キャンプを楽しむ僕らが主役 〜朝霧JAM’23 初参加体験記
- 2023/11/16 ● Report
10/21(土)〜23(月)に開催された20回目の朝霧JAM。筆者の僕は今年が初参加で、ベテランの先輩にお話を聞いたり、想像を膨らませたりしながら当日を迎えました。オーバーナイトも含めて3日間通して快晴だったありがたみも、いまいち実感していないですが(かなり貴重みたいですね)、はじめての驚きや感動を交えながら朝霧JAM’23のレポートをお届けします。ぜひあの素晴らしい週末を振り返ってみてください。
富士山の麓で音楽と共にのんびりと過ごす贅沢な時間
シャトルバスの予約が事前に必要なこともよく知らず、慌てて手に入れたJR東海道線 富士駅発のチケット。フジロックの越後湯沢駅みたいに、当日サッと乗れるのかと勝手に思っていましたが、そんなことはなく、所要時間は倍近くの約90分ほど。でも奥地の朝霧高原に向かうドキドキ感もまた格別で、会場の富士山麓 朝霧アリーナに着くと、見渡す限りのテントと雄大な富士山の姿。このあと何度も何度も撮ることになる富士山の写真ですが、僕の素人スマホ撮影ではこの感動を伝えられる気がしない。それくらい素晴らしい光景が眼前に広がっていて、これから始まるフェスティバルに胸が高鳴ります。記事と一緒にfujirockers.orgフォトグラファー陣の写真もお楽しみください。
さて、到着したらなによりまずテントの設営です。場所も考えものですが、5年ぶりに復活するというカーニバル・スターの近くにある、BサイトのMエリアを選びました。フジロックのパレス・オブ・ワンダーが好きならぜひと聞いていたのですが、さっそく陽気な雰囲気のDJが流れているので、ちょっと面倒な設営作業もなんだか楽しくなりますね。遭遇した友人も手伝ってくれてスムーズに設営できました。その辺りの時間にライブをしていたCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINや青葉市子も観たかったのですが、早い時間帯のアクトを観るにはどうしたらいいかは来年以降考えましょうかね……。
寝床の準備が一段落したら、お待ちかねのライブの時間。メインステージのレインボー・ステージに到着すると、HOVVDYのUKインディー調のUSオルタナといった趣のバンドサウンドが、広々としたフィールドに気持ちよく響き渡っていました。ステージが一望できるAサイトの人たちも設営などをしながら眺めている様子で、それもまた贅沢な体験ですよね!ところ変わってBサイトの中腹にあるムーンシャイン・ステージでは、冥丁のDJセット。わかりやすくビート偏重な感じではなくアンビエントやエクスペリメンタルの風味ですが、ピアノや声が内包するグルーヴが徐々に滲んでくるのがとても気持ちいい。素材は和のテイストでも醸し出す雰囲気はFour Tetなんかを想起するもので、ちょっと観るくらいのつもりがかじりついちゃいましたね。
そしてレインボー・ステージに戻ると、折坂悠太(band)の演奏。これがまたたまらない。アコギとバンドが織りなす緩急が生々しく際立ってて、これまでの重奏や合奏のスタイルから次のフェイズに向かってるのを感じます。タイミングが絶妙な無数のシャボン玉も相まって、朗らかな心地を噛み締めるひと時でした。ステージ間の移動は10〜15分ほどで、タイムテーブルもそれほどゆとりはないはずなのですが、変に急かされる感じもなく、全体の雰囲気としてゆったりとした空気が流れています。これも朝霧JAMならではの魅力なんだろうなと感じますね。のんびり楽しんでいきましょう。
移りゆく風景を感じながらまたとない音楽体験を
夕方から夜にかけてのレインボー・ステージに登場したのはKASSA OVERALL。ドラムセットにコンガやボンゴといった潤沢なリズムセクションと、エレガントなピアノを中心としたジャジーなバンドセッションが繰り広げられます。わかりやすく盛り上がるというより身体の鼓動がじりじりと呼び覚まされるようで、繰り出すラップも複雑なリズムも肉感的に馴染んできて、身体と噛み合っていくあの感じ。メンバーの一人がステージから降りて僕らの横を駆け抜けていったり、さらっと“戦場のメリークリスマス”のフレーズを織り交ぜたりとニクい演出もありつつ、徐々に暮れて輝いていく下弦の月も抜群に映えるこのシチュエーション。そんな風景と演奏が完璧にマッチした時間を心ゆくまで楽しみました。
そして夜のムーンシャイン・ステージでは、OGRE YOU ASSHOLEの演奏が始まります。屋内が似合う印象がありましたが、野外の環境でサイケな妖しさが増していて、見上げたら星空という環境も相まって、なんともトリップ感がありましたね。ジリジリと積み上げてきた伏線を鮮やかに回収するような後半にかけての流れが見事で、まんまと踊りまくってしまいました。前半はステージ横のフードに並びながら観ていましたが、ステージからかなり近いので割と遜色なく楽しめます。フードやマーケット、ワークショップなども一体となってひとつのステージの風景を作り上げているのも、朝霧JAMのいいところかもしれませんね。
そして初日のトリはレインボー・ステージのBADBADNOTGOOD。かなり暗めなライティングで、聞いたところによると、演出として後ろの焚き火も消したそうな。時間の捉え方がどこまでも贅沢なクールかつエキサイティングな演奏で、流れる時間が波のように滑らか。うっとり聴き入っていました。ふもとっぱらに少し顔を出したかったので、途中までしか観られませんでしたが、終演後には谷村新司の“昴 -すばる-”が流れていたそうですね。昨年この地でラストステージを飾った加山雄三のことも思い浮かぶし、満点の星空の下思いを馳せるかけがえのないひと時だっただろうなあ。なんともニクいぞ朝霧JAM!
ライブ後にはシャトルバスで10分ほどかけて、少しふもとっぱらに遊びに行ってみました。ピーターパンCaféで、延々とRadioheadが流れていたのが個人的に胸熱でしたが(キャンドル・ジュンさんの好み?)、たくさんのキャンドルのあたたかい灯火と共に焚き火を囲んでいると、今日ここにいられることを慈しむような厳粛な気持ちになります。そして広大なフィールドに見渡す限りのたくさんのテント。焚き火もちらほら見えて、明かりの数だけそれぞれの営みがあるのでしょう。会場に来ないでふもとっぱらでずっと過ごす人もいると聞きましたが、こんなに気持ちのいい環境ではそれも無理ないですね。夜のふもとっぱら特集記事も公開予定なのでそちらもお楽しみに!
会場に戻るとキャンプサイトで過ごす憩いの時間。取材スタッフのテントで食べ物を分けてもらったり、友人のテントで焚き火を囲みながら深夜まで談笑したりと、思い思いのキャンプを楽しみます。「ここからが本番だよ!」と友人も言っていましたが、決してライブだけが楽しみではない、居合わせた仲間と楽しむこの時間こそが朝霧JAMの主役なんじゃないかと感じましたね。とても素晴らしい一日がこうして過ぎていきました。
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