今週末は、ナチュラル・キャンプで心の洗濯やね。
- 2021/11/15 ● from fujirockers.org
「さぁ、みんな、今やっていることをやり続ければいい。そんな、みんなの幸せな笑顔が、さんさんと輝く陽の光をもたらしてくれる。これは… みんなと一緒に迎えるいのちの祝福なんだ。」
山奥でゆったり流れる、なんとも幸せな時間を体験できた昨年のウンカイ・ナチュラル・キャンプと呼ばれる小さなフェスティヴァルを終えて、倉敷市にある老舗のレコード屋、グリーンハウスに立ち寄ったときにみつけたのが、1976年に発表されたオシビサというバンドのシングル盤「サンシャイン・デイ」だった。この唄が見事なまでにその時の体験を歌いあてていた。
開催されたのが例年の9月ではなく、晩秋という言葉がふさわしい11月中頃。雨でも降ろうものなら、寒さに凍えて、悲惨な体験として記憶に残るのではないか… と、そんな危惧がなかったわけではない。それでも出かけていったのは、これが昨年唯一のフェスティヴァルとなることが目に見えていたからだ。
ところが、待ち受けていたのは、文字通りの小春日和。開催前日の午後に会場入りすると、真っ先に目に入るまっ赤っかに染まった木々の葉が、陽の光を受けてさんさんと輝いている。なにやら季節外れの暖かさに包まれながら、心も身体も解放されたような時間がここに流れていた。毎年のようにここで顔を合わせる人達もいれば、初めての人もいる。でも、まるでずっと繋がっていたかのように自然に会話が弾み、なにやら幸せな気分に満たされる。世間の喧噪から解放されて、ゆったりした時間のなかでフェスティヴァルという文化の素晴らしさとその意味をここで再認識。なにはともあれ、こんな場にいられる幸せを噛みしめていた。
残念なことに、フジロックが『延期』という形で開催断念を余儀なくされて、台風の影響でキャンセルとなった朝霧ジャムが2年連続で僕らの前に姿を見せることはなかった2020年、唯一と言ってもいいだろう、開催されたのが岡山で細々と続けられているナチュラルキャンプ。全国的な知名度はないかもしれないが、フェスティヴァルを愛する人達にはその穴を埋めるに十二分な魅力を感じさせてくれた。
もともとフジロックの関係者やサポーターが「岡山でフェスティヴァルを開催できないだろうか」と、瀬戸内海沿岸のエリアを探索し始めたのがきっかけで、結果的にみつかったのがオリーヴで知られる牛窓と呼ばれるエリアだった。オリーヴの木々に囲まれた丘で産声を上げたのが2010年。騒音の問題もあったんだろう、それから2年後には、その港から目と鼻の先にある、ほぼ無人島といった趣を見せていた黒島に場所を移していた。ところが、ここは行政との問題で開催不能となり、今度は岡山県東部の山中、大芦原というキャンプ場に場所を移したのが数年前。例年だったら、まだ、夏の名残が残る9月に開催されていたんだが、昨年は新型コロナの影響もあったんだろう、11月に時期をずらしていた。
森の木々に囲まれたステージで演奏するのは、一般的にはそれほど知名度のあるアーティストやバンドではないかもしれない。それでも、そこから奏でられる調べに吸い込まれるように身体が反応して、至福の時間を体験できたのはなぜだろう。演奏の合間を縫うように地元のDJたちが様々な音楽で時間と空間を演出してくれるのも楽しい。それに、どこかで学園祭のような趣も感じさせる出店の数々も、実は、けっこうな珍味を体験させてくれるのだ。そう言えば、昨年はこの山中で本格的な寿司を食することもできた。
なにやらここで流れているのはゆったりとした時間。時には、パーティ気分にになることもあるのだが、フェスティヴァルというよりはギャザリングという言葉の方が似合っているのかもしれない。そんな魅力を感じさせるナチュラル・キャンプが今年も開催される。去年よりも1週間ほど後に伸ばして、晩秋と呼んでもいいだろう11月20日と21日の二日間。言うまでもなく、フジロッカーズのスタッフはここに向かうのですが、みなさんもいかがですか? 時間に追われるのではなく、自分の時間に生きていることを実感できるここで、心の洗濯などしてみればどうでしょう。おすすめです。
写真:HARA MASAMI
文:Koichi Hanafusa
UNKAI NATURAL CAMP 2021 – ウンカイナチュラルキャンプ
2021年11月20日(土曜日)、21日(日曜日)
岡山県美作市上山2350-1 Oh!Ashi Forest~大芦高原キャンプ場~
公式HP:https://natural-camp.jp/2021/