• Tempalay | KEEP ON FUJI ROCKIN’ Ⅱ


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    新年早々放たれた極上のサイケデリアとカオスと愛

    2021年が明けて一発目という大役を仰せつかったのはTempalay。箏曲“春の海”にエフェクティブなギターを重ねながら小原綾斗(Gt/Vo)が恭しく「皆さま、あけましておめでとうございます」と早速、新年のご挨拶を済ませると、メロウなAメロから急転直下、ジミヘンばりにソロを弾きまくる“New York City”へ。そういえばもう2年前になるがBTSのRMが“どうしよう”を気に入り、Tempalayをフックアップしたことがあるが、確かに綾斗のメロディはいわゆるロックの文脈に押し込みづらい不思議さと譜割りを持っている。R&Bのシンガーの方が得意そうなニュアンス。それを2曲目の“人造インゲン”で思い出した。加えて歌謡テイストもあることは“のめりこめ、震えろ。”で実証される。改めてユニークだ。

    スキンヘッズからちょっとだけ髪が伸びたJohn Natsuki(Dr)はそれでも宇宙人感を漂わせる。ドラムパッドに声のサンプルを仕込み「こんにちわー!Tempalyです!」と「あけおめー!ことよろー!」と「フジローック!」の3種を叩くと声のカオスに。しかしドラミングはデッドなサウンドをシュアに構築して、このバンドのサイケデリアをしっかり支える。
    サポートメンバーの亀山拳四朗(Ba)の蠢くようなフレーズも今のバンドには必須の存在感だ。そして、メロウなのに妙な悪夢感に陥るのは去年(そう、何分か前でもう去年!)ソロや先に「NAEBA SESSIONS」に登場したTENDREなど多数のアーティストのサポートでも活躍したAAAMYYY独特のシンセサウンドのセンスによるところも大きい。“TIME MACHINE”なんてUFOが現れたような音のチョイスとコラージュがなんともユニーク。

    後半、地球上から人間がいなくなった後の世界を描く“カンガルーも考えている”と、『AKIRA』の世界観にも通じる東京五輪が開催されなかった東京を想起させる“大東京万博”が妙にリアルに響く。形のない愛というものがもしあれば地球や東京という街は滅ぶことはないのでは……。具体的に歌われているわけじゃないが、根源的な問いを小原綾斗というアーティストは抱えているのだと思う。サイケデリックであることは人間という表層を時々忘れさせてくれる装置のようだ。

    年始早々、Tempalayにせつない気持ちにさせられようとは。しかし、さらに夏の日の花火、それを美しいと思った気持ちなどなどを想起させる“そなちね”で、それはさらに増幅。記憶の中に旅をさせてくれる彼らの音楽は異形のポップじゃない。じんわり、美しいものが心に残る、2021年最初のアクトだった。

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    SETLIST

    New York City
    人造インゲン
    のめりこめ、震えろ。
    どうしよう
    革命前夜
    TIME MACHINE
    深海より
    カンガルーも考えている
    大東京万博
    そなちね

    Text by 石角友香
    Photo by 平川啓子

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