【幾何学模様】グラストンバリーのライブ直後にインタビュー。最初で最後になるフジロックに向けて
- 2022/07/16 ● Interview
幾何学模様(Kikagaku Moyo)、フジロッカーなら以前から知っていたという人が多いかもしれないが、ライブを生で観たことがある人はごくわずかだろう。というのも2012年の結成以降、日本以上に海外で人気を獲得し、毎年のように海外ツアー、そしてデンマーク「ロスキレ・フェスティバル」、アメリカ「アウトサイドランド」、イギリス「グラストンバリー」といった大規模な海外フェスにも出演するようになったが、日本でのライブはごくわずか。リーダーであるGo(Dr./Vo.)とTomo(Gt./Vo.)は、オランダ・アムステルダムへ拠点を移し、バンドと並行してレーベルも運営するなど、活動のベースは欧米中心。海外フェスで活躍する日本発のアーティストは少なくないものの、こういった形で成功を収めた日本人バンドは見たことがない、まさにパイオニア的な存在だと言えるだろう。
国内フェスに関しては、結成当初に自分たちで主宰した「TOKYO PSYCH FES」を除くとこれまでに出演はなし。ただ、全く縁がなかったというと、実はそうではなく、2019年秋には「朝霧JAM」とGEZANが立ち上げた「全感覚祭」に連日出演する予定だったが、台風の影響で中止(全感覚祭は当初予定していた千葉での野外開催を断念し、急遽渋谷のライブハウスにて開催され、そこに幾何学模様も出演)。2020年には「GREENROOM FESTIVAL」への出演がアナウンスされていたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて中止になるなど、なかなか日本のフェスで彼らの姿を観られる機会に恵まれなかった。
そんな彼らだが、2022年は特別な年になった。春にはニューアルバム「クモヨ島」をリリースし、フジロックへの出演が決定。しかしながらキャリアのピークとも思えるこのタイミングで年内での無期限の活動休止を発表し、「FINAL TOUR」と題して現在世界各国を巡っている。そんな中での、最初で最後のフジロック出演となるわけだが、思い返せば、10年ほど前に出会ったときから「グラストンバリーとフジロックは出てみたい」と会話をしていた記憶がある。
そして今回インタビューを行ったのは、こちらも念願の初出演を果たしたグラストンバリーでのライブの直後。レコードにサインを求めるファンが長蛇の列を作り(後ほど知ったが、出演したウエストホルツというステージのレコード販売数の記録を作ったとのこと)。それが終わり、一息つくとすぐに翌日のライブのためにロンドンに戻るという、貴重なタイミングで少しだけ時間をもらうことができた。
目標としていたその二つのフェスティバルに出演が決まり、まさに有終の美を飾ろうとしている幾何学模様。メンバーのGoとTomoにグラストンバリーでのライブの感想、そしてフジロックに向けたメッセージをもらった。
グラストンバリーのライブ前にトラブル?
─ まさに先ほどグラストンバリーでのライブを終えたばかりですが、いかがでしたか?
Go:まずは朝一なのに観にきてくれてありがとう(笑)
─ いえいえ、今回日本から来た理由のひとつでもあるので。今日のライブはいつもとは違いましたか?
Go:これまでたくさんのフェスティバルで演奏してきたけど、いつもとはやっぱり違う雰囲気だったかな。もともと出たいと思っていたフェスティバルでもあったし。
─ 10年ほど前のインタビューでもグラストとフジロックについては話してました。
Go:それが実現した喜びは大きかった。でも実は演奏直前に機材トラブルがあって、サウンドチェック中に何も聞こえなくなってしまって…
─ それを感じないくらいリラックスして演奏していたように見えましたが。
Go:実は俺だけモニターの返しがなくて、ステージで鳴っている音だけが聴こえる状態だったけど、結果的にはうまくやれてよかった。フェスティバルはハプニングがつきものだから慣れてる(笑)。
─ 長年の経験が活きてよかった(笑)。そして、目標にしていたグラストのステージ。会場の景色はどうでした?
Go:ステージから雲とか丘とかも見えて、シンバルが風に揺られて小さく音が出てたり、自然を感じながら演奏できた。いい光景だったね。ハプニングはあったけど演奏に関してはいつも通りやれたかな。
─ 前方にいたので、後ろまでは確認できてないですが、徐々に観客も増えてきたように感じました。
Go:ステージからは結構それが見えて、音を鳴らし始めて少したったくらいから急に増えてきた。朝一の演奏だったので難しいところもあるかなと思ったけど、やり始めたらいつも通り。朝一ですごくよかったって現場のスタッフにも言われたりもした。でもやっぱりここでやりたかったというのがあるからとても楽しかったというのが率直な感想かな。
─ 来月出演するフジロックも早めの時間のライブとのことですが。
Go:最近出ているフェスでは夕方や夜が多かったので、グラストからフジロックと早めの時間の出演が続くので個人的にも楽しみ。観ににきてくれる人も楽しんで聴いてくれたらなと。
最初で最後になるフジロック。日本人の熱を感じたい
─ では次にTomoさんにフジロック出演についての意気込みをお伺いしたく。
Tomo:さっきの話の続きになるけど、フジロックの出演時間は初日の13時すぎ。出番で言うと二番目だけど、実はメンバーもダウド(Gt.)を除いてフジロックに行ったことがなくて。どんな感じかあまり分からないというのが正直なところ。
─ 出演するのは、フィールドオブヘブンというフジロックの中でも人気の高いというか、フジロックらしいステージのひとつです。
Tomo:結構奥の方っていうのは聞いているので、どれくらいの人が来てくれるのかなあ。
─ 一人でも多くの人にこのタイミングでの幾何学模様を観て欲しいから、今日もこうやってグラストなのにフジロックの話をしてもらおうかと。
Tomo:行ったことがなくて、イメージが湧いてなくてごめんなさい(笑)。でもとにかく楽しみだし、ずっと話してたけど、出たいフェスだったから。そもそも日本のフェスで今までちゃんとプレイしたことがないし。
─ 今まで日本のフェスはブッキングされていたけど台風やコロナで中止になったり。
Tomo:フェスに関しては本当に運が悪いというか。「朝霧JAM」(2019年)は台風はで中止で、全感覚祭(2019年)は急遽ライブハウスで演奏できたけど、野外ではできなかった。
─ 最初で最後のフジロックになるということですよね。
Tomo:そう。最初で最後。そもそも日本という国で、野外で、観客がほぼ日本人という環境でやったことがないわけで、それがフジロックっていうのは嬉しいけど、どうなるんだろうっていうのもある。今日のグラストもどうなるんだろうってのはあったけど、結果うまくできたから、フジロックもそうだといいけど。
─ ライブ後の、サイン会の長蛇の列でした。
Tomo:ありがたいことに次のライブが始まってもまだ列が残ってて。あとでスタッフから、このステージのマーチ(物販)で過去一のバイナル売り上げだったって言ってた。
─ その後インタビューできないかと思うくらい並んでました。フジロックもライブ後にそうなればいいなと。
Tomo:今ツアーの3分の2くらいが終わってて、バンドとしてのライブも残り20ショーを切ってて、その中にフジロックもあるんだけど、そういう意味でもひとつひとつのライブが大事。残りのことを想像すると悲しくなるけど、5人で楽しもうというか、そういう状態がどう演奏に影響するのか、自分たちでも分からないのが面白い。
─ ツアーの初期の頃とはバンドの状態は変わってきましたか?
Tomo:今ヨーロッパツアー中だけど、すでにこの間のアメリカのときと変わってきてる。正直ここ1〜2年はライブができない時期もあったので、この春からまたしっかり動き始めて徐々に仕上がってきたって感じ。アメリカツアーの最初のころは、まだ一回も五人でライブでやったことない新曲もある状態とかだったので。
─ グラストも経て脂がのってきてると。
Tomo:そう思ってもらって大丈夫(笑)
─ 最後にフジロッカーに一言を。
Tomo:繰り返しになっちゃうけど、日本のフェスで、日本人がたくさんいる場所でライブをやるのははじめてなので、よろしくお願いします。日本人の熱を感じたいです。
Interview & Text by 津田昌太朗(Festival Life)
Photo by 齋藤允宏
幾何学模様 (Kikagaku Moyo) – Green Suger @ SHIBUYA全感覚祭(2014年)