお客さんを眺めながら、俄然夏が来るのが楽しみになって、気がつけば前夜祭までの日数を指折り数えていた。

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    会場を去るころには、この日のお客さんが自由に書き込んだイラストとメッセージで埋め尽くされていたボードウォーク。また苗場で再会できるのが楽しみだ。体の一部の大切なところがあったかく刺激された大満足な夜を経て、その日まで仕事にも精が出そうである。

    Text by 東いずみ
    Photo by Katsuya Inoue/Fujirockers org(風景),Taio Konishi(ライブ)

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