フジロック’10出演のラテン・ピアニスト、SiNGOが奏でるキューバの「リアル」
- 2021/12/13 ● Interview
2010年のフジロックに出演歴を持ち、ラテン音楽の本場キューバにて長期に渡り活動をしてきたピアニスト、SiNGO。全国4ヶ所で行われた凱旋帰国公演『de.REAL』のファイナルとなった福岡公演のフォトレポートをお届けします。また、フジロック出演当時の事や本場キューバの音楽事情、今回のツアーから得た感触について語っていただきました。
─ フジロック’10への出演の経緯を教えてください。
SiNGO:共演者のキューバ人の知人より出演のオファーをいただきました。
─ 2010年、フジロックのCABARET FIESTAでのライヴの感触はいかがでしたか?
SiNGO:たしかHabana Nightというタイトルでのライヴだったと思います。オーディエンスは普段はあまりラテン音楽を聞かない方々だと思いますが、一人ひとりが思うがままに踊ったり、体を動かし、本能的に楽しんでくれている姿がとても嬉しく、今でも心に残っています。私も普段のライヴで観客の方々に、ラテンのダンス、マナーなんて知らなくてもいい、一人ひとりがそれぞれに楽しんでほしい、とお伝えています。
─ フジロック出演後の反響はありましたか?
SiNGO:やはり日本最大級のフェスティバルに出演した、という事で、注目してくださった方もいたと思います。
─ フジロック出演前後から現在までの活動を教えてください。
SiNGO:フジロックに出演する前の2005年頃から、キューバと日本を頻繁に行き来しながらの活動でしたが、それが徐々にキューバへの滞在期間が伸びてきて、コロナ禍前の数年間はずっとキューバに在住し音楽活動をしていました。
キューバの歴史上初めて、本当の意味でのプロフェッショナルな外国人ミュージシャンとして受け入れてもらいました。コロナをきっかけに一時帰国するまでは、ティンバのトップグループ『KLIMAX』の一員として、またフリーランスのピアニストとして、現地のトップミュージシャンらと活動をともにしていました。
ちなみに、2度フジロックに出演した『INTERACTIVO』(2018、2019に出演)のメンバーとは、私のレコーディングや様々な仕事を通じて良くキューバで共演する仲間です。
現地で、色紙に日本語でメッセージを書いてほしい、と言われ、自分が演奏するわけではないため、戸惑いながらも協力しました(笑)
─ キューバの音楽シーンを教えてください
SiNGO:TIMBA(ティンバ、キューバンサルサ)は、スペイン語で歌われるPOPミュージックです。つまり、流行があり、音のスタイルは、日々、流動的に進化、変化していきます。
しかし、どうも日本では「ラテン音楽」というジャンルでとらえられ、”今”の時代を表現するようなサウンドを求めるポップミュージックとしては認識されません。
私は、活動初期から、ポップミュージックとして捉えてほしく、日本語での曲にもこだわってきました。
キューバには、ティンバ以外にも、ソン、ボレロ、レゲトン、パーカッションだけの音楽RUMBA,アフリカ由来の儀式サンテリアのバタドラムの演奏、ラテン・ジャズ、等、多くのジャンルがあり、生活のすぐそばで演奏されるそれらの音楽に触れる機会が、幼少の頃から当たり前のようにあります。
日本人と比べて、彼らにとって音楽は言葉をしゃべるようにもっと本能的、感覚的に捉えていると思います。
─ 今回のJAPANツアーはいかがでしたか?
SiNGO:外国人が現地のトップの一員として活躍することは、キューバ音楽歴史上、前例の無い、世界初の出来事でした。
また日本人がラテン音楽との出会い、マンボ、チャチャチャ時代から紆余曲折を受け、ようやく日本の業界の悲願を達成しました。
この場を借りて、日本の多くの先人の音楽家の皆様、日本で私の活動を応援頂いている皆様、現地で受け入れていただけたKLIMAXのヒラルドピロート氏を始め、キューバの音楽界の皆様に感謝を申し上げます。
この快挙もあって、今回のツアーは多くの注目を頂き、4公演どこも感染症対応下(人数制限下)では、最大数まで起こし頂きました。
また、我々音楽家は抗原検査キットを毎回実施しましたし、それぞれの公演間は2週間空けることによって、感染拡大をできる限り防止する試みをしました。
ツアーの感想ですが、20代の頃に作曲した曲も含めて今までの演奏も演奏しましたが、以前より本能的に(フジロックのオーディエンスのように)楽しんで頂ける方々が増えてきた印象です。ようやく時代が追いついて来てくれた、という手応えを感じました。今回のツアータイトルは『de.REAL=デ、レアル』としました。「生=リアル」演奏をする、という以外にも、「本質を追求する」というテーマを掲げました。キューバのオーディエンスが楽しんでいるのと同じような「体験」を日本の方々にも感じてほしい。そのために、日本のトップクラスのミュージシャンや、キューバ人で構成された今回のメンバーは、私の方針の元、キューバでの演奏の秘訣を沢山ちりばめて、普段のプロとしての演奏方法とは全く異なった「リアル」な演奏を行いました。また今回は各地で次世代の若いミュージシャンも多く参加してくれて、私が伝えられる事を音を通じて伝えられたと思います。今回のteam SiNGOがコアとなって、これから日本各地、各世代のラテンミュージシャンの交流が進み、単なるツアーを超えたムーブメントが起こることを期待したいです。
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東京、大阪、札幌、そしてファイナルの福岡と4都市を巡った今回のツアー。各地に蒔いたラテン音楽の「種」が新たな花を咲かせて、SiNGOと共にまた、苗場の地を彩ることを心待ちにしている。
CABIOSILE presents SiNGO Japan Live Tour 2021 “de.REAL” 福岡公演フォトレポート
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取材、写真、編集:suguta